左利き肝臓専門医ブログ

2015.04.27更新

「個人向け遺伝子検査」を理解するための基礎的事柄を解説してきましたが
あらためて巷に出回っている検査キットを俯瞰してみると 
実に多種多様なものがあります

太りやすさ 前回紹介したアルコールの強さといった
体質に関するものがいちばん多く
糖尿病などの生活習慣病関連のものもよく見られます

 1061


さまざまな検査キットが対象としている疾患は
合わせると300種類以上もあるそうで
2013年の経済産業省の報告によれば 
実に700社以上の企業や機関が関連しており
まさに一大マーケットとなりつつあるようです

某経済誌にでていましたが 日本ではかなりの業界大手も参画しています

 1062

で 個人向け遺伝子検査の管轄官庁は 
厚生労働省でなく経済産業省なのですね 


それが意味するところは?
(笑)


さて 今まで解説してきたように
それらの多くが疾患関連SNPの解析を行っていますが
得られた結果をどのように解釈 評価すべきかは とても重要なポイントです

まず勘違いしないように注意すべきことは

疾患関連SNPが意味することは
その病気の人のグループでは健康人のグループと比べて 
その遺伝子の特定のSNPタイプの出現頻度が高いということで

そのSNPタイプの人は 必ずその病気になるわけではない
そのSNPタイプではない人は 絶対にその病気にならないわけでもありません

つまり疾患関連SNPが陽性であるということは
ある病気になるリスク因子とは言えますが 
決定因子ではないということです

 1063

また 多くの病気は
遺伝因子と環境因子が関与する多因子疾患であることを説明しましたが
関与する遺伝因子も環境因子も1種類だけでなく複数存在するのです

ひとつの病気に複数の疾患関連SNPがあることがほとんどなので 
そのうちのひとつのSNPの結果だけで評価するのは難しい

複数ある疾患特異的な疾患関連SNPのうち
いくつかが陽性の人は ひとつだけが陽性の人に比べると 
病気になる確率が何倍も高くなることが報告されています

こうした事実を鑑みて 
結果を過大評価したり過小評価することがないように注意する
必要があります


また 同じ肥満に関する検査でも
会社によって選ぶ遺伝子の種類が異なっていたり
同じ遺伝子でも会社によって判定に用いる学術論文が異なったりします

学会が責任をもって作成したガイドラインのような指標があって
それに準拠して検査や判定を行っているわけではないので

極端な話 
同じSNPの解析をしていても
会社によって結果が異なることもあり得るかもしれません

2013年11月には 
アメリカの医療検査などを監督する権威あるお役所の食品医薬品局(FDA)が
「遺伝子検査の結果が間違っていた場合や 
 
利用者が検査結果を適切に理解しなかった場合に
 深刻な問題が生じる懸念がある」
との警告を この業界に発したこともあります

このコメントでも言及されているように 
利用者の適切な理解も問われているのです

さらに日本では 
先の経済産業省のレポート遺伝子検査業者を選ぶ際のチェックリストとして
・判定の科学的根拠について説明している
・判定は同じ遺伝子の特徴を有している人の一般的傾向であることを示している
・ホームページなどで説明資料と同意書を得ることが出来る
・検査結果に基づく商品販売などの有償の二次的サービスの有無を明示している
・二次的サービスは拒否でき サービスの科学的根拠も明記してある
・事業が準拠しているガイドラインの名前が明示されている
・遺伝子の検査をする機関名が明示されている
・検査の前後でのカウンセリングなど相談に乗る仕組みがある
といったことが示されています

やはり 厚労省が監督する類のものでは まだなくて 
経産省が健全なビジネスとして育成していこうとする範疇のものなのでしょう


では わざわざ高いお金を払って 
個人向け遺伝子検査などしても意味がないのでしょうか?

