左利き肝臓専門医ブログ

2018.10.11更新

多くの酵素は 円滑に機能を発揮するために
その働きを助けてくれる共同因子を必要とします


<共同因子とは?>

酵素分子の中には
しばしばタンパク質以外の低分子物質が含まれています

それらは共同因子と呼ばれ 酵素の働きを助けてくれます


配合団

補酵素 有機化合物

補助因子 ミネラル・金属イオン

の3つのグループがあります

ezm52


@単純酵素と複合酵素

共同因子の有無により 酵素は「単純酵素」と「複合酵素」に分けられます

単純酵素: タンパク質だけでできている酵素
 ペプシン アミラーゼ リパーゼなどの消化酵素が代表例です

複合酵素: タンパク質以外の共同因子との複合体
 酵素の大部分を占めます


複合酵素のタンパク質部分はアポ酵素と呼ばれ
非タンパク質の共同因子が結合するとホロ酵素と呼ばれます

ezm50

複合酵素は 共同因子がないと活性化しません


また 共同因子としてミネラルを必要とする酵素は
金属酵素と呼ばれます


では 各グループについて詳しく説明します


<配合団>


酵素のタンパク質にしっかり結合した分子です

*カタラーゼにおける ヘム

*コハク酸デヒドロゲナーゼにおける FAD

などが代表例です

ezm51



<補酵素>

10種類ほど存在し そのほとんどがビタミンB群です


@補酵素が結合すると 酵素の働きは活性化されます

*酵素が反応するとき
 基質と一諸に共存することが必要とされ
 酵素反応の進行によって基質とともに消費されます

ezm53
ezm54


*補酵素と酵素の結合は共有結合ではなく ゆるやかな結合です


@補酵素が働く反応

*酸化還元反応

*官能基の転移

などです

加水分解反応などの比較的単純な化学反応では 補酵素は必要とされません


ちなみに 官能基 とは

有機化合物の構造の基礎である炭素骨格に結合する原子集団で
水酸基 アミノ基 カルボキシル基 カルボニル基 
などがあります

ezm55
有機化合物の炭素鎖の
*どの場所に
*どのような官能基が結合しているか
によって その化合物の反応性や性質が規定されます

また 化学反応の際は
官能基に特異的な酵素の働きにより 有機化合物間で官能基の移動がなされ
化合物の性状が変化します

ezm56



@ビタミンBから出来ていることが多い


*食物から摂られたビタミンB群が
 体内で修飾を受けて補酵素に変わり機能を発揮します

ezm57

*エネルギー産生につながる
 タンパク質 糖質 脂質の三大栄養素の代謝反応に深く関与します


三大栄養素の代謝反応を簡単に復習すると 下図に示されるように

*糖質は 解糖系を経てピルビン酸からアセチルCoAになり

*脂質は 脂肪酸に分解され β酸化によりアセチルCoAになり

*タンパク質は アミノ酸に分解されて

それぞれ代謝の最終ステップであるTCA回路に流れ込みます


補酵素は これら各栄養素の代謝のさまざまな反応を
円滑に行えるようヘルプし 生体内でのエネルギー産生を支えます



ezm58


@ひとつの補酵素が さまざまな代謝系に対応し得ます


*例えば コエンザイムA(CoA)は
 置かれた状況により TCA回路 β酸化 のいずれにも関与します

ezm58a


@補酵素の種類と機能


ビオシチン:カルボキシ基化を行う 原料はビオチン

コパミド補酵素:アルキル化などを行う 原料はB12・コバラミン

テトラヒドロ葉酸:炭酸基転移を行う 原料は葉酸

チアミンピロリン酸:アルデヒド転移 脱炭酸を行う 原料はB1・チアミン

ピリドキシサルリン酸:アミノ基転移 ラセミ化 脱炭酸などを行う
            原料はB6・ピリドキシン

コエンザイムA:アシル基転移を行う 原料はパントテン酸

NAD NADP:酸化還元を行う 原料はニコチンアミド ナイアシン

FAD FMN:酸化還元を行う 原料はB2・リポフラミン


<補助因子:ミネラル・金属イオン>

Mg Mn Zn Ca Cu Fe などのミネラルは
種々の酵素分子に取り込まれ
補助因子として触媒作用に関与します


ezm59


@関与する反応

*加水分解酵素を含め
 補酵素よりも より多くの種類の酵素の働きを補助します


@補因子の種類と機能

亜鉛
 アルコールデヒドロゲナーゼ カルボキシペプチダーゼA
 などの酵素を補助し
 細胞分裂 成長 エネルギー産生に関わります 

Mg
 ATPアーゼなどの酵素を補助し ATP産生に関わります 

Cu
 抗酸化酵素SOD チロシナーゼ アセトアルデヒド脱水素酵素
 などの酵素を補助し
 抗酸化反応などに関わります

Ca
 タカアミラーゼなどの酵素を補助し 代謝反応などに関わります

セレン
 グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素を補助し
 抗酸化反応などに関わります

ezm60

などがあります


来週からビタミン ミネラルについて説明しますが
それらの多くが補酵素 補助因子として酵素反応に関わっていることを
覚えておいてください

 

2018.10.10更新

酵素はどのようにして触媒反応を行っているのでしょう?

実はその詳細はいまだ明らかにされていませんが
以下に示す機序が考えられています


<酵素は活性化エネルギーを下げ 反応を容易にする>

一般に化学反応は 下記のようなプロセスを経て進行します

@活性化エネルギー

*反応物質に化学反応が起こるには
 エネルギーの高い山を超える必要があります

*反応物質が この山を超えられるだけのエネルギーを有していないと
 化学反応は完遂できません

*山を超えるのに必要なエネルギーを「活性化エネルギー」と呼びます


@活性化状態


*化学反応が起こると
 反応物質のなかで 原子の組み換えが連続的に起こります

*活性化エネルギーが最大になると 化学反応が最盛期になります

*このエネルギーの山で活発に反応が起きている状態が「活性化状態」です


@反応熱

*反応が生じると多量の熱が放出され 
 最終的に反応物質よりエネルギー状態が低い生成物質が出来ます

*放出された熱・エネルギーは「反応熱」と呼ばれます

*反応熱により 反応物質の分子が加熱され活性化されるので
 それ以降も反応が連鎖的かつ爆発的に進んでいくことができます



ezm41


では 酵素が加わると化学反応はどのように変化するのでしょう?

