左利き肝臓専門医ブログ

2017.07.27更新

ダイエットして摂取カロリーを制限したサルは
生活習慣病にならず 長生きする

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そんなセンセーショナルな実験結果が報告され
長生きしたサルの遺伝子解析から 長寿遺伝子なるものが同定され
一時期マスコミで大騒ぎになったことを 覚えておいでの方も多いと思います

この長寿遺伝子の正体が
今日解説する サーチュイン遺伝子 です

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サーチュイン遺伝子は すべてのヒトが持っているもので
ヒトでは SIRT1~SIRT7 の7種類が同定されています

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7種類のサーチュイン遺伝子は
それぞれ細胞内での局在・役割が異なり

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SIRT3~SIRT5は ミトコンドリアに存在しています


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老化のスピードをコントロールする遺伝子で
主に老化に関連する遺伝子群の転写を抑制しますが

それ以外にも 多種多様な働きがあり
さまざまな臓器で さまざまな機序で 臓器特異的な作用を示します

*細胞を修復するタンパク質を活性化する

*ミトコンドリアの制御により 生命維持に必要なエネルギー量を調節する

*テロメアを保護し 短くなるのを防ぐ

*インスリンの生成やその伝達経路を制御する

*動脈硬化を抑制する

*脂肪細胞の生成を制御する

*記憶調節 アルツハイマーなどの神経変性疾患
 加齢に伴う病気にも関与する

こうした まさに多種多様な機能を有しています


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サーチュイン遺伝子から翻訳されるサーチュインタンパク
ヒストン脱アセチル化酵素

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エピジェネテイクス制御で説明した
ヒストンに付いているアセチル基を切り取る働きを有しています

アセチル基が切り取られると
ヒストンとDNAの結合が強固になり ヘテロクロマチン構造になるので
遺伝子発現を開始させる転写因子がDNAに近づけなくなります


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こうした遺伝子発現のエピジェネテイック制御を行うことで
老化 炎症 生活習慣病などを促進する遺伝子の発現を抑制し

その結果として寿命が延びる と考えられています


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サーチュインタンパクは 体内のあらゆる細胞で発現しています

しかし 残念ながら
サーチュイン遺伝子は普段は働いておらず
働かせるためには スイッチをオンにする必要があります


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サーチュイン遺伝子を活性化させる方法としては

*適度な運動

*カロリー制限

*長寿遺伝子を活性化させる抗酸化成分・レスベラトロールを摂る

といったことが 明らかにされています

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赤ワインには ポリフェノールのレスベラトロール が含まれていますが
活性化に必要な量を赤ワインの量に換算すると
1日にボトル100本前後となり

赤ワインを飲んでサーチュイン遺伝子を活性化するのは
残念ながら非現実的です


また 冒頭に紹介したサルの実験で明らかにされたように
カロリー制限をするとサーチュイン遺伝子が活性化され
30%のカロリー制限を7週間すると ほぼ100%活性化されます

ヒトでもカロリー制限で寿命が延びるかは 今のところ不明ですが
メタボリックシンドロームの患者さんは
サーチュイン遺伝子がオンになっていないことが報告されています

ただし ヒトでこれだけのカロリー制限を持続するのは困難ですし

途中で一度でもカロリー摂取量が戻ると またスイッチがオフになって
振り出しに戻ってしまいます


サーチュイン遺伝子を活性化させるのは なかなか困難なようです

 

 

2017.07.26更新

<老化と発がん>

細胞が老化するということは 不可逆的に増殖を停止すること


この反応を起こす直接的なメカニズムは

細胞がDNA傷害を受けた際に その傷害から守るための反応の
DNA 損傷応答(DNA damage response)であることを説明しました

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DNA損傷は 発がんの大きな原因のひとつですので

その傷害から細胞を守る反応である細胞老化には

細胞ががん化して  無制限に増殖することを抑制する

という 発がん予防的な機能があります


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DNAが傷ついた細胞は 自らが持つ修復機能でDNAの傷害の修復を試みますが

