左利き肝臓専門医ブログ

2016.11.16更新

ヒトの体にとって エネルギーを得ることがいちばん大切ですから

摂取した栄養素が足りないときや
激しい運動で急にエネルギーを使った時などは
体内の成分からエネルギーを得るため

逆に
 
過剰な栄養素を摂取したときは
体内にエネルギーを備蓄するため

糖質 脂質 タンパク質は お互いの代謝間で クロストークします


三大栄養素の解説を始めたばかりで
それぞれの栄養素に関する知識もないのに

いきなり各栄養素のクロストークなんて言われて
面食らうかもしれませんが

試験管内では 糖質 脂質 タンパク質は別々に検討できますが

ヒトの体内では 各栄養素が複雑にクロストークして
エネルギーを得たり 溜めこんだりしているわけで


もちろん最初は
個々の栄養素について詳しく学ばねばなりませんが

体内で起こっている現象を理解しようとすると
そのように縦糸方向の知識だけでは 全体像がつかめなくなります

ですから 横糸方向の知識
各栄養素のクロストークについて学ぶことが重要です


まず そうした事実を認識していただいてから 
個々の栄養素の説明をした方が良いと思い
敢えて最初に クロストークの話をすることにしました



さて 食物に含まれる糖質 脂質 タンパク質は

それぞれ胃や腸で分解され

糖質は グルコースなどの単糖類
脂質は 脂肪酸グリセロール
タンパク質は アミノ酸

として吸収されます


crosstalk1


このそれぞれが 血流にのって体内を移動し
各栄養素が体内で代謝・合成される際の基本単位となります


で クロストークですが


@糖は エネルギーになり 脂質にもなる

ミトコンドリアで グルコースから 
解糖系TCA回路電子伝達系の経路で エネルギー(ATP)が作られます

余ったグルコースはグリコーゲンに変換され 肝臓筋肉に蓄えられます


crosstalk2


栄養過剰で高血糖になり グリコーゲンの貯蔵容量がオーバーすると

過剰なグルコースは脂肪細胞に取り込まれ
アセチルCoA→マロニルCoA を経て脂肪酸に変換され
中性脂肪として蓄えられます


crosstalk3


こうして 過剰な糖質は中性脂肪になり 肥満が誘導されます


crosstalk4




@脂質は エネルギーになるが 糖にならない

中性脂肪は 分解されて脂肪酸になり

ミトコンドリアに入り β酸化という過程によりアセチルCoAに変換され
TCA回路→電子伝達系の経路で ATPが作られます

(下図右のオレンジ色の経路)

crosstalk5


運動などでエネルギーが使われて グリコーゲンが枯渇してくると

脂肪組織の中性脂肪が分解されて脂肪酸になり 
エネルギー源として使われます

しかし 脂肪酸がグルコースに変換されることはありません


@タンパク質は 糖にも脂質にもなる

タンパク質がエネルギーとして利用される頻度は多くありませんが
運動時はエネルギーの10%が タンパク質・アミノ酸から供給されます

その場合 αアミノ基が取り除かれ脱アミノ化されたアミノ酸が
(下図で赤・青のアルファベットで示されたもの)

TCA回路の中間代謝物(下図で緑文字で示されたもの)に変換され
続く電子伝達系でATPが作られます

crosstalk6


また エネルギーが欠乏しグリコーゲンが使い果たされると

グルコースに変換され得るアミノ酸(糖原性アミノ酸)が
脱アミノ化された後に TCA回路の中間代謝物の
ピルビン酸 アセチルCoA αケトグルタル酸などに変換され

TCA回路をまわり 解糖系をさかのぼって グルコースが作られます
(下図で 中央の列を下がり 左の列を上がる経路)


crosstalk7


この現象を 糖新生と言います


一方 

脂質に変換され得るアミノ酸(ケト原性アミノ酸)は
脱アミノ化された後に アセチルCoAに変換され 
脂質代謝経路をさかのぼって 脂質(脂肪酸)に転換されます


crosstalk8




@アミノ酸は TCA回路の中間代謝体から作られる

TCA回路の中間代謝体のαケトグルタル酸にアミノ基が転移されると 
グルタミン酸が合成され

グルタミン酸のアミノ基の 他のTCA回路中間代謝体への結合により 
種々のアミノ酸ができます

たとえば 
オキザロ酢酸にアミノ基がつくと アスパラギン酸になり
ピルビン酸にアミノ基がつくと アラニンになります


crosstalk9




このように糖質 脂質 タンパク質は
それぞれがエネルギー源として用いられるだけでなく

*エネルギー不足のときは タンパク質から糖質が作られますし

*エネルギー過剰のときは 糖質から脂質が作らます

*タンパク質は脂質の材料にもなり得ます


つまり 糖質 脂質 タンパク質の代謝はクロストークしていて

体の状況に応じて 

*糖質から 脂質へ 

*タンパク質から 糖質や脂質へ

と 臨機応変に互いに変換しているわけです

crosstalk10


そして このクロストークが起きる場がTCA回路です

TCA回路は 既に説明したように
10種類の反応の連鎖からなる循環型サークル反応ですが

各反応でできる中間代謝体が
糖質 脂質 アミノ酸の代謝に繋がります

まさに 栄養素のクロストークの場といえます

crosstalk11


TCA回路は 
栄養素の分解物を材料にしてエネルギーを得る過程
という印象が強いですが

上述した 糖新生 アミノ酸合成 脂質合成にみられるように

グルコースや脂肪酸やアミノ酸から 
TCA回路の中間代謝物を経由して
糖質 脂質 タンパク質が合成される

TCA回路には そうした合成に貢献する側面もあります


書き手も医学生のときは 

TCA回路 面倒くさい! という印象でしたし

ゲノム全盛時代で こうした生化学反応は古臭い 
とも思っていましたが

あらためて勉強し直してみて
よくこんな複雑な回路が解明できたものだと ちょっと感嘆しています


勉強してると 何度も思うことですが
ホントにヒトの体は 複雑で精巧にできているものです


さて 今日の話は こんがらがっていてよくわからなかった!

