左利き肝臓専門医ブログ

2015.09.02更新

アルコールと肝臓の話をしてきましたが
実は肝臓よりも アルコールにより大きな被害を受ける臓器があります

膵臓 です

下図で 肝臓の下 胃の前 十二指腸のすぐ右隣に位置する 
黄色く描かれた横長の臓器が 膵臓です

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というのも
肝臓の細胞はアルコールにより傷害を受けても再生できますが 
膵臓の細胞は再生できません

また 肝障害を生じるより少量のアルコールで膵臓は傷害されます

ですから大酒家は 肝臓だけでなく 膵臓の心配もしないといけません

膵臓については稿を改めて詳しく紹介しますが
主な膵臓の病気は 急性膵炎 慢性膵炎 膵臓がん
アルコールは 急性膵炎 慢性膵炎 に深く関わっています

急性 慢性膵炎ともに 多い原因としては
アルコール 胆石 自己免疫 などがありますが

アルコールが原因となるのは
急性膵炎の33%(男性45% 女性12%)
慢性膵炎の63%(男性73% 女性27%)
に及びます

女性の比率は男性より少ないですが 
アルコール性肝障害と同様 このところ急増しています

アルコール性膵障害は 年代的には30~50歳代に多く
喫煙者が多いことも特徴的です


1日にアルコール80g以上を長期間飲んでいる人に多く
大量飲酒を始めてから10~15年経つと 
慢性膵炎になるリスクが高くなる

1日80gがどれくらいの量のお酒かは 復習されてください


急性膵炎になると みぞおちから左上腹部 背中が痛くなり 
ときに 前かがみにならないといられないほどの激烈な痛み
に襲われます

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大量にお酒を飲んだり 脂の多い食事をしたあとに 
痛みに襲われることが多い

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そうした激烈な痛みはなく
食欲不振 腹部膨満感 軟便 下痢 軽度の発熱
といった症状だけのこともあります


アルコール性の急性膵炎になり 
治療後に改心して断酒できればよいけれど

約30%の方が断酒できずに再び飲み始めてしまい
発作を繰り返していくと 
やがて膵臓細胞が破壊され線維に置き換えられ 慢性膵炎に移行します

急性膵炎後に断酒できないと
膵炎の再発率 慢性膵炎への移行率 糖尿病合併率が有意に高くなり
生命予後も明らかに悪くなる

膵臓はインスリンを産生するので 
壊されるとインスリンが分泌できなくなり 
二次性の糖尿病にもなってしまいます

そして最初に述べたように 膵臓の細胞は再生できませんから
膵臓の機能が破綻してしまうと非代償期になり
今度は腹痛でなく 消化吸収障害 栄養不良 体重減少 頻繁な下痢
などに悩まされ
膵臓がん発症リスクも高まってきます

また そうなってしまう方は 
アルコール依存症の方が多いのも事実です


ですから アルコール性膵炎の治療のいちばんのポイントは
なんといっても 断酒! 

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アルコール性膵炎における断酒の重要性は 
アルコール性肝障害のそれを大きく上回ります

長期にわたりたくさん飲まれている方 肝機能が正常でも安心できませんよ!
是非 膵臓のケアも怠らないよう お気をつけください!


2015.09.01更新

お酒と薬を一緒にやってラリッちゃって、、、

などという話を聞かれたことがある方もおられるでしょう

書き手は留学中にとても疲れて眠れなかったとき
一度だけお酒を飲んだあとにハルシオン(睡眠薬)を飲んだら
電話がかかってきて起きた時に ボ~っとしてしまい なんか変で 
ホントにビックリしたことがあります

あ これがニュースで話題になっていた状態か と実感しました(苦笑)


そんな実体験に基づいてお話ししますが
お酒と薬の代謝は複雑に絡み合っているので 充分に注意する必要があります

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慢性的に飲酒をしている人は
お酒を飲んでいないときでも 薬が効きにくくなることがあります