傷害の程度が修復能力の限界を越えている場合は
DNA傷害が蓄積して細胞ががん化しないよう 別の手段を講じます

そのひとつが 自らを死に至らしめる手段で
こうした細胞の死に方を アポトーシスと呼びます

アポトーシスについては 既に解説しましたので
興味がある方は復習されてください


そして もうひとつの手段が

DNA 損傷応答(DDR)により 細胞周期を停止させ
不可逆的に増殖できないようにする

つまり 老化細胞になることです


<p53・がん抑制遺伝子>

さて 細胞の がん化老化 の両方に関わる因子として注目されるのが
p53というがん抑制遺伝子です


p53は DNAに傷が入ったことを察知し

*傷が軽度な場合は 細胞周期の回転を止め修復機構を活性化させ
*傷が重度で修復が不可能な場合は アポトーシスを起こさせます


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発がんを抑制するp53遺伝子の翻訳タンパクのp53タンパク
遺伝子発現を制御する転写因子です

p53タンパクが発現制御に関わる標的遺伝子は多岐にわたり
100個以上のタンパクの発現を誘導します

そのなかには

*細胞周期関連タンパク(p21など)
*アポトーシス関連タンパク(Bax Noxa Pumaなど)
*DNA修復関連酵素

などが含まれていて

それらのタンパクを発現させ機能させることで p53は自らの作用を発揮します

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p53タンパクは 細胞内では 通常はユビキチン化という処理を受け
タンパク質を分解するプロテアソーム系ですぐに分解されますが

がん遺伝子の活性化やDNA損傷が起こると
ATMキナーゼによりリン酸化され ユビキチン化を受けなくなり
上述したような作用を発揮して 発がん阻止に働きます

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多くのがんでは
p53遺伝子は変異を受けて p53タンパクが機能しないので
発がんが起こってしまいます


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<p53と老化>

一方 p53は個体老化にも関連します

個体の老化において p53依存性の細胞老化シグナルが重要で
DNA 損傷応答におけるp53 活性化によって
p53 依存性細胞老化シグナルが活性化し 細胞老化が誘導されます


また p53遺伝子を不活化すると長寿になることが明らかになり

ミトコンドリアでの酸素消費が低下して 酸化ストレスが減ることが
(ミトコンドリアでのATP産生効率は変化していない)
老化の抑制を誘導すると考えられています


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<p53と生活習慣病>

p53シグナルの活性化が
心臓病や肥満・糖尿病の病態に関与することも明らかにされています

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心不全の患者さんでは
心筋内でp53発現が増強することで 老化反応により血管新生反応が減弱
心筋に充分な血流が供給されず 心筋虚血が生じて心不全が発症・進展します

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p5308


また 肥満時には内臓脂肪組織でのp53シグナル活性化を認めますが

p53シグナルを介して誘導された細胞老化により
内臓脂肪内の慢性炎症と全身のインスリン抵抗性が生じる可能性が考えられ


p5309

p53 をノックアウトした糖尿病モデルマウスでは
*内臓脂肪における細胞老化
*悪玉アディポカイン産生やマクロファージの浸潤
が抑制され
全身のインスリン抵抗性や耐糖能異常も改善することが報告されています



このように p53はがん抑制遺伝子として発がんを制御しますが

その過剰な活性化は 細胞老化を促進することにより
さまざまな加齢にともなう疾患の発症進展に関わる可能性があります

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しかし そうした疾患の治療を目的にp53の活性を極端に抑制すると
発がんを招いてしまいます

p53と上手に付き合う方法を検索していくことが大切なようです



2017.07.25更新

老化細胞が生体内で老化細胞関連分泌因子を分泌するSASP状態になり
ヒトの体の老化が促進することを説明しましたが

ここで注目されているのが 慢性炎症 です


<慢性炎症とは?>

炎症反応というと 風邪や怪我などの際に生じ 短期間で収束する
急性の炎症が代表的ですが

最近注目されているのが 長期間にわたりジワジワと持続する慢性炎症です

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しかも 
急性炎症は 痛み 発赤 腫れ 熱感といった自覚症状をともないますが

慢性炎症は「隠れ炎症」とも呼ばれ
自覚症状がない 目に見えない形で持続する炎症なのです

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こうした隠れ炎症・慢性炎症が 加齢にともなって慢性化して

それが生活習慣病などの原因になっているのではないか?

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という考え方が 最近のトレンドになっています



<老化と慢性炎症>

そして 老化にも この慢性炎症が関与していると考えられています

というのも 老化した細胞が分泌するSASP
慢性炎症の誘導に関与する
ことが明らかにされているからです

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*ヒトでは 加齢により血中の炎症性サイトカインが増加する

*100 歳を超える長寿者は 炎症を抑制する遺伝型をもつ

*老化促進マウスでは炎症が促進され
 寿命が延長される老化抑制モデルマウスでは炎症が抑制される

これらの事実は 慢性炎症が老化を促進することを示唆しますし

以前に説明した
老化を促進する 錆び・酸化ストレス 焦げ・糖化ストレス
いずれも炎症を惹起します


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さらに 慢性炎症はテロメアの短縮を促進することも明らかにされています


