左利き肝臓専門医ブログ

2018.05.18更新

ということで このシリーズの最後に

理想的な 朝ごはん 昼ごはん 夕ごはん 

について説明します


まず 3食の量的バランスは
朝がメイン 昼はほどほど 夜は軽め が望ましい

jeg61


これまで説明してきたように

朝食をメインにすると

*生活パターンが朝型になる
*脂質代謝関連遺伝子の発現量が 昼に多くなる
*日中の活動により 摂取したエネルギーが充分に消費される

といったメリットが得られます


逆に 夕食がメインだと

*生活パターンが夜型になる
*食後は寝るだけなのでエネルギーが消費されず
 夜間は脂肪を蓄積する酵素の活性が高いので
 ほとんど脂肪になって貯蔵されてしまう
*日内時計のリズムが遅れてゆき メチャクチャになる

といったデメリットが生じてしまいます


ですから 朝食はしっかり食べて 夕食は軽く

jeg62



朝食の重要さは 前回詳しく説明しましたが
忙しいと ついつい朝食をスキップしてしまいがちです

そうした事情はわかりますが でも 頑張って朝ごはんを食べて欲しい!



また 仕事の都合で 夜遅くにしか食べられない
という方が多いのも事実です

しかも 昼食から夕食までの空腹時間が長くなるので
ついつい夜遅くに バク食い 早食いしてしまう

jeg63


これも これまで説明してきたように
そのような食習慣には 哀しいことに 良いことは何もありません


ですから そうした方の場合は

18時くらいに おにぎりなどの炭水化物系の補食をして
家に帰ったらタンパク質や野菜を中心とした食事をするという
分食が勧められています

jeg65


分食により 昼食から夕食までの長い空腹時間をブレイクできますから
家に帰ってから 空腹ゆえのドカ食い・バク食いをしなくて済みます

jeg64


家に帰ってからの食事で摂るタンパク質は
脂が入ったお肉よりも 枝豆 豆腐などの植物性タンパク質か
EPAやDHAが豊富な魚の方が より良いです



さて 各食事の栄養素ですが

*朝食には 炭水化物 タンパク質

*昼食には 脂質

*夕食には 脂肪の少ないタンパク質

を中心に摂るのが良いようです

jeg66


朝食の炭水化物には
インスリン分泌による体内時計のリセット効果があり
もちろん 1日の活動のエネルギー源になります

同時に摂るタンパク質には
エネルギー代謝を高める働きが期待でき
卵 牛乳 ヨーグルト 納豆など 脂質が少ないものが望ましい


で そうした内容の朝食をしっかり摂っていれば
昼食は 少し羽目を外してもOKです(笑)

脂質の多い食事 ついつい食べたくなりますよね
でも カロリーが高い!

でも 昼食なら 脂質の多い食事を摂っても
午後の活動でカロリーが消費されるので
夕食に脂質を摂るよりも はるかにリスクが少ない

しかも 脂肪を貯めこむ脂質代謝関連酵素は
昼間は夜に比べて発現量が少ないので 余計に好都合です


そして夕食
脂肪の少ないタンパク質を中心に摂るようにして
寝ている間に脂肪として蓄積される炭水化物は なるべく避ける

jeg67



理想の朝食 昼食 夕食 イメージすることができたでしょうか?

上記の内容を参考に さまざまな食材を組み合わせて
ご自分なりの理想のメニューを作られて 日々の食習慣になさってください

 

2018.05.17更新

食事で摂った栄養素の吸収・代謝に日内リズムがあって

食事の内容や 摂った時間によって 日内リズムが変動して
そうした日内リズムの乱れが生じると 
肥満や糖尿病になるリスクがあることを これまで説明してきましたが

だからこそ 
適切な時間帯に 適切な内容の食事を摂ることが
肥満糖尿病の発症予防になりますし

既に発症している方は
そこを改めることにより病気が改善できる可能性があります

jeg50


では 時間栄養学的観点から見た理想の1日の食事とは
どのようなものなのでしょう?