また 普段はそれほどお酒を飲まない人でも
お酒と薬を同時に飲むと 薬が長時間体内に残るために
強く効きすぎてしまうことがあります

特に睡眠剤とお酒を一緒に飲むと 昏睡状態に陥る危険性もあるので 
どんなに疲れていても 
どこぞのアホな書き手のようなことは 絶対にされないでください

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どうしてこうした現象が起こるかというと
肝臓には お酒と薬物の両方の代謝・分解に関わる酵素システムがあるからです

以前にも解説したように 
アルコールは90%以上がADHという酵素で代謝されますが
MEOS(ミクロソーム・エタノール酸化酵素システム)
という酵素システムも わずかながらアルコール代謝に関わります

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ADHはミトコンドリアで働く 主たるアルコール分解経路
MEOSは小胞体という細胞内器官で働く 
アルコール分解のヘルパー経路 と理解してください

MEOSがヘルプするのは 大量にお酒を飲んだときです

通常はまずADHが働いてアルコールを代謝しますが
アルコールが多量でADHだけでは分解しきれないときに
MEOSがヘルプします

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つまりMEOSは 
通常の状態では活性が低いけれど
大量飲酒すると 活性が高まってくる酵素システムなのです

ですから 慢性的に大量のお酒を飲んでいると 
MEOSが活躍する機会が増え
恒常的にMEOSの量が増え 活性が高まります

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だから たくさんお酒を飲んでいると
MEOSによる代謝能力が上がり お酒が強くなるのです


このMEOSが アルコールだけでなく薬物の代謝にも関わるので 
話が厄介になります

MEOSは酵素システムと表現しましたが
その働きにはシトクロームP450という酵素も関与します
このシトクロームP450が 薬物代謝の中心となる酵素なのです


ということで
慢性的な大量飲酒によりMEOS活性が高まっていると
しらふのときも薬の代謝が速くなり 
その結果として 薬の効果が短くなるので効きにくくなる

精神安定剤のジアゼパム 鎮痛剤のアセトアミノフェン 
などで起こります

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一方 アルコールと薬を同時に摂取すると
MEOSはアルコールを優先して代謝しなければならないため(下図中央点線) 
通常の薬物代謝(下図左端)が後回しにされ 薬が体内に長く留まるために 
結果として薬の効果が長引いてしまう

糖尿病の薬 抗凝固剤のワーファリン 睡眠薬・精神安定剤 
などで起こります

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ということで
慢性的な大量飲酒をしている方は 
痛み止めなどが効かなくなる可能性がありますし

酒飲みではない方も お酒と薬物を一緒に飲むと
薬の作用が長引く可能性があり 危険ですから
避けた方が賢明です


ちなみに書き手は 鎮痛剤を服用すると ちゃんと効きます

変だなあ MEOS活性は充分に高いはずなのに?
という突っ込みは入れないでください(再苦笑)


2015.08.27更新

女性は男性に比べて アルコールの代謝能力が3/4程度しかないため
お酒を飲むと血中アルコール濃度が高くなりやすい

したがって
同じ量を長期飲酒した場合 男性より早く肝障害が現れ
アルコール性肝硬変の患者年齢が 男性より10歳以上も若い

過度の酩酊のリスク 特に急性アルコール中毒のリスクも男性より高いし
アルコール依存症にもなりやすい

また 高齢女性では骨粗鬆症が大きな問題となっていますが
多量飲酒は骨密度を減少させ 骨粗鬆症や骨折の原因にもなります 

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上のグラフが示すように
同じ1日アルコール摂取量でも 女性の死亡相対リスクは男性に比べて高い

それだけ女性は 飲酒による健康被害が起こりやすいのです


しかし現代社会では 飲酒機会の男女差はなくなっていて
20代前半では女性の飲酒機会は 男性を上回っているほどです

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ですから「健康日本21」には
*女性の飲酒量は 一般的に男性の半分から2/3くらいにするのが安全
*1日の純アルコール摂取量は 10g程度に抑えることが好ましく
*20g以上だと生活習慣病のリスクが高まるので要注意
と記されています

女性ご自身がこうしたことを認識され 
節度ある飲酒をされることが大事ですが
一緒にお酒を飲む男性もこうしたことを知り 
気配りをする必要があると思います

でも 男まさりの酒豪の女性 かなりおられるのも事実ですが、、、(笑)


