急性膵炎 慢性膵炎の解説は
既にしましたが

膵臓の病気シリーズで 
早期慢性膵炎の話をしていませんでした

実は年末から年始にかけて
脂肪肝に関する取材を受けた 
ダイワハウスのWEBマガジンさんから

インタビュー記事が公開されているダイワハウスのWEBマガジン

今度は 
膵臓の病気に関する取材を受けまして
早期慢性膵炎の話題も提供し 
その記事が公開されましたので
ブログでも紹介しようと思います

急性膵炎は 
アルコールの飲みすぎや胆石が原因で起こることが多く

急性膵炎の解説図

治療により膵炎が良くなっても
アルコールをやめられなかったりすると
再発を繰り返し

やがて慢性膵炎に進行してしまうことを 
説明しましたが

慢性膵炎の解説図

慢性膵炎の状態になってしまうと
急性膵炎のように正常な膵臓の状態に戻れないので 
とても厄介です

慢性膵炎の進行を示す図

肝臓は 
慢性肝炎の状態が長く続いて炎症が繰り返されると
持続炎症により肝細胞が脱落して 
そこが線維に置き換わってしまい
肝硬変になります

そうなると 
もとの肝臓の状態に戻れなくなり
さまざまな肝臓の機能が発揮できなくなり
腹水が溜まってきたり 
出血しやすくなったりします

これと同じで
慢性膵炎という病態は 
肝臓で言えば肝硬変に近い状態で

しつこくて申し訳ありませんが
そうなってしまうと 
もう正常な膵臓には戻れない

ですから そうなる前の
慢性膵炎の早期の段階で見つけて
適切な治療を行うことで 
完成した慢性膵炎に進行するのを防ぎたい

そうしたコンセプトをもとに
日本膵臓学会・日本消化器病学会の
膵臓専門医グループが

2009年に世界に先駆けて
「早期慢性膵炎」という疾患概念を提唱しました

早期慢性膵炎を特集した医学誌

*従来の慢性膵炎診断基準では 
 完成された慢性膵炎しか診断できないので

*慢性膵炎が出来上がる以前の
 早期の段階で診断し 治療することで

*慢性膵炎から可逆性の病態をひろいあげ

*膵がんの発症母地でもある
 慢性膵炎への進展を阻止・遅延させる

ことが 目的です

また 従来 慢性膵炎の診断に用いられていた
煩雑な負荷試験を省き
臨床症状と画像所見だけで 
簡便に診断しようとする方針も打ち出しました

実際に診断に用いられる臨床所見・症状とは

*反復する上腹部痛発作

*血中または尿中膵酵素値の異常

*膵外分泌障害

*1日80g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴

のうち 2項目以上が認められる ということで

早期慢性膵炎の診断手順を示した図

画像所見としては
超音波内視鏡検査(EUS)と 
逆行性膵管造影検査(ERCP)における
早期慢性膵炎に特徴的な画像所見が採用されました

また EUS ERCP検査は
専門医療機関でしか施行できないため
画像検査が未施行で 
臨床検査所見・症状のみがあてはまる場合も
疑診例として扱われることになりました

一方 アルコールの基準量については

1日飲酒量が 80gを越えなくても
60~80gの群では
慢性膵炎になるリスクは9.2倍と
60g以下群に比べると急上昇していたことから
高い慢性膵炎リスクを有する要注意例と
することになりました

飲酒量と慢性膵炎リスクの相関を示す図

1日飲酒量に関しては 
従来より厳しい基準が必要との意見が多く

2011年にアルコール医学生物学研究会により改訂された
アルコール性肝障害の診断基準においても

1日あたり純エタノール換算60g以上の飲酒が
過剰な飲酒と定義されました

左利きには 
厳しい世の中になってきました(苦笑)

こうした 早期慢性膵炎の定義と
それに基づいた早期発見の試みが 
どのようになっているか
次回説明します
高橋医院