酸化ストレスにまつわる話題を
解説してきましたが

糖尿病や肝障害や脂質異常症と異なり
酸化ストレスの状態を 
健康診断などで評価することはありません


というのも

これまで解説してきたように
酸化ストレスによって傷害を受ける生体高分子は
核酸 タンパク質 不飽和脂肪酸と
多岐にわたりますから

ひとつやふたつの項目を計測しただけでは
酸化ストレス動態を 
俯瞰的に評価したことにはなりません


また 活性酸素フリーラジカル

寿命が短く 
局所で発生して 
その近辺に存在する生体高分子に悪さをする
だけなので

血液中の酸化ストレスマーカーを測定して 
意味があるのか?

という話にもなります


それでも 巷では 
酸化ストレス状態がわかる! 
と銘打った
さまざまな血液検査キットが存在していますし

そうした検査で
酸化ストレス動態を評価することも 
よく見受けられます

ストレスマーカーの検査キット

研究レベルでも 
血液中のそうした酸化ストレスマーカーを測定して
病態と酸化ストレス動態の関連について
モノを言うことも
少なくありません

書き手も 
かってそうした研究をしたこともあります

でも 
データを解析しながら感じたのは

役者が多すぎて 
何を見ているのかわからないなあ 

ということでした(苦笑)

まさに 

木を見て森を見ず 

という感じなのですよ


ただ 
世間でこれだけ酸化ストレスについて
喧伝されると

自分の体内の酸化ストレス状態は
どうなっているのだろう
と気になるでしょうし

それが血液検査でわかると言われたら 
興味を持つことと思います


そこで いわゆる
酸化ストレスバイオマーカー

について解説します

<酸化損傷マーカー>

酸化ストレスの状態を評価する
バイオマーカーとして
使われているのは

比較的安定な物質である
酸化損傷マーカー
血中や尿中での 
それらの物質を計測することが多い


既に何度も説明しましたように

活性酸素フリーラジカル
核酸 タンパク質 脂肪酸などの
生体高分子を傷害します

こうして酸化された生体高分子のなかには 
化学的に安定していて
血液や尿で測定できるものがあります

@8-OHdG

DNAの構成成分であるグアニン
酸化ストレスにより障害を受けて
生成される8-OHdG
尿中で測定することができます

グアニンができる過程を示した図

@イソプラスタン

細胞膜のリン脂質のアラキドン酸
酸化ストレスを受けて生じる
脂質過酸化反応の産物の
イソプラスタン
尿中で測定することができ
BMIが高いほど高いと報告されています


@ヘキサノイルリジン(HEL)

ω6系不飽和脂肪酸
の酸化ストレスマーカー


@プロパノイルリジン(PRL)

ω3系不飽和脂肪酸
の酸化ストレスマーカー


@4-HNE MDA 過酸化脂質(LPO)

脂質過酸化反応の産物


@酸化LDL

動脈硬化の形成に関わる

などは 
血中で測定することができます


糖が酸化されタンパク質に結合した
AGEのひとつのCML
血中で計測できますし

タンパク質が酸化した
ジチロシン カルボニル化タンパク質
血液で計れます


<抗酸化能力>

抗酸化能力も 血液測定で評価することができます

抗酸化作用がある
ビタミンC ビタミンE 
グルタチオン 
ポリフェノール類
等のトータルな抗酸化力を評価するために
銅イオンの還元能力を測定するキットもあり

総グルタチオン量 ビタミンC ビタミンE カロテン
なども
測定できます

さらに抗酸化酵素の
SOD カタラーゼ GSHなどの活性を
評価することも出来ます


世間的には 
こうした項目のいくつかを計測して
酸化ストレス状態 抗酸化能力を
評価している場合が
多いようです


ただ これは
あくまで書き手の個人的な感想ですが

これまで説明してきたように
酸化ストレスにしても抗酸化システムにしても

さまざまな因子が相互補完的に働き合って
形成されるものですから

そのいくつかを測定して
(しかも現場でなく血中で)
意味があるのかな?と
正直なところ感じています

木を見て森を見ていない人

酸化ストレス動態の全体像を把握するのは 
なかなか困難なことです

ちなみに 
これらの検査は
健康保険で行うことはできず
自費診療で行われることが多いようです
高橋医院