女性の飲酒で大きな問題になりつつあるのが アルコール依存症です

昔は稀でしたが 最近は増加の一途をたどっており
1984年と2003年で比較すると数は倍以上になり
今では依存症全体の約2割を女性が占めると推測されています


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20~30代では 摂食障害や薬物依存などを併発している傾向があり
30代後半 40代では 生活や仕事のストレスが原因となっていることが多い
50~60代以上では 配偶者を亡くしたことや
体の衰えによりお酒に弱くなることが原因となります

女性のアルコール依存症の特徴として
短期間で依存症となる
・患者年代のピークが30代と若い
・摂食障害やうつ、自殺未遂など様々な精神的問題を抱えていることが多い
・配偶者の大量飲酒や家庭内暴力など家庭内環境に大きく影響される
自責感が強い
周りの気づきが遅い
といったことが挙げられます

少量でも飲酒すれば 短期間で元の飲み方に戻ってしまうため 
完全に断酒することが必要ですが 
うまくいかないことも少なくありません

女性のアルコール依存症なんて 
別の世界のことと思われるかもしれませんが
世の中にはそうしたことで苦しまれている方がおられるのも事実です


男性も女性も お酒は節度をもって楽しみたいものです 

 

2015.08.26更新

アルコール性肝障害の患者さんが外来で必ず言われることが

「週に2日は飲まない日 休肝日を設けてください」

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でも どうして休肝日が必要なのでしょう?

ヒトがお酒を飲み終わって寝たあとも 
肝臓は働き続けてアルコールを代謝しています

適量と言われる20gのアルコールを代謝するのに
個人差があるものの 約6時間程度かかります

もっとたくさん飲めば さらに長い時間 肝臓は働くことになります

肝臓はアルコール代謝だけをしているわけではなく
他にもさまざまな重要な代謝・解毒作用をしていますから
できるだけ肝臓を休ませてあげないといけない

だから休肝日を設けてください というのが理由です


デンマークで行われた臨床研究は
お酒をほとんど毎日飲む人は 週に2~4回飲む人に比べ
アルコール性肝障害のリスクが3.7倍に上昇することが明らかにしましたが

このデータも 週に2日以上の休肝日が必要なことを示唆しています

また日本の多量飲酒者では
1週間で飲むアルコール量は同じでも
休肝日がないヒトは 2日以上あるヒトと比べて 
総死亡リスクが1.5倍以上上昇することが示されています

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こうしたデータを踏まえ 日本のアルコール健康医学協会は

*お酒を飲むと肝臓には中性脂肪が蓄積され 
 胃や腸といった消化管の粘膜も荒れてくるので
 これら臓器の修復のため 週に2日程度の休肝日を作ることが必要
*この際に気をつけたいのが
 週5日続けて飲酒して2日連続で休むのではなく
 2~3日飲んで1日休む習慣をつくること
*休肝日を作ることは アルコール依存症を防ぐことにつながる

とコメントしています

アルコール依存症を視野に入れて
そのために体内のアルコールを完全に代謝しきる ゼロにする 
という目的からは 2日連続して飲まない方が良いのですが

単純に肝臓を休ませる という意味合いからは 
2~3日飲んで1日休む習慣をつくることが有用になります



と ここまで週2日休肝日必要説の解説をしてきましたが
実は休肝日を声高にプロパガンダする本当の理由は

1日の飲酒量が適正飲酒量を越えて毎日飲酒している人の
総アルコール摂取量を抑制させること なのです

適量飲酒を守れない人に 1日あたりの飲酒量をセーブさせるのは難しいから
それなら飲む日数を減らしましょう 

という趣旨です


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上のグラフで示されているように
1日飲酒量が40gの肝硬変リスク飲酒量を越えなければ(1週間280g程度)
休肝日があってもなくても死亡リスクは変わらないけれど

1日飲酒量が40gを越えていると(1週間280g以上)
休肝日の効用が認められます


ということで 1日飲酒量が40g以内の人は 
休肝日を設けなくても問題にならない可能性もあります

逆に 休肝日を設けていても
飲む日に大量飲酒したら意味がない ということで

ご自分が1週間にどれくらいのアルコール量を摂取されているか?
まずはその点をチェックされることが大切です


休肝日の目論見は アルコールの総摂取量を減らすこと!

