左利き肝臓専門医ブログ

2017.11.10更新

そろそろ不眠症の解説に移ろうと思いますが

睡眠のメカニズムの解説シリーズの最後に 夢の話 をします

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既にご説明したように 夢は レム睡眠のときに見ます

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睡眠が佳境に入り
徐々にノンレム睡眠が減り レム睡眠が増えてくると
ヒトは夢を見始めます

そして レム睡眠の比率が高くなる明け方にかけて
夢を見る確率もどんどん上がってくる

夢が終わった途端に目覚めた
という経験をされた方もおられるでしょう



夢というものは 奇妙なものです

論理的 物理的におかしな内容で
不安 心配 恐怖などと密接に関連していることが多い

そんな夢を見る理由は
レム睡眠中に脳内で 活動している部位 抑制されている部位との
関連により 説明できます


drm01


レム睡眠中には 前回説明した大脳辺縁系の
記憶(海馬)や情動的反応(扁桃体)に関した部分が
激しく活動しています

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だから夢には 不安・恐怖・心配などに関連する感情的なストーリーが多い

逆に 理性的な判断をする前頭葉(背外側前頭前野)は抑制されているので
論理的におかしい内容の夢を見ても おかしいと判断できない


また 夢を “見る” 理由は
目から情報が伝達される一次視覚野は 抑制されているけれど
意味やイメージを認識する二次視覚野は 活動しているからです


つまり
レム睡眠中に起こっている 脳の強い活動性反応で生じるイメージ が 

夢の正体というわけです


slp35




夢のストーリーの素材になるのは 
脳に貯蔵されている記憶された情報で
過去の体験から得られた情報が合成されたものが 夢なのです

特に 過去数日以内の体験であることが多いとされています

で そうした過去の情報がストーリーとして合成される際に
脳の色々な領域がバラバラに興奮しているため
奇妙な矛盾した内容・ストーリーになるのでは? と推測されています

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では ヒトが夢を見ることには どんな意義があるのか?


昔の人たちは 夢をポジティブにとらえました

古代の人たちは
何らかの暗示 未来を予見するもの 超自然的なもの
神や悪魔からのメッセージ と考えていました

プラトン
ヒトの奥に潜む 荒々しく野性的で無法な要求 ととらえ

フロイト
夢は意識下にある 潜在的で抑圧された欲求が現れたもの
夢を見ることで満たされない欲求が解放され 精神の平衡が保たれると考え
名著の夢判断を著しました

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フロイトといえば
医学生の頃 精神医学に興味を持っていた書き手は
かなり真剣にフロイトを勉強したことがあったので 懐かしいです

もっとも 夢の解釈はユングの方が面白いと思うようになり
結局は日和見して内科を専門にして 精神科からは逃げてしまったので
ちょっとほろ苦い思い出ですが(苦笑)


さて 閑話休題で

では 現代の脳科学者たちは 夢をどのように見ているかというと

DNAの二重らせん構造の発見者のクリック
夢は不要な情報 記憶を消去するための現象で 忘れるために夢を見る と
ロマンティストたちががっかりするようなことを語りました

そして 多くの脳科学者たちは
夢は 脳がレム睡眠中に自らのメインテナンス活動する過程で起こる
ある種の幻覚やノイズに過ぎず
ヒトは その幻想のなかで疑似体験しているに過ぎない
といったとらえ方をしているようです


つまり 神経科学的には 夢には何の役割もない

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ロマンティストの読み手の皆さんには申し訳ありませんが
正直言って書き手も ノイズ説に賛成です

まあ もともと書き手は ロマンティストではありませんから?(苦笑)


うーん なんとも夢がない夢の話になってしまい 申し訳ありませんが

でも 現代の神経科学者たちからその意義を否定されている夢にも
重要な働きを示すことがあるようです

それは 思いつき アイデア を生むことです!

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ミシンの機械で 針の穴に糸を通すアイデアや
化合物のベンゼン環の環状構造は
それぞれ発見者が夢を見ているときに思いついたそうです

また日本初のノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士は
夢の中で中間子理論のヒントを得たそうです

夢を見ている間は 理性的な判断が抑制されているが故に
常識にとらわれない発想が得られるのでは?