こうしたことから
組織中に老化細胞が増加し 
老化細胞関連分泌因子(SASP)分泌を介する
持続的炎症誘導が 
慢性炎症のイニシエーションになっていて


さらに 細胞老化は
慢性炎症で産生される炎症性サイトカインによっても誘導される
ことから

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細胞老化→慢性炎症誘導→細胞老化誘導という
ポジティブフィードバックサイクル
の存在が示唆されています


そして

*抗炎症薬であるイブプロフェンやアスピリンの投与により
 炎症が発生した組織での老化細胞の蓄積が阻止され
 組織の再生能が回復すること

*食事制限した長寿マウスでは 炎症が惹起されにくくなっていること

なども明らかにされ

慢性炎症の抑制や改善により 老化が遅延する可能性も示唆されています



<老化・慢性炎症・生活習慣病の繋がり>

一方

生活習慣病の病態形成に 慢性炎症が関与しますが


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肥満 高血圧 糖尿病などの病態に関与する因子も

細胞老化を誘導することが示されています

たとえば 高血圧の原因となる昇圧作用をもつアンジオテンシンⅡは
血管内皮細胞の老化を誘導しますし

糖尿病の病態に関わる
インスリン/PI3K/Akt経路という 細胞内情報伝達経路の活性化も
血管内皮細胞の老化を促進します


このように 

生活習慣病では細胞の老化が促進され
それにより慢性炎症が惹起され さらに病態が進展する可能性

があります


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また 

偏った食生活 糖質 悪い脂質の摂り過ぎ 過度のアルコール摂取
肥満 過労 運動不足 睡眠不足といった

生活習慣病を引き起こす因子が慢性炎症を誘導すること

も明らかにされています


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ですから 細胞の老化を抑制したり 慢性炎症を改善させる薬物が
生活習慣病の新たな治療薬になる可能性を考え
そうした視点からの研究が 精力的に行われています



<慢性炎症が起こるメカニズム>

慢性炎症が誘導される機序の詳細は
未だ完全には明らかにされていませんが

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*細胞の老化が慢性炎症の誘導に関与し


*慢性炎症が細胞老化を誘導する

というループ形成が
生活習慣病などの病態に関与することが明らかにされたことは
大変興味深いものです


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この分野での今後の研究の 更なる進展が期待されます



2017.07.20更新

細胞老化のメカニズムについて説明しましたが

老化細胞は
生体内ですぐには死滅せず 加齢とともに体内に蓄積していきます

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(左が正常に増殖している細胞 右が増殖を停止した老化細胞です)

実際に 高齢の方の皮膚や肝臓などで 老化細胞の存在が確認されています


そして興味深いことに

生体レベルでは 
老化細胞を除去すると 老化を遅らせることができ
老化疾患の病態が軽減し寿命延長効果があることが報告されています

ということは 生体内では老化細胞が悪さをしているのでしょうか?


こうした仮説を裏付ける現象のひとつとして
老化細胞は 老化細胞関連分泌因子を分泌することが
明らかにされています

この状態を SASP状態 と呼びます

SASP状態は DNA 損傷を受けた細胞で生じ
前述したDNA 損傷応答(DDR)により
さまざまな種類の老化細胞関連分泌因子が分泌されるようになります

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通常は SASP状態にある老化細胞は
自らが分泌する老化細胞関連分泌因子が 免疫細胞を呼び寄せて
免疫系により除去されますが

歳をとってくると 老化細胞の数が増えてきますし
免疫系の老化・衰えが起こってくるので 除去がうまくいかなくなり

体内で多量の老化細胞関連分泌因子が存在することになります


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こうなってくると SASP状態 老化細胞関連分泌因子は曲者になり

老化細胞関連分泌因子の作用により
周囲の細胞ががん化するリスクが高まることが示され
加齢による発がんリスク増大の原因のひとつと考えられています

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ちなみに 老化細胞そのものは がん化しません

前回説明したように 老化細胞は細胞レベルでは
増殖を促す処理を施しても 増殖が始まることはありませんから
がんが生じる状況になっても がん化はしないのです

しかし 細胞レベルを超えて 生体レベルになると
老化細胞は SASP・老化細胞関連分泌因子の作用により
がん化を引き起こしてしまう

細胞レベルでの研究と 生体レベルでの研究の 微妙な違いの面白さです



また 老化細胞関連分泌因子は 周囲に炎症を起こします

老化細胞関連分泌因子は
炎症性サイトカイン ケモカイン プロテアーゼ等を含むので
それらの作用により組織に慢性的な炎症が生じます

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こうした慢