最近は 高尿酸血症も
生活習慣病 メタボリックシンドロームの
一部と見做されています

生活習慣病で厄介なのは
複数の生活習慣病を併せ持つと 
動脈硬化のリスクが相乗的に増えることです

そして 
ひとつの生活習慣病になると 
他の生活習慣病を合併しやすい

尿酸値が高い方も 
他の生活習慣病を合併しやすいことが
報告されています


高尿酸血症になると発症しやすい病気

各疾患の合併率は
高血圧 49.2%
肥満 42%
*中性脂肪が高い方は 42.8%
*悪玉コレステロール(LDL)が高い方は 37.6%

尿酸値が高い方は
心血管障害や脳血管障害になるリスクが
他の人より高いことが報告され

尿酸値の上昇とともに
高血圧や慢性腎臓病などのリスクが高まることも 
明らかにされています

<メタボリックシンドロームとの関連>

尿酸値が上昇するにつれて 
メタボリックシンドロームの頻度は高くなり

逆にメタボリックシンドロームの
構成要素数が増加するにつれて
尿酸値が上昇することも
報告されていることから

現在 高尿酸血症は
わが国のメタボリックシンドロームの診断基準には
含まれていないものの

少なくとも
メタボリックシンドロームの周辺徴候であることが
示唆されています


内臓脂肪と高尿酸血症 生活習慣病の関連

メタボリックシンドロームの発症には
脂肪細胞からのアディポサイトカインの分泌異常が
深く関与していますが

尿酸のトランスポーターのURAT1
尿細管のみでなく 
脂肪細胞にも発現していて

尿酸が URAT1によって 
脂肪細胞に取り込まれると 

*酸化ストレスが高まり

*アディポサイトカインの分泌異常が起こり 
 メタボリックシンドロームが発症する

といった可能性が推測されています




尿酸は 
脂肪細胞にも悪影響を及ぼしているのですね!


<高血圧との関連>

@高尿酸血症→高血圧

高尿酸血症患者さんの約20% 
痛風患者さんの約30~70%が高血圧を合併し

血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の合併率は高くなります

尿酸値別の高血圧発症率

高尿酸血症は 
高血圧発症のリスク因子であるわけですが

尿酸が高いと血圧が上がる原因としては

*尿酸が 
 血圧を上昇させるホルモンのレニン・アンジオテンシン系を亢進する
レニン・アンギオテンシン系は腎臓と高血圧のところで解説しました)

*尿酸トランスポーターURAT1
 尿細管のみでなく血管平滑筋細胞にも発現しており

 URAT1を介して血管平滑筋へ取り込まれた尿酸が 
 ・血管を弛緩させる働きを持つ一酸化窒素(NO)の合成を抑制する
 ・フリーラジカルを産生し 酸化ストレスを亢進させる
 ・炎症性サイトカイン 増殖因子を活性化する
といった作用を発揮して

血管の炎症や血管平滑筋細胞増殖を引き起こし
高血圧発症や臓器障害に関与する可能性が
推測されています





尿酸は 
色々な細胞にさまざまな影響を及ぼすようで

その効果発現には
さまざまな細胞に発現しているURAT1が
絡んでいるようで興味深いです

@高血圧→高尿酸血症

一方 
高血圧が高尿酸血症を引き起こすリスクもあります

男性高血圧患者さんの約30%が
高尿酸血症を合併していて

高血圧では尿酸排泄が低下する
と考えられています

高血圧では
レニン・アンジオテンシン系の亢進や
カテコラミンの分泌が認められますが
そのために乳酸産生が増加して
乳酸は腎尿細管で尿酸と競合的に排泄されるので 
尿酸の排泄が低下してしまう

また
高血圧の治療で用いられる
利尿剤やβブロッカーの副作用で 
尿酸値が上昇する場合があるので要注意です

<心血管疾患との関連>

尿酸値高値が
心血管疾患発症の独立した危険因子かどうかは
議論がわかれるところです

心血管疾患では血管の障害がベースに存在し

血管の障害には
血液凝固状態 炎症反応 活性酸素産生が
関与しますが

尿酸結晶は そのいずれも亢進させるので
高尿酸血症は
心血管疾患発症のリスクファクターではないか?
と推測されています

また 高血圧との関連で説明したように
尿酸トランスポーターのURAT1
血管平滑筋細胞血管内皮細胞にも発現しており

URAT1を介して血管平滑筋へ取り込まれた尿酸が
血管の炎症や 
血管平滑筋細胞増殖を引き起こし
血管障害に関与している可能性も推測されています

さらに 
尿酸が産生される際にはATP分解が亢進していますが

ATPの分解時には
大量に活性酸素が発生するため
この活性酸素が血管壁の炎症を起こし 
動脈硬化を促進するとも考えられます



このように 
高尿酸血症はさまざまな機序により
血管障害に関与し
ひいては心血管疾患の発症に関わる可能性が高いですが

尿酸が
本当に心血管疾患の発症リスク因子であるか
明らかにするためには

尿酸値を低下させる治療による心血管疾患発症の低下
の証拠を示す必要があります

こうした研究は未だ成されておらず 
今後の検討を待ちたいと思います

いずれにせよ
高尿酸血症が痛風や腎疾患に関わるのみならず

尿酸の 
脂肪細胞や血管を構成する細胞への直接的な影響を介して
メタボリックシンドロームや
高血圧・心血管疾患にも深く関わることを
理解していただけたかと思います

尿酸 
そんな色々な作用を有していたなんて 
侮れません!

次回は 高尿酸血症と肥満・糖尿病との関わりについて説明します
高橋医院