この秘められた趣旨を どうぞご理解ください!(笑)

 

2015.08.25更新

お酒は適量なら健康に良いですが 
アルコールを代謝するのは肝臓ですから 
過度の飲酒はアルコール性肝障害を引き起こします

健康診断でγGTP値が、、、という方もたくさんおられるでしょう

既に解説したように 
アルコール性肝障害は 肝硬変や肝がんに進展し得る怖い病気です

欧米の研究では 
1日に飲むアルコール量80g未満をコントロールとすると

80~160g飲む人は 約5倍
160g以上飲む人は 約25倍

肝硬変になるリスクが上昇することが明らかにされています

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ちなみに日本では
1日平均150g以上のアルコールを飲む人を大酒家と呼び
全国で240万人がこの範疇に入ると推計されています

1日150gのアルコールは
日本酒5合 ビール大びん5本 ウイスキーダブル5杯を上回る量です

結構 大酒飲みの方はおられるのですね!
もちろん こうした方々は肝硬変になるリスクがとても高い!


ということで
お酒を飲み過ぎると確実に肝硬変になりやすくなるわけですが

では どれくらいの量のお酒を飲むと
肝硬変になってしまうのでしょう?

欧米では上記の研究結果をもとに
肝硬変にならないですむ 1日の飲酒量の上限 を 
アルコール 30g 程度と見積もっています

日本でも1日 40g 程度とされています

先回ご紹介した節度ある飲酒量・1日20g」倍量

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日本酒2合 ビール中瓶2本 ワイン2/3本 ウイスキーダブル2杯 

この量を越えると 危険です


但し 肝臓のアルコール分解能力は体重に比例するので
女性など体が小さい場合はより少なめになります

徹底して長生きしたいなら 1日20g に留めておくし
アルコールを楽しみたい方でも 1日40g に留めておく

皆さん 大丈夫ですか~?



また「積算飲酒量」という概念も 業界では重視されています

一生涯で肝臓がどれだけアルコールを処理したか
その量によって肝硬変への進展のリスクを推し量ろうというコンセプトです

まず1日あたりの純アルコール摂取量(グラム)を計算します

計算式は
「飲んだお酒の量(ml)」x「そのアルコール濃度(%)」x 0.8

たとえば 1日にビールのロング缶を1本飲むと
500ml x 0.05(5%) x 0.8 = 20グラムの純アルコールを
摂取したことになります

ロング缶2本を毎日欠かさず1年間飲み続けると
20グラムx 2 x 365日= 14600グラム= 14.6Kg
の純アルコールを摂取しています

積算飲酒量が 500Kg を越えると
肝硬変になるリスクが高いと言われています

*ロング缶2本を毎日だと 34年間
*ワインボトル1/3本を毎日だと 約50年間
*日本酒3合を毎日だと 約20年間 

で危険領域です

再度 皆さん 大丈夫ですか~?(笑)

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書き手とこれまでにご縁があった患者さんのなかには
積算飲酒量が1トンを越えているツワモノが何人かおられました

左利きの皆さんは 一度ご自分の積算飲酒量を計算されてみて
肝臓がつらい思いをしなくてすむように 
節度ある飲酒を心掛けてください

 

2015.08.20更新

前回ご説明した Jカーブ

このカーブの底 右上がりが始まるポイント
つまり これ以上飲むと健康に良くないですよ! という1日飲酒量は 
いったいどれくらいでしょう?

大切なことなので 再度確認します!