書き手は 全く意味がないことはないと考えます

特に肥満や生活習慣病に関する検査で陽性になった場合は
将来 太ったり病気になるリスクがあるとご自分で認識されることで
生活習慣を見直したり改善するきっかけや動機づけにしていただければ 
有意義だと思います

逆に ある検査で陰性になったからといって安心してしまい
調べていない他のリスクが隠れているかもしれないのに 
乱れた生活習慣の日々を過すことで 
本当に病気になったり太ってしま
という逆のパターンもあり得るので注意が必要です


最後に 決して安い検査ではありませんから コストに見合うかどうかは、、、

その判断は あなた次第です!(笑)

1065

2015.04.24更新

1塩基の違いであるSNPは遺伝子多型のなかで最も数多く認められ 
500~1000塩基対に1ヶ所
ヒトのゲノム上には300~1000万ヵ所 
遺伝子上には100万ヶ所ものSNPが存在しています

これだけの数のSNPが認められるので 
病気の発症や進展に関係すると推測されるわけです

SNPは個々人それぞれの遺伝子的個性・体質が異なる原因になります

 1041

なぜかというと

先回ご説明したように 
遺伝子の塩基配列はmRNAを介してタンパク質を作りますが 
あるタンパク質を作る遺伝子の塩基配列にSNPが存在すると
作られるタンパク質の機能や量に変化が生じる可能性があるからです

つまりSNPによる遺伝子的個性・体質の違いは 
作られるタンパク質の質的・量的変化となって表れてくる

特にあるタンパク質を作る遺伝子のなかで
・その遺伝子の発現を制御するプロモーター領域
・タンパク質そのものを作る翻訳領域
にSNPが存在すると 
作られるタンパク質の量や機能が変化する可能性が大きいのです

一方で そのような部位以外のDNAに存在するSNPは 
ヒトの遺伝子的個性・体質には 
影響を及ぼさない可能性が高いと考えられます


SNPがタンパク質の機能に影響を与える有名な例が 
アルコール代謝酵素のSNPと酵素活性の関連です

アルコールはADHという酵素で アセトアルデヒドに分解され 
アセトアルデヒドはALDH2という酵素で 酢酸に分解されます

ADH

アルデヒドは ドキドキしたり気持ち悪くなったり顔が赤くなったりする 
酔いに伴うそんな症状の原因物質ですから

アルデヒドを分解するALDH2の酵素活性が強いと 
お酒に強いし 二日酔いにもならない
酵素活性が弱いと アルデヒドが蓄積するのでお酒に弱い

このALDH2を作る遺伝子にSNPがあり 
504番目のアミノ酸を作る塩基配列がAAAの場合GAAの場合があります
最初の塩基がAかGかの違いによるSNPです

AAAだと翻訳されるアミノ酸がリジンとなり 酵素活性が弱くなる
GAAだと翻訳アミノ酸がグルタミンとなり 酵素活性が強くなる

ヒトは父親のDNAから1本鎖 母親のDNAから1本鎖を譲り受け
自分の2本鎖DNAを作りますから
両方の親がGだと SNPはGGタイプ
両方の親がAだと SNPはAAタイプ
片親がA 片親がGだと SNPはAGタイプ
この3タイプのSNPになります

GGタイプのSNPだと 最も酵素活性が高く 生まれつき最もお酒に強い

AGタイプのSNPだと 酵素活性はGGタイプの1/16で 
生まれつきあまりお酒に強くない

AAタイプのSNPだと 酵素活性がないので 
生まれつきお酒が全く飲めない

興味深いことに このSNPタイプの発現頻度には人種差があり
白人は99%がGGタイプでお酒に強いのですが
日本人はGGタイプが50%強 AGタイプが40%弱で 
下戸のAAタイプが5%ほどいます

ですから日本人と白人が同じペースでお酒を飲んだら 
えらいことになる(笑)

ここで見られたSNPタイプの発現頻度の人種差は 
他の多くのSNPでも認められることが多く
人種による体質の違いの多くが
SNPタイプの差異に起因することが明らかにされています

 1042


SNPが体質に影響を及ぼすイメージ
を感じていただけましたか?

このALDH2のSNPタイプが 
アルコール感受性の個人向け遺伝子検査キットで解析されているものです


では SNPはヒトの病気の発症や進展に実際に関わっているのでしょうか?

