左利き肝臓専門医ブログ

2015.11.18更新

遺伝子発現のエピジェネティクス制御は 大きく分けて
*DNAのメチル化
*ヒストンの化学修飾
のふたつの機序により遂行されます

epiaim


今回は DNAのメチル化 について説明します

DNAは以前にも説明したように 
アデニン(A) シトシン(C) グアニン(G) チミン(T)という
4種類の塩基が結合してできています

dna

DNAの塩基配列でよくみられる 
5'- CG -3' (CpG)配列の C(シトシン)を構成する炭素原子に
DNAメチル基転移酵素(トランスフェラーゼ)という酵素の働きにより
メチル基が付加される修飾反応DNAのメチル化 と言います

dnamethyl

このDNAのメチル化は 
細胞分裂でDNAが複製されるときも受け継がれるので 
ヒトが生きている限り ずっと維持されます

methyliji


DNAメチル化は とても重要な反応で 細胞の分化や癌化に深く関与します

dnamethyl2



メチル化が生じたDNAでは RNAへの転写が抑制されます
下図に示されるように DNAが使えなくなるのです


この転写抑制が DNAメチル化の非常に重要な生物学的意義です

dnamethyl3


ヒトのDNAに存在するCpG配列の
60~90%はメチル化されていて 
転写が抑制されています

このようにCpG配列の多くにメチル化が生じている状態を 
高メチル化と言います

cpg

一方 転写を活性化させる働きを持つプロモーター領域にある
CpG配列が豊富に存在する領域(CpGアイランド)では 
多くの場合メチル化を受けていません

こうしたCpG配列のメチル化が少ない状態を 低メチル化と言います


プロモーターがメチル化されると 
その遺伝子は転写されなくなってしまいますから
プロモーター領域のCpGアイランドがメチル化されていないのは好都合です

ちなみに 発がんを抑制するがん抑制遺伝子の一部は
CpGアイランドが高度にメチル化されていることが明らかにされており
そのため がん抑制遺伝子の転写が抑制されて がん抑制タンパクが発現しない
これが発がん機序のひとつと考えられています



では なぜDNAがメチル化されると 転写が抑制されるのでしょうか?

そこには 直接的な機序と 間接的な機序が関与しています

*直接的な機序

DNAのRNAへの転写には 転写因子というタンパク質が関与します

転写因子は 
転写が行われるDNA配列の直前に位置するプロモーター部位に結合し
この結合により 転写が促進されます

tenshya


転写因子はプロモーター部位のCpG配列のCを認識して結合しますが
Cがメチル化していると認識目標が消えてしまうので 
転写因子がDNA結合できない

だから転写が進まない  これが直接的な機序です


*間接的な機序

メチル化したDNAに特異的に結合するタンパク質があります

メチル化CpG結合ドメインタンパク質 (MBD)がその代表ですが
MBDがメチル化DNAに結合すると
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC) クロマチン再構築タンパク質
などをその場に呼び寄せ

DNAの周囲の構造がぎっしり詰まって 転写因子が容易に近づけないような
不活性化されたクロマチン(サイレントクロマチン)を形成させます
(クロマチンについては 次回詳しく説明します)

下の図で 
緑の転写因子(TF)が結合したいDNA結合部位が
赤丸で示されるようにメチル化されると
黒い菱形のMBDが結合して
それに青い楕円のHDAC複合体がさらに結合して 
転写因子が結合できないようにブロックしてしまうイメージです

mbd

これが間接的な機序


このような機序により メチル化したDNAの転写は抑制されます

ですから DNAのなかのどの遺伝子がメチル化されているかにより
遺伝子の発現パターンが異なり
RNAに転写され作られるタンパク質のパターンも異なってくる

DNAのメチル化 は 
このようにして遺伝子発現のエピジェネティクス制御に関わります


注目したいことは DNAのメチル化
DNAメチル基転移酵素(トランスフェラーゼ)により生じますが
この酵素はS-アデノシルメチオニン(SAM)から供給されたメチル基
DNAに付加します

そして SAMの合成には 
アミノ酸のメチオニン・葉酸・コリン・ビタミンB12などの
栄養素が関与しています

次回に詳しく説明しますが
DNAメチル化と並んで遺伝子発現のエピジェネティクス制御に関わる
ヒストンの化学修飾においても
*メチル化を起こすメチル基
 メチオニン・葉酸・コリン・ビタミンB12などが合成に関わる
 SAMから メチル基転移酵素により供給され
*アセチル化を起こすアセチル基は 
 糖や脂肪酸のアセチルCoAから アセチル化酵素により供与され
*リン酸化を起こすリン酸基は 
 エネルギー物質のATPから リン酸化化酵素により供与されます

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このように
栄養状態やエネルギー代謝動態が 
エピジェネティクス動態に影響を及ぼすわけです

栄養状態などの後天的要因により エピジェネティクス制御が生ずるのには
こうしたメカニズムによると推測されています

遺伝子発現のエピジェネティクス制御の大きな柱の一つである 
DNAのメチル化
なんとなくイメージしていただくことができたでしょうか?

次回はもう一つの柱である ヒストンの化学修飾について説明します



 

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