と推測されています

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夢 やはり 捨てたものではないのかも?(笑)

 

2017.11.09更新

以前の 食欲が起こる機序の話でも 今回の睡眠・覚醒に関する話題でも
しばしば登場してくるのが 大脳辺縁系です

今日は 大脳辺縁系 について説明します

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大脳辺縁系

大脳新皮質により 表面を覆う包まれた脳の奥深くに
その下に 視床・視床下部を囲むようにして 脳幹部の上に存在します

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生物の進化過程で もっとも古くからある脳で
魚類以降の全ての動物で 共通な機能に関係しています

動物が進化するほど 大脳皮質が大きくなるのに対し
辺縁系は 進化の過程でほとんど発達していません

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つまり
辺縁系は生物にとってプリミティブな機能を果しているわけで
それこそが 本能! なのですよ(笑)


辺縁系を覆っている灰白色の大脳新皮質は 哺乳類で進化した特有の脳で

特にヒトでは発達が著明で
思考をはじめとする働きにより 人間を人間たらしめています


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それに比べて 皮質の下に存在する辺縁系
思考や理性の制御が及ばない本能の世界を牛耳っているわけで

天邪鬼な書き手は 論理的な思考を良しとしながらも
ついつい 辺縁系が織り成す世界に興味津々になります(笑)


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で その辺縁系ですが

動物としての原初的な行動の源となっている部位で

*生命維持 本能行動 情動行動

*本能的な 情動の表出 意欲 食欲 性欲 睡眠 記憶

などに 関与しています


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また 対象物の好き嫌いの評価を 記憶をもとに行う部位でもあり

好きか嫌いかを 過去の記憶から判断し

好きと判断した場合は意欲を起こし
嫌いと判断した場合は それを避けるための信号を発します

その信号は

自律神経反応 内分泌反応に関与する 視床下部

行動・運動に関与する 大脳基底核

などに出力され

視床下部や基底核の働きを介して 辺縁系の機能が表われさます


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特に重要なのが

*情動(やる気 怒り 喜び 悲しみ等の快・不快)の発現 と

*記憶(短期記憶と長期記憶)の形成・保持 で


辺縁系の主要構成部位の 海馬扁桃体には

全ての皮質感覚連合野(視覚・聴覚・体性感覚・味覚・嗅覚)
からの情報が収束し

それらに基づき 扁桃体情動発現 海馬記憶形成・保持を行っています



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海馬
では

日常生活において入ってくる 目 耳 鼻などの感覚情報が全て集められ
それらが 記憶として整理されます

現在から2年前くらいまでの記憶が
短期記憶として形成され 海馬に蓄えられ

蓄えられた短期記憶の中でも重要だと判断されたものは
やがて大脳皮質に移行され 長期記憶として永久保存されます

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扁桃体では

大脳皮質全域の感覚系から
味覚 嗅覚 内臓感覚 聴覚 視覚 体性感覚などの情報

および 視床 海馬からも情報入力を受け

それらを記憶と照らし合わせて 
快・不快 好き・嫌い を判別します


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こうして得られた判断は 脳の他の部位へ情報発信され


視床下部に対しては 交感神経系を活性化する信号を発し
自律神経 内分泌反応が起こります

視床網様体核に対しては 反射亢進信号を発し
既に説明したように 情動発現による覚醒促進が生じます

また これも既に説明したように
腹側被蓋野 青斑核 外背側被蓋核には
ドパミン ノルアドレナリン アドレナリンの放出の信号が出され
覚醒維持に関与します

三叉神経と顔面神経には 恐怖の表情表現の信号が出され
それにより 喜怒哀楽の表情が作られ
恐怖感 不安 悲しみ 喜び などの情動発現がなされます



扁桃体と海馬の関連は深く

扁桃体は 海馬からの視覚 味覚などの記憶情報をまとめ
それが快か不快か(好き嫌い)を判断しますが

そうした扁桃体で作られた情報への快・不快感情や情動は
海馬に送られ 海馬での記憶形成に大きく影響します


このように 情動と記憶形成は
海馬と扁桃体の密接な関係により 互いに深く影響しあっています

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食欲の快楽の説明で登場した 快楽の情動を司る側坐核
辺縁系とのつながりが強く

大脳皮質から「何かを始めよう」という指令を受けると

側坐核が 扁桃体や海馬と相談し それが好きなことかどうかを判断し
やる気を出すかどうかを決めています

特に 扁桃体基底外側核 腹側被蓋野からのドパミン性入力は
側坐核での報酬系や快楽に関わる神経活動に 強い影響を及ぼします


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このように 大脳辺縁系は

大脳皮質が司る理性では なかなか制御・理解しきれない
まさに生き物としてのヒトの本能に深く関与していて


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書き手が興味を持つ理由が 解っていただけたでしょうか?(笑)

