左利き肝臓専門医ブログ

2017.10.31更新

ヒトはなぜ 夜になると眠くなるのでしょう?

そんな理由 考えたこと ありませんよね?(笑)


眠くなる現象には 

*体内時計

*恒常性維持機構(ホメオスタシス)

のふたつのメカニズムが関与していると考えられています


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@体内時計

ちょうど 今年のノーベル賞の”お題”となった サーカディアンリズム

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既に説明しましたが 簡単に復習すると

体内に 昼間は覚醒して 夜になると睡眠をとる
という日内リズムが存在し

ヒトはそのリズムにしたがって 24時間周期で睡眠と覚醒を繰り返します


ここで重要な働きをするのが 睡眠をうながすメラトニン

朝 太陽の光を浴びると メラトニン分泌が減少して 覚醒しますが
夕方になると メラトニン分泌が増え 眠たくなってくる

だから 夜の決まった時間 起床後14~16時間たつと眠くなる


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@恒常性維持機構

もうひとつのメカニズムの恒常性維持機構は
睡眠負債 という呼び方もされます

負債? なんだそりゃ? と思われるでしょうが
思い切り簡単に言うと 疲れたから眠くなる ということです


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昼間 ずっと覚醒して仕事をしていると
脳が疲れて 睡眠物質という眠気を誘う物質が溜まってくる

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そうすると 脳を休ませるために ヒトは眠たくなり睡眠をとる


この 体内時計と睡眠負債のふたつの因子により ヒトは眠くなります



睡眠負債 睡眠物質 というコンセプトは 馴染みがないでしょうから
もう少し詳しく説明します

要するに 覚醒が長時間続くと 蓄積疲労により眠くなるということですが

蓄積疲労の本態を 睡眠物質という新たな概念に求めたのは
次のような動物実験の結果に依っています

長時間眠らないで覚醒させていた犬の 脳の周囲から採取した液を
他の犬の脳の周囲に注射したら その犬は寝てしまったのです!

注射された犬が寝るのを見たとき 研究者は興奮したことでしょうね!


その後 睡眠物質の候補が いくつか同定されてきました

代表的なのが プロスタグランジンD2・アデノシン系です

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プロスタグランジンD2は 脳を包むクモ膜で作られ
前脳基底核に働きかけてアデノシンを放出させる
(下図の左側・前脳基底部)

アデノシン
視床下部の睡眠中枢に働きかけ
視索前野・VLPOに存在するGABA作動性ニューロンを刺激して
(下図の中央・視索前野)

分泌されたGABA
覚醒中枢から大脳皮質に放射され 皮質を覚醒する
ヒスタミン系 モノアミン系 アセチルコリン系の働きを 
抑制する
(下図の右側・後部視床下部)

その結果 覚醒状態が抑制され 眠くなるという筋書きです



whysl06


ちなみに

*カフェイン
は アデノシンの受容体結合を邪魔するので 覚醒作用があり

*アルコールは GABAと同様の働きをするので 飲むと眠くなります


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アデノシンは
覚醒中にさまざまな細胞で作られる エネルギー分子ATP
分解されて出来ますが

whysl08

覚醒時間が長ければ長いほど 脳内濃度が高まっていき
逆に睡眠中には 次第に減少していきます



このように

睡眠物質の蓄積による睡眠負債により 眠気が誘導される という説

なかなか説得力があるように感じますが

最近は 睡眠物質説に疑問が投げかけられています


というのも 最新の研究により

睡眠時に脳は均一に休んでいるわけではなく
昼間の覚醒時に酷使された局所が
選択的により深く休むことがわかりましたが
(この現象を ローカル・スリープと呼びます)

脳全体に及ぶ睡眠物質の蓄積説では この現象が説明できない


ということで

睡眠負債・恒常性維持機構の実態は

単に睡眠物質の蓄積という受動的な現象ではなく

*日中の活動で余分に増殖した神経シナプス
*脳の機能を低下させてしまう代謝老廃物

などのメインテナンス 不要なものの除去 などを目的とした

もっと能動的で 合目的的な活動ではないか?
と考えられつつあるようです

このあたりについては 稿を改めて解説します



2017.10.26更新

ノンレム睡眠 レム睡眠 の違いについて もう少し続けます


ノンレム睡眠は 脳が完全に休んだ状態です

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脳全体の血流量が低下し
脳のエネルギー消費量や ニューロンの活動は 1日のうちで最低レベルです


しかし 興味深いことに

脳全体の活動が一様に低下するのではなく

起きているときに酷使される左側頭葉(言語中枢)や左前頭葉の活動が
特に低下しています


一方で 睡眠中枢と呼ばれる視索前野の活動は認められます

slp32


このことから
 
睡眠という行動は 脳が積極的に作り出している と推測されます


体の方はというと
体温が下がり エネルギー消費も少なくなります

また 交感神経の活動低下 副交感神経の活動上昇が見られ
夜間の血圧低下や 血糖コントロール改善が生じています

slp33


さらに 

いちばん最初の徐波睡眠のときに 成長ホルモンが分泌され
骨や筋肉の発達や 体内のさまざまな反応が促されます


slp34


ノンレム睡眠の大切さが よくわかります



ちなみに 
この徐波睡眠は 熟眠感が得られる質の高い睡眠で
これがしっかり確保されることが非常に重要です

そして 起きている時間が長いと
質の良い睡眠を得るため 徐波睡眠の時間が長くなります


さて こうした現象はわかりましたが
ノンレム睡眠は 具体的に何をしているのか?