@酵素の働きにより 活性化エネルギーを抑えられる

*酵素の触媒作用により 活性化エネルギーを低くすることができるので
 化学反応が迅速に進行すると考えられています


ezm41a


*しかし 活性化エネルギーを低くする詳細な機序はわかっていません


<酵素と基質が結合する機序>

@鍵と鍵穴

*基質の形状と 酵素の基質結合部位の形状が
 3次元構造的に「鍵と鍵穴(立体構造上のくぼみ)」の関係にあり

 酵素の基質結合部位に存在するくぼみ(鍵穴)に
 うまく結合できる構造の基質(鍵)だけを
 酵素の作用が発揮される活性中心へ導くことで酵素作用が発現される

 と考えられています

ezm32

*基質と酵素の活性中心は
 水素結合 イオン結合といった反応により結合します


<酵素と基質の結合により起きる立体的な変化>

@エントロピー・トラップ

*酵素の機能部位である活性中心では
 基質が酵素に結合する部位(結合部位)と
 酵素が触媒作用を発揮する部位(触媒部位)は
 別々に存在します

*基質は結合部位に結合すると自由が奪われ
 活性中心の触媒部位に正面から向かわされます

*この作用により 反応全体のエントロピーが減少し
 活性化エネルギーを下げることができます

ezm42


@基質を触媒部位に適切に向かわせることで
 基質の有効濃度を高める効果もあります


@誘導適合

*基質の結合により 酵素の立体構造が変化し
 触媒部位が適切な位置に配置され
 結合した基質とうまく向いあえて反応が起こりやすくなります


@基質分子の立体構造をひずませる

*結合により
 基質分子が圧迫されたりねじられたりして切れやすくなるため
 触媒反応が起こりやすくなります


こうしたさまざまな構造上の立体的変化により
酵素の触媒作用が円滑に効率的に進行すると考えられています



一方 酵素反応は過剰に行われないように調節されています

<酵素反応の調節機構>

@フィードバック制御

*代謝反応で生じた生産物が過剰になると
 その代謝反応を触媒している酵素の活性にフィードバック阻害がかかるので
 過剰な生産は制御されます

*反応の最終産物の代謝生産物が酵素の阻害剤となり
 フィードバックをかけることがよくあります


ezm43


@アロステリック制御

*フィードバック調節のひとつで
 酵素機能が他の化合物(エフェクター)によって
 調節されることです

*エフェクターは
 酵素が関わる代謝の生産物のこともあり
 代謝反応とは全く関係ない物質のこともあります

*エフェクターは 酵素の基質とは構造が大きく異なり
 酵素の基質結合部位とは異なる調節部位(アロステリック部位)に
 結合すると考えられています

ezm44

*この結合により 酵素の立体構造が変化し
 基質結合部位の構造も変化すると
 酵素の触媒活性や複合体形成反応が正または負に制御されます

ezm45

*酵素の活性を
 促進するエフェクターは アロステリック・アクティベーター
 抑制するエフェクターは アロステリック・インヒビター
 と呼ばれます

*アロステリック制御を受ける酵素の多くは
 複数のサブユニットの会合体の構造をしていて
 活性中心とアロステリック部位が
 別々のサブユニットに存在していることもあります



酵素そのものも
さまざまな機序により 活性化されたり失活したりします

<酵素の活性化>

@酵素の前駆体の切断