 

 

2017.11.08更新

脳の中にある睡眠中枢 覚醒中枢について説明してきましたが
その際 モノアミン系とか GABA系といった単語が出てきました

このモノアミンやGABAは
神経細胞が他の神経細胞に情報を伝達する際に分泌される物質で

神経伝達物質 と呼ばれます

今後もさまざまな病気や症状の話題で 神経伝達物質が登場するでしょうから
これを機会に解説しておきましょう

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神経細胞は 活性化されて興奮すると 他の神経細胞に情報を伝えます

その際に 直接 他の神経細胞に結合するのではなく
互いに近寄り お互いの間にシナプスと呼ばれるわずかな空間を形成します

活性化した神経細胞は 神経伝達物質を合成して
それを 細胞の末端からシナプス空間に向けて放出します

放出された神経伝達物質は 拡散によってシナプス空間を広がり
情報が伝えられる神経細胞の末端に存在する
神経伝達物質の受容体に結合して 情報伝達するわけです

放出された神経伝達物質は 過度な情報伝達が行われないように
速やかに酵素によって不活性化されるか
または放出した神経細胞に再吸収されます


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さて 神経伝達物質ですが 大きく3つのグループに分かれます

*アミノ酸系

*モノアミン系

*ペプチド系

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<アミノ酸系>

アスパラギン酸 グルタミン酸 グリシン タウリンなどがあり
睡眠中枢で出てきたGABAも この仲間に属します

@GABA

既に説明したように 睡眠中枢抑制性の神経伝達を担い
睡眠の維持に貢献しています

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@グリシン

抑制性神経伝達物質として機能し
睡眠の維持に関わっています

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@グルタミン酸

興奮性神経伝達物質で

記憶・学習などに重要な
高頻度に情報伝達が行われる現象(シナプス可塑性・長期増強)や
脳の発達期の経験依存的な神経回路網の形成(シナプス可塑性)
の場面で重要な役割を果たしています

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@アスパラギン酸


興奮性神経伝達物質として働きます



<モノアミン系>

1つのアミノ基と2つの炭素鎖からなる構造で

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ドパミン ノルアドレナリン アドレナリン セロトニン ヒスタミン

などが このグループに属します


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脳幹部 後脳 中脳に存在する神経細胞で作られることが多く

その神経細胞は 
脳全体に存在する多くの神経細胞とシナプスを形成するため
広範囲の脳に作用する 広汎投射神経系 として機能しています


@ドパミン

チロシンから作られ

*運動調節
*学習・記憶、注意、実行機能などの認知機能 特に作業記憶
*報酬系・快の感情

などの神経情報伝達に関与します

パーキンソン病は
黒質線条体のドパミンの減少により運動調節が上手くいかなくなる病気です


@ノルアドレナリン

チロシン ドパミンから作られ

橋の青斑核から脳全体に投射し
覚醒 記憶の固定 などに関与します


@セロトニン

トリプトファンから合成され

橋や脳幹にある縫線核群から大脳・小脳・脊髄全体に投射し
体温調節 摂食行動 睡眠 情動 学習・記憶 などに関与します


また セロトニンは
脳内のさまざまな神経伝達物質の調整役として機能して

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快に関わるドパミン 不快に関わるノルアドレナリン のバランス


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興奮に関わるドパミン ノルアドレナリン と
抑制に関わるGABA のバランスを

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調節しています


@ヒスタミン

ヒスチジンから合成され

覚醒の維持を助ける神経伝達物質として働きます



<ペプチド系>

アミノ酸が連結して出来た生理活性を有するペプチドで
神経ペプチドと呼ばれます

内分泌機能に関わる 視床下部・下垂体のオキシトシン バゾプレシン

摂食調節に関わる
オレキシン AgRP NPY POMC CART グレリン MCH

学習・記憶に関わる ソマトスタチン CRH αMSH

痛覚に関わる サブスタンスP ニューロキニンA βエンドルフィン

など 多種多様な神経ペプチドが属しています



脳の中では
こうしたさまざまな神経伝達物質が状況に応じて分泌され

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それにより神経細胞間で情報が伝達され
機能が増強されたり抑制されたりしているわけです


また 神経疾患や精神疾患の治療薬の多くが
これらの神経伝達物質の受容体の活性化作用や抑制作用を介して
その作用を発揮しています

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2017.11.07更新

これまで 睡眠と覚醒のメカニズムについて説明してきましたが

では ヒトは 何のために眠るのでしょう?