重要な機能を持つタンパク質の遺伝子の塩基配列にSNPが存在する場合
ある病気にかかっている人と健康な人のSNPを解析・比較して

病気の人と健康な人の間で 
SNPタイプの出現頻度が統計学的な有意差を持って異なっていた場合は

そのSNPは病気と関連があると見做されます

こうしたSNPを疾患関連SNPと呼びます

ヒトの体のさまざまな機能に関わる種々のタンパク質のSNPについて
それが疾患関連SNPであるか否かが検討され 
さまざまな病気で色々な種類の疾患関連SNPが同定されています

以前のブログで 日本人がなぜ糖尿病になりやすいかをご紹介しましたが
そのときに出てきたβ3アドレナリン受容体 UCP-1のSNPと機能との関連も 
こうした研究により同定されました

さらに最近は遺伝子検査の技術の進歩により 
DNAチップという手のひらサイズの大きさのマイクロチップを用いて
ヒトのDNAに存在しているほとんどのSNPを
一度に全て網羅的に解析
できるようになりました

ですから ある病気にかかっている人と健康な人のDNAを 
それぞれを数千人単位で解析することにより
その病気に特異的な疾患関連SNPを 
全て一度に同定することが可能になったのです

 1043

 

こうした研究はGWAS解析(Genome Wide Association Study)と呼ばれ
過去10年あまりの間にさまざまな病気で多くの検討がなされ
それぞれの病気に特異的な疾患関連SNPの存在が明らかにされました

明らかにされた疾患関連SNPが 作られるタンパク質の質的量的異常に関連し
そのタンパク質の異常が疾患の発症進展に関与することが
明らかになった場合もあります

一方 疾患関連SNPはタンパク質の質的量的異常に結びつかないこともあり
そのような場合は 疾患関連SNPの病態への関与は不明で 
単なるバイオマーカーに過ぎなくなります

このように ある病気に特異的な疾患関連SNPの同定は 
その病気の病態解明の大きな手掛かりになる可能性があります

GWAS研究は 多くの病気でまさに現在進行形で行われており
その成果が病気の病態解明や新たな治療方法開発に貢献することが
期待されています


ということで 巷で評判となっている個人向け遺伝子検査
このような研究で得られた 
さまざまな疾患関連SNPの解析を行っているのです

*SNPとは何か?
*SNPが存在することは 生体にどういう影響を与えているのか?
*SNPは疾患の発症進展にどのように関わるのか?

そうしたことが おぼろげにでもイメージしていただけたら幸いです

次回はこのトピックの最後として
「個人向け遺伝子検査でわかること わからないこと」
を解説したいと思います



 

2015.04.23更新

まえふりがさんざん長くなってしまったSNP
正式名称は Single Nuculeotide Polymorphism その頭文字をとってSNP
日本語に訳すと 一塩基多型  スニップ と発音します

これこそが 話題の「個人向け遺伝子検査」で解析されていることです 


前回説明したように ヒトの遺伝情報 DNAの塩基配列によって担われています

DNAの塩基配列の99.9%は万人に共通ですが 残りの0.1%は個人によって異なります
この違いこそが 個人が有する遺伝子的な個性になります

 1031

わかりやすく例えると体質ですね


では 遺伝子的な個性・体質 の正体は何か?

0.1%の非共通の塩基配列のなかには さまざまな違いがありますが
それらの全ての違いが意味を持つわけではありません

ある集団 日本人なら日本人 アメリカ人ならアメリカ人の集団において
ある特定の塩基配列の違いが1%以上の頻度で出現しているとき
それを「遺伝子多型」と呼んで意味がある違いと見なします

出現頻度が1%以下の違いは 変異(ミューテーション)とか まれなバリエーションと呼ばれ
意味のない違いとして無視されます

意味がある違い 意味がない違い という言い方はわかりにくいかもしれませんが
あまりに稀なものは評価の対象にならないけれど 一定以上の頻度のものは評価の対象になる
そんなニュアンスでご理解ください

そして意味のある違いである「遺伝子多型」が存在する結果
遺伝子から作られるタンパク質に変化がみられ
それがひとりひとりの姿かたちや能力などの違いとして 目に見える形として表われてくるのです

これがまさに遺伝子的な個性・体質の正体です


遺伝子多型には DNAの塩基がどのように変化するかにより 何種類かのタイプがあります

置換:ある塩基が別の種類の塩基に置き換わるタイプ
欠失:1から数十の塩基が失われるタイプ
挿入:1から数十の塩基が入れ込まれるタイプ
繰り返し配列:いくつかの塩基からなる配列を1単位とする配列が繰り返されるタイプ

 1032


繰り返し配列は
STRP:short tandem repeat polymorphism
 :2~4個の塩基からなる配列が数回から数十回繰り返されるで マイクロサテライト多型と呼ばれます
VNTR:variable number of tandem repeat
 :数個~数十個の塩基からなる配列が繰り返される
の2種類あって それぞれの繰り返し回数が個人によって異なります