端的に言うと 良い朝食 悪い夜食 ということです


同じ内容のものを食べても 朝だと太らない 夜だと太る
それは 朝と夜では 代謝のされ方が異なるからです


そして 朝食は最も力強く 末梢組織の体内時計をリセットして
理想的な栄養素代謝が行われるような日内リズムをスタートさせる

だから 朝食は とても重要なのです

jeg51



朝起きて 朝日を浴びることで中枢の体内時計をリセットして

それから朝食を食べれば 末梢組織の体内時計も同時にリセットされ
中枢と末梢の体内時計が同期して
栄養素の代謝を含むさまざまな体の機能が  円滑に進むようになります


なぜ 朝食が ブレイクファスト と呼ばれるかというと
前日の夕食との朝食の間の飢餓・絶食時間が長いからで

Break Fast 10時間以上の絶食を経た朝食により
体は朝を実感して 体内時計がリセットされるわけです

jeg52


この日内リズムのリセットが適切に行われないと
仮に栄養摂取量と運動量が適正であっても
肥満 糖尿病が悪化するとされています


ちなみに
朝食による体内時計のリセットにはインスリンが関与しますが

夕食の時間帯よりも朝食の時間帯の方が
インスリンの分泌が良く感受性も高く

一方で
朝から夕方8時頃までに食事をすれば 血糖の上昇が穏やかですが
夜8時以降の遅い時間帯に食事をとると
血糖上昇は高くなりやすいことが示されています


さて 朝食を食べないと

*前日の夕食から次の食事(昼食)迄の絶食時間が長くなりすぎて
 低血糖になるので
 肝臓のグリコーゲン(半日しか持たない)を使い切り
 筋肉を壊して糖新生するため
 筋肉量が減り 基礎代謝量が減ってしまう

*活動エネルギーが低くなり
 朝食べていない人は食べている人と比較して
 エネルギー摂取量は変わらないのに 5倍太っている

*欠食すると次の食事が過食になりがちなので 余計に太る

*数十年後に 肥満 メタボリックシンドロームにかかりやすくなり
 脳卒中の頻度も高くなる

精神活動の低下 学業不振が起こる

*基礎代謝と体温の低下によって 免疫力も弱くなる

といった現象が観察されます

jeg54


これらは時計遺伝子のリズム変調に対する防衛反応で

絶食時間が長いので体が非常事態と勘違いして
全身のエネルギー消費を低く抑えようとするために起こってきます

欠食後の低血糖により食後血糖が急激に増加し
インスリンの過剰分泌が起こり
その結果 脂肪が蓄積されて肥満になるわけです


さらに 食事誘導性熱産生量(DIT)
同じ内容の食事でも 朝食が夜食の4倍も高くなります

食事誘発性熱産生は 適正な体温上昇を促し
体脂肪の燃焼だけでなく免疫力の増進にも関係しますが

基礎代謝と並んで
運動と関係しない 貴重な摂取エネルギー消費現象なので
ダイエットには大事です

そうした点からも 朝食の重要性が示唆されます


ちなみに 最新の研究では
朝食を食べないと 昼⾷後の時計遺伝⼦の発現量が低下し
⾎糖値 インスリン分泌 GLP-1分泌に悪影響が認められることが
明らかにされています



一方 夜遅い食事は 

体内時計を遅らせて
末梢組織の体内時計をグチャグチャにして 日内リズムを狂わせてしまい
肥満や糖尿病の発症を促してしまいます

そして 夜遅くの食事で摂取した栄養素は
筋肉や肝臓グリコーゲンの合成に利用されず ひたすら脂肪合成に使われ
脂肪が蓄積して太る

jeg55


この現象には
昼間に比べて夜間には
BML1などの脂質代謝に関連する酵素の発現が増加することも
深く関連しています

jeg56


また 夜遅く食事をする夜型の人は
脂質 菓子類を好んで食べる傾向があり

特に昼間以上に 夜遅くにピーナツやポテトチップスなどの
高脂肪食をダラダラ食べる

jeg57

そして 翌朝の朝食を食べない

まさに 良い朝食 悪い夜食 というわけです

 