不活性な前駆タンパク質としてつくられ
ペプチド鎖の一部が切られて 活性型酵素に変化するものがあります

ezm46

*ペプシノーゲン → ペプシン
*トリプシノーゲン → トリプシン
*キモトリプシノーゲン → キモトリプシン
*プロエラスターゼ → エラスターゼ
*プロトロンビン → トロンビン

など


@リン酸化 脱リン酸化

*酵素のタンパク質構造に セリン トレオニン チロシン残基がある場合
 そのOH基はリン酸化されることがあります

ezm47

*リン酸化により酵素が活性化することがあり
 その場合は脱リン酸化が起こると酵素活性は失われます

*逆にリン酸化により 酵素が不活化されることもあります

*リン酸化・脱リン酸化は
 生体内で幅広く行われている重要な反応なのです


ezm48


@こうした
 ペプチド鎖の切断 リン酸化・脱リン酸化といった酵素活性の制御も
 全て酵素反応により行われます


<酵素活性の失活>

@立体構造の変化

酵素が活性を失う原因には その立体構造の変化が深く関与しています


@原因

*失活の原因として
 熱 pH 塩濃度 溶媒 他の酵素による作用 などが知られています

*これらの条件が大きく変わると
 酵素の立体構造が不可逆的に変わり 酵素は失活してしまうのです

ezm49



今日のお話は 基礎的な内容で難しかったかもしれませんが

*なぜ酵素の触媒作用により化学反応がスムーズに進むか
*酵素反応は制御されている
*酵素活性も制御されている

といったイメージを少しでも持っていただけたら幸いです


このあたりは
医学生の頃に生化学で 必死に でも面白く勉強したので
とても懐かしいです

アロステリック制御のことを知って興奮したのを 思い出しました(笑)

 

 

2018.10.09更新

酵素は 生体内でどのような働きをしているのでしょう

<酵素の働き>

@生体内での酵素の役割

消化酵素により
 食物から摂取した栄養素を代謝すること
 
代謝酵素により
 生命活動に必要なさまざまな化学反応を触媒すること 

です

ezm23

生命現象は多くの代謝経路を含み
それぞれの代謝経路は 多段階の化学反応からなっています

細胞は1個当たり100万回の異なる化学反応を
同時に連続して行っています


@細胞内での酵素反応

生命活動に関わるさまざまな化学反応を担当するために
細胞内ではとても多くの種類の酵素が働いています

*酵素の働きがなければ
 膨大な数の連続した化学反応が円滑に遂行できません

*それぞれの酵素は
 自分の形に合った特定の原料化合物(基質)を外から取り込み
 担当する化学反応を触媒し 生成物を外へと放出し
 そして再び 次の反応のために別の基質を取り込みます

*こうしたさまざまな反応により 生命活動が維持されていきます
 

ezm31

上の図に示されるような 複雑で入り組んだ多くの化学反応が
細胞の中では同時進行で行われていて
酵素がそれを助けています


@酵素反応のスピードは とても速い

*ひとつの酵素が1分間に合成・分解する分子は平均3600万個とされ
 1分間に4億回の反応を行う酵素もあります

*代謝活動が盛んな肝細胞には 数百種類の酵素が存在していて
 それぞれが1秒間に100万回の反応を行っています


ひとつの細胞のなかで
とてつもない数や種類の酵素が
ものすごいスピードで化学反応を行っていることを
イメージできるでしょうか?


