左利き肝臓専門医ブログ

2015.07.15更新

これまで説明してきたように
お酒を飲んで太るか太らないかは
アルコールを飲んだ時に一緒に食べるつまみの内容や
どれだけ食べるかに影響されているようですが

では 食欲というものは どのように制御されているのでしょう?

お腹が減った もっと食べたい という食欲の亢進
お腹がいっぱい もう食べたくない という食欲の抑制

主に脳の視床下部という部位でコントロールされています

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視床下部には
「食べたい指令」を出す摂食中枢「お腹いっぱい指令」を出す満腹中枢があります

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また視床下部より下 首の高さにある延髄孤束核には
胃 消化管 肝臓など体のさまざまな部位からの情報が届く部位があり
そこでまとめられた情報が視床下部や大脳皮質に伝えられます

このように視床下部体内の消化やエネルギー状態に関する情報を得て
食べたいかお腹がいっぱいかを決定します

また視床下部には体内時計(覚えてますか?)や体温などの中枢もあり
それらからの情報も食欲を影響を与えています


具体的に 体内のどのような部位からどのような情報が
延髄や視床下部に上がっていくかというと

・食べ物が入ってきて胃が物理的に膨らみましたよ という胃の伸展刺激
・胃や腸に食物が入って分泌される消化管ホルモンを介した食べ物の消化状況
・肝臓からはグルコースセンサーなどを介した エネルギーの代謝や蓄積に関する情報
・脂肪細胞が産生する種々のアデイポカイン
・食物から消化された糖分(血糖値)や脂質(脂肪酸)などの栄養素そのものによる情報
・血糖値に反応して膵臓から分泌されるインスリンも重要な情報です

こうした消化状態や代謝された栄養素の情報が相まって 食欲が規定されます

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一方 視床下部には より上位の大脳皮質や大脳辺縁系からも情報が降りてきます
・大脳皮質から 視覚 嗅覚 味覚といった食欲に影響する情報や 
 食後の満足感や快感が伝わりますし
・大脳辺縁系からは 食欲に影響する記憶や情動が伝わります
こうした五感や記憶などの抽象的な情報も 食欲に大きく影響します

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それぞれの情報は「食欲制御物質」と呼ばれるホルモンや液性因子に変換されて伝えられます

食欲促進系因子
・消化管で分泌されるグレリン ガラニン 交感神経で分泌されるノルアドレナリン
・視床下部に存在するオレキシン オピオイド 下垂体に存在するメラニン凝集ホルモン(MCH)
・副腎皮質ホルモンのグルココルチコイド など

食欲抑制系因子
・脂肪細胞から分泌されるレプチン
・消化管から分泌されるインクレチン(GLP-1) コレシストキニン PYY
・膵臓から分泌されるインスリン
・視床下部に存在するオキシトシン セロトニン ヒスタミン
・女性ホルモンのエストロゲン など

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聞いたことがあるものもあれば 初めて聞くものもあるでしょうが
こうした物質的 精神的なさまざまな情報が視床下部の食欲制御中枢に集結して
食べたいか お腹いっぱいかが決まるのです

興味深いのは 食欲促進系因子よりも抑制系因子の方が数が多いこと
ヒトはもともと食いしん坊なので 食欲を抑制する仕組みの方がより一層厳密なのかもしれません?(笑)

では アルコールを飲むことが これらの食欲制御物質にどのような影響を与えるか見てみると

飲酒により
食欲促進因子のグレリン ガラニン オピオイドの分泌が促進され
食欲抑制因子のレプチン インクレチンの分泌は抑制される

つまり お酒を飲むと 食欲のアクセルが踏まれ ブレーキが壊れてしまう というわけで

こうした機序により お酒を飲むと食欲が増してくるわけです

さらにガラニンやグレリンは さらにアルコールを飲みたくさせる作用があるので
飲む→食べる→飲む→食べる→・・・・ という悪循環が果てしなく進んでしまいます

しかも食べたら確実に太る夜遅くの時間帯に!

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どうやら お酒を飲むと太る理由がかなりはっきりしてきたようですね

しらふだと こうした状況は恐ろしいと思えるのですが 飲んでるとねえ、、、(苦笑)

これを読みながらうなずかれている患者さんたちの顔が目に浮かびます

では今日の一句を

飲んだら食うな 食うなら低カロリーつまみ

字余り お粗末さまでした(苦笑)

2015.07.14更新

ホントにお酒を飲んでも太らないの?

前回の与太話では なんだか適当に丸め込まれた気がなきにしもあらずだけれど
太るのか太らないのか いったいどっちがホントなの?