これまでに言われてきたのは

脳を休ませるため 体を休ませるため 

といった説明でした

しかし 最近になって 
脳は睡眠中に単純に休んでいるだけなのか?
という疑問が呈されるようになっています


ヒトは睡眠をとらないと

*成長ホルモンが分泌されず 成長や組織の修復に障害が出る

*免疫力が低下して 感染症にかかりやすくなる

*エネルギー代謝の恒常性が維持できなくなり
 生活習慣病になりやすくなる

といった弊害が生じてきますが

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身体だけでなく 意識・精神活動や精神状態にも悪影響が及んできます

例えば 
注意力や冷静な判断力が低下したり
意欲や認知機能が低下して うつ病やアルツハイマーになりやすくなります

ですから 睡眠は脳を休ませているだけではなく

脳内で なんらかの積極的 能動的な生理的現象が
起こっているのではないか?

眠らないと そうした現象が起こらないので
その結果として
上述したような意識・精神活動や精神状態への悪影響が生じるのでは?

という考え方です

実際に
睡眠がうまくとれないと 大脳の情報処理能力に悪い影響が出ますし
睡眠により 日中に使われて機能低下した脳の機能がリセットされます

高度に発達した大脳をもつ人間にとっては
睡眠の適否が質の高い生活を左右します

そして そのようなコンセプトに基づいた研究から
睡眠の意義に関するいくつもの新たな知見が得られてきました


端的に言うと

脳は睡眠中に単に活動を停止して休んでいるだけでなく
能動的に 自らの構造の整備と機能の修復を行っているのです

この点については 先日「勉強したら寝ろ?」という話題で紹介しました

その復習になりますが

たとえば 読み手の皆さんは
試験前に一夜漬けの勉強をしたことはありませんか?

その場合
そのまま徹夜するより 知識を仕込んだあとに一定時間寝る方が
多分 テストの成績は良くなります

というのも 睡眠は記憶力を高め 学習した内容を定着させるのです

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睡眠は 知識の記憶だけでなく
運動の記憶も高めることが明らかにされています

つまり睡眠は 日中に得た情報の整理 記憶の定着を行っているのです

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必要な情報は 整理・分類して記憶し
不必要な情報は 消去します

日中の覚醒中に脳に入ってくる情報量は膨大ですから
睡眠中に適切な取捨選択をしないと
容量オーバーでパンクしてしまいます

こうした現象には
脳の神経細胞どうしの間で形成される
シナプスという情報伝達装置の整理整頓が関わっています

日中の過多な情報により 脳内では過剰にシナプスが形成されますが
睡眠の間に 増えすぎた不要なシナプスを削り 整理して
ネットワークを最適化しているのです

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実際 シナプスの強さが睡眠の深さに相関することが明らかにされています



一方 脳は睡眠中に 自らの洗浄も行っているようです

脳は全身で産生されるエネルギーの25%をも使っていて
代謝が活発なので 老廃物もたくさん出てきます

体内の他の臓器では
老廃物の排泄・洗浄はリンパ管系により行われますが
隔離された臓器である脳には リンパがありません


では 脳はどうやって
たくさん出てくる老廃物を処理しているかというと

睡眠中に 細胞間に脳脊髄液を流して そこに老廃物を排泄させ
脳脊髄液にリンパ液の役目をさせ 除去しているのです

脳は 睡眠中にクリーニングされているのですね

こうして 睡眠中にメインテナンス クリーニングされた脳は
目覚めとともにリフレッシュして 新たな1日の活動の準備ができるわけです

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逆に 睡眠を充分にとらないと
脳のメインテナンス クリーニングがなされていないために
翌日の知的活動にさまざまな悪影響が出てきてしまう

なるほどです~

これらの脳のメインテナンス クリーニングは
主に脳が完全に休んでいるノンレム睡眠の間に行われていると考えられますが
レム睡眠も一部関与しているようです


睡眠の重要性を 認識していただけたでしょうか?

脳は 寝ている間にも 地道で重要な活動を行っているのですね!

