左利き肝臓専門医ブログ

2018.05.24更新

アルコール依存症の治療は 実際にどのようにして行われるのでしょう?

治療の目標は
断酒(今後 一生 一滴も飲まない)を続け 
その状態を維持することで

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治癒(適度な飲酒ができるようになること)は あり得ない

と 考えられてきました


<従来の治療>

治療は外来でも可能ですが
日本では専門施設への入院治療が主体になります

入院治療は 月単位で

*解毒治療
*リハビリ治療
*退院後のアフターケア

の3段階で行われます

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心身の回復を図りながら

*病気に関する教育 と

*認知行動療法
 どうしてお酒を飲むに至ったか 飲まないためにどうすればよいか
 を一緒に考えること

を行います


しかし 治療1年後の断酒率は 30%程度に過ぎないのが現状です

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現実は厳しいですね、、、


そして 多くの患者さんは
専門施設への入院を 強固に拒まれます

ご自分が そうした施設で治療しなければならない状態であることを
認めたくないのでしょう

しかし そこを認めないと 治療が始まらないのです


<患者会>

また 患者会 という組織があり

アルコール依存症を克服された方々が中心となり
患者さん同士で 断酒が続けられるように支え合います

日本各地で組織されていて 代表的なのが 

断酒会
AA(Alcoholic Anonymous)

というグループです



<新たな治療>

さて 最近 新しいタイプのアルコール依存症の治療薬が出てきて
治療の様子が 少し変わってきました


@抗酒薬

従来からある薬は 抗酒薬 と呼ばれるタイプで

この薬を飲んでいると
お酒を飲むと 動悸 吐き気 頭痛 顔面紅潮 呼吸困難
などが生じるので 結果的に飲酒を抑制することができます

ノックビン という薬が代表的なものですが

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二日酔い症状の原因となるアセトアルデヒドを分解する
ALDHという酵素の働きを阻害するので

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薬の効果がある間に飲酒すると
ひどく悪酔いし 耐え難い悪心 嘔吐を自覚して
その恐怖感により 飲酒行動が制限されます

お酒の誘惑から守ってくれるお守りとして
毎日 起床時に服用するケースが多いようです


@飲酒抑制薬

一方 最近新しく出てきた薬は 飲酒抑制薬 というタイプで

脳に作用して飲酒効果を抑え
飲みたい という気持ちそのものを軽減させる薬です


抗酒剤に比べると 症状が穏やかで 高齢者にも投与しやすく
1日3回 食後に服用します

断酒率を10%程度向上させるとされ
断酒がある程度できている人に効果が出やすいようですが

現在 既に飲酒している人が服用しても 飲酒量を減らせないようです

あくまで断酒が前提なので
抗酒薬との併用や 他の社会心理的な治療との組合せが望ましく
ただ単に飲んでいれば解決するわけでは ありません


既に発売されているのが レグテクト という薬で

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2018年には ナルメフェン という薬も発売される予定です

ナルメフェンは
飲酒の1~2時間前に服用すると 飲酒時の心地よさを感じなくなるため
飲酒量が抑えられ 断酒にともなう心理不安も抑制できます

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こうした飲酒抑制系の薬剤の登場により
従来の 依存症は断酒 という治療目標が変化し

減酒も治療目標となってきました


アルコール依存症は 早期発見 早期治療が重要

早期から治療に介入できれば
アルコールによる健康や社会的影響が小さく
家族崩壊も未然に防ぐことができます

そういう意味では

軽度の依存症患者を対象にした
飲酒抑制系薬剤による早期介入による減酒
アルコール依存症の新たな治療として 注目されています



<女性のアルコール依存症>

最後に 女性のアルコール依存症 について 解説します

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既に詳しく述べましたが

女性のアルコール依存症は 昔はまれでしたが
年々増加していて 2008年から13年の間にほぼ倍増

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平成25年には14万人で 依存症全体の約1.5割を占めると推測されています

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女性のアルコール依存症には

*短期間で依存症となる

*患者年代のピークが 30代と若い

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*摂食障害 うつ 自殺未遂など
 様々な精神的問題を抱えていることが多い

*配偶者の大量飲酒や家庭内暴力など環境に大きく影響される

*自責感が強い

*周りの気づきが遅い

といった特徴があります


また 以前に説明したように
女性は男性に比べて アルコール性肝硬変になりやすいので
余計に注意が必要です


女性のアルコール依存症の治療には
男性にも増して 周囲の協力が必要なので
周りにそうした方がおられたら 早目に医療機関にご相談ください

 

2018.05.23更新

アルコール依存症 が疑われる兆候には 以下に示すものがあります

*飲酒量が増えた

*飲むスピードが早い

*飲む時間が長く 回復にも時間がかかる

*酒を飲まないと 離脱症状が起きる

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読み手の皆さん 大丈夫ですか?


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うーん ちょっと不安 という方がおられたら
以下のアンケートに答えてみてください

Q1 あなたはアルコール含有飲料を どのくらいの頻度で飲みますか?

・飲まない 0点
・1ヶ月に1度以下 1点
・1ヶ月に2~4度 2点
・1週間に2~3度 3点
・1週間に4度以上 4点


Q2 飲酒するときは 通常 純アルコール換算で
  どのくらいの量を飲みますか?
(アルコール量のドリンク換算については こちらをご覧ください

・1~2ドリンク (10~20g) 0点
・3~4ドリンク (30~40g) 1点
・5~6ドリンク (50~60g) 2点
・7~9ドリンク (70~90g) 3点
・10ドリンク以上 (100g以上) 4点


Q3 1度に純アルコール換算で60g(6ドリンク)以上飲酒することが
  どのくらいの頻度でありますか?