日本の疫学研究では
男性は1日に純アルコール約20g程度の飲酒する人の死亡率が最も低い
 (純アルコール20gは 日本酒1合に相当します)
女性では1日9gまでが最も死亡率が低い
ことが明らかにされており
(下のグラフでご確認ください)

諸外国でも女性を含め近似した研究結果が報告されています

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このグラフでもうひとつ注意していただきたいのは
同じ飲酒量でも 男性に比べると女性の方が死亡リスクが高いことです
この点については 後日 稿を改めて解説します

さて グラフが示すように
1日アルコール量が20gから増加するに従い 
死亡率が上昇していきます

つまりJカーブの底は 1日アルコール量 20g です

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この量は
*日本酒1合 180ml
*ビール中瓶1本 500ml
*ワイン1/3本 グラス120mlとして約2杯
*ウイスキーの水割りシングル2杯
に相当します
(純アルコール量の計算法はこちらをご覧ください

20g2

そこで「健康日本21」には
通常のアルコール代謝能を有する日本人の「節度ある適度な飲酒量」

*1日平均純アルコール約20g程度
女性は男性よりも少ない10g程度が適当
*少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い人では 
 通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当
*65歳以上の高齢者においてはより少量の飲酒が適当
*アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である
*飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない

と定義しています


さて 皆さん いかがですか?

書き手は 若い頃は
「節度ある適度な飲酒量」を越えることも多々ありましたが
さすがに最近は 節度ある飲酒の実践を心掛けています(苦笑)


 

2015.08.19更新

適度な飲酒は健康に良いと言われています

実際にアルコールには
悪玉コレステロールのLDLを減らし 善玉のHDLを増やす作用があり
脳梗塞や心筋梗塞を起こす血液凝固を抑える作用もあります


また「Jカーブ」と呼ばれる現象もあります

横軸に飲酒量 縦軸に病気にかかるリスクをとりグラフを書くと
Jカーブを示す病気がいくつかあります

つまり 少量飲酒者の発病リスクは非飲酒者に比べてむしろ低い
(但し飲酒量が増えればリスクが高くなる)

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総死亡数・虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病などでJカーブが認められ
飲酒の健康面での利点とされています

お酒が「百薬の長」と呼ばれる所以です


日本の疫学研究でも がん 心血管疾患 総死亡数
Jカーブが見られることが明らかにされています

総死亡でみると 男女とも1日平均23g未満で最もリスクが低いことから
「健康日本21」では
「節度ある適度な飲酒量」=「純アルコールで1日平均20g程度」
と定められました

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しかし あくまでJカーブであることを 忘れてはいけません

Jカーブということは 
飲酒量が適量を超えれば 途端に死亡率が高くなるということです
飲酒量が増えればリスクが高くなるのです

アルコールの「百薬の長」の効果を期待するなら 
あくまで「適量」でなければいけない

その適量 1日20gのアルコール量に相当するのは 

ビールなら中瓶1本 清酒なら1合 
ウイスキーならダブルで1杯 ワインならグラス2杯

20g


ここを抑えておかないと 
左利きの自分勝手な言い訳になってしまいます(苦笑)

次回は この「適量」についてもう少し詳しく解説します



2015.08.18更新

アルコールと肝臓の関係の解説シリーズを始めます

いよいよ”左利き”の本領発揮です?(苦笑)

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学会が定義するアルコール性肝障害は 以下の基準を満たす場合です

常習飲酒家(日本酒3合以上/日)または大酒家(日本酒5合以上/日)
 5年以上継続していて(女性はその2/3程度)
*4週間の禁酒によりGOT GPTが80IU/L以下になる
(禁酒開始前の値が100IU/L以下の場合は正常値になる)
*次のうち少なくともひとつが陽性
・4週間の禁酒により 
 γ-GTPが禁酒前値の40%以下 または正常値の1.5倍以下になる
・禁酒により肝の大きさが著明に縮小する

かなりの量のお酒を長期間飲んでいて 肝機能検査値が上昇して
酒をやめることにより検査値が改善する場合 
ということです

ただし遺伝的要素も強く 
同じように飲酒を続けていても肝機能の悪化を認めない方も多くいます

大丈夫ですか?  
皆さんの飲酒習慣は診断基準に該当しませんか?

5年以上飲んでいるけれど そんなに沢山は飲んでいないから大丈夫
と安心されている方もおられるかもしれませんが 
安心するのはまだ早い!

