やくざな放蕩息子が勘当されて 
花道で見得を切る

パパンッと拍子木の音が響くと

そこに間髪入れずに 
高麗屋!
の掛け声

さらに絶妙のタイミングで
七代目! 
と別の場所から掛け声が続く

あの観客席からかかる掛け声は
芝居小屋のなかに一種独特の雰囲気を醸し出して 
なかなか良いものです

声の音色 
イントネーションがまた渋くてね

オペラやバレエの会場で聞こえるブラボーよりも
数段手慣れているように思います

日本人のDNAですね(笑)

最近は 
歌舞伎も文楽も見に行けていませんが

数年前に見に行った 
歌舞伎の女殺し油地獄
書き手にとっての
近松門左衛門の世話物デビューでした

近松門左衛門の彫像

女殺油地獄

それにしても 
凄いタイトルです!(笑)

歌舞伎公演の 女殺し油地獄 のポスター

門左衛門さんが 
脂の乗り切った晩年に

ヤクザ者の放蕩息子が 
昔馴染みの油屋の若女房を金目当てに殺した
という実際にあった事件をネタに書いた作品だそうで

油屋で油にまみれながら女を殺すシーンがウリですが

うーん 正直言って
その場面は 
それほど感動しなかったかな(笑)

油屋で油にまみれながら女を殺すシーン

この作品

主人公の与兵衛があまりに残忍非道で
江戸時代では
考えられないようなキャラクターだったためか

当時はさんざんな不評で 
すぐにお蔵入りになったそうで

大衆が 近松のセンスに追いついていけなかった

とも言われているそうです

明治の世になって 
再評価されましたが

むしろ今のご時世では 
こんなキャラはごく普通なので?(苦笑)

逆に近松の時代を先取りする先見性が
見直される契機になったとか

さて この現象 
どう評価したらいいのでしょう?(再苦笑)

ヤクザものの与兵衛を演じ切ったのは 染五郎

ヤクザものの与兵衛を演じ切った染五郎

彼のお育ちの良さが 
この役を演じるのに邪魔になるかな
と邪推していましたが

あにはからんや 
品のあるワルも意外に良いものです

品の良さと弱さは 
表裏一体のようなところがある 

と思いますが

それが 与兵衛が内面に抱える弱さの表現に
うまく生かされていたような気がしました

ちなみに 
惨殺されるお吉を演じたのは
猿之助を襲名する少し前の亀治郎

亀治郎 
意外に色気のある女形を演じるものだと思ったのが
印象に残っています

意外に色気のある女形を演じる亀治郎

さて 近松の世話物の世界

文楽の近松の世話物の世界

正直言って 
のめり込むほど素晴らしいとは思いませんが
一定の抗し難い魅力があることは 
間違いありません

最近 その近松の人となりを描いた 
面白い本を読みましたので
次回ご紹介したいと思います
高橋医院