2018.05.16更新

これまで 日内変動・サーカディアンリズムを司る時計遺伝子により
脂質や糖質代謝の日内変動が規定されることを説明してきました

しかし 逆方向の影響

つまり 

食事内容や 食事の時間により
日内変動・サーカディアンリズムが変化を被る現象

もあります


サーカディアンリズム
脳の視交叉上核に存在する体内時計を中枢として規定されますが

肝臓や脂肪組織などの代謝に関わる末梢組織の細胞ひとつひとつにも
体内時計が存在しています

そして 

中枢性の脳の体内時計が 朝の光によってリセットされるのに対し

末梢性の細胞レベルの体内時計は 
光に非依存性の“腹時計”で
光でなく 食事によってリセットされるのです

jeg41


特に 朝食依存性で
朝食は強い食事性同調刺激で 
体内時計リズムの形成に重要な働きを示します


jeg42a



一方 夜食は 体内時計を遅らせる要因になります



では 食事はどのようにして 
細胞レベルでの体内時計のリセットを行うのでしょう?


まず 食事の内容の影響があります

糖質摂取により上昇するインスリン
Per2発現増加 Rev-erbαの発現低下を肝臓で引き起こします

インスリンを強く分泌させる食物は 体内時計を動かせやすく
特に GI値が高く血糖やインスリンが上昇させやすい食事が
体内時計をリセットしやすいことから

高GI食品は朝食に 低GI食品は夕食に摂ると良いとされています


また 消化の良いデンプンは
早い血糖上昇と高いインスリン分泌を引き起こし 体内時計同調効果を高めるため
朝食には一定量の炭水化物の摂取が望ましいとされます

jeg43



さらに 炭水化物とタンパク質の同時摂取は
体内時計同調効果が高いとされます


一方 体に良いとされる不飽和脂肪酸のDHA EPA
G蛋白質共役受容体GPR120を介した
GLP-1上昇によるインスリン作用増強効果により
体内時計同調効果を高めます


逆に 飽和脂肪酸に富んだ高脂肪食を摂ると
脂肪組織等での時計遺伝子の発現が減弱してリズムを狂わせ
肥満 脂肪肝 高インスリン血症 炎症などを誘導します



また カフェインやコーヒーも 体内時計に影響を与え

*体内時計の周期が延長する
*夜の摂取により 肝の時計遺伝子Per2の位相が後退する
*夜のカフェイン摂取は 体内時計を乱す可能性がある
*朝のカフェイン摂取は 抗肥満効果を高める

といった作用が認められています

jeg04



食事の内容だけでなく
食事を摂るタイミングも 体内時計に影響します


絶食時間が長く空いた後の食事は
末梢組織の体内時計のリセット作用がいちばん強く

朝食の時間帯での食事は体内時計を前進させる方向に同調し
夕食にあたる時間帯での食事は 後退させる方向に同調します


体内時計のリセットは 光刺激により中枢がリセットされる朝に
末梢組織も同期して行われるのが良いので

夕食から朝食までの時間がいちばん長くして
朝食後にリセットされるのがベストです


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一方 夕食を遅らせれば遅らせるほど
昼食と夕食の時間が長くなり 夕食と朝食に時間が短くなるので
末梢組織の体内時計は 普段と異なる位相に動いてしまい
リセットが乱れてグチャグチャになってしまいます

ですから 規則正しい時間帯に朝食 昼食 夕食を摂ることが重要で

規則的な食事時間をとれば 食事の量や質に関わらず
正常な日内リズムを刻み 肥満や糖尿病を防げることになります


ということで 

食事の内容や摂取時間による日内リズムの変化と
それにともなう肥満や糖尿病の発症リスクについて解説してきましたが


jeg45


次回は 具体的に どのような時間帯にどのような内容の食事を摂れば
日内リズムを乱さずに健康的な生活を送れるか解説します


2018.05.15更新

時計遺伝子の代謝の日内変動への関与 について説明しましたが

では さまざまな生活習慣病において
時計遺伝子の異常が どのように病態形成に関与しているのでしょう?