この基準は「アルコール性肝障害」の基準であって
飲酒による肝臓へのダメージは 
もっと早期に脂肪肝という形ででてきます

そして飲酒を継続していると 
脂肪肝から肝障害 肝硬変へと進展していくことがある

ですから 肝障害が出てきたら もうやばいのです

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アルコール性肝障害の進展様式は こんな具合です

<アルコール性脂肪肝>

飲酒を続けると最初におこる肝障害が脂肪肝です
アルコールにより 肝臓での中性脂肪の合成が高まり 
肝内に脂肪が蓄積します 

自覚症状がないので 
3合以上の飲酒をついつい続けていると 
20%はアルコール性肝障害に進展しますが

お酒をやめると自然に改善します

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スライド右に示すように 肝内に脂肪(白い空胞)が溜まってきます


<アルコール性肝炎>

普段からの飲酒量が多い人 既にアルコール性脂肪肝の人が 
飲酒量が急に増したときなどにおこります

急性肝炎のように倦怠感や食欲不振などの自覚障害があらわれ
肝機能検査値が著しく上昇し 入院加療が必要なこともありますが

お酒をやめることで徐々に改善していきます


<アルコール性肝線維症からアルコール性肝硬変へ>

アルコール性肝炎を起こしたあとも大量飲酒を継続していると
肝細胞が壊れる状況が繰り返えされ 
肝細胞が壊れたあとは線維に置き換えられます

やがて線維が蓄積してくるとアルコール性肝線維症になり
一部の人はその状態から肝硬変に進展してしまいます

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スライド中央を上下に貫いている淡いピンクの部分が 
壊れた肝細胞に置き換わった線維の部分です

こうした線維の束が肝内のあちこちに蓄積すると
肝内の血流障害が生じて 肝細胞が正常な機能を果たすことができなくなります

そのため アルコール性肝線維症の段階になると 
お酒をやめても なかなか改善しなくなってしまいます

ですから そうなる前 
アルコール性脂肪肝の段階で飲酒を控えていただくことが肝心です
そうすればもとの健康な肝臓の状態に戻ることができます


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上図に示すように大量飲酒が継続すると 
かなり高い確率で
脂肪肝→肝炎→肝硬変と進展してしまいます

そして最悪の場合 肝硬変から肝細胞がんが起こってしまうのです


書き手はこれまでに 
お酒がやめられずに肝硬変になられてしまい
腹水がたまったり 食道に静脈瘤ができて 
日常生活に大きな障害が生じたり

肝不全(肝臓が機能しなくなった状態)や肝がんで
厳しい結末を迎えられた患者さんと何人もご縁を持ち
残念な思いをしてきました


アルコール肝障害を治すのは簡単です
ウイルス性肝炎のように インターフェロンも高い飲み薬も必要ありません

お酒をやめればいいのです

それが難しいのはわかっていますが
それでも お酒をやめるしかないのです


少し暗い気持ちになるようなことを書いてしまい恐縮ですが

まだアルコール性脂肪肝や軽度のアルコール性肝炎の状態の方は
それ以上進展することがないように 
飲酒量を減らすか 減らせないならやめる

思い当たる節のある方は どうかよろしくお願いします



2015.07.15更新

これまで説明してきたように
お酒を飲んで太るか太らないかは
アルコールを飲んだ時に一緒に食べるつまみの内容や
どれだけ食べるかに影響されているようですが

では 食欲というものは どのように制御されているのでしょう?

お腹が減った もっと食べたい という食欲の亢進
お腹がいっぱい もう食べたくない という食欲の抑制

主に脳の視床下部という部位でコントロールされています

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視床下部には
「食べたい指令」を出す摂食中枢「お腹いっぱい指令」を出す満腹中枢があります

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また視床下部より下 首の高さにある延髄孤束核には
胃 消化管 肝臓など体のさまざまな部位からの情報が届く部位があり
そこでまとめられた情報が視床下部や大脳皮質に伝えられます