こうしたさまざまな種類の遺伝子多型のなかで
出現頻度が高く 病気の発症進展に関与する可能性が高いとされるのが
ひとつの塩基が他の種類の塩基に置換されたタイプ と 上記のマイクロサテライト多型です

そして ひとつの塩基が他の種類の塩基に置換されたタイプこそがSNPです

 1033

DNAや遺伝子の塩基配列の たったひとつの塩基の種類が異なるだけ
このたった一塩基の違いが 意外に大きな意味を持つのです

ふーっ やっとSNPまでたどり着きましたが
前回はちょっと盛りだくさんすぎましたし 今回も聞き馴染みのない単語のオンパレードで
皆さんお腹がいっぱいになられたでしょうから SNPの解説は次回にしましょう

今日のメッセージは 
遺伝子的な個性・体質は さまざまなタイプの遺伝子多型により規定され
・遺伝子多型の代表選手で個人向け遺伝子検査で解析されているのがSNP
・それにより姿かたちや能力などの違いといった目に見える形として個性や体質が表われてくる
ということです

ここまで頑張ってお付き合いいただいて ありがとうございました(笑)

2015.04.23更新

まえふりがさんざん長くなってしまったSNP
正式名称は Single Nuculeotide Polymorphism
その頭文字をとってSNP

日本語に訳すと 一塩基多型 スニップ と発音します
これこそが 話題の「個人向け遺伝子検査」で解析されていることです


前回説明したように
ヒトの遺伝情報は DNAの塩基配列によって担われています

DNAの塩基配列の99.9%は万人に共通ですが

残りの0.1%は個人によって異なります
この違いこそが 個人が有する遺伝子的な個性になります


snp


わかりやすく例えると体質ですね


では 遺伝子的な個性・体質 の正体は何か?

0.1%の非共通の塩基配列のなかには さまざまな違いがありますが
それらの全ての違いが意味を持つわけではありません

ある集団 日本人なら日本人 アメリカ人ならアメリカ人の集団において
ある特定の塩基配列の違いが1%以上の頻度で出現しているとき
それを「遺伝子多型」と呼んで 意味がある違い と見なします

出現頻度が1%以下の違いは
変異(ミューテーション)とか まれなバリエーションと呼ばれ
意味のない違いとして無視されます


意味がある違い 意味がない違い という言い方は
わかりにくいかもしれませんが

あまりに稀なものは評価の対象にならないけれど
一定以上の頻度のものは評価の対象になる
そんなニュアンスでご理解ください


そして意味のある違いである「遺伝子多型」が存在する結果

遺伝子から作られるタンパク質に変化がみられ

それがひとりひとりの姿かたちや能力などの違いとして
目に見える形として表われてくるのです

これがまさに遺伝子的な個性・体質の正体です


遺伝子多型には DNAの塩基がどのように変化するかにより
何種類かのタイプがあります

*置換:ある塩基が別の種類の塩基に置き換わるタイプ
*欠失:1から数十の塩基が失われるタイプ
*挿入:1から数十の塩基が入れ込まれるタイプ
*繰り返し配列
 :いくつかの塩基からなる配列を1単位とする配列が繰り返されるタイプ


takei


繰り返し配列は
・STRP:short tandem repeat polymorphism
:2~4個の塩基からなる配列が数回から数十回繰り返されるで
 マイクロサテライト多型と呼ばれます
・VNTR:variable number of tandem repeat
:数個~数十個の塩基からなる配列が繰り返される
の2種類あって それぞれの繰り返し回数が個人によって異なります

こうしたさまざまな種類の遺伝子多型のなかで
出現頻度が高く 病気の発症進展に関与する可能性が高いとされるのが
*上記のマイクロサテライト多型 と
*ひとつの塩基が他の種類の塩基に置換されたタイプ  で

そして ひとつの塩基が他の種類の塩基に置換されたタイプこそがSNPです


snp


DNAや遺伝子の塩基配列の たったひとつの塩基の種類が異なるだけ
このたった一塩基の違いが とても大きな意味を持つのです

ふーっ やっとSNPまでたどり着きましたが
前回はちょっと盛りだくさんすぎましたし
今回も聞き馴染みのない単語のオンパレードで
皆さんお腹がいっぱいになられたでしょうから
SNPの解説は次回にしましょう