<肥満>

肥満者では

内臓脂肪でのBMAL1の機能が低下

単核球のBmal1の発現量が増加

していることが明らかにされています

また マウス肥満モデルでは
肝や脂肪組織の時計遺伝子のmRNA発現リズムの減弱がみられ
この異常は 肥満や代謝異常の発現前から認められます

つまり 結果ではなく原因である可能性がある


jeg31

この原因として エピジェネテイクスの関与が推察されていて

脂肪組織では
時計遺伝子のプロモーター領域のヒストンアセチル化が減少していることが
明らかにされています


いずれにせよ BMAL1の日内変動パターンが乱れると
インスリン分泌 グルコース放出作用が弱まり
血糖値の変動幅が正常時より大きくなって 糖尿病が悪化しますから

肥満者が糖尿病になりやすい原因には
こうした時計遺伝子の異常も関与している可能性があります



<脂質異常症>

既にご説明したように
脂肪を合成する多くの酵素の遺伝子発現は 夜に多いのが特徴です

飢餓を経験してきたご先祖さまは
得られた栄養素を
夜間のエネルギー消費が少ない間に脂肪に蓄えておくという
合理的な代謝システムを身につけ

現代人も そのシステムを引き継いでいるわけです

ですから 夜に食べると太る

何度も繰り返しになりますが
ご先祖さまから受け継いだ体質には 抗えません


で 前回解説したように
時計遺伝子の変異は脂質代謝の異常をもたらします

コレステロール代謝は
コレステロール合成(律速酵素:HMGCoA還元酵素)と
分解(律速酵素:コレステロール7α水酸化酵素CYP7A1
のバランスで決まり

両律速酵素とも その発現に日内リズムがあり
ラットでもヒトでも 夜間に高く発現します


摂食のリズムが崩壊すると
肝臓の細胞の日内リズムが崩されるので

コレステロールの代謝異常が誘導され 血中コレステロール濃度が増加します

また 摂食リズムを崩壊させたラットでは
肝臓から血中への胆汁酸の排泄量が有意に減少しており
胆汁酸の体外への排泄が減少するので
胆汁酸の原料であるコレステロールが 体内にためられるようになります

肝臓中のコレステロールは 血中へVLDLとして移動することになり
VLDLコレステロールが血中で高くなってしまう

さらに
コレステロール異化代謝の律速段階(胆汁酸合成の律速段階)酵素である
CYP7A1の発現のピークが 昼に前進することにより
摂食のタイミングと酵素発現のタイミングがずれ
タイムリーで効率的な代謝が できなくなっています

CYP7A1遺伝子の転写を制御するのは 時計遺伝子DBPで
摂食リズムが崩壊したラットでは
この時計遺伝子の異常が見られました


このように 高コレステロール血症の出現には
摂食リズムの異常 時計遺伝子の働きの異常の双方が
関与すると考えられます


一方 脂質代謝は主に肝臓で行われますが

肝臓の細胞の体内時計は さまざまな栄養素により調節されます

jeg32

高脂肪食摂取は 日内リズムの周期を長くし
脂肪酸分解を促進する薬剤は それを抑えます

特に 糖質 タンパク質が重要で 一部のビタミンも関与しています

jeg34

ですから 食事内容により 肝細胞の体内時計に乱れが生じ

それにより脂質を代謝する酵素群の出現パターンが乱れ
結果として脂質異常症が生じるリスクが想定されます



<糖尿病>

2型糖尿病の患者さんでは 

肝臓や脂肪組織において
インスリンの分泌に関わるBMAL1などの時計遺伝子群
発現量の低下や
規則的なリズムの消失が認められます


jeg33


興味深いことに
そうした現象は症状や病態が出現する以前から認められ

糖尿病になったから起こってきた現象ではなく
発症や進展に関わっている原因である可能性があります


このように 肥満 糖尿病 脂質異常症などの生活習慣病の原因に
時計遺伝子の異常が深く関与していることが 明らかになってきました

食事するタイミング いつ 何を食べるか が
生活習慣病の発症進展の予防に重要なわけを
ご理解いただけるでしょうか?