このように視床下部体内の消化やエネルギー状態に関する情報を得て
食べたいかお腹がいっぱいかを決定します

また視床下部には体内時計(覚えてますか?)や体温などの中枢もあり
それらからの情報も食欲を影響を与えています


具体的に 体内のどのような部位からどのような情報が
延髄や視床下部に上がっていくかというと

・食べ物が入ってきて胃が物理的に膨らみましたよ という胃の伸展刺激
・胃や腸に食物が入って分泌される消化管ホルモンを介した食べ物の消化状況
・肝臓からはグルコースセンサーなどを介した エネルギーの代謝や蓄積に関する情報
・脂肪細胞が産生する種々のアデイポカイン
・食物から消化された糖分(血糖値)や脂質(脂肪酸)などの栄養素そのものによる情報
・血糖値に反応して膵臓から分泌されるインスリンも重要な情報です

こうした消化状態や代謝された栄養素の情報が相まって 食欲が規定されます

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一方 視床下部には より上位の大脳皮質や大脳辺縁系からも情報が降りてきます
・大脳皮質から 視覚 嗅覚 味覚といった食欲に影響する情報や 
 食後の満足感や快感が伝わりますし
・大脳辺縁系からは 食欲に影響する記憶や情動が伝わります
こうした五感や記憶などの抽象的な情報も 食欲に大きく影響します

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それぞれの情報は「食欲制御物質」と呼ばれるホルモンや液性因子に変換されて伝えられます

食欲促進系因子
・消化管で分泌されるグレリン ガラニン 交感神経で分泌されるノルアドレナリン
・視床下部に存在するオレキシン オピオイド 下垂体に存在するメラニン凝集ホルモン(MCH)
・副腎皮質ホルモンのグルココルチコイド など

食欲抑制系因子
・脂肪細胞から分泌されるレプチン
・消化管から分泌されるインクレチン(GLP-1) コレシストキニン PYY
・膵臓から分泌されるインスリン
・視床下部に存在するオキシトシン セロトニン ヒスタミン
・女性ホルモンのエストロゲン など

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聞いたことがあるものもあれば 初めて聞くものもあるでしょうが
こうした物質的 精神的なさまざまな情報が視床下部の食欲制御中枢に集結して
食べたいか お腹いっぱいかが決まるのです

興味深いのは 食欲促進系因子よりも抑制系因子の方が数が多いこと
ヒトはもともと食いしん坊なので 食欲を抑制する仕組みの方がより一層厳密なのかもしれません?(笑)

では アルコールを飲むことが これらの食欲制御物質にどのような影響を与えるか見てみると

飲酒により
食欲促進因子のグレリン ガラニン オピオイドの分泌が促進され
食欲抑制因子のレプチン インクレチンの分泌は抑制される

つまり お酒を飲むと 食欲のアクセルが踏まれ ブレーキが壊れてしまう というわけで

こうした機序により お酒を飲むと食欲が増してくるわけです

さらにガラニンやグレリンは さらにアルコールを飲みたくさせる作用があるので
飲む→食べる→飲む→食べる→・・・・ という悪循環が果てしなく進んでしまいます

しかも食べたら確実に太る夜遅くの時間帯に!

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どうやら お酒を飲むと太る理由がかなりはっきりしてきたようですね

しらふだと こうした状況は恐ろしいと思えるのですが 飲んでるとねえ、、、(苦笑)

これを読みながらうなずかれている患者さんたちの顔が目に浮かびます

では今日の一句を

飲んだら食うな 食うなら低カロリーつまみ

字余り お粗末さまでした(苦笑)

2015.07.14更新

ホントにお酒を飲んでも太らないの?

前回の与太話では なんだか適当に丸め込まれた気がなきにしもあらずだけれど
太るのか太らないのか いったいどっちがホントなの?

こうした切実な疑問に答えるために 何千人~何万人を対象にした調査研究が世界各地で行われています
皆さん 知りたいことは同じですね!

そして 今のところ得られているコンセンサスは 「アルコールは肥満の危険性を増大させない」

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メタボ傾向の左利きの皆さん ホッとされましたか?(笑)


実際にさまざまなことが検討されていて 興味深いデータが数多くあります

特にアルコールの飲み方
1日にどれだけの量を飲むと太るか? 1週間に何回飲むと太るか?
といった視点からの研究が 興味深い事実を教えてくれます

まず1日の飲酒量
大量(1日4ドリンク以上)に飲むと肥満になりやすいけれど
少量から中等量(1日1~3ドリンク)なら むしろ肥満抑制効果が期待できる!
この傾向は特に女性で強いそうです

1週間の飲酒回数
回数が多い方が太りにくく むしろ回数が少ない方が肥満になりやすい!