今日のメッセージは

遺伝子的な個性・体質は さまざまなタイプの遺伝子多型により規定され
遺伝子多型の代表選手で個人向け遺伝子検査で解析されているのがSNP
*それにより姿かたちや能力などの違いといった目に見える形
 
として個性や体質が表われてくる

ということです

ここまで頑張ってお付き合いいただいて ありがとうございました(笑)




2015.04.22更新


遺伝子の世界
には興味があるけれど 
ゲノムとかDNAとか 
馴染みのない単語がたくさん出てくるのでどうもよくわからない

そんな方は多いと思いますが 
ここだけの話 医学生でも似たようなものですからご安心ください(笑)

そこでSNP(一塩基多型)の解説をする前に 
ヒトの遺伝情報の最も基礎的なところを押さえておきましょう

題して ネコでもわかる遺伝子のお話

 10211022


<核のなかにある染色体・ゲノムがヒトの遺伝情報です>

ヒトの体は約60兆個の細胞が寄り集まって 
脳や心臓や肺や肝臓などの臓器を作っていますが
それぞれの細胞のなかには「核」という 最も大切な細胞内小器官があります

 1023


なぜ核が大切かというと 
そこにはヒトの遺伝情報・生命の設計図があるからです

それが「染色体」

お父さんから23本 お母さんから23本 
それぞれからもらった計46本の染色体があります
(22対の常染色体と オスメスを決定する1対の性染色体)

1024 

この染色体にある全ての遺伝情報を「ゲノム」と呼びます


<染色体はDNAの二重らせん構造でできています>

では 染色体は何で出来ているのでしょう?

染色体には 二重らせん構造の長いひものような「DNA」が 
ぎっしりと折り重なって詰め込まれています
このDNAこそが ヒトの遺伝情報の正体です

DNAリン酸と糖からできた鎖の基本構造の上に
アデニン シトシン グアニン チミンという
4種類の塩基が結合してできています

アデニン(A)とチミン(T)シトシン(C)とグアニン(G)が対になることで
父親が有するDNAの1本鎖と母親が有するDNAの1本鎖が結合して
二重らせん構造をつくります

 1025

 

<細胞が分裂するときにDNAが複製されて 遺伝情報が伝わります>

細胞が分裂して核も分裂するときに
このDNAの二重らせん構造が外れ 
それぞれの鎖を鋳型として別の鎖が合成され
新たな二重らせん構造を作ることにより 
DNAに書き込まれた遺伝情報は 分裂した新たな核に伝えられ 
新たな細胞ができます

この過程を複製と呼びます 
こうやってヒトの体はできてきます


<DNAのなかの「遺伝子」がタンパク質を作ります>

さてDNAは約30億対の塩基配列からできていますが
ヒトの遺伝情報は 
DNAを構成する4種類の塩基の並ぶ順番(塩基配列)によって担われています

ヒトの体はタンパク質でできていますが 
DNA上の決まった塩基配列により 
どのような種類のタンパク質が作られるか決まっている
のです

DNAの全ての塩基がタンパク質を作っているわけではなく 
タンパク質を作るのは全DNAのわずか2%にすぎません

そのタンパク質を作る塩基配列「遺伝子」と呼びます

 1026


DNA上には約3万種類の遺伝子が存在
しており
一方 遺伝子以外のDNAは
遺伝子の発現調節やその他の生体機能に関わっています


遺伝子の発現は さまざまな因子により巧妙に調節されています

この遺伝子発現の調節の仕組みはとても巧妙で 
転写調節因子というタンパク質により規定されています

遺伝子とタンパク どちらがイニシアティブがあるの? という
何気に生命の本質を突く命題にも関わってきますが 
その話は別の機会のお楽しみに(笑)


さて ここまでが前半戦です

ゲノム染色体DNA遺伝子の違い や 複製の概念を 
ご理解いただけましたか?



では後半戦 

遺伝子はどのようにしてタンパク質を作るのでしょう?


