左利き肝臓専門医ブログ

2017.11.09更新

以前の 食欲が起こる機序の話でも 今回の睡眠・覚醒に関する話題でも
しばしば登場してくるのが 大脳辺縁系です

今日は 大脳辺縁系 について説明します

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大脳辺縁系

大脳新皮質により 表面を覆う包まれた脳の奥深くに
その下に 視床・視床下部を囲むようにして 脳幹部の上に存在します

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生物の進化過程で もっとも古くからある脳で
魚類以降の全ての動物で 共通な機能に関係しています

動物が進化するほど 大脳皮質が大きくなるのに対し
辺縁系は 進化の過程でほとんど発達していません

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つまり
辺縁系は生物にとってプリミティブな機能を果しているわけで
それこそが 本能! なのですよ(笑)


辺縁系を覆っている灰白色の大脳新皮質は 哺乳類で進化した特有の脳で

特にヒトでは発達が著明で
思考をはじめとする働きにより 人間を人間たらしめています


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それに比べて 皮質の下に存在する辺縁系
思考や理性の制御が及ばない本能の世界を牛耳っているわけで

天邪鬼な書き手は 論理的な思考を良しとしながらも
ついつい 辺縁系が織り成す世界に興味津々になります(笑)


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で その辺縁系ですが

動物としての原初的な行動の源となっている部位で

*生命維持 本能行動 情動行動

*本能的な 情動の表出 意欲 食欲 性欲 睡眠 記憶

などに 関与しています


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また 対象物の好き嫌いの評価を 記憶をもとに行う部位でもあり

好きか嫌いかを 過去の記憶から判断し

好きと判断した場合は意欲を起こし
嫌いと判断した場合は それを避けるための信号を発します

その信号は

自律神経反応 内分泌反応に関与する 視床下部

行動・運動に関与する 大脳基底核

などに出力され

視床下部や基底核の働きを介して 辺縁系の機能が表われさます


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特に重要なのが

*情動(やる気 怒り 喜び 悲しみ等の快・不快)の発現 と

*記憶(短期記憶と長期記憶)の形成・保持 で


辺縁系の主要構成部位の 海馬扁桃体には

全ての皮質感覚連合野(視覚・聴覚・体性感覚・味覚・嗅覚)
からの情報が収束し

それらに基づき 扁桃体情動発現 海馬記憶形成・保持を行っています



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海馬
では

日常生活において入ってくる 目 耳 鼻などの感覚情報が全て集められ
それらが 記憶として整理されます

現在から2年前くらいまでの記憶が
短期記憶として形成され 海馬に蓄えられ

蓄えられた短期記憶の中でも重要だと判断されたものは
やがて大脳皮質に移行され 長期記憶として永久保存されます

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扁桃体では

大脳皮質全域の感覚系から
味覚 嗅覚 内臓感覚 聴覚 視覚 体性感覚などの情報

および 視床 海馬からも情報入力を受け

それらを記憶と照らし合わせて 
快・不快 好き・嫌い を判別します


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こうして得られた判断は 脳の他の部位へ情報発信され


視床下部に対しては 交感神経系を活性化する信号を発し
自律神経 内分泌反応が起こります

視床網様体核に対しては 反射亢進信号を発し
既に説明したように 情動発現による覚醒促進が生じます

また これも既に説明したように
腹側被蓋野 青斑核 外背側被蓋核には
ドパミン ノルアドレナリン アドレナリンの放出の信号が出され
覚醒維持に関与します

三叉神経と顔面神経には 恐怖の表情表現の信号が出され
それにより 喜怒哀楽の表情が作られ
恐怖感 不安 悲しみ 喜び などの情動発現がなされます



扁桃体と海馬の関連は深く

扁桃体は 海馬からの視覚 味覚などの記憶情報をまとめ
それが快か不快か(好き嫌い)を判断しますが

そうした扁桃体で作られた情報への快・不快感情や情動は
海馬に送られ 海馬での記憶形成に大きく影響します


このように 情動と記憶形成は
海馬と扁桃体の密接な関係により 互いに深く影響しあっています

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食欲の快楽の説明で登場した 快楽の情動を司る側坐核
辺縁系とのつながりが強く

大脳皮質から「何かを始めよう」という指令を受けると

側坐核が 扁桃体や海馬と相談し それが好きなことかどうかを判断し
やる気を出すかどうかを決めています

特に 扁桃体基底外側核 腹側被蓋野からのドパミン性入力は
側坐核での報酬系や快楽に関わる神経活動に 強い影響を及ぼします


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このように 大脳辺縁系は

大脳皮質が司る理性では なかなか制御・理解しきれない
まさに生き物としてのヒトの本能に深く関与していて


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書き手が興味を持つ理由が 解っていただけたでしょうか?(笑)