最近は ノンレム睡眠で脳が休息しているときに
脳の中のニューロンの維持や つながりの再構築が行われて
記憶の整理や統合がされているのではないか
推測されています

この点については あとでまた詳しく説明します



さて もう一方のレム睡眠ですが

ノンレム睡眠では 脳が完全に休息状態に入っているのと対照的に

レム睡眠では
脳は 覚醒時と同じか それ以上に活発に活動しています


slp35


特に 脳幹部の橋の被蓋という部位にある
アセチルコリンを産生するコリン作動性ニューロンが存在する部位

記憶や情動をつかさどる 大脳辺縁系の海馬 扁桃体

などが強く活性化されています

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これが レム睡眠の大きな特徴です


体の方は

自律神経の活動が非常に盛んで
交感系も副交感系も 両方とも活動していて
脈拍や呼吸が乱れています

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また 大脳から筋肉への運動指令が脊髄レベルで遮断されているので
体は全く動くことができません

ノンレム睡眠のときは 寝返りをうったりしますが
レム睡眠では 寝返りすらありません


夢を見るのも レム睡眠の大きな特徴です


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上述したように
記憶(海馬)や情動的反応(扁桃体)に関する辺縁系が活動しているので
不安・恐怖・心配などが入った感情的なストーリーの内容の夢を見ることが多い

また 理性的な判断をする前頭葉(背外側前頭前野)は抑制されているので
変わった 論理的におかしい内容の夢を見ても
おかしいと判断できません


一方 やはり上述したように 筋肉は全く動きませんから
変な夢を見て驚いても 体は反応できず金縛り状態になります


slp39


書き手は 幸か不幸か金縛りを経験したことはありませんが
読み手の皆さんには
経験されたことがある方もおられるのではないでしょうか?


では レム睡眠は 何をしているのか?

レム睡眠の時間が足りないと 次の睡眠で補おうとする機構が存在するので
レム睡眠が なんらかの重要な役割を果たしていると推測されますが

海馬が活動していることから
記憶した事柄を分別・整理しているのではないか と推測されています


slp40


また 前回お話ししたように
胎児期や幼少期におけるレム睡眠は 大脳の発育や脳の神経回路の作成に
関与しているのではないかとも 推測されています


このように ノンレム睡眠とレム睡眠は 全く質的に異なります

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こうした異なる性質の睡眠が
なぜセットになって ひと晩のうちに何回も繰り返されるのか?

睡眠は ホント 不思議です

 

2017.10.25更新

ヒトはなぜ眠るのか? といったストレートな問いに入る前に

ヒトはどのようにして寝ているか 説明しましょう


タイムリーに 今年のノーベル賞ネタになった サーカディアン・リズム

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日内時計・サーカディアン・リズムの解説でも紹介したように
ヒトの睡眠には パターンがあります

そのパターンを構成するのが レム睡眠 ノンレム睡眠です

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レム睡眠
は 夢を見る睡眠として有名ですので
この名前を聞いたことがある方も おられることでしょう

レム睡眠をしているときに
よく観察すると ヒトは眼球が盛んに左右に動いています

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だから Rapid Eye Movement
頭文字をとって REM・レム睡眠と呼ばれるようになりました



さて
ベッドに入って 電気を消して 寝はじめると
まずノンレム睡眠が始まります


slp15

 


ノンレム睡眠は
眠りの深さによって Stage1から4の4段階に分かれます


slp16

 


最初は Stage1の浅い眠りで
時間経過とともに徐々にStage2 3 4へと 深い眠りに入っていきます

Stage3 4は 徐波睡眠と呼ばれる とても深い眠りです


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入眠から90~120分経過すると
最初のレム睡眠が再び出現してきます

比較的短時間のレム睡眠が終わると 再びノンレム睡眠になります

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この
ノンレム睡眠のStage1からレム睡眠の終わりまでが ひとつの周期で
一晩寝ている間に この周期が4~5回繰り返されます


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一晩の睡眠の前半は 
ノンレム睡眠が多く 特に深い眠りの徐波睡眠の比率が高いのが特徴です


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一方 後半
ノンレム睡眠 特に徐波睡眠が減り レム睡眠が増加してきます


明け方になると レム睡眠がさらに増加して やがて目覚めを迎えます


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睡眠全体では
ノンレム睡眠が80% レム睡眠が20%を占めますが
その時間分布は異なるのです

