左利き肝臓専門医ブログ

2017.05.24更新

糖質は体にとって重要なエネルギー源なので

糖質を制限する糖質ダイエットでは 
糖質の代わりのエネルギー源が必要になります


ここで エネルギー源となるのが 脂肪です

糖質ダイエットで痩せる理由のひとつが
脂肪がエネルギー源として消費されるので減る ということでした


このときに 糖の代わりにエネルギーの材料になるのが ケトン体 です


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ケトン体は
糖質が枯渇した状態の肝臓で 脂肪酸から変換されるもので


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血流に乗って筋肉や心臓に運ばれ

それらの組織の細胞内で アセチルCoAに戻され
TCA回路でエネルギー産生の材料になります


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糖質ダイエットの是非をめぐる論争では

このケトン体が 大きな主役になっています

というのも

ケトアシドーシスという

糖尿病のコントロールが不良なときに起きてくる
ケトン体が過剰に蓄積して 血液が酸性に傾く

命にかかわる危険な病態があり

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糖質制限でケトン体が産生されるようになると
ケトアシドーシスになって危険だと考えられたからです

糖質ダイエット反対論者からは
今でも そうした危惧が懸念されています



この論争の決着をつける前に
ケトン体についてもう少し詳しく説明したいと思います


ケトン体
糖質不足時の重要なエネルギー源になることを説明しましたが

水溶性なので脳にも容易に到達し
糖質と同様に 脳のエネルギー源としても利用されます


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ケトン体は 肝臓で ケトン体回路という代謝経路で産生されます

糖質がないと脂肪細胞内の中性脂肪が分解され
血中に遊離脂肪酸が放出され 肝臓に取り込まれて
それを原料にしてケトン体が変換されます

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上述したように
ケトン体は肝臓から血中に出て 脳 心臓 筋肉などに運ばれ

それぞれの臓器の細胞内で
アセチルCoAに戻されて TCA回路でエネルギー産生の材料になります

糖質が枯渇(約13時間を要する)してから
4~5時間たつと ケトン体回路が動き始めます


こうした事実から

ヒトのエネルギー産生系は 2プラトンシステムである 

という考え方が提唱されています


2プラトンは

*糖質を原料とするエネルギー産生系(解糖系)
*脂質(脂肪酸)を原料とするエネルギー産生系(ケトジェニック系)

のふたつを意味します

*解糖系は 糖質を摂取したときに 糖がエネルギー源になり
*ケトジェニック系は 糖質がないときに ケトン体がエネルギー源になる

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糖質がある状態だと
インスリンによる中性脂肪分解抑制作用が働くので
ケトン体の原料となる脂肪酸が放出されず ケトン体は産生されません

つまり

*糖質を摂っていると糖質系が動いて 脂質系は休眠しており

*糖質が枯渇すると 脂質系が動き出してケトン体が産生される

こうした 補助的な2プラトンシステムにより
ヒトのエネルギー産生は 制御されています



さて ケトン体が増えることの危険性について 話を戻しましょう

糖尿病のコントロールが悪いと
ケトン体により血液が酸性(ケトアシドーシス)になり危険です

書き手も研修医の頃に夜間当直をしていたとき
糖尿病性ケトアシドーシスで意識が混濁した患者さんが救急車で運び込まれ
真夜中に初めて診るケトアシドーシスの患者さんを
脚を震わせながら必死に治療したことがあり
 
あの夜のことは 今でも強く記憶に残っています、、、

ケトアシドーシスは 内科の医者なら誰もが
一度や二度は 肝を冷やした経験があると思います

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そんなケトアシドーシスを
厳格なアトキンスダイエットを行った糖尿病患者さんが起こされて
亡くなってしまった事例が数例報告されて

糖質ダイエットはケトアシドーシスになって危険だという意見が
世の中に出回りました


では
本当に糖質ダイエットでケトン体が増えてくると 危険なのでしょうか?

話が長くなったので 次回に続きにします



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