 

 

2017.11.08更新

脳の中にある睡眠中枢 覚醒中枢について説明してきましたが
その際 モノアミン系とか GABA系といった単語が出てきました

このモノアミンやGABAは
神経細胞が他の神経細胞に情報を伝達する際に分泌される物質で

神経伝達物質 と呼ばれます

今後もさまざまな病気や症状の話題で 神経伝達物質が登場するでしょうから
これを機会に解説しておきましょう

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神経細胞は 活性化されて興奮すると 他の神経細胞に情報を伝えます

その際に 直接 他の神経細胞に結合するのではなく
互いに近寄り お互いの間にシナプスと呼ばれるわずかな空間を形成します

活性化した神経細胞は 神経伝達物質を合成して
それを 細胞の末端からシナプス空間に向けて放出します

放出された神経伝達物質は 拡散によってシナプス空間を広がり
情報が伝えられる神経細胞の末端に存在する
神経伝達物質の受容体に結合して 情報伝達するわけです

放出された神経伝達物質は 過度な情報伝達が行われないように
速やかに酵素によって不活性化されるか
または放出した神経細胞に再吸収されます


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さて 神経伝達物質ですが 大きく3つのグループに分かれます

*アミノ酸系

*モノアミン系

*ペプチド系

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<アミノ酸系>

アスパラギン酸 グルタミン酸 グリシン タウリンなどがあり
睡眠中枢で出てきたGABAも この仲間に属します

@GABA

既に説明したように 睡眠中枢抑制性の神経伝達を担い
睡眠の維持に貢献しています

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@グリシン

抑制性神経伝達物質として機能し
睡眠の維持に関わっています

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@グルタミン酸

興奮性神経伝達物質で

記憶・学習などに重要な
高頻度に情報伝達が行われる現象(シナプス可塑性・長期増強)や
脳の発達期の経験依存的な神経回路網の形成(シナプス可塑性)
の場面で重要な役割を果たしています

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@アスパラギン酸


興奮性神経伝達物質として働きます



<モノアミン系>

1つのアミノ基と2つの炭素鎖からなる構造で

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ドパミン ノルアドレナリン アドレナリン セロトニン ヒスタミン

などが このグループに属します


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脳幹部 後脳 中脳に存在する神経細胞で作られることが多く

その神経細胞は 
脳全体に存在する多くの神経細胞とシナプスを形成するため
広範囲の脳に作用する 広汎投射神経系 として機能しています


@ドパミン

チロシンから作られ

*運動調節
*学習・記憶、注意、実行機能などの認知機能 特に作業記憶
*報酬系・快の感情

などの神経情報伝達に関与します

パーキンソン病は
黒質線条体のドパミンの減少により運動調節が上手くいかなくなる病気です


@ノルアドレナリン

チロシン ドパミンから作られ

橋の青斑核から脳全体に投射し
覚醒 記憶の固定 などに関与します


@セロトニン

トリプトファンから合成され

橋や脳幹にある縫線核群から大脳・小脳・脊髄全体に投射し
体温調節 摂食行動 睡眠 情動 学習・記憶 などに関与します


また セロトニンは
脳内のさまざまな神経伝達物質の調整役として機能して

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快に関わるドパミン 不快に関わるノルアドレナリン のバランス


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興奮に関わるドパミン ノルアドレナリン と
抑制に関わるGABA のバランスを

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調節しています


@ヒスタミン

ヒスチジンから合成され

覚醒の維持を助ける神経伝達物質として働きます



<ペプチド系>

アミノ酸が連結して出来た生理活性を有するペプチドで
神経ペプチドと呼ばれます

内分泌機能に関わる 視床下部・下垂体のオキシトシン バゾプレシン

摂食調節に関わる
オレキシン AgRP NPY POMC CART グレリン MCH

学習・記憶に関わる ソマトスタチン CRH αMSH

痛覚に関わる サブスタンスP ニューロキニンA βエンドルフィン

など 多種多様な神経ペプチドが属しています



脳の中では
こうしたさまざまな神経伝達物質が状況に応じて分泌され

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それにより神経細胞間で情報が伝達され
機能が増強されたり抑制されたりしているわけです


また 神経疾患や精神疾患の治療薬の多くが
これらの神経伝達物質の受容体の活性化作用や抑制作用を介して
その作用を発揮しています

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