<基質特異性 反応特異性>

これだけ多種多様な生体内の化学反応を
間違えのないように秩序立てて円滑に進めるため
酵素は高度な基質選択性と反応選択性を有しています


つまり 酵素は 厳密に

*細胞内で 必要なときに 必要な原料だけを選択し(基質選択性)

*特定の反応のみを触媒して
 目的の生成物だけを産生する(反応選択性)

のです

ezm32


@基質特異性

*酵素は 作用する物質を選択する能力を持ち
 その特性を基質特異性と呼びます

*基質特異性は 鍵と鍵穴のような立体構造に基づいていて
 ぴったり合った物質だけが基質になるのです

*基質が酵素に結合すると
 酵素は立体構造の変化を起こし 安定した構造をとるようになります

*この構造変化により
 酵素が触媒反応に適した形になり
 化学反応がスムーズに促進されるようになるのです


@反応特異性

*酵素は1つの化学反応しか触媒しません
 これを反応特異性と呼びます

*消化酵素などいくつかの例外を除けば
 1つの酵素は 生体内の複雑な代謝経路の1か所だけを担当しています

*これは 生体を恒常的に維持するための重要な性質です


<酵素が働くのに適した条件>

酵素が役割を充分に発揮するのに適したpHや温度があります

これらの至適条件は
酵素が機能できる立体構造をとることができる状況なのです


@至適pH

*普通は 中性のpH7付近で最もよく働きます

*胃のタンパク分解酵素のペプシンは pH1.5と例外です


ezm33

*至適pH以外の状況だと
 酵素の立体構造が変化するので機能できなくなります


@至適温度

*普通は 35~40℃です

ezm34

*温度を上げると酵素反応は速くなりますが
 60℃を超えると構造変化が起こり 変性して失活してしまいます


<大切なのは立体構造>

酵素は 大切な機能を有するタンパク質です

タンパク質がその機能を発揮するためには
適切な立体構造をとることが必要です

今日説明した 基質特異性も 至適pH 温度も
酵素が充分に機能を発揮できる立体構造がとれることと
関係しています

ここが タンパク質の興味深い点です

 

2018.10.04更新

たくさんの種類がある酵素は いくつかの視点から分類されています


<働きによる分類>

消化酵素 代謝酵素 の 大きくふたつに分けられます

ezm21


@消化酵素


摂取された栄養素を消化・分解し 吸収されやすい形にする酵素で

トリプシンは 1時間で300gのタンパク質を消化

リパーゼは 1時間で175gの脂質を消化

アミラーゼは 1日で300gの炭水化物を消化

する力を有しています

ezm22


@代謝酵素

エネルギー産生 呼吸 筋肉の収縮 体温調節
細胞や遺伝子の修復 毒素の解毒 免疫反応 などといった
消化以外の生命維持のために行われる 全ての一連の化学反応を司ります