こうした切実な疑問に答えるために 何千人~何万人を対象にした調査研究が世界各地で行われています
皆さん 知りたいことは同じですね!

そして 今のところ得られているコンセンサスは 「アルコールは肥満の危険性を増大させない」

tm

メタボ傾向の左利きの皆さん ホッとされましたか?(笑)


実際にさまざまなことが検討されていて 興味深いデータが数多くあります

特にアルコールの飲み方
1日にどれだけの量を飲むと太るか? 1週間に何回飲むと太るか?
といった視点からの研究が 興味深い事実を教えてくれます

まず1日の飲酒量
大量(1日4ドリンク以上)に飲むと肥満になりやすいけれど
少量から中等量(1日1~3ドリンク)なら むしろ肥満抑制効果が期待できる!
この傾向は特に女性で強いそうです

1週間の飲酒回数
回数が多い方が太りにくく むしろ回数が少ない方が肥満になりやすい!

しかもなんと不思議なことに
1日の飲酒量が同じ場合 1週間の飲酒回数が1回より頻回の方が太らない

graph

上の棒グラフは 縦軸は肥満の程度(BMI) 横軸は1週間の飲酒回数になっていて
(左端のQ1は少ない 右端のQ5は多い)
黒い棒は1日の飲酒量が少ない(1ドリンク) 白い棒は中程度(2ドリンク) 横線の棒は多い(3ドリンク)

ご覧になってお解りのように Q1からQ5にむけてグラフの高さは右肩下がりですから
1日の飲酒量が多くても少なくても 1週間の飲酒回数が少ない方が太りやすい

ホントなの?


そして 多くのデータをまとめて得られた結論は

いちばん太りにくいのは 頻回に少量の飲酒をする人

いちばん太りやすいのは
飲酒機会は不定期だけれど 一度の飲酒量が多い人
うさ晴らし的な飲み方をする人


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皆さん びっくりされていますか?

書き手はこれらの文献を読んでかなりびっくりしました!


でも そういえば、、と思う節もあります
書き手は一時期 平日は飲まずに週末だけ飲んでいたことがあり
今思い返すと 確かにそのような飲酒パターンをしていたときは
体重が増えてしまい驚いた記憶があります
平日は我慢してたのに!(苦笑)

それに 知人に毎日4ドリンク以上コンスタントに飲んでいる人がいますが 彼はいちども太ったことがない

で さらに詳細に思い出すと
週末だけ飲んでいたときはたくさん飲んで しかもかなり食べていた
件の知人は毎日飲むけれど 飲むときにあまりたくさん食べない

うーん、、、

こうしたデータを解釈するのは難しいです

はっきりと言えることは
飲んだアルコール総量が肥満と関連しているわけではないということ

では どうして飲む頻度が少ない人の方が太るのか?

htn

自分の体験からも 論文の考察でも
少量をコンスタントに飲む人と大量を不定期に飲む人では
飲むときのつまみの食べ方が異なり
それが体重増加に影響を及ぼしている可能性が推測されます

アルコールは食欲増進作用がありますし
飲んだときは脂の多いものや味付けが濃いものを食べたくなる

むちゃ飲みするときは大抵夜遅くまで飲むので 夜遅くに脂ものを食べることになる
そういう食べ方は 概日リズムの話題で解説したように 確実に太る

ましてや前回説明したように
アルコール代謝が優先されて糖質や脂質の代謝は後回しにされるので
寝ている間に糖質や脂質が代謝され そのほとんど全てが脂肪として蓄積されてしまう

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お酒だけ飲んで我慢できれば良いけれど
お酒と一緒に食べるつまみの内容 食べる時間に 肥満との関連がある可能性が大きい

もしかしたら 一度に大量飲酒する人と毎日少量の飲酒をする人では
一緒に食べるつまみの内容や 食べる時間に差異があるのではないか?

どうも飲酒時の食べ方に 太る原因が隠れていそうです

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ちょっとおまけですが こんな興味深いデータもありました

ワインを飲む人は ビールや蒸留酒を飲む人より 栄養価が低いものを適切な時間に食べている
だからワイン愛好家は太らないけれど ビール・蒸留酒愛好家は太りやすい

また以前に解説した睡眠との関連では
睡眠時間が6時間以下の人は アルコール過飲になりやすく 食事パターンが乱れやすく その結果太りやすい

仕事で夜遅く家に帰って 食事を始めたらついついお酒を飲み始めてしまい
そのまま遅くまで飲み食いしてしまい 寝るのが遅くなり睡眠時間が短くなってしまう

ありがちな生活パターンですね
当院の患者さんでも こうした食習慣・飲酒習慣の方は少なくありません

皆さんもご自分の飲酒パターン・食事パターンを いちど冷静に振り返ってみませんか?