2018.05.10更新

栄養素の代謝に関わる多くの因子の発現に 日内変動がみられる

ことを  前回説明しましたが

どうしてそのような現象が見られるのでしょう?

それは 時計遺伝子の影響によるのです


日内変動を司るCLOCK BMAL1などの時計遺伝子

さまざまな遺伝子の発現部位に結合し
その発現を制御する転写因子として働くので

転写 翻訳 シグナル伝達など 多様な機能の発現に関わりますが


jeg20



時計遺伝子が制御する機能のひとつが 代謝関連酵素の発現制御です

jeg20a


具体的に どの時計遺伝子が どんな代謝への関与を行っているか 
見ていきましょう


<BMAL1>

代表的な時計遺伝子のBMAL1は

*脂質代謝 特に脂肪合成に関与し その機能異常が疾病の発症につながる

*膵臓でのインスリン分泌の制御を通じ 血糖値をコントロールする

*膵臓のβ細胞の数を増やし インスリンの分泌量を増やし 
 その結果として 脂肪を貯めこみやすくする

といった作用により 脂質や糖の代謝に関与

こうした機能により 身体の代謝動態を

*日中は活動に適した状態 
*夜間はエネルギーをため込む状態

にします


jeg21


BMAL1は 主に脂肪細胞などに発現しますが
発現は脂肪細胞分化に伴い上昇し
脂肪細胞分化の亢進 成熟脂肪細胞の機能制御を司ります

そして

午前10時から午後4時の間は作用が低下し 午後2時が最少で5%

逆に 夜遅くなるほど活性化され
夜8時から午前2時が最も活発で 午前2時が最大で100%

ですから 

昼に時間に食べたものは脂肪になりにくく

夜遅くに食べたものは 全て脂肪になってしまう

夜遅くだと 朝食と同じカロリーを食べても全て脂肪になるので
4倍も太ります

jeg22


BMAL1の日内変動パターンが乱れると
インスリン分泌 グルコース放出作用が弱まり
血糖値の変動幅が正常時より大きくなって 糖尿病が悪化しますが

メタボの患者さんでは
内臓脂肪でのBMAL1の活性 変動パターンが低下しています


また BMAL1の遺伝子多型(SNP)は
糖尿病 高血圧の発症と関連し

BMAL1発現を遺伝子レベルでノックアウトしたマウスでは

*概日リズムに異常が見られる
*高脂肪食負荷で中性脂肪 コレステロールが上昇し 肥満になる
*肝臓や骨格筋に異所性脂肪蓄積が生じる
*血中インスリン量の低下 分泌不全により 顕著な血糖値上昇を示す

といった さまざまな代謝異常が見られ

BMAL1が いかに代謝に重要な役割を果たしているか推察できます


<CLOCK>

CLOCKも 主に脂質代謝を含む多くの代謝経路の制御に関与します


特に PPARα発現の概日リズムを支配しています

PPARαは 長鎖脂肪酸がリガンドとして働く核内受容体で
脂肪酸のβ酸化を肝臓や心臓で調節しています

また 腸管からの脂肪の吸収がCLOCKにより制御されています

jeg23


遺伝子多型(SNP)は 肥満リスクと関連し

ノックアウトマウスでは

*概日リズムに異常が見られ
*摂食量増加による肥満
*血中中性脂肪 コレステロール グルコースの緩やかな増加
*脂肪肝 インスリン分泌不全

などが見られます


<PER2>

時計遺伝子のなかで 最も疾病との関係が示されているものです

標的となり影響を及ぼす分子は 主にPPARγ2 PPARα

PPARγ2への抑制的作用により 
脂肪細胞分化に対して強い影響を与える

また 白色脂肪細胞
褐色脂肪細胞UCP1や 極長鎖脂肪酸延長酵素のElovl3などの
遺伝子発現を強く誘導し

Elovl3の発現増加は
極長鎖飽和脂肪酸ならびに極長鎖モノ不飽和脂肪酸量の上昇を招き
総じて 脂肪酸組成の変化を引き起こして
全身のエネルギー代謝に対して大きな影響を与えます


