パラノイアなGW日記・第3弾

今日は昨日より吹く風に湿り気がなくて爽やか
しつこいですがまさに薫風です

午後のひととき 人形町で地下鉄を降りて
甘酒横丁をぶらぶらと歩いて目的地に向かいます

甘酒横丁の写真

このあたりは同じ中央区の下町でも 
八丁堀とは雰囲気が違いますね

通りを歩いていると
名前を聞いたことがある老舗のお店が
たくさん目に留まります

玉ひで 日山 今半、、 
(あ 食い物屋ばかりですね:苦笑)

実は ちょっと読み違えがありました

夜は玉ひでで鳥三昧しようと目論み
目的地に電話をして夜の部は何時に終わるか聞いたところ
20時過ぎとのこと

えーっ 16時開演で終演は20時過ぎなの?
その時間にはもう玉ひでは閉まってるよ、、、

だったら早目に行ってお弁当を買わないと
と早足に目的地に向かう途中で 
ラッキーなことにこのお店に遭遇

志乃多寿司のお店


志乃多寿司 

なんと人形町が総本店なのですね! 
幕間弁当ゲットです(笑)

少し安心して
新緑と町の風情を楽しみながら歩いていると
目的地に到着しました

明治座の正面

役者さんの名前が書かれたのぼり


明治座 

初めて来ました
役者さんの名前が書かれたのぼりが並んでいてすごい!

パラノイアなGWのイベントの最後を飾るのは 

明治座5月花形歌舞伎

今日の目論見は けれんをたっぷりと楽しみたい!

伝統芸能において
保守的ともいえる決まりごとの世界を再現・継承することは
とても大切なことだと思います
能や文楽は まさに型や決まりごとの美しさでしょう

でもひねくれ者は昔から
歌舞伎のけれんに魅力を感じてきました

学生だった頃に初めて見た 
三代目猿之助 今の猿翁さんのスーパー歌舞伎

宙乗りや早替りに本当にびっくりして
とても鮮烈な印象を得たことを憶えています

それ以来ずっと澤瀉屋さんがご贔屓です

けれんは 
歌舞伎における見た目本位の奇抜さを狙った演出
宙乗り 早替りなどを指します

江戸時代の歌舞伎では
観客を楽しませるために好んで用いられていましたが

明治維新以降に
「何事もお行儀よく行きましょう」的価値観が
あらゆる分野で徹底され

歌舞伎の世界でもご多聞に漏れず
けれんは本道を外れた邪道なものと
見做されてきました

だから約30年ほど前に三代目猿之助が
けれん味たっぷりの芝居で
世間から喝采を浴びたとき

歌舞伎の本家本元 
宗家の重鎮たちは全く評価しなかったそうで

某重鎮は「あんなサーカスのようなもの」
とまで言われたと記録されています

それでも三代目猿之助は
歌舞伎とは一般の観客を楽しませるものであり
そのためには手法や演出を問わない
という自らの信念をひとり貫き通しました

残念なことに
病により舞台活動は制限されてしまいましたが
彼の信念や芸風は 甥の市川亀治郎・4代目猿之助らに
しっかりと引き継がれています

ということで 今日の演目は
4代猿之助と
先代猿之助のリアル息子・市川中車(香川照之)の二人芝居
「あんまと泥棒」
今や新たな宙乗りスターとなりつつある
片岡愛之助の通し狂言「鯉つかみ」




歌舞伎座のポスター

はい とても楽しみです!

明治座の舞台の幕

この舞台幕を見ると 
歌舞伎を見に来たんだなと実感します(笑)

最初の「あんまと泥棒」

中車の歌舞伎を見るのは初めてでしたが
甥の猿之助との二人芝居の掛け合いの妙は
さすがでした

歌舞伎役者さん達

亀治郎の頃にも舞台を見たことがある猿之助
彼の芸には品があるように感じます 

品はとても大切です
個人的には
彼の女形の魅力も捨て難いと思っています

でも今日のプログラムでは 
猿之助も中車も愛之助の前座でしたね(笑)

20分間の休憩の間に 
買ってきたお寿司をいただいてから

お寿司

いよいよけれんの世界が幕を開けます!

スペクタクルな世界を作り上げるために重要なのが
天井に取り付けられたこの滑車

天井の滑車

これを使って愛之助が宙乗りで空間を舞います

「鯉つかみ」 

初めて見ましたが
導入部の主人公が大ムカデを退治する場面から
いきなりミラクルワールドに引き込んでくれます(笑)

ムカデの百脚が動く様子を
たくさんの役者さんが
両手で大きく円を描く動きで表現しますが

これがまるで
エグザイルのダンスパフォーマンスを見ているようで面白い!


それと歌舞伎はやっぱり ツケの効果音 ですね!

舞台上手隅で黒子さんが 
板に木をリズミカルに打ちつけて
役者さんの演技を音でサポートしますが

いやー この音を聞くと
歌舞伎を見に来た実感がします

導入部で主人公が退治したムカデの血が琵琶湖に流れ込み
その血が琵琶湖の湖底で王国を作り上げている
鯉の精の一族の祝い事を穢したため
末代まで鯉の精の一族が主人公のお家滅亡を企てるという
ちょっと荒唐無稽なストーリー仕立てですが(笑)

愛之助は なんと7役の早替り 

舞台の端に引っ込んだと思ったら
次の瞬間に花道を
後方から舞台に向けて駆け出している

いったいどうやって移動して 
いつ着替えたの?

このびっくりの連続も 
けれんの楽しみのひとつです


宙乗りでは 優雅に空を舞います

空間での優雅さと余裕の所作 
当代きっての宙乗り名人になりつつある愛之助
さすがです!

そして今日のけれんの圧巻は 
最後に琵琶湖で主人公が鯉の精を退治する場面

片岡愛之助の舞台姿

鯉と闘う場面の浮世絵


舞台に作られた水槽の中で
愛之助と鯉が 
思い切り水を周囲にまきちらしながら格闘します

愛之助は足で思い切り水を蹴ちらかし
鯉は口に仕込んだホースで水を吐き散らす

前列のお客さんは
あらかじめ配られていた透明のビニールシートで
水を防いでいましたが

水をかぶるのを楽しんでおられるお客さんも
たくさんいらしたようで

愛之助も客席に水しぶきを飛ばすのを
楽しんでいるようにも見えました

いやー これは まさに圧巻! けれんはこうじゃないとね!(笑)


プログラムを読むと
けれんはもともと
上方の役者さんが得意としていたそうで

粋を大切にする江戸とは対照的に 
上方はサービス精神を大切にする土地柄

これでもかというほどの派手さや過剰さで
客を楽しませよう 喜ばせようとする上方の精神が
けれんを育ててきたとか

そういえば愛之助はバリバリの上方役者
この面白さ 
最近のけれん上手の大活躍が納得できます!


でも 粋を大切にする江戸っ子堅気も大切と思う

三代目でやっと江戸っ子になれたひねくれ者は
粋なけれんも楽しんでみたいと思うのですよ

いつか猿之助と愛之助で 
東西けれん対決を見せてくれないかな、、、

そんなことを思いながら 
満足して家まで歩いて帰りました


それにしても 客席の前の方に座っていたお客さん
場内から出るときに 女性はお着物をタオルで拭いたり
男性は帽子にしっかりと水のあとがついていたりで
ちょっとお気の毒でした

けれん初体験の一緒に行かれた方も楽しめたようで 
なによりでした(笑)
高橋医院