前回 前々回に引き続き
ヒトラーはなぜネコが嫌いだったのか 
という新書の話題ですが

日本が第二次世界大戦に
向かうようになるとともに

自由 放任 個人主義 
などに価値を認めるネコ性社会から

忠誠 服従 全体主義 
を旨とするイヌ性社会

徐々に変化していき

その象徴として
国家主義や国粋主義と結びつく形で
忠犬ハチ公の物語が生まれた 
と筆者は指摘されます


ちなみに
ハチ公のモデルは雑種で
日本古来の純血の秋田犬では 
なかったのだそうです!(笑)

ハチ公像の足元でくつろぐネコ

まあ こうした論の展開は
予想通りでしたが

終戦を経ても
イヌ性社会が続く理由の解析が面白い


イヌ性社会は

ワンコが忠誠を誓う対象が 
国家や天皇から企業に変化した形で

継続した

と指摘されるのです

なるほど~!

しかも 終身雇用で 
企業が社員のあらゆる面倒を見て
その見返りに社員は企業に忠誠を誓う

そんな高度成長期の日本社会で 
一億総中流化した人々が理想としたのが

一戸建ての持ち家を買って 
庭で洋犬を飼う生活

広い庭でくつろぐ大きな洋犬

再度 なるほど~ ですよ

うまい! 座布団3枚! 
という感じです(笑)

高度成長期の日本は 
まさにイヌ性社会だったのですね!

しかし 
バブルがはじけた1995年頃を境にして
日本の社会は 
再びネコ性社会へと回帰していきます

社会情勢の変化にともない

終身雇用や年功賃金のかわりに 
転職や成果報酬という言葉が
時代を象徴するようになり

戦後社会を支えてきた企業社会の根底が 
揺らいできている

そうなると 
人々は企業社会からの解放と自由を手に入れ
一戸建てのお庭でワンコを遊ばせる夢は 
不必要なものになる

ペットとしての飼育数が
イヌは減少してきたのに対し 
ネコが増加してきて
もうすぐ逆転しようとする現状は

まさに戦後に続いてきたイヌ性社会から 
新しいネコ性社会への変化を示唆している

と 筆者は指摘されます

はい ごもっともです

犬と猫の飼育数の経時的変化を示すグラフ

しかし 筆者はここで論を終わらせず 
最後にもう一捻りされます

なぜ今の日本は 空前のネコブームなのか?

それはネコが可愛いからだけではないと!

空前のネコブームを伝える記事

再三述べられてきたように

人々がネコ性社会の背後に見るものは
自由 放任 個人主義

日本人が 
長く続いた企業社会から脱して
自由や個人主義を既に手にしているのならば

そうした価値観の象徴であるネコに
わざわざ熱をあげる必要はないのでは?

と 筆者は指摘されます

にもかかわらず 
今の日本が空前のネコブームなのは

今の日本が 
企業社会から新たな価値観の社会への過渡期であり

自由 放任 個人主義を 
手に入れられそうな雰囲気はあるけれど

しかし 実際に手に入れ 生活の基盤とするには
未だ至っていないからだ

だからこそ人々は 
まだ手にしていないものに憧れるが故に
ネコの背後にそれを見て 
空前のネコブームを作っているのであろう

と 論を閉じられるのですよ

ネコブームに貢献した旅するネコのキャラクター

いかがですか

ネコブームの背景の深読み 
なかなか面白かったでしょう?

書き手は

*江戸人の合理性が ネコ性社会を作った

*戦後日本の企業中心社会が イヌ性社会を作った

という指摘が とても面白かったです


でも 前回も書きましたが

江戸の人々が 
どのようにしてそのような合理主義精神を
得るに至ったのか?

そこに疑問が残ります

江戸時代のネコの浮世絵

日本精神史とか 
そのあたりの分野の本を読まないと 
いけないのかな?

それとも 
合理主義の象徴だというネコさま達に
おうかがいをたててみましょうか?

我が家の3匹のネコさん

ちゃんと教えてくれるかな?

でも 
彼女達は気まぐれだからなあ(笑)
高橋医院