<セントラルドグマ>

この世界にはセントラルドグマという
宗教における根本教義のような「掟」があります

DNAの二重らせん構造を発見したクリックが提唱した概念で

遺伝情報は 
遺伝子から メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され 
mRNAからタンパク質に翻訳される
 

というものです

 1027



<遺伝情報はDNAからRNAに伝わります : 転写>

遺伝子の情報
は 核のなかでRNAポリメレースⅡという酵素の働きで
mRNAに移しとられます
このDNA・遺伝子からmRNAへの情報の移転を転写と呼びます

DNAもRNAも塩基配列で出来ているので 
上述したDNAの複製に似たような仕組みで
1本のDNA鎖から1本のRNA鎖が出来上がるのをイメージしてください


<RNAからタンパク質が作られます : 翻訳>

さて 遺伝情報を託されたmRNAは 核から細胞質に出て
そこでリポゾームという細胞内小器官に結合します

リポゾームはmRNAからタンパク質を作る工場です

リボゾームのなかで 
tRNAという別の種類のRNAが運んできたアミノ酸がmRNAに結合しますが

mRNAの3つずつの塩基配列(コドン)
により 
結合するアミノ酸の種類が決定されます

 1028

 



DNA・遺伝子からmRNAに転写された塩基配列に従って 
アミノ酸が数珠つながりとなり それがタンパク質になります

 1029


この核酸(mRNA)からタンパク質が作られる過程では 
核酸から分子へと 質が違うものが作られるので翻訳と言います


<転写と翻訳>

転写とか翻訳とか
 
馴染みがない言葉が次々にでてきて閉口されるかと思いますが

遺伝情報が DNAからRNAという同質のものの間で受け渡されるのが 転写
転写された遺伝情報が RNAからアミノ酸という異質のものになるのが 翻訳
といったイメージを持ってください


<遺伝情報で作られたタンパク質の働きにより ヒトの体は機能します>

こうしてDNA・遺伝子の4種類の塩基の配列で表されていた遺伝情報
RNAを仲介役として 
アミノ酸の数珠つながりであるタンパク質に変換されるわけです

このように 
核酸(DNA・RNA)の遺伝情報がタンパク質として表現されるのが
生命科学のいちばん象徴的な出来事です

ヒトの体のあらゆる機能は
こうして作られたさまざまなタンパク質の働きに担われています


<遺伝情報に変化があるとタンパク質の機能が変わり 
 病気や体質変化が起こります>

出来上がったタンパク質の性状や機能を
「遺伝子の表現型・表現形質
と呼びます

次回以降で詳しく説明しますが
DNAの塩基配列に変化があると 
出来上がってくるタンパク質の質的・量的な変化が生じてきます

こうしたタンパク質の変化を
「遺伝子変化によりタンパクの表現型・形質が変わる」と言い
それが体質や病気につながっていきます



<まとめ>

私達の体の遺伝情報の伝達は このような仕組みで出来上がっています

学生の頃 初めて分子生物学の講義でこの仕組みについて学んだとき
あまりの精巧さとシンプルさに ちょっと感動したのを覚えています

ホント うまくできているものです


さて 今日は内容が盛りだくさんでしたが 
・遺伝子とは何か 
・遺伝子からどうやってタンパク質が作られ 
遺伝情報がどのようにして形質として表現されるか 
を理解していただけましたか?

ここを押さえておかないと これから先の話題となる 
遺伝子多型やSNPと病気との関わりを 
理解して楽しんでいただくことができませんので

特に文系の方にはちょっとうんざりな話題だったかもしれませんが
お許しください

さて 次回はやっと遺伝子多型・SNPの解説です


<おまけ>

ちなみに DNAの長さは およそ「2m」もあります

それがどうやって直径10μmの核のなかに折り畳まれるのか?

ここにも驚くべき巧妙な技があるのですが 
このお話はエピジェネテイクスという 
最近の超トレンドな遺伝子ネタで詳しく説明しますので 乞うご期待!

さっきちょっとコメントした 
遺伝子とタンパク どちらがイニシアティブがあるの?
という 何気に奥が深い疑問にも関連します(笑)
 

2015.04.17更新

個人向け遺伝子検査のお話 もう少しイントロダクションを続けます 

糖尿病 高血圧 脂質異常症などの生活習慣病には共通点があります

もちろん内臓脂肪の蓄積による肥満が共通して関与することは
言うまでもありませんが
これらの病気は発症進展に多くの要素が関与する多因子疾患です

 981

世の中の病気を 遺伝か環境か? いう視点から見ると 
3つのグループに大別されます

@まず遺伝因子だけで発症が規定されてしまう病気
遺伝子疾患と呼ばれるもので 染色体やひとつの遺伝子の異常だけで
病気になってしまいます
筋ジストロフィー 種々の代謝異常症 血友病 ダウン症などがその代表例です