2017.11.03更新

睡眠に関する解説を続けていますが ちょうどタイミングよく

睡眠と脳の研究の最前線

についてリポートした ドキュメンタリー番組を見ました


眠っている間は 脳も休んでいるから 睡眠は大切なのだ

そんなイメージがありますが

実は脳は 睡眠週に休んでいるのではなく
寝ている間に さまざまな とても大切な働きをしているそうです


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@記憶の保持に関わる

たとえば 赤ちゃんに ぬいぐるみの一定の動作を見せて

そのあとに 昼寝させるグループと 昼寝させないグループに分けます

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その後 同じぬいぐるみを見せると

昼寝をしなかった赤ちゃんは ぬいぐるみに対して何の反応も見せませんが

昼寝をした赤ちゃんは ぬいぐるみを見たとたんに
昼寝前に見せられた一定の動作を 自ら行うのだそうです

昼寝をした子は 昼寝前にみたことを 記憶として保持しているのです

そして その記憶の保持に貢献しているのが 睡眠 


大人でも 一定の動作を行ったのちに 
寝たグループと寝ないグループでは

寝たグループの方が 効率よく同じ動作をできるようになるそうで


勉強したら その日のうちにすぐに寝ること
そうすれば 寝ている間に勉強したことが 記憶として脳に定着する

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うーん 試験前に一夜漬けするときは 
徹夜しないで寝た方が
翌日のテストで好成績がとれるのかもしれません?(笑)



@睡眠不足は 脳の機能障害を招く

良し悪しの感情をともなう記憶 
すなわち 直観は
人の日常生活における論理的思考や意思決定に大きな影響を与え

この作業は 脳の前頭前野・腹内側部で行われますが

睡眠が不足していると この部位が働くなるため
直観にともなう意思決定ができず 判断力が低下してしまうそうです



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同じような状況は 脳血管障害の患者さんでも認められるとのこと

つまり 睡眠不足は 一時的に脳が損傷した状態を誘導するのだそうで

たとえば たった2時間 睡眠時間が減るだけで
脳の機能に変化が生じて 判断力の低下などが起こり得るとのこと



@睡眠は 食欲制御にも関連する

睡眠時間が過度に不足すると(5時間ほど)
食欲が増え 間食の量が増え 特に夕食後の間食が多くなります

また 

エネルギーが充分に補給されると食欲を抑制するレプチン
睡眠不足により低下し

逆に 空腹時に食欲を感じさせ 食べると食欲を低下させるグレリン
睡眠不足により増加するので


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結果として 睡眠不足の人は 太る!

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@夢についても 新たな知見があります

人は 夢を見ている間に 
脳の中で 昼間に起きた出来事の意味を評価している


というのです

睡眠中に 海馬に蓄えられたその日1日の出来事の記憶が
大脳新皮質に送りだされて 他の記憶と関連付けられる

夢を見ている間に 新皮質はフル回転して複数の記憶を関連付け
その結果として 海馬に新たな記憶の維持の有用性の有無を指示する


つまり その日の昼間に得た情報が
この先も利用できる情報か 重要かどうか判断して
覚えておくか 忘れてしまうか を決定する

日々 脳にインプットされる膨大な量の情報を 篩にかけている

ということですね 

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そして 夢の内容は
睡眠中に脳が処理していることを反映しているそうです

同じような内容の夢を見ることが多いのは
そうした処理が関係しているのかな?


@睡眠は 脳内の老廃物の排除にも関与している

アルツハイマー病は
アミロイドβという物質が脳内に蓄積することで生じますが

睡眠中には 脳内の血管を介して 脳脊髄液が脳内の老廃物を除去している

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睡眠の質の低下 睡眠時間の減少による このシステムの機能低下により
脳内の老廃物除去が上手くいかず
アルツハイマー病のようにアミロイドβ蓄積が生じる可能性がある


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つまり 睡眠の質の低下 睡眠時間の減少が
アルツハイマーのリスク因子になり得るかもしれない と

なるほどです



さて これらの現象の結果として言えることは

睡眠中の脳内の活動が 起きているときの脳の活動を補助している

ということで

いやー 睡眠 侮れませんね


睡眠の質や時間が悪くなると 糖尿病になりやすいことを
以前ご紹介しましたが

睡眠が さまざまな人の生活や病気に及ぼすポジティブな影響は
奥が深そうです

寝る子は育つ と言われますが
大人になっても 睡眠は大切なようです


夜更かしして わけの解らないブログを書いていないで
ちゃんと寝ないと 脳内アミロイドが掃除されずに
アルツハイマーになっちゃうかも?(笑)