ezm23


消化酵素と代謝酵素を合わせたものを潜在酵素」と呼び
酵素の総合力としてとらえられます


@消化酵素と代謝酵素のバランスが重要です

前回も説明しましたが
体内の潜在酵素の総量は決まっているため
消化酵素 代謝酵素のどちらかが多くなるともう一方は少なくなります


ezm24


そして 消化酵素の占める割合が小さい方が健康には良いとされます

健康を維持しているのは代謝酵素なので
代謝酵素が欠乏すると多くの病気が生じるのです


ezm25


しかし 現代の食生活は 多量の消化酵素を必要とします

ファストフード 無酵素の熱加工食品
さまざまな食品添加物 白砂糖 トランス脂肪酸 

などの摂取により

潜在酵素の多くが消化酵素として使われるので

代謝酵素が不足してしまい
その結果 老化が進み 寿命が短くなります


ラブナーの法則という
生物の寿命は潜在酵素の消耗度に反比例する 
ことを証明したものがあり

過度な酵素消費が強いられる環境は良くないと考えられています

毎度のことですが
現代の便利な食生活は見直す必要がありそうです


<所在による分類>

酵素の存在部位により

*生体膜(細胞膜や細胞小器官の膜)に結合している 膜酵素

*細胞質に存在する 可溶型酵素

*細胞外に存在する 分泌型酵素

に分類されます


@膜型

エネルギー保存や物質輸送に関与するものが多く
生体膜の機能を担う重要な酵素が多い

ATPアーゼ ATP合成酵素 呼吸鎖複合体 バクテリオロドプシン 
レセプタータンパク チャネル トランスポーター関連酵素

などが 代表的な膜酵素です


@可溶型

細胞質に存在している酵素は 可溶型で水によく溶け
その多くは 細胞質での代謝に関わっています

糖質 脂質などの栄養素を代謝する酵素が代表例です


@分泌型

可溶型のなかで
細胞内で産生された後に 細胞外に分泌されるものです

胃や腸で食物を消化する消化酵素が代表例です


<関与する酵素反応による分類>

酵素が関与する反応の種類により 下記の6種類に分類されます

@酸化還元酵素 オキシドレクターゼ

酸化還元反応を触媒します

*脱水素酵素・デヒドロゲナーゼ

*還元酵素・レダクターゼ

*酸化酵素・オキシダーゼ

*酸素添加酵素・オキシゲナーゼ

があります


@転移酵素 トランスフェラーゼ

ある化合物に結合している官能基(水酸基など)を
他の化合物に移す反応を触媒します

*アシル基転移酵素・トランスアシラーゼ

*アミノ基転移酵素・トランスアミナーゼ

*リン酸転移酵素・ホスホトランスフェラーゼ

があります


@加水分解酵素 ハイドロラーゼ

加水分解反応を触媒します

*エステラーゼ

*グルコシダーゼ

*ペプチダーゼ(ペプシン トリプシンなど)

があります


@脱離酵素 リアーゼ

化合物中に存在する基を脱離し 二重結合を生じる反応

二重結合にある基を 付加する反応

を触媒します

*脱炭酸酵素・デカルボキシダーゼ

*脱アミノ酵素・アミノリアーゼ

*脱水酵素・ハイドラーゼ

があります


@異性化酵素 イソメラーゼ

ある分子が 原子の組成を全く変えずに
原子の配列のみを変化させて
別の分子に変換する異性化反応を触媒します

*ラマターゼ

*エピメラーゼ

*ムターゼ

があります


@合成酵素 リガーゼ

ATPのエネルギーを利用して
ふたつの分子をつなぐ合成反応を触媒します

*シンターゼ

*カルボキシラーゼ

があります

ezm26


色々な聞いたことがない反応がたくさんあって??かもしれませんが

体の働きは こうした多くの種類の反応により形成されていて
酵素がそれらの働きを助けて
生命活動が円滑に行われているのです

こうしている間にも 酵素は体の色々な場所で働いているのです!

 