2015.07.09更新

お酒を飲むと太るのか?太らないのか?

ついに 世の中で最も深遠な(?)疑問 にアプローチするときがきました!

普段から患者さんに「お酒は控えめにしてくださいね」とお話ししている身としては
この”切実な”問題はしっかりと説明しておかないといけません!

damw

しかし 書き手は皆さんがご存知(ですね?:苦笑)のとおり
アルコールを代謝する臓器の専門家でありながら「左利き」ですから
そんな奴が書くことなんて信用できるのか? 自己弁護するだけじゃないのか?
と疑いの目を向けられる方も少なくないかもしれません

でも自分の肝機能検査値は正常範囲内ですからと 意味不明の開き直りをして(苦笑)
切実な問題の解説を始めることにします


世の中の栄養素と呼ばれるものは すべからくカロリーを持っています

カロリーの定義も実はかなり厄介なのですが
簡単に言うと「どれだけの熱量を生み出せるか」という指標です

炭水化物は1gあたり4kcal
タンパク質も1gあたり4kcal
脂肪は1gあたり9kcal の熱量を産み出せます

今日の主役のアルコールは栄養素ではありませんが
1gあたり7kcalの熱量を産み出せます

実は炭水化物やタンパク質よりも多い

体内で栄養素が代謝されて産み出された熱量・エネルギーは
体のあちこちでさまざまな生命活動に用いられますが
利用されずに余った熱量は
グリコーゲンや中性脂肪に変換され筋肉や脂肪細胞に蓄積されます
(飢餓などに対処するための備蓄エネルギーです)

摂取カロリー量が利用されるエネルギー量を上回ると
蓄積量が増えて肥満につながります

じゃあ 炭水化物やタンパク質を上回るカロリーを有するアルコールを摂取したら
そりゃ太るでしょ!
とは 簡単に結論できないのですよ (酒飲みの言い訳ではありませんからね!:笑)

アルコールのカロリーは 「エンプティカロリー」 と呼ばれます

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エンプティということは空ということ?
だったらアルコールを摂取しても太らないの?

残念ながら そうとも簡単には結論できません


読み手の皆さんの頭の中がこんがらがってきそうなので
まずアルコールが体内でどのように代謝されるか説明しましょう

そこを正確に理解しておかないと エンプティの正しい意味が理解できません

アルコールは胃や小腸で吸収されて
アルコールを代謝する酵素たちが待ち構えている肝臓に運ばれます

肝臓では まずアルコール脱水素酵素(ADH)が働いて
アルコールをアセトアルデヒドに分解します

アセトアルデヒド
酔っぱらって赤くなったり 気持ち悪くなったり 頭痛がする原因物質で
肝細胞のミトコンドリアを傷害したりする有害な物質です

ですから肝臓は有害なアセトアルデヒドをすぐに分解します

ここで働くのがアルデヒド脱水素酵素(ALDH)
アセトアルデヒドを酢酸に分解します

以前に紹介した その遺伝子多型がアルコールの強さを規定する酵素です
覚えておられますか?

こうして出てきた酢酸は肝臓から血中に放出されて
筋肉や心臓でエネルギーとして消費され
ミトコンドリアのTCA回路を経て 最終的には水と炭酸ガスになります
(ミトコンドリアやTCA回路については いずれまたゆっくりと解説します)

adh

このように アルコールは最終的に酢酸を経て水と炭酸ガスになるので
エネルギー源の糖質にはならないし
中性脂肪として脂肪細胞に蓄積されることもほとんどない

つまり アルコールのカロリーはほとんど身につかない!

しかも興味深いことに
アルコールは糖質や脂質よりも優先的に代謝されて熱として放出されてしまう

お酒を飲むとすぐに体が熱くなったり顔が赤くなったりするのは
アルコールが優先的に代謝されて即座に熱として放出されているからです

どうして糖質や脂質よりも優先的に代謝されるか?

それはアセトアルデヒドが毒物だからです
一刻も早く体内から毒物を排泄するために アルコールは優先的に代謝されるわけです

このために お酒を飲んだときに
一緒に食べたつまみに含まれる炭水化物や脂質の代謝が遅くなります

アルコールの代謝には数時間かかりますから
酔っぱらってたくさんつまみを食べて
さらに〆にこってりしたラーメンを食べたりすると
その炭水化物や脂質は良い気分で家に帰って寝たあとにやっと代謝が始まるわけで、、、

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夜遅く食べるとデブになる!
時間栄養学の鉄則を思い出してください!

