2013年にゲノム編集の世界を一変させる
CRISPR/Cas9 という
新たな画期的な技術が開発されました

CRISPR/Cas9の説明図

開発したのは

カリフォルニアの
ジェニファー・ダウドナ博士(写真左)
フランス人の
エマニュエル・シャルパンティエ博士(写真右)です

ダウドナ博士とシャルパンティエ博士

彼女達の発見に次いで
同じ年にアメリカ・ボストンのブロード研究所の
フェン・チャン博士
マウス・ヒト細胞でのCRISPR/Cas9の有効性を
確認しました

フェン・チャン博士

彼女達は
近い将来ノーベル賞を受賞するに違いないと
言われています

<CRISPR/Cas9とは?>

目標とする特定のゲノムの
破壊や置換を可能にする
フレキシブルかつシンプルなシステムで

特異性が高く毒性が低いという 
願ったり叶ったりのものです

その基本は

ゲノムの
好きな場所 狙った部位に
Cas9と呼ばれるDNA切断酵素を
持って行くことができる技術で

目的とする特定の遺伝子の発現を
編集することができます

CRISPR/Cas9の模式図


その成功率は
従来の遺伝子導入初期のゲノム編集技術と比べて
はるかに高く

受精卵や微生物にも応用可能です

受精卵に
CRISPR/Cas9を注入するだけで
植物でも動物でもヒトでも 
とても簡単にできます

一度に複数の遺伝子を
改変することも可能で
60カ所の遺伝子が編集できたという
報告もあります


<発見の経緯>

CRISPR/Cas9の正体は 
古細菌に存在するDNA配列です

20年以上前の1987年に
日本人の石野良純博士が
古細菌に特徴的な繰り返し配列を有するDNAが
存在することを
発見しました

しかし その時点では
この繰り返し配列のDNAが
どのような働きをしているのかは
明らかでありませんでした

エマニュエル・シャルパンティエ博士と
ジェニファー・ダウドナ博士は

この繰り返し配列のDNAが
古細菌のウイルスに対する
免疫システムであることを
発見しました

CRISPRアレイを用いた古細菌のウイルスに対する免疫システムの説明図

細菌はウイルスに感染するので
一度感染したウイルスを
排除する免疫システムを
有しています

この繰り返し配列は
CRISPRアレイと呼ばれ

繰り返し配列の真ん中に
過去に古細菌に感染したウイルスの
遺伝子断片(スペーサー配列
が存在していて

同じウイルスが
古細菌に再び感染・侵入すると

古細菌のCRISPRアレイ中に存在する
そのウイルスの遺伝子配列(スペーサー)が
ガイド役になり
CRISPRアレイがウイルスに結合します

そしてCRISPRアレイに連結している
DNA切断酵素Cas9を用い
ウイルス遺伝子を切断します

このようにして古細菌は
過去に感染したことがあるウイルスの
再感染を防いでいます

まさに古細菌の免疫システムです

そして 
この仕組みを発見したシャルパンティエ博士らは

CRISPRアレイとCas9からなる
特定のDNAを認識して切断するシステムが
ゲノム編集の新たな手段になる可能性を
思いついたのです


<構成要素>

CRISPR/Cas9は 
CRISPRとCas9の結合体です

CRISPR/Cas9はCRISPRとCas9の結合体であることを説明する図

CRISPRは 
ガイドRNAで

その正体は 
TCCCCGC・・GCGGGGA 配列の繰り返しです

ガイドRNAが
目的とするDNAに結合するように
目的とするDNAに相補的なRNAを・・の部位に仕込んで
CRISPRを設計します

Cas9は 
DNAを切断する制限酵素=ハサミです

CRISPRに仕込まれた
RNAが認識して結合したDNAを
Cas9が切断します

このCRISPRとCas9の複合体を作り
細胞に導入して実験に用います


<ゲノム編集の実際>

CRISPRとCas9の複合体が
細胞内に導入されると

まずCRISPRに仕込まれた 
目的とするDNAに相補的なRNAが
相手のDNAの目的とする部分を見つけ出して
結合します

その後 Cas9が
相補的RNAが結合したDNAを
切断します

CRISPR/Cas9によるゲノム編集の解説図

除去したい部分が切断されたDNAは
自然に断端同士がくっついて修復されますから
目的とする部分は 
完全にきれいに除去された形になります

また 
切断した部分に別のDNAを組込みたい場合は
ターゲッテイングベクターを用いて
容易に導入できます


<お手軽なCRISPR/Cas9システム>

現在は
自分が切断したいDNAに結合できる CRISPR/Cas9を
オンラインで簡単に注文でき 
価格はたったの65ドルです

1日の注文数は平均200件以上で
世界38か国へ輸出されているとのこと

また 簡易キットも発売されています

ゲノム編集の簡易キット

上述したように このシステムは
初期のゲノム編集技術のZFN TALENと異なり
ガイド役のタンパク質を設計する必要がなく

CRISPRに目的とするDNAに
相補的なRNAを仕込むだけで
特異的な遺伝子編集を簡単に行えます

特別な技術も必要としませんので
まさに 簡単でお手頃 
誰にでもできる技術なのです

最近は
このような DIY do it yourselfキット も
発売されているようで

DIY do it yourselfキット

ちょっとびっくりです!  

 

 

高橋医院