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q4 過去1年間に 飲み始めると止められなかったことが
  どのくらいの頻度でありましたか?

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q5 過去1年間に
  普通だと行えることを 飲酒をしていたためにできなかったことが
  どのくらいの頻度でありましたか

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q6 過去1年間に
  深酒の後 体調を整えるために朝の迎え酒をせねばならなかったことが
  どのくらいの頻度でありましたか?

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q7 過去1年間に 飲酒後 罪悪感や自責の念にかられたことが
  どのくらいの頻度でありましたか?

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q8 過去1年間に 飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことが
  どのくらいの頻度でありましたか?

・ない 0点
・1ヶ月に1度未満 1点
・1ヶ月に1度 2点
・1週間に1度 3点
・毎日あるいはほとんど毎日 4点


Q9 飲酒のために
  あなた自身がけがをしたり 他の誰かにけがを負わせたことがありますか?

・ない 0点
・あるが 過去1年間はなし 2点
・過去1年間にあり 4点 


Q10 肉親や親戚 友人 医師 あるいは他の健康管理に携わる人が

   あなたの飲酒について心配したり
   飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?

・ない 0点
・あるが 過去1年間はなし 2点
・過去1年間にあり 4点


さて いかがでしょう?
合計点数は 何点でしたか?

8点 以上だと 危険な飲酒 と考えられ

15点 以上だと アルコール依存 が疑われます

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大丈夫でしたか?

ちなみに書き手は 5点でセーフでした
学生時代に酔って転んでケガをしたことの2点が大きかった(笑)

大丈夫ではなかった方は 是非 相談しにご来院ください

 

2018.05.22更新

健診などで肝機能異常を指摘され 心配で来院される患者さんは多くおられます

その原因でいちばん多いのは 脂肪肝ですが
アルコール性肝障害も少なくありません


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ついつい 飲んでしまうのですよ

と 正直に告白される方が 意外に多くて


さらに

なんとかして アルコールを止めることができませんかね?

と 相談される患者さんもおられます


実際 世の中には
アルコール依存症で苦しんでおられる患者さんがおられます

多くの読み手の方にとっては 縁遠い世界かもしれませんが
アルコール依存症について解説します

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<アルコール依存症とは?>

ひとことでいうと

大切にしていた家族 仕事 趣味などよりも
飲酒をはるかに優先させる状態 です


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具体的には

*飲酒のコントロールができない

*離脱症状がみられる

*健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら 断酒ができない

などの症状が認められます

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飲酒してはならないような状況でも
強い飲酒欲求(飲酒渇望)に苛まれますし

連続飲酒
つまり 起きている間は チビチビと飲み続けてしまうことになり
それが中核症状となります

この連続飲酒は 離脱症状を防ぐための自己防衛 という側面もあります

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アルコール依存症の患者さんは 国内に約80~100万人おられますが

受診率は10%未満で
実際に治療を受けている方は 4万人に過ぎません

また 予備軍とも言える アルコール多飲者・乱用者は980万人もいます


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日本の成人人口の10%弱が アルコール依存症予備軍で
約1% 100人に1人が アルコール依存症

ちょっとびっくりですね!


さらに 
アルコール依存症を発症するまでの期間は 男性と女性で異なり
男性に比べて女性では 半分程度の短期間で発症するといわれています

つまり 女性の方が依存症になりやすいので 要注意です
(この点については あとで詳しく説明します)


<診断>

アルコール依存症の診断は ICD-10診断ガイドラインに沿って行われます

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過去1年間に 以下の項目のうち3項目以上が
同時に1ヶ月以上続いたか または繰り返し出現した場合は
アルコール依存症と診断されます

*飲酒したいという 強い欲求・渇望・強迫感がある

*飲酒の開始 終了 あるいは飲酒量に関して
 行動をコントロール・抑制することが困難

*禁酒あるいは減酒したときに 離脱症状が出現する

*それまで飲んでいた量では酔えなくなり 徐々に酒量が増える(耐性の増大)

*飲酒にかわる楽しみや興味を無視し 飲酒中心の生活を送り
 飲酒や それからの回復の時間に 1日の大部分の時間を消費してしまう

*明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず 断酒しない できない

皆さん 大丈夫ですか?


<離脱症状>

アルコール依存症に特徴的なのが 離脱症状です

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離脱症状には

*中枢神経がアルコールに依存していることで生じる 身体的な離脱症状

*否認(本人が問題を認めない)や 
 自己中心性(物事を自分の都合のよいように解釈する)
 などの心理的な離脱症状

が認められます

さらに 暴言・暴力 徘徊・行方不明 妄想などの精神症状や
行動異常を伴うこともあります


主な身体的離脱症状としては

@軽〜中等症

*手のふるえ 発汗(とくに寝汗)心悸亢進 高血圧
 嘔気 嘔吐 下痢 体温上昇 さむけ

*睡眠障害(入眠障害 中途覚醒 悪夢)
 不安感 うつ状態 イライラ感 落ち着かない

@重症

*けいれん発作 振戦

*幻聴 幻視 幻覚(天井に虫などが見えるなど)
 見当識障害(自分のいる場所や時間が分からなくなる)

などがあります


手のふるえなどの早期離脱症状は 飲酒を止めて数時間すると出現し

幻視 幻聴 見当識障害などの後期離脱症状は
飲酒を止めて2~3日で出現します

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そして患者さんは 離脱症状による不快感から逃れるために
さらに酒を飲み続けることになってしまうのです


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