と 不満に思われている読み手の方も多いかもしれませんが

次回から 各栄養素について詳しく説明しますので
それらを読み終わってから 
もう一度 今日の話に戻ってきてください

そうすると なんとなく解ったような気分になるはず です?(笑)



2016.11.15更新

今日から 栄養素 についての解説を始めます


ミトコンドリアの解説で 
栄養素からエネルギー(ATP)が作られる話をしたように

食物から得られる栄養素は エネルギーにもなりますが
過剰に摂ると肥満糖尿病の原因にもなります


そこで これからしばらくの間

*まず栄養素について詳しく勉強し
*三大栄養素のひとつの脂質が病態に関与する
 重要な生活習慣病である脂質異常症について学び
*最後に さまざまなダイエットの解説をしたいと思います

最終目標は 病気やダイエットに関する知識を得ることですが
そのためには 栄養素の基礎を学ばなければなりません

少し面倒くさくて厄介かもしれませんが
なるべく解り易く解説しますので お付き合いください 



さて 医学部では 栄養に関する勉強をする機会は意外に少ないのです

書き手が医学生だった頃は
基礎医学の生化学でちょっと勉強した程度です

ですから
糖尿病や脂質異常症の患者さんに 納得していただける説明をするためにも
良い機会なので 最新の栄養学のテキストを何冊か購入して
久し振りに勉強しましたよ(笑)

3daieiyoso1


で ヒトが食物を食べて体内に摂取する三大栄養素といえば

糖質 脂質 タンパク質 です


3daieiyoso2



まず これらの三大栄養素が
どのような姿かたちをしているかを 見ていきましょう


糖質と脂質は
炭素(C)水素(H)酸素(O)からできています

@糖質は 
ご覧のように 炭素が環状構造を示し 各炭素に水素や酸素が結合しています


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脂質は 
炭素が直線状に鎖のようにつながり 各炭素に水素や酸素が結合しています  

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脂質は糖質に比べて 水素の含有量が多いのが特徴です

電子伝達系でのATP産生の解説でお示ししたように
ATP産生には水素による電子伝達が重要ですから

水素分子が多いとエネルギーがたくさん作れる

同じ量の糖質に比べて 脂質のエネルギー産生量が多いのは
こうした理由に依ります


ちなみに各栄養素1gから得られるエネルギー量

*糖質は    4 kcal 
*脂質は    9 kcal 
*タンパク質は 4 kcal 

です

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@タンパク質の姿は 糖質や脂質と少し異なり
炭素 水素 酸素に加え 窒素(N)を含有しているのが特徴です

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こうした三大栄養素それぞれの横顔を 簡単に紹介します



<糖質>

糖質の主な働きは エネルギー源になること です

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安静時のエネルギー源は
脂肪50% 糖質40% タンパク質10%ですが

運動時は ほとんど糖質がエネルギー源になります


糖質は
グリコーゲンに変換され エネルギー源として備蓄されますが
しかしその量は少なく すぐに底をついてしまう

せいぜい12~16時間の絶食に耐えられる程度の分量で
それでは 1回のフルマラソンも走れません

脂質のエネルギー貯蔵量が
20回のフルマラソン分に相当するのとは 大違いです



<脂質>

脂質は糖質に比べ さまざまな働きを有していて 種類も多い


*中性脂肪は 糖質と同様 エネルギー源になります

*コレステロールリン脂質は 細胞をおおう細胞膜を形成します

*コレステロールは ホルモンや胆汁酸の原料でもあります


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脂肪酸
は エネルギー源になりますが
エネルギー源以外にも さまざまな働きをします

たとえば

細胞膜に存在する脂肪酸は 
エイコサノイドという生理活性物質の原料になりますし

血中にある脂肪酸は 
さまざまな機能を発揮する分子として働いていることが
最近の研究で明らかになってきました

また 必須脂肪酸は 成長や免疫に関与に欠かせない重要な因子です


このように 糖質と比較すると 
脂質は多彩な顔を有していることがわかります

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それだけに 
きちんと理解して実態を把握するのが ちょっと困難です(笑)



<タンパク質>


タンパク質は ヒトの体の12~15%を占め
特に骨格筋に多く存在し 全タンパク質の65%が骨格筋にあります

ですから 
タンパク質というと プロテイン・筋肉 というイメージが強いですが
筋肉として体を動かす以外に もっと重要な働きをしています

タンパク質は 
さまざまな機能分子として存在し
生体のあらゆる機能の発現や調節に関わっているのです

機能分子としてのタンパク質の種類は 数万種に及ぶと言われています

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その代表例が 酵素 で

栄養素の吸収 分解 合成をはじめ 
生体内の種々の化学反応を調節する大変重要な働きをしています

生体内の大事な機能は 
ほとんどタンパク質によって行われているといっても
過言ではないでしょう



まとめると

@糖質は 主にエネルギー源として使われ

@脂質は エネルギー源として使われますが
     細胞膜やホルモンの材料としても利用されるし
     脂肪酸は さまざまな機能を有することもわかってきた

@タンパク質は 主に体の機能をつかさどる分子の材料になる

と言えます

3dai12


三大栄養素の大まかなイメージを得ることができたでしょうか?

こうした それぞれ特徴を有する三大栄養素について 
詳しく説明していきます



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