2018.10.03更新

今日から 微量栄養素であるビタミン・ミネラルについて解説します

微量栄養素の主たる働きは
生体内でさまざまな化学反応を行っている酵素を助けることです

ですから まず 微量栄養素が働きかける酵素 について解説します


<酵素とは何か?>

触媒作用を有するタンパク質です

ezm01

触媒とは 
それ自体は変化せずに 化学反応の進行を速める物質のことで

酵素は触媒なので それ自体は反応の過程で消費されることはなく
反応の前後で変化することもありません

ezm01a


@数多くの酵素が発見されています

1833年 フランスでのアミラーゼ(ジアスターゼ)の発見が最初で
すぐあとの1836年には ドイツでペプシンが発見されました

現在では 2万種類以上の酵素があるとも言われており
タンパク質分解酵素だけで9000種類以上あります

そして 細胞を作るために1万3000種類の酵素が働いています

たとえば
肝機能の血液検査でお馴染みの
AST ALTは タンパク質を分解してアミノ酸を作る酵素ですし
γGTPは 解毒に関係している酵素です

ezm02


<酵素の機能>

食物を消化する段階から
 栄養素吸収・分布・代謝・排泄に至るあらゆる過程に関与しており
 生体が物質を変化させて利用する反応に欠かせません

エネルギー産生 細胞の新陳代謝
 組織や遺伝子の修復 毒素・老廃物の排泄など
 さまざまな生体反応に関与しています


ezm03


このように
酵素の働きがなければ 生きていくための生命現象が維持できない
と言っても 過言ではありません


<酵素の性質>

@特異性と選択制

*作用する物質(基質)が1種類だけ(基質特異性

*進行させる反応も1種類だけ(反応選択性

という性質を有しているのが最大の特徴です

ezm04

基質特異性は 酵素と基質の立体構造の親和性に依ります

酵素(下図のA)の基質結合部位と
構造的に親和性がある基質(下図だとB)は酵素に結合できますが
親和性のない基質(下図のC)は結合できません


ezm05


この特異的な性質により
生命維持に必要なさまざまな化学変化を起こさせることが可能となり
代謝に関与する化学反応の数だけ酵素が必要となります


@スピード

反応のスピードが非常に速いのも 酵素の大きな特徴です

ezm05a


グラフが示すように 反応速度が急速に立ち上がっていきます


@適応分泌

酵素の多くは 前駆物質のような不活性型として作られ
必要時に体内で活性化されます

*必要なときに 必要な分だけ 分泌される
*身体が食物にふさわしい種類の酵素を選択して 適量を分泌させる

こうした機序により 体内で適切な酵素反応が行われます

ちなみに酵素は睡眠中に作られることが多いようです
睡眠 大事ですね!


<寿命と産生総量>

@寿命がある

酵素には寿命があり
短いもので数時間 長くても数十日です


@生涯で産生される総量に限りがある

一生の間に産生される酵素の総量は決まっていて
この総量が潜在酵素」と呼ばれます

150歳分くらいはあると言われていますが
加齢とともに産生量は減っていき 40歳を超えると急激に減少しますし

また加齢により質も変化し力が衰えます

ezm06


体内で作られる潜在酵素は

消化酵素:食物の消化・吸収に関わる 

代謝酵素:エネルギー産生 解毒などの生命活動に関わる 

に大別されます

ezm07


@無駄遣いされている

現代生活は 酵素を無駄遣いさせています

*ファストフード 加熱調理食物 スナックなどの悪しき食習慣
*喫煙 大量飲酒
*ストレス

などは 必要以上に消化酵素を消費させてしまい
体内の消化酵素と代謝酵素のバランスが乱れてしまいます

ezm08

この点については あとで詳しく解説します


<医療での活用>

酵素は実際の医療の現場にも貢献しています

@血液検査

上述した肝機能検査で用いられるAST ALTのように
酵素が存在する臓器から血液中に逸脱した酵素の量を計測して
病気の活動性を評価できます

ezm09


@治療

酵素作用を調節する治療薬は 日々の診療で用いられています

酵素による調節の失調が病気の原因である場合や
コレステロールや尿酸が体内で作られ過ぎる場合は
酵素活性を抑制する治療薬が有効です

高血圧に関与するアンジオテンシン変換酵素を阻害して
 血圧を下げるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

ezm10


インスリンを分泌させ糖尿病を改善するインクレチン
 分解してしまう酵素のDPP-4の作用を阻害して
 インクレチンを働かせるDPP-4 阻害薬

ezm10a



*肝臓でコレステロールを合成する酵素のHMG-CoAを阻害して
 コレステロール合成を抑えるスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)

ezm11


*尿酸を合成する酵素キサンチンオキシダーゼを阻害して
 尿酸合成を抑えて尿酸値を下げるキサンチンオキシダーゼ阻害薬

ezm10b


などが 良い例です

こうしてみると 生活習慣病の治療薬には酵素阻害薬が多いことがわかります

 

2018.10.02更新

2018年度のノーベル医学・生理学賞の受賞者が発表され

本庶佑先生が 受賞されました!

pd1np00

おめでとうございます!