一方 PPARαには促進的に作用します


また PER2の遺伝子多型(SNP)は
肥満者 腹部脂肪の蓄積と強い関連を示し
朝食抜き・ストレス食いパターンや身体活動量にも影響します


<CRY>

膵臓におけるインスリン分泌を制御しており

肝臓においては
Gタンパク質共役型受容体に結合して活性を抑制し
細胞内cAMP量減少により 糖新生を司る酵素の遺伝子発現が抑制されて
血糖値の低下をひき起こします


jeg24


このように 

体内の栄養素代謝は
時計遺伝子の働きにより 日内変動を生じている  わけですが

なんらかの機序で そのシステムに異常が生じたら
どうなってしまうのでしょう?

次回 そのあたりを詳しく説明します

 

2018.05.09更新

ヒトの体では
睡眠をはじめとして さまざまな機能で日内変動が見られますが

食べた食物の消化吸収 吸収された栄養素の代謝も
その活動に日内変動が見られます


@たとえば 小腸における栄養素の吸収では

糖の吸収に携わる Sglt1 Glut2 Glut5などの糖輸送体遺伝子
タンパク質の取込みに関わる Pept1遺伝子
脂肪の吸収に関わる DGAT/FABP apoB/MTPなどの輸送体遺伝子

などで

定時の食事開始時間の前から発現量の増加がみられ
摂食後の各栄養素の吸収が 調子よく進むようになっています


@吸収された糖や脂質の代謝機構の働きにも 日内変動が見られます

まず エネルギー代謝 糖新生・分解 脂肪合成・分解などを大元で牛耳る
マスター転写因子PPARαβγ SREBP-1c REV-ERBαβなどの発現量に
日内変動が見られます

これらのマスター転写因子は
各種栄養素の代謝に関与する多くの代謝関連因子の発現に影響を及ぼすため
その日内変動の変化は 代謝全体に大きな影響を及ぼすことになります


jeg11


@脂質代謝に関しては
下記に示す重要な脂質代謝関連遺伝子の発現が 日内変動を呈します

*中性脂肪合成系のアセチルCoA合成酵素(ACS)
*中性脂肪分解系の
 脂肪組織TGリパーゼ(ATGL)ホルモン感受性リパーゼ(HSL)
*コレステロール合成系の律速酵素であるHMGCoA還元酵素
*コレステロール分解系の律速酵素コレステロール7α水酸化酵素(CYP7A1)

これらの酵素の多くは 夜間に活動性が高く 昼間には低い

ですから ヒトの体は夜に脂肪を貯めこみやすい


jeg12


@脂肪細胞から分泌されるレプチンなどのアデイポカインも
その分泌パターンに日内変動を認めます

レプチンは 暗い時期に上昇し 明るくなると低下する


糖の代謝に関しては
血糖上昇に反応して適切にインスリンが分泌されることが重要ですが

体内時計の乱れにより
適切なインスリン反応が生じなくなることが 明らかにされています


@また 脂質や糖質は代謝されて
最終的にミトコンドリアでエネルギーに変換されますが
そこで活躍する重要な分子の発現にも 日内変動が見られます

たとえば ミトコンドリアでは
最終的にATPがエネルギーとして産生されますが
このATP産生量にも日内変動がある

ATP産生に関わる AMPK NAD/NADHバランスなどの発現量が
日内変動を示すからです


一方で ミトコンドリアの活性化に関わる重要な分子のPCG-1α
その活性化レベルに日内変動を認めます


このように

*食物を食べて 腸で消化吸収して

*肝臓などで吸収した栄養素を代謝して

*細胞内のミトコンドリアでエネルギーに変換する

といった

食物の栄養素を代謝してエネルギーに変換する全ての過程において
そのキーとなる因子の発現に 日内変動が見られるのです


jeg14



だから いつ どんな内容の食事を摂ったかによって
栄養素の代謝のされ方 エネルギーへの変換のされ方が異なってくる


だったら いつ どんな栄養素を摂取すれば良いのか?