しかもなんと不思議なことに
1日の飲酒量が同じ場合 1週間の飲酒回数が1回より頻回の方が太らない

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上の棒グラフは 縦軸は肥満の程度(BMI) 横軸は1週間の飲酒回数になっていて
(左端のQ1は少ない 右端のQ5は多い)
黒い棒は1日の飲酒量が少ない(1ドリンク) 白い棒は中程度(2ドリンク) 横線の棒は多い(3ドリンク)

ご覧になってお解りのように Q1からQ5にむけてグラフの高さは右肩下がりですから
1日の飲酒量が多くても少なくても 1週間の飲酒回数が少ない方が太りやすい

ホントなの?


そして 多くのデータをまとめて得られた結論は

いちばん太りにくいのは 頻回に少量の飲酒をする人

いちばん太りやすいのは
飲酒機会は不定期だけれど 一度の飲酒量が多い人
うさ晴らし的な飲み方をする人


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皆さん びっくりされていますか?

書き手はこれらの文献を読んでかなりびっくりしました!


でも そういえば、、と思う節もあります
書き手は一時期 平日は飲まずに週末だけ飲んでいたことがあり
今思い返すと 確かにそのような飲酒パターンをしていたときは
体重が増えてしまい驚いた記憶があります
平日は我慢してたのに!(苦笑)

それに 知人に毎日4ドリンク以上コンスタントに飲んでいる人がいますが 彼はいちども太ったことがない

で さらに詳細に思い出すと
週末だけ飲んでいたときはたくさん飲んで しかもかなり食べていた
件の知人は毎日飲むけれど 飲むときにあまりたくさん食べない

うーん、、、

こうしたデータを解釈するのは難しいです

はっきりと言えることは
飲んだアルコール総量が肥満と関連しているわけではないということ

では どうして飲む頻度が少ない人の方が太るのか?

htn

自分の体験からも 論文の考察でも
少量をコンスタントに飲む人と大量を不定期に飲む人では
飲むときのつまみの食べ方が異なり
それが体重増加に影響を及ぼしている可能性が推測されます

アルコールは食欲増進作用がありますし
飲んだときは脂の多いものや味付けが濃いものを食べたくなる

むちゃ飲みするときは大抵夜遅くまで飲むので 夜遅くに脂ものを食べることになる
そういう食べ方は 概日リズムの話題で解説したように 確実に太る

ましてや前回説明したように
アルコール代謝が優先されて糖質や脂質の代謝は後回しにされるので
寝ている間に糖質や脂質が代謝され そのほとんど全てが脂肪として蓄積されてしまう

awg

お酒だけ飲んで我慢できれば良いけれど
お酒と一緒に食べるつまみの内容 食べる時間に 肥満との関連がある可能性が大きい

もしかしたら 一度に大量飲酒する人と毎日少量の飲酒をする人では
一緒に食べるつまみの内容や 食べる時間に差異があるのではないか?

どうも飲酒時の食べ方に 太る原因が隠れていそうです

tsumami

ちょっとおまけですが こんな興味深いデータもありました

ワインを飲む人は ビールや蒸留酒を飲む人より 栄養価が低いものを適切な時間に食べている
だからワイン愛好家は太らないけれど ビール・蒸留酒愛好家は太りやすい

また以前に解説した睡眠との関連では
睡眠時間が6時間以下の人は アルコール過飲になりやすく 食事パターンが乱れやすく その結果太りやすい

仕事で夜遅く家に帰って 食事を始めたらついついお酒を飲み始めてしまい
そのまま遅くまで飲み食いしてしまい 寝るのが遅くなり睡眠時間が短くなってしまう

ありがちな生活パターンですね
当院の患者さんでも こうした食習慣・飲酒習慣の方は少なくありません

皆さんもご自分の飲酒パターン・食事パターンを いちど冷静に振り返ってみませんか?



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