本庶先生のご専門は免疫学で
書き手も日本免疫学会の会員ですので
先生の数々の輝かしい業績はよく存じあげています

最初の頃は 抗体の遺伝子のクラススイッチを研究されていて
膨大な数の細菌やウイルスを認識する抗体の遺伝子が
どのようにして構成されるかを明らかにされました

T細胞受容体の遺伝子の研究をされて
1986年に日本で初めてノーベル医学・生理学賞を受賞された
利根川進先生のライバルと目されていたこともあります


今回 本庶先生はアメリカのアリソン先生と共同受賞されましたが
評価されたのは「免疫抑制分子を応用したがん免疫療法」に関する研究です

pd1np01

少し長くなりますが 詳しく解説します

ウイルスやがん細胞を攻撃するT細胞(下図右のCD4)は
マクロファージなどの抗原提示細胞(下図左のDC)の
MHCⅡ分子が提示するウイルスやがん細胞の抗原を 
それに特異的なT細胞受容体(TCR)が認識して(下図の真ん中の部分)
それらを特異的にやっつけることができるようになります


pd1np10

抗原提示細胞には
T細胞を活性化する分子 抑制する分子が存在して
T細胞上に発現しているそれら分子の受容体と結合することで
MHC分子とT細胞受容体により誘導される反応を
活性化したり抑制したりします

これらは補助刺激分子 co-stimulatory molecule と呼ばれています

下図には 多くの種類の活性化分子 抑制分子が並んでいますが

pd1np02

今回の主役の免疫抑制反応を司る代表格が

抗原提示細胞に発現するリガンドCD80 CD86と
T細胞上に発現する受容体CTLA-4

抗原提示細胞に発現するリガンドPD-L1 PD-L2と
T細胞上に発現する受容体PD-1

の組合せです


そしてCTLA-4の基礎研究を行う過程で
がん治療への応用を最初に開始したのがアリソン先生

pd1np03a

PD-1を発見し 紆余曲折を経てがん治療への応用をされたのが本庶先生で

pd1np03b

今回の同時受賞になりました

pd1np4


で なぜ免疫抑制分子ががん治療に応用されたかというと

がん細胞は
いくつかの免疫抑制分子のリガンドを発現していて
自らを攻撃しようとするT細胞の抑制性受容体に結合して
T細胞を働かなくさせて攻撃を逃れて 生き延びてしまうのです(下図A)

そこでT細胞の抑制性受容体を 特異的な抗体でブロックすれば
がん細胞からの抑制が働かなくなり
T細胞ががん細胞を退治することができる(下図B) 

というメカニズムです

pd1np12


ちなみに がん細胞はPD-1のリガンドは発現していますが
CTLA-4のリガンドは発現していません
(下図のいちばん下の赤い細胞をご覧ください)

pd1np05

 

ですから抗PD-1抗体の方が抗CTLA-4抗体より
より大きな抗がん作用を発揮します

pd1np06

本庶先生が開発されたオプジーボという薬は
ここ数年で さまざまな種類のがん治療に用いられ
良好な治療効果が得られています

pd1np06a

まさに がん治療の新たなステージを切り開いたというわけです


でも 本庶先生の凄いところは
最初からがんを念頭にPD-1の研究をされていたのではないことです

1994年 T細胞に発現する得体の知れない分子PD-1を同定され
やがてそれが 免疫抑制性の補助分子であることがわかり
2000年代になって がん免疫の研究に応用されるようになり
2014年にオプジーボが開発されたのです

地道なコツコツとした基礎研究が花開いたのです


本庶先生は 数年前からノーベル賞候補と目されていましたが
受賞の電話を受け取られて
その場に居合わせたラボメンバーと喜びを分かち合われたそうです

pd1np07

さすがに 嬉しそうな表情をされていますね


書き手は以前から 本庶先生は格好良い! と思っていました

印象に残っているのが もう10年以上前のことですが
書き手も参加していた免疫の国際シンポジウムで
日本の某免疫の大家の先生の講演で
大変たくさんのデータを次々に出され 息も絶え絶えに熱弁されたとき

質疑応答で本庶先生がさっと立たれて 静かに しかし重々しく

Is this a cause or result? それは結果なの原因なの?

と問われたのです

演者は一瞬 答えに窮されていましたが
あの質問はポイントを突いていたし 迫力があって格好良かった!

身近で聞いていて思わず鳥肌が立ちましたよ


受賞を祝うNHKのインタビューで

「何ができるかに走ると 面白くなくなるし 変な方向に行きかねない
 自分が何を知りたいかを追求することが大事だ」

と語られていましたが

それを聞いて あのシンポジウムでの質問を思いだしましたよ

pd1np08

再度 本庶先生 おめでとうございます!

 

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