交感神経と副交感神経の働き方
2018.02.01更新
交感神経と副交感神経の違いについて もう少し説明します
交感神経の中枢は 脊髄にあります
脊髄は 上図の左端に描かれている
背骨のなかを通る 脳から出た神経の束で
背骨と背骨の隙間から 赤い線で示された神経が
末梢の器官に向けて出入りしています
各器官から出る求心路の神経は 脊髄から脳に情報を上げ
脳から出た遠心路の神経は 指令を各器官に伝えます
脊髄の首 胸 腹部に存在する 赤丸で示された神経節が中継地となり
ここで 脳から伸びてきた神経細胞は 末梢器官に行く神経細胞と
シナプスを作って 情報を伝えます
*ふたつの神経細胞の連結を シナプス と呼び
シナプスの形成により
ひとつの神経細胞から次の神経細胞に情報が伝わります
一方 副交感神経の中枢は 脳幹と 脊髄の下部の仙髄にあります
上図の右側の上の方に示されている 脳幹に起始する副交感神経は
眼の瞳孔などの動きを調節する動眼神経
涙腺 唾液腺などの働きを支配する顔面神経
耳下腺を支配する舌咽神経
全身の器官の働きを調節する迷走神経
などがあります
これらの神経は 脳神経 と呼ばれています
一番下の仙髄 から出る副交感神経は
直腸 膀胱の働きを調節して 排便・排尿に関わります
興味深いのは 中継地となる神経節での
脳から来た神経細胞と 末梢器官に行く神経細胞の シナプスの作り方で
交感神経では
ひとつの脳から来た細胞が 複数の末梢器官に行く神経細胞とシナプスを作り
さらに 末梢器官に行く神経細胞は複数の器官に分布して
情報を分散化する傾向があるのに
副交感神経では そうしたことはなく
脳から来た細胞は ひとつの末梢器官に行く神経細胞とだけシナプスを作り
末梢器官に行く神経細胞は ひとつの器官にのみ分布します
交感神経の反応が 全身の広範囲に及ぶのに対して
副交感神経の反応は 限局しているのです
さて 自律神経細胞が 器官に作用してその働きを調節するときは
神経細胞の末端から化学物質が放出され
器官に存在する受容体に結合して 機能を発揮しますが
交感神経で働くのは ノルアドレナリンで
副交感神経で働くのは アセチルコリンです
ノルアドレナリンは
交感神経の神経細胞に取り込まれたアミノ酸のチロシンが
ドーパ→ドパミン→ノルアドレナリンという代謝反応を経て作られます
ノルアドレナリンの受容体には α βの2種類があって
α受容体には α1 α2
β受容体には β1 β2 β3
のサブタイプがあります
受容体のこれらの種類 サブタイプは
作用を増強する薬 作用を遮断する薬への親和性により分類されますが
器官によって発現している受容体の種類 サブタイプが異なるので
特定の薬剤により
器官や作用に選択的に 増強あるいは遮断することができます
アセチルコリンは
副交感神経の神経細胞に取り込まれたコリンから合成されます
アセチルコリンの受容体は
ニコチン受容体 ムスカリン受容体の2種類があります
ニコチン受容体は
交感神経 副交感神経それぞれの自律神経節と 副腎髄質 に存在し
ムスカリン受容体は
副交感神経の最終的な受容体として 全身の器官に広く存在しています
今日は 少しオタクな内容になりましたが
交感神経と副交感神経の違いを イメージしていただけたでしょうか?
次回から 自律神経失調症の説明をしていきます