ということで
アルコールのカロリーは即座に代謝され最終的に身につかないので
エンプティカロリー 空っぽのカロリー と呼ばれているのです

もちろん アルコール飲料にはアルコールだけが含まれているわけではありません

炭水化物を原材料として醸造したビール 日本酒 ワインなどには糖質も含まれており
それらは身につくカロリーになりますが
お酒全体のカロリーからすると微々たるもので せいぜい1/10程度です

焼酎 ジン ウオッカなどの蒸留酒なら 原材料のカロリー自体が微々たるものです


再度 ということで結論は お酒を飲んでも太らない?

いや 言葉巧みに解説しているけれど
やっぱり左利きの言うことはバイアスがかかっていて信用できないぞ?

さて どうなのでしょう?

賢明な読み手の方は
脂質や糖質の代謝がアルコールの代謝より後回しにされるという件で
オチが読めてしまったかもしれませんが(笑)

でも まあそう結論を急がずに もう少し左利きの与太話にお付き合い下さい(笑)

2015.07.08更新

「お酒を飲んだら太るのか?太らないのか?」
という”切実な問題”の解説シリーズに入ります

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皆さん 大いに関心がおありなのではないでしょうか?(笑)

そこで先ず本題に入る前に
飲む量の多い・少ないを判断する際に用いられる「アルコール量の基準」
について説明しましょう

お酒をどれだけ飲んだか?

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評価に用いられるのは
ビールをジョッキ何杯飲んだ 日本酒を何合飲んだ といったことではなく
体内にどれだけの純アルコール量が摂取されたか?ということです

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言い方を変えると
アルコールを代謝する肝臓が どれだけの量のお酒を浴びたか?ということ(笑)

焼酎でもワインでもビールでも
肝臓にとっては単なるアルコール(エタノール)に過ぎませんから
体(肝臓)への影響を評価するには
どんな種類のお酒をどれだけ飲んだかを 
純アルコール量に換算しなくてはなりません

どれだけの量の純アルコールを摂取したかは
「飲んだお酒の量(ml)x飲んだお酒のアルコール度数(%)」
で計算できます

それにアルコールの比重の0.8を掛けると
体内に摂取された純アルコール量がグラム(g)で表せます

たとえばビールのロング缶1本飲むと
500mlx0.05(ビールのアルコール度数は5%)x0.8で
20gの純アルコールを摂取したことになります

日本酒1合だと 180mlx0.15x0.8で 21.6g
ワイングラス1杯だと 125mlx0.14x0.8で 15g
焼酎1杯だと 100mlx0.25x0.8で 20g
(普段飲まれているワイングラス 焼酎グラスが大型の方は適宜補正をお願いします:笑)

基準飲酒単位となる「1ドリンク:Standard drink」
に含まれる純アルコール量は国によりまちまちで

アメリカは14g フランス・デンマークは12g
イタリア・オーストラリア・ニュージーランドは10g イギリスは8g

sd

この微妙な違い アルコールに対するお国柄が出ている?(笑)

他の国々の1ドリンクの純アルコール量をもう少し見てみると
ハンガリーは17g ポルトガルは14g
アイルランド・ポーランド・スペイン・オランダは10g オーストリアは6g

そしてダントツでトップなのが なんと日本の 20g!

このデータを見たら
世界の人々は日本は酒飲みの国と思ってしまうかも?(笑)

実はこれにはわけがあって
もともと外国の「1ドリンク」は
「過度の飲酒を防ぐための指標とする飲酒単位」
として設定されましたが

日本では飲酒に関する統計をとり始めたとき
単純に日本酒1合を1単位として定めたために 1単位=20g になりました

つまり日本の1単位は
「過度の飲酒を防ぐために定めた最小飲酒単位」ではないのです

そこで最近は日本でも 従来の1単位=20gでなく
1ドリンク=10g を新たな基準量として取り扱う傾向にあります

ちなみに 1ドリンク=10g の純アルコールを含むお酒の量

ビールだと250ml : 中ビン1本 ロング缶半分
焼酎だと50ml : シングル2杯弱
日本酒だと80ml : 0.5合
ウイスキーだと30ml : シングル1杯
ワインだと100ml : ワイングラス1杯弱

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この「1ドリンク」が今後の話題の基準になりますので
記憶に留めておいてください

さて 読み手の皆さん 先週は何ドリンク飲まれましたか?

指折り数えて 片手ですみましたか?
それとも足の指も必要になりましたか?(笑)

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書き手は えーっと、、、、個人情報は内緒です!(笑)

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