香水の話題を紹介して

以前テレビで見た 香道 を思いだしました

前回ご紹介したように
日本人は香りに頓着しないと
外人から思われているようですが

とんでもない

日本では昔から
香りを素材にして優雅に遊ぶ「香道」が
行われていました


江戸時代に香道を楽しむ人の絵

香道

雅な東山文化が花開いた室町時代
茶道 華道とともに 香道も基礎が築かれ
その精神は現在も脈々と
伝えられているそうです

まず印象的だったのが
香道では香りを「嗅ぐ」のではなく
「聞く」と表現すること

香りを「聞く」と書かれたカード

精神を集中して 幽玄かつ雅な心持ちで
香りを心で楽しむ

香りを表現するのに用いる
「六国五味:りっこくごみ」
という言葉があります

六国は 香りを生む香木の
伽羅 羅国 真那蛮 真那賀 佐曽羅 寸門多羅
の六種を言います

伽羅は 
やさしく穏やかななかに
ピリリとしたところがあり
たとえば宮人の如し

羅国は
自然と匂い鋭く 
その様 武士の如し

真那蛮は
甘くいやしく 
百姓の如し

真那賀は
艶やかにして 
女のうちうらみたるが如し

佐曽羅は
冷やかにして 
僧が如し

寸門多羅は
位低く卑しく 
地下人の如し

などと 

それぞれの香りの特徴は
人の振舞いにたとえられ
少し意地悪に 
しかし的確に表現されています

書き手は
真那賀がどんな香りか
興味があります?(笑)

色々な香木の写真


一方 五味は 
香りそのものの個性で

甘い: 蜂蜜のような香り

苦い: 柑橘類の皮を焼いた香り

辛い: 胡椒や唐辛子の香り

酸い: 梅干しの香り

塩辛い: 海藻を焼いた磯の香り

の五種類が
香りを聞いて判断するときの
基本単位だそうです


香道の催しが 
どのように行われるかというと

香道の催しの様子

茶室のような比較的狭い和室で
主催者が 茶器より小さめの香呂で
香木の小片をいぶして香りをたて

香木の小片をいぶして香りをたてている様子

それを列席者に順に回していきます

列席者は
正座して香呂を受け取り両手で持ち
まさに茶道の作法のように
反時計回りに2回まわし
香呂を両手で覆った隙間に鼻を入れ
香りを「聞き」ます

香りを聞いている様子

なんともおごそかで
やんごとない振る舞いに見えます

そして
順番に出される2種類の香りの
優劣を判断したり
数種類の香木の香りを聞いて
あるテーマを連想したりします

後者の遊び方は「組香」と呼ばれ

順番に出される香木の香りを聞き
何番目と何番目が同じ香りかを判断して
その組み合わせで
源氏物語の何番目のお話かを当てる

といった 
超マニアックな(笑)ゲームです

「組香」について説明した図

いやはや 
なんとも雅で 優美な遊びですね

ため息が出てしまいます(苦笑)

しかも 
こうした遊びに参加するためには
古今東西の文学や文化に
精通していなければならない

雅の方々は大変でした(笑)


興味深かったのが
幻の香木と言われる 正倉院の蘭じゃ侍 の
エピソードです

蘭じゃ侍の写真

信長も秀吉も明治天皇も
こっそりと削り取ったと言われる銘木ですが

この香木をたくと
上記の五味の全てが順番に聞けるそうです


それを聞いて思い出したのが
以前にいただいた 
ブルゴーニュの高級ワインのこと

ソムリエさんが

このワインは
時間経過とともに
さまざまな香りが開いてきますから
じっくりと色々な香りを楽しんでください

と言われましたが
まさにその通りで驚いたことを憶えています

香木もワインも 高級品は
その香りの複雑さや多様性が
魅力の本質なのでしょうか?

香道遊びを嗜まれていた室町時代の人は
まさにその時代に
ポルトガルから運ばれて来た葡萄酒の香りも
南蛮グラスをクルクルと回しながら
「聞いて」いたのかな?

葡萄酒を飲む室町時代の人の絵

ソムリエさんがよく言われるような
「雨に濡れた子犬の毛の香り」
なんて難しい表現をせず

伽羅のように甘く
そしてわずかに
真那賀や佐曽羅のような香りもする

なんて 
もっとわけのわからないことを言いながら
葡萄酒を飲み干していたかも?(笑)

 

高橋医院