ヒトは こんなふうにして 寝ています


レム睡眠とノンレム睡眠は
同じ睡眠でも 質的に全く異なります


ノンレム睡眠は まさに睡眠そのもの

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レム睡眠は 睡眠と覚醒の中間のような状態です

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赤ん坊がお母さんのお腹の中にいるときは レム睡眠で寝ています
そして 産まれてすぐに ノンレム睡眠が始まります

幼児期から成長期にかけては レム睡眠が優勢ですが
歳を重ねていくにつれ
レム睡眠の比率は減り ノンレム睡眠が増えてきます

こうしたことから

レム睡眠は
大脳の発達を促し 脳の神経回路の作成にも関わるのでは?
と推測されています


一方 ノンレム睡眠は大脳の発達とともに出現してきて
脳の発育が盛んな幼児期には長く 高齢になると短くなることから
脳の機能に関係しているのでは?と推測されます

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また レム睡眠のときに ヒトは夢を見ます

明け方 たっぷりと夢を見て そのまま目覚める経験をされた方は
少なくないと思います

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でも ノンレム睡眠のときは夢を見ません
ノンレム睡眠では ひたすら寝ることに一生懸命なのです


どうして こんな質的に異なる2種類の睡眠が
コンビを形成しているのでしょう?


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次回 詳しく説明します




2017.10.24更新

ライオンは1日に18時間も寝るのに キリンは3時間しか寝ないそうです

しかも 立ったまま寝る

どうして?

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どうしてついでで

ヒトは どうして眠るのか?

slp02


そりゃ 眠くなるからですよ(笑)

じゃあ どうして眠くなるの?


今日からの新シリーズで 睡眠  について解説しようと思います

ヒトは 大まかに言って 
生涯の1/3もの時間 眠っているのですから
睡眠という行為は とても大切で意義のあることです


slp03



でも どうしてヒトは 眠るのか?

そんな根源的な問いに対する答えは 
実は 未だ はっきりとしていないのですよ!


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そう言えば書き手も 医学生時代に
睡眠についてまとまって勉強したことはありませんでした

だから 今回 色々と勉強しましたよ


もともとは
当院に来られる患者さんで 不眠を訴える方が少なくないので
不眠症について勉強し始めたのですが

不眠症は 眠れなくて辛い

でも どうしてヒトは寝なければいけないの?

と疑問に思ったら
睡眠の基礎について 勉強する羽目になりました(笑)


たとえば 肝臓の病気の病態は
肝臓の働きの基礎がわかっていないと 
きちんと理解することはできません

不眠症も同じで
睡眠の基礎がわかっていないと理解できないかも?

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ということで 勉強したことはすぐにブログでウンチクしたくなる
ご存知のように 書き手はそんな厄介な性格の持ち主ですので
しばらくお付き合いください(苦笑)



さて 文頭のQuestionに戻りますが

どうしてライオンは長く寝るのに キリンは少ししか寝ないか?


この問いの答えに

哺乳類にとって 睡眠とは何か 覚醒とは何か?

という 大きな疑問の解答が潜んでいます


アフリカの雄大なサバンナの景色を 思い浮かべてください

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肉食動物のライオンは キリンを狩りして食べちゃう
草食動物のキリンは ライオンに食べられちゃう

だから キリンは 食べられないようにするために
いつも周囲に注意を払っていないといけません

のんびり寝ていたりしたら すぐにライオンに食べられちゃう
だから 短い時間しか寝ない

一方 ライオンは
獲物の狩りをするのに 瞬発的に莫大なエネルギーを使うので
狩り以外の時間は ゆっくりと体を休めていないといけない
だから 長い時間寝る



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うーん 立場が強い動物は 弱い動物より 長く寝る!

これって 我が家における
お昼寝・三昧の日々のネコさまsと
いつも寝不足の下僕 の関係と 同じ?(笑)


つまらないジョークはスルーしていただき(苦笑)


このお話のポイントは 

それでもキリンは寝る ということ!

危険をおかしてまで なぜ寝るのか?


イルカはずっと水の中を泳ぎ回っていますが 寝ているのでしょうか?

イルカが どこかで体を横たえて寝ている姿は想像できませんが
そんなイルカも しっかり寝ています

しかも 泳ぎながら


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どうやってそんな器用なことをしているかというと
脳の右半分と左半分を 交互に寝かせながら泳いでいるのです


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左の脳が眠っているときは 右目を閉じ
右の脳が眠っているときは 左目を閉じているそうで

寝ながらウインクしているわけではありません?(笑)


キリンは 食べられる危険があるのに 寝る

イルカは 泳ぎながら 脳を半分ずつ休ませて寝ている


こうした事実からわかることは

哺乳類にとって 睡眠は欠くことが出来ない大切な作業であること

そして 睡眠には 脳が関係していそうなこと


では 狩りもしない 水中を泳いでもいない ヒトにとっては
睡眠って なんなのでしょう?

どうして ヒトは 寝るの?


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つかみはOK?(笑)

 

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