 

2017.11.02更新

前回 覚醒を誘導する中枢・投射系について説明しましたが

睡眠を促進する側には 睡眠中枢があります

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それは
視床下部前部・視索前野(VLPO)に存在する GABA作動性ニューロン

slgb02

前回ご紹介した モノアミン系 アセチルコリン系の覚醒誘導システム
強力に抑制します

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また ノンレム睡眠の開始に先行して活動を開始し
ノンレムの期間中 覚醒系神経核を抑制して睡眠を安定化させます



さて この睡眠中枢は 覚醒系神経核により抑制されます

つまり 覚醒系と睡眠系の間には 相互抑制関係が存在していて
睡眠と覚醒の交代現象が
安定かつ効率的に行われているのです

slgb04


ホント ヒトの体って 上手くできていますよね!(笑)



では 覚醒と睡眠の交代 切り替えが どのように行われているのか?


その前に もう一度整理しておきますが

*覚醒状態では 全ての覚醒性投射系が機能し 大脳皮質を賦活化している

*ノンレム睡眠では 全ての覚醒性投射系が低下して 皮質は賦活化されない

*レム睡眠では モノアミン系投射系の活動は
 ノンレム睡眠のときよりさらに低下していますが
 アセチルコリン系はしっかりと活動していて 皮質が賦活化されています


で 繰り返しになりますが 覚醒と睡眠は互いに抑制しあっています

*睡眠のGABA系は 覚醒のモノアミン・アセチルコリン系を抑制する

*覚醒のモノアミン・アセチルコリン系は 睡眠のGABA系を抑制する


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つまり 睡眠と覚醒がシーソーのような状態になっていて
どちらかが優勢になると スイッチが切り替ります


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このスイッチの切り替えを規定しているのが

前回ご説明した 体内時計と睡眠負債です


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さて このシーソーは 通常は睡眠に傾く傾向がありますが

覚醒が必要なときにはオレキシンが働いて
覚醒を維持・安定化させます


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つまり 覚醒が必要な状況になると オレキシンが分泌されるわけで

具体的には

*体内時計の影響により 朝になると分泌が増す

slgb08a

*ストレスがかかると 覚醒して対処するために分泌が増す
・視床下部から分泌されるストレスホルモンCRHが分泌を高める

*空腹時には 覚醒して食べないといけないから分泌が増す
血中グルコース濃度が低下すると 分泌する
・食欲を抑制するレプチンは 分泌を抑制する
・食欲を活性化するグレリンは 分泌を促進する


slgb08b

*危険に対する不安や恐怖などの情動があると 分泌が増す


このように 脳が覚醒していないと困る状況では
オレキシンが分泌されて覚醒が維持されるわけです

再度 ヒトの体は 上手くできています!


ところで この睡眠と覚醒のスイッチ切り替えは
ホンモノのスイッチのように パチンと即座に切り替わるわけではなく

ゆっくりと時間をかけて行われます

例えば 明け方に睡眠から覚醒に切り替わる際は
コルチゾールという
睡眠中は分泌が抑制されているホルモンが分泌され始め


slgb08c

*エネルギー代謝の亢進
*体温 血糖値の増加
*血圧 脈拍数 呼吸数の増加

を引き起こして 体を覚醒モードにして
時間をかけて睡眠から覚醒への移行を促します


このように 睡眠と覚醒はシーソーのような状態にあり


slgb09



*睡眠システム


*覚醒システム

*オレキシンシステム

が 三位一体となって
外界の状況に応じて そのバランスを巧みに調節しているわけです

slgb10


何度も繰り返しになって ホントに恐縮ですが
ホント ヒトの体は 上手くできています!

 

2017.11.01更新

今日の疑問は なぜ 起きたままでいられるか?

