資本主義の未来を問う NHKで放送された
マネー・ワールド 資本主義の未来

最終回の第3回は
「巨大格差 その果てに」
というタイトルで

現代社会を広く覆う経済格差について
レポートしていました

第3回・巨大格差 その果てに の画面


<広がり続ける経済格差>

今の世の中は

世界の最も裕福な62人(平均3兆円)の総資産と
下位36億人(平均5万円)の総資産が同じ 

だそうです

世界の最も裕福な62人(平均3兆円)の総資産と下位36億人(平均5万円)の総資産が同じであることを示すグラフ

特にアメリカやイギリスで 
格差が最も広がっていて
大きな社会問題になっています

所得格差が年々増加していることを示すグラフ

アメリカでは
新たな労働力として社会にでたばかりの若年層にも
路上生活者が増大している一方

一握りの超富裕層は
巨額の政治献金を行うことで
社会に大きな影響を及ぼしていて

過去20年間に議会で採択された政策の実に45%が
富裕層の支持のみによって成立していたそうです

政策の実に45%が富裕層の支持のみによって成立していたことを示した図

かつて 
大きな政治的影響力を有していた中間層は
経済的にも社会的にも没落して
政治に影響力を及ぼすなんて 
夢のまた夢だとか

中間層の厳しさを示すイラスト

こうして

社会が二極化して 
お互いがお互いを
解りあえない 解りあおうとしない
社会になっている 

そうで

こんなに大きな経済格差になったのは
王様が社会の頂点に君臨していた
絶対主義国家の時代以来だとか

19世紀 革命前のベルサイユ宮殿で
マリー・アントワネットが
きれいな衣装で日夜パーテイに明け暮れ

その一方で
庶民が飢えに苦しんでいた時代の再現
ということ?

国王が庶民を搾取していることを示す戯画


<どうして巨大な経済格差が生じてきたのか?>

もともと経済的格差は

資本主義経済社会においては
発展のエネルギーを産む原動力

と見做されてきました

自分よりリッチな人がいれば
追いつこうとして頑張って働く
格差が競争心を産み
努力するようになるので

結果として経済は成長する

格差が競争心を産み結果として経済は成長することを示した図

しかし

新自由主義経済が最盛期を迎え
グローバル企業が巨大化してくると

法人税が減税され
労働者の低賃金化が進行して

経営者は富み
労働者は経済的に厳しい状況が
生まれてきます

一部の富裕層が多数の庶民を牛耳る様子を描いた戯画


さらに

労働者の生活向上と経済格差の是正が
基本政策であった
ソビエト社会主義が崩壊し

ソビエト社会主義の崩壊を示すイラスト

労働者の低賃金化の歯止めが効かなくなり

追い打ちをかけるように
IT化 グローバル化 規制緩和による
労働者の低賃金競争が激しくなり

資本主義社会では 
世界的規模で 
巨大格差が生まれてきました

世界的規模で 生まれた巨大格差の現状を揶揄する戯画

また そもそも資本主義経済では

経済が成長するときに
全ての人が均一に恩恵を受けられない仕組みで

富裕層の資産は大幅に増えるときは
貧困層の資産もわずかだが増え

格差は広がっても 
富は分配されるので
社会全体としては繁栄する

とされてきましたが

富裕層に富が集中し過ぎると
それが実現できなくなり

成長率が落ちているから
余計に富が分配されず
格差がさらに広がってしまう

富が分配されず格差がさらに広がっていることを訴えるプラカード


<巨大格差社会への警鐘>

こうした巨大格差社会では
労働意欲の亢進
イノベーションに拍車をかけるといった
格差のプラス面は消失してしまい

一握りの富裕層が
政治的にも社会的にも特権を握り

一方 非富裕層は
努力しても報われないので 
諦めや無力感が広がり

社会が分断され 
個別利害のぶつかり合いになる

その結果

排他主義が助長され
大衆の不安をあおるポピュリズム 
国粋主義が横行する

暴れる世界各国のポピュリストたち

今や社会は
そんな危険な領域に入りつつあると
警鐘が鳴らされています

かつては
貧困層は人生に甘えて努力をしていない
という非難もありましたが

現在の貧困層の社会的状況は 
個人の努力で克服できるレベルではなく
その現実を政府や社会が理解し
対策をとらねばならない

とも 訴えられていました


<どうすればいいのか?>

番組では
広がる格差の是正を試みようとする
富裕層や経営者側の動きが 
紹介されていました

国を愛する富裕層運動
パトリオティック・ミリオリアズを興す人々は

自らが富裕層でありながら
一握りの富裕層が過度の恩恵を受けているのは
不健康だと主張し

富裕層への増税 最低賃金の増大を目指し
これにより格差を是正して
中間層を活性化し社会を活性化することを
試みています

国を愛する富裕層運動を行っている人たちの様子


また

経営者自らが己の年収を削り
労働者の賃金を増やす試みも
紹介されていました

その結果 労働者の勤労意欲が増し
会社の業績アップにもつながり
さらに労働者の消費活動も活発化する
好循環も生まれましたが

その一方で
経営者と会社幹部の間で
訴訟も生じているそうで

なかなか
うまいことばかりというわけにはいきませんね


<新しい哲学 新たな価値観の創造が必要だ>

いよいよ番組も終盤を迎えますが

ここで 
番組の進行をしていた爆笑問題の太田さんが
とても印象的なコメントをされました

番組の進行役をしていた爆笑問題の太田さん

「資本主義の進歩のスピードに
 人間の哲学が追いつけていない」

確かに
こうした状況で求められるのは 
哲学なのかもしれません

書き手はこのコメントを聞いて
妙に共感してしまいました

なぜ哲学を学ぶのか?と問うソクラテス

このコメントを受けて番組は
以下のようなまとめをしていきます

人の豊かになりたいという欲望は
止めることができないし
経済や社会の発展を止める必要もないけれど

人は 究極の富裕に 価値観を見出すのか?

アダム・スミスは
市場経済を動かすのは
自らの利益を追い求める利己心である
と説きましたが

その一方で

経済活動に欠かせないのは 
道徳感情論 である 

とも述べているそうで

経済活動を推し進めるうえで
相手の不利益にも思いをいたし
そのうえで 
自分の行動を判断する 共感 という概念が
現代の資本主義では 
忘れられていないか?

と 問題提起をします

そして最後に

世界でいちばん貧しい大統領として話題になった
ウルグアイのホセ・ムヒカさんを登場させ

人生を全て 資本主義にゆだねてはいけない

お金で物を買うのではなく
お金を稼ぐために費やした時間で
買っているのだ

という 若者に語る彼の言葉を紹介し

若者に語り掛けるウルグアイのホセ・ムヒカさん

さらに アメリカ有数の大富豪が
自ら所有する豪華クルーザーで
港から出帆する際に
港に停泊する大小さまざまなヨットやクルーザーを見て

大きなクルーザーに乗っている人も
小さな船に乗っている人も   
皆 楽しそうで幸せそうだ

もしかしたら 
自分より幸せな人も多いかもしれない

と語るシーンを放映して 
番組を締めくくりました

これは なかなかお上手な番組構成だなと
書き手はとても感心しました(笑)

 

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