そして どうしてそんな日内変動が起こるのか?


今日の解説で生じてきたそんな疑問に 次回以降お答えしていきます

 

2018.05.08更新

糖尿病肥満を指摘されて当院を受診される患者さんに
日常の食生活のパターンをうかがうと

夜遅くに ヘビーな食事をされていることが多い


それが いちばん太る原因なのですよ!


と 忠告することになるのですが


でも先生 どうして夜遅く食べると 太るのですか?

そんな具合に切り返されたら どうしましょう?(笑)


患者さんからの そうした的をついた質問に
きちんとわかりやすく解答するためには
時間栄養学の知識を得ておく必要があります

時間栄養学 ってなんだ?

jeg01


多くの読み手の方は 初めて聞かれる言葉だと思いますし
お医者さんでも 知らない方もおられるかも?

今日からしばらく そんな未知の世界をご紹介しようと思います


さて 時間栄養学の専門家が書かれた総説等を読むと

これまでの栄養学のポイントは 
何をどれだけ食べるか だったけれど

これから大切なのは 何を いつ食べるか である

といったことが 必ず書かれています


*朝食を食べないと どうして健康に良くないのか?

*夜遅くに食べると どうして太るのか?

*朝食 昼食 夕食で
 それぞれ どんなものを食べると良いのか?


時間栄養学では そうしたことを明らかにしていきます


こうした分野の研究が発展してきたのは
ヒトや動物の体内には 体内時計が存在していて
睡眠のみならず さまざまな体の機能が 24時間周期で変動していることが
明らかにされたからです

昨年度 ノーベル賞が贈られた研究により
Bmal1 / Clock Period / Cryptochrome という
4種類・2組の遺伝子の働きにより

日内変動 サーカディアンリズムが形成されることが示されました

jeg02

この点については 以前に説明しましたので参考にしてください


重要なポイントは

日内変動をつかさどる遺伝子が
糖や脂質の代謝をつかさどる酵素の働きにも  影響を及ぼしていることです

jeg03

つまり 糖や脂質の代謝にも
睡眠と同じような 日内変動があるのです

だから 同じ食物 栄養素でも
朝食べるのと 昼食べるのと 夜食べるのでは
代謝のされ方が異なってくる

夜遅く食べると太る理由は このあたりの事情から説明できます

ちょっと 興味深いでしょう?
次回 詳しく説明します


さらに興味深いのは

摂取する食物 栄養素の違いによって 
体の日内変動に影響が出てくる

jeg04


たとえば
脂物ばかりたくさん食べると  サーカディアンリズムがずれてくる


また 食事をする時間によっても 体の日内変動に影響が出てくる

jeg05

朝食を食べないと なぜ健康に悪いかは
このあたりの事情で説明できます

この点については 次々回 詳しく説明します


このように 

日内変動・サーカディアンリズム と 栄養素の代謝 は
互いに影響を及ぼし合っているのです

こうしたことが明らかになったことで
時間栄養学のフィールドが深まってきました


jeg06


そして 
肥満 糖尿病 高血圧 脂質異常症といった生活習慣病では
日内変動 サーカディアンリズムと栄養素の代謝の相互関連に
さまざまな異常が生じていることも 明らかにされつつあります

だから そこの是正により 病気が改善する可能性がある


そのためには 1日3食の食事を
いつ食べて どんなものを食べるようにすればいいのか?

そうしたことについても 詳しく説明していきます


どうです 興味が湧いてきたでしょう?(笑)


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