@一方 遺伝は全く関係せず 環境の影響だけで発症する病気もあります
食中毒 高山病 大気汚染により生じる病気 ウイルス感染症
などがその代表例です

@しかし病気のほとんどは 
発症に遺伝因子と環境因子の両方が関与する多因子疾患です

生活習慣病をはじめとする慢性疾患は まさに典型的な多因子疾患なのです

 982

「病気A」にかかりやすい遺伝因子を有する人
「病気A」が発症しやすくなるような環境因子のもとで生活していると
その人は「病気A」を発病してしまう

生活習慣病の発症進展に関与する環境因子
多くの患者さんが日夜格闘されている 
脂分や糖分が多いカロリー過多の食事 肥満 塩分のとりすぎ 
喫煙 過度の飲酒 睡眠不足 ストレス 運動不足などです

当院の生活習慣病の解説パンフレットでは
「遺伝要因は改善できませんが 生活習慣は改善できます」
と しつこく(笑)コメントしてあります

 983

たとえ病気になりやすい遺伝因子を有していても 
環境因子の改善を心掛ければ発病しなくて済むのです

両親が糖尿病で遺伝因子バッチリの書き手も 
日々の生活で環境因子の改善を一応心掛けているので 
未だ発症せずに済んでいます(苦笑) 


では 多因子疾患の発症にかかわる遺伝因子とは何か?

個人向け遺伝子検査の多くは まさにそこを解析しており
それこそが遺伝子多型でありSNP(一塩基変異)です 

次回は この遺伝子多型やSNPを理解するために必要な
遺伝子の基礎知識について解説します

 

2015.04.16更新

最近 いろいろなところでよく見聞きするのが 個人向け遺伝子検査

新しいモノ大好きな書き手にも 最近e-mailで広告が送られてきて
いったい何なの?と ついつい下衆心をくすぐられてしまいます(苦笑)

 971

(あ これはたまたま見かけた広告で なんの利益相反もありませんから:笑)

このキーワードで検索してみると 
検索結果には 遺伝子検査ダイエット診断とか遺伝子検査で自分発見!とか
まさに見る者の心をくすぐる魅力的なキャッチコピーが並んでいます

その多くがダイエット 病気 美容などに関連したものですが
才能を掘り起こす遺伝子テストといった
教育パパやママの親心を刺激するものもあります


遺伝子 診断といったキーワードには 妙な魅力がありますよね?

よく解らないけれど なんとなく凄そう!
最先端の生命科学に触れられる気がする
気がついていない隠された自分を発見できるなんて面白そう
しかもダイエットとか美容とか 気になる身近な問題が解決できるかも?

「あなたの知らない世界」は 
得体のしれない魅力にあふれているのですよ(笑)  

さらにこの世界を魅力的に見せているのが DTCという文言
Direct to consumer 個人向け あなただけのもの!
 
世の人々はパーソナライズという言葉にも弱いですからね(笑)


ということで 下衆心がくすぐられたのを良い機会に 
個人向け遺伝子検査について調べてみました

多くのものは 
・ネットで簡単に申し込めて
・自宅に送られてきた検査キットに 
 自分の唾液や頬っぺたの内側の粘膜をこすって入れて 送り返すだけ

 972

あ もちろん お代金は振込まないといけませんよ!(笑)
ちなみにお値段は数千円から5万円くらいのようです

しばらくすると「あなたの知らない自分」の結果が送られてくる

肥満やダイエット 美肌や肌の老化 メタボになるリスク 免疫機能 
男性の脱毛症 骨粗鬆症のなりやすさ
アルコールに対する強さ 歯周病のなりやすさ

そうした気になることがらや病気に関して 
自分がどれくらいなりやすいかがわかる
さらに 子供の才能もわかったりする?

いったい どうしてそんなことがわかるのでしょう?

それは あなたが送ったサンプルを前にした
ユリ・ゲラーも細木なんとかさんもびっくりの万能超能力者が 
渾身の超常能力を込めて手かざしたり呪文を唱えたりして

ええい! と叫んだあとに

 983

こんなんでました! とレポート用紙に解答を書き込むからです

 974

ウソウソ うそですよ!(笑)

イマドキ大流行の個人向け遺伝子検査では遺伝子多型の解析が行われています

遺伝子多型ってなんだ?
興味を持たれた方は続きをお楽しみに!

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