そんなことも 考えたこと ありませんよね?(笑)


ヒトの体には
脳を刺激して 覚醒させて 起こしておくシステムが存在します

今日は その解説をします


<上行性脳幹網様体賦活系>

脳の脳幹部・網様体には 覚醒状態を維持する中枢があり

ここから大脳に上行性の刺激を送り活性化して 覚醒状態を作り出します

また 逆に 睡眠に関わるシステムを抑制します


この系を 上行性脳幹網様体賦活系 と呼びます

ksm01


上行性脳幹網様体賦活系は 大きくふたつのパーツに分類されます


@モノアミン投射系

*青斑核から発するノルアドレナリン作動性神経

*背側縫線核から発するセロトニン作動性神経

*腹側中脳中心灰白質から発するドーパミン作動性神経

*傍小脳脚核 前青斑核野から発するグルタミン作動性神経

からなり

(下図の緑の矢印経路)

ksm02a


モノアミン系
の神経伝達物質

大脳皮質に広範囲に直接投射して 覚醒させます

ksm03

この系は 作用時間が遅く 持続的なのが特徴です


@アセチルコリン投射系

脳幹部の橋の外背側被蓋核 脚橋被蓋核に存在する
アセチルコリン作動性神経

下図中央右側の 赤い上向きの矢印で示すように
視床に多く投射して 視床を介して脳全体を覚醒させます



ksm04


この系が  モノアミン系と異なるのは
レム睡眠中も活発に活動していることで(モノアミン系は活動していない)

レム睡眠を作っている中枢と見做されています

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<ヒスタミン作動性神経>

視床下部後部の結節乳頭核には ヒスタミン作動性神経があり

脳幹部から大脳に向けて上行してくる賦活系に働きかけ
その活性を増強します

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花粉症の治療などに用いられる抗ヒスタミン剤を服用すると眠くなるのは
このヒスタミン作動系神経の作用が弱められ
大脳の覚醒効果が弱くなるからです



大脳皮質は このようにして賦活化され 覚醒状態が作り出されますが

近年 覚醒状態を維持する重要な物質・オレキシン が見出されてから
この領域の景色が かなり変わりました


<オレキシン>

オレキシンは 日本人の桜井博士 柳沢博士らにより
オルファン受容体の未知のリガンドの検索過程で見出された物質で

視床下部外側野から分泌されます

ork00


視床下部外側野は摂食中枢であり 当初は摂食に関係すると考えられたので
ギリシア語の食欲・オレキシスから オレキシンと命名されましたが

その後の研究により

覚醒状態を活性化し 維持・安定化させている重要な物質 

であることが判明しました

ork01


オレキシンの受容体は
上行性脳幹網様体賦活系の青斑核 縫線核などに強く発現しており


ork00a



下図のピンクの矢印で示すオレキシン

緑の矢印で示す上述したモノアミン系等の覚醒系神経核に広く投射して
それらの活動を安定化させ 大脳の覚醒状態を維持・安定化させています


ksm02


それ以外にも

*交感神経の活性化
*ストレスホルモンの分泌
*意識の清明化

といった 覚醒状態に関わる機能を有しています


興味深いのは

オレキシンの分泌は
オレキシンが活性化するモノアミン投射系から抑制を受けることです

(下図の右側に並んだモノアミン系からの 破線で示される抑制)


ork01b


こうした抑制性の反応は ネガティブ・フィードバックと呼ばれ
多くの場合は 起こった反応を収束させる働きを示します

ですから
モノアミン系によるオレキシンの抑制性システムにより
覚醒の誘導・維持が困難になると思われるかもしれませんが

そうではないのですよ!


何らかの理由で モノアミン系の働きが低下して覚醒誘導が弱まると
同時にモノアミン系によるオレキシン分泌の抑制も弱まりますから

オレキシン分泌が復活して その働きによってモノアミン系も復活する

つまり
モノアミン系の低下時に 覚醒誘導を維持できる仕組み になっているわけで

いわば 事故が起こったときのバックアップシステムのようなものです

うーん 上手くできていますね!(笑)


オレキシンは 既に臨床応用もされていて
オレキシン受容体を阻害する物質が 新たな作用機序の睡眠薬として開発され
現在 睡眠薬の第2位のシェアを誇っています

これについては またあとで詳しく説明します



ということで

前回は 睡眠を誘導するメカニズム
今回は 覚醒を維持するメカニズム

について それぞれ説明しましたが

各システムの実行部隊となっているのは

*PG アデノシン GABA セロトニン などの抑制性物質

*モノアミン アセチルコリン ヒスタミン などの刺激性物質 で



ksm07


睡眠と覚醒のスイッチをするのが オレキシン

ork04

 


という見取り図を イメージしていただくことができたでしょうか?


次回は 睡眠と覚醒のスイッチについて もう少し詳しく説明します



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