左利き肝臓専門医ブログ

2018.10.02更新

2018年度のノーベル医学・生理学賞の受賞者が発表され

本庶佑先生が 受賞されました!

pd1np00

おめでとうございます!


本庶先生のご専門は免疫学で
書き手も日本免疫学会の会員ですので
先生の数々の輝かしい業績はよく存じあげています

最初の頃は 抗体の遺伝子のクラススイッチを研究されていて
膨大な数の細菌やウイルスを認識する抗体の遺伝子が
どのようにして構成されるかを明らかにされました

T細胞受容体の遺伝子の研究をされて
1986年に日本で初めてノーベル医学・生理学賞を受賞された
利根川進先生のライバルと目されていたこともあります


今回 本庶先生はアメリカのアリソン先生と共同受賞されましたが
評価されたのは「免疫抑制分子を応用したがん免疫療法」に関する研究です

pd1np01

少し長くなりますが 詳しく解説します

ウイルスやがん細胞を攻撃するT細胞(下図右のCD4)は
マクロファージなどの抗原提示細胞(下図左のDC)の
MHCⅡ分子が提示するウイルスやがん細胞の抗原を 
それに特異的なT細胞受容体(TCR)が認識して(下図の真ん中の部分)
それらを特異的にやっつけることができるようになります


pd1np10

抗原提示細胞には
T細胞を活性化する分子 抑制する分子が存在して
T細胞上に発現しているそれら分子の受容体と結合することで
MHC分子とT細胞受容体により誘導される反応を
活性化したり抑制したりします

これらは補助刺激分子 co-stimulatory molecule と呼ばれています

下図には 多くの種類の活性化分子 抑制分子が並んでいますが

pd1np02

今回の主役の免疫抑制反応を司る代表格が

抗原提示細胞に発現するリガンドCD80 CD86と
T細胞上に発現する受容体CTLA-4

抗原提示細胞に発現するリガンドPD-L1 PD-L2と
T細胞上に発現する受容体PD-1

の組合せです


そしてCTLA-4の基礎研究を行う過程で
がん治療への応用を最初に開始したのがアリソン先生

pd1np03a

PD-1を発見し 紆余曲折を経てがん治療への応用をされたのが本庶先生で

pd1np03b

今回の同時受賞になりました

pd1np4


で なぜ免疫抑制分子ががん治療に応用されたかというと

がん細胞は
いくつかの免疫抑制分子のリガンドを発現していて
自らを攻撃しようとするT細胞の抑制性受容体に結合して
T細胞を働かなくさせて攻撃を逃れて 生き延びてしまうのです(下図A)

そこでT細胞の抑制性受容体を 特異的な抗体でブロックすれば
がん細胞からの抑制が働かなくなり
T細胞ががん細胞を退治することができる(下図B) 

というメカニズムです

pd1np12


ちなみに がん細胞はPD-1のリガンドは発現していますが
CTLA-4のリガンドは発現していません
(下図のいちばん下の赤い細胞をご覧ください)

pd1np05

 

ですから抗PD-1抗体の方が抗CTLA-4抗体より
より大きな抗がん作用を発揮します

pd1np06

本庶先生が開発されたオプジーボという薬は
ここ数年で さまざまな種類のがん治療に用いられ
良好な治療効果が得られています

pd1np06a

まさに がん治療の新たなステージを切り開いたというわけです


でも 本庶先生の凄いところは
最初からがんを念頭にPD-1の研究をされていたのではないことです

1994年 T細胞に発現する得体の知れない分子PD-1を同定され
やがてそれが 免疫抑制性の補助分子であることがわかり
2000年代になって がん免疫の研究に応用されるようになり
2014年にオプジーボが開発されたのです

地道なコツコツとした基礎研究が花開いたのです


本庶先生は 数年前からノーベル賞候補と目されていましたが
受賞の電話を受け取られて
その場に居合わせたラボメンバーと喜びを分かち合われたそうです

pd1np07

さすがに 嬉しそうな表情をされていますね


書き手は以前から 本庶先生は格好良い! と思っていました

印象に残っているのが もう10年以上前のことですが
書き手も参加していた免疫の国際シンポジウムで
日本の某免疫の大家の先生の講演で
大変たくさんのデータを次々に出され 息も絶え絶えに熱弁されたとき

質疑応答で本庶先生がさっと立たれて 静かに しかし重々しく

Is this a cause or result? それは結果なの原因なの?

と問われたのです

演者は一瞬 答えに窮されていましたが
あの質問はポイントを突いていたし 迫力があって格好良かった!

身近で聞いていて思わず鳥肌が立ちましたよ


受賞を祝うNHKのインタビューで

「何ができるかに走ると 面白くなくなるし 変な方向に行きかねない
 自分が何を知りたいかを追求することが大事だ」

と語られていましたが

それを聞いて あのシンポジウムでの質問を思いだしましたよ

pd1np08

再度 本庶先生 おめでとうございます!

 

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