左利き肝臓専門医ブログ

2015.09.02更新

アルコールと肝臓の話をしてきましたが
実は肝臓よりも アルコールにより大きな被害を受ける臓器があります

膵臓 です

下図で 肝臓の下 胃の前 十二指腸のすぐ右隣に位置する 
黄色く描かれた横長の臓器が 膵臓です

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というのも
肝臓の細胞はアルコールにより傷害を受けても再生できますが 
膵臓の細胞は再生できません

また 肝障害を生じるより少量のアルコールで膵臓は傷害されます

ですから大酒家は 肝臓だけでなく 膵臓の心配もしないといけません

膵臓については稿を改めて詳しく紹介しますが
主な膵臓の病気は 急性膵炎 慢性膵炎 膵臓がん
アルコールは 急性膵炎 慢性膵炎 に深く関わっています

急性 慢性膵炎ともに 多い原因としては
アルコール 胆石 自己免疫 などがありますが

アルコールが原因となるのは
急性膵炎の33%(男性45% 女性12%)
慢性膵炎の63%(男性73% 女性27%)
に及びます

女性の比率は男性より少ないですが 
アルコール性肝障害と同様 このところ急増しています

アルコール性膵障害は 年代的には30~50歳代に多く
喫煙者が多いことも特徴的です


1日にアルコール80g以上を長期間飲んでいる人に多く
大量飲酒を始めてから10~15年経つと 
慢性膵炎になるリスクが高くなる

1日80gがどれくらいの量のお酒かは 復習されてください


急性膵炎になると みぞおちから左上腹部 背中が痛くなり 
ときに 前かがみにならないといられないほどの激烈な痛み
に襲われます

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大量にお酒を飲んだり 脂の多い食事をしたあとに 
痛みに襲われることが多い

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そうした激烈な痛みはなく
食欲不振 腹部膨満感 軟便 下痢 軽度の発熱
といった症状だけのこともあります


アルコール性の急性膵炎になり 
治療後に改心して断酒できればよいけれど

約30%の方が断酒できずに再び飲み始めてしまい
発作を繰り返していくと 
やがて膵臓細胞が破壊され線維に置き換えられ 慢性膵炎に移行します

急性膵炎後に断酒できないと
膵炎の再発率 慢性膵炎への移行率 糖尿病合併率が有意に高くなり
生命予後も明らかに悪くなる

膵臓はインスリンを産生するので 
壊されるとインスリンが分泌できなくなり 
二次性の糖尿病にもなってしまいます

そして最初に述べたように 膵臓の細胞は再生できませんから
膵臓の機能が破綻してしまうと非代償期になり
今度は腹痛でなく 消化吸収障害 栄養不良 体重減少 頻繁な下痢
などに悩まされ
膵臓がん発症リスクも高まってきます

また そうなってしまう方は 
アルコール依存症の方が多いのも事実です


ですから アルコール性膵炎の治療のいちばんのポイントは
なんといっても 断酒! 

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アルコール性膵炎における断酒の重要性は 
アルコール性肝障害のそれを大きく上回ります

長期にわたりたくさん飲まれている方 肝機能が正常でも安心できませんよ!
是非 膵臓のケアも怠らないよう お気をつけください!


2015.09.01更新

お酒と薬を一緒にやってラリッちゃって、、、

などという話を聞かれたことがある方もおられるでしょう

書き手は留学中にとても疲れて眠れなかったとき
一度だけお酒を飲んだあとにハルシオン(睡眠薬)を飲んだら
電話がかかってきて起きた時に ボ~っとしてしまい なんか変で 
ホントにビックリしたことがあります

あ これがニュースで話題になっていた状態か と実感しました(苦笑)


そんな実体験に基づいてお話ししますが
お酒と薬の代謝は複雑に絡み合っているので 充分に注意する必要があります

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慢性的に飲酒をしている人は
お酒を飲んでいないときでも 薬が効きにくくなることがあります

また 普段はそれほどお酒を飲まない人でも
お酒と薬を同時に飲むと 薬が長時間体内に残るために
強く効きすぎてしまうことがあります

特に睡眠剤とお酒を一緒に飲むと 昏睡状態に陥る危険性もあるので 
どんなに疲れていても 
どこぞのアホな書き手のようなことは 絶対にされないでください

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どうしてこうした現象が起こるかというと
肝臓には お酒と薬物の両方の代謝・分解に関わる酵素システムがあるからです

以前にも解説したように 
アルコールは90%以上がADHという酵素で代謝されますが
MEOS(ミクロソーム・エタノール酸化酵素システム)
という酵素システムも わずかながらアルコール代謝に関わります

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ADHはミトコンドリアで働く 主たるアルコール分解経路
MEOSは小胞体という細胞内器官で働く 
アルコール分解のヘルパー経路 と理解してください

MEOSがヘルプするのは 大量にお酒を飲んだときです

通常はまずADHが働いてアルコールを代謝しますが
アルコールが多量でADHだけでは分解しきれないときに
MEOSがヘルプします

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つまりMEOSは 
通常の状態では活性が低いけれど
大量飲酒すると 活性が高まってくる酵素システムなのです

ですから 慢性的に大量のお酒を飲んでいると 
MEOSが活躍する機会が増え
恒常的にMEOSの量が増え 活性が高まります

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だから たくさんお酒を飲んでいると
MEOSによる代謝能力が上がり お酒が強くなるのです


このMEOSが アルコールだけでなく薬物の代謝にも関わるので 
話が厄介になります

MEOSは酵素システムと表現しましたが
その働きにはシトクロームP450という酵素も関与します
このシトクロームP450が 薬物代謝の中心となる酵素なのです


ということで
慢性的な大量飲酒によりMEOS活性が高まっていると
しらふのときも薬の代謝が速くなり 
その結果として 薬の効果が短くなるので効きにくくなる

精神安定剤のジアゼパム 鎮痛剤のアセトアミノフェン 
などで起こります

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一方 アルコールと薬を同時に摂取すると
MEOSはアルコールを優先して代謝しなければならないため(下図中央点線) 
通常の薬物代謝(下図左端)が後回しにされ 薬が体内に長く留まるために 
結果として薬の効果が長引いてしまう

糖尿病の薬 抗凝固剤のワーファリン 睡眠薬・精神安定剤 
などで起こります

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ということで
慢性的な大量飲酒をしている方は 
痛み止めなどが効かなくなる可能性がありますし

酒飲みではない方も お酒と薬物を一緒に飲むと
薬の作用が長引く可能性があり 危険ですから
避けた方が賢明です


ちなみに書き手は 鎮痛剤を服用すると ちゃんと効きます

変だなあ MEOS活性は充分に高いはずなのに?
という突っ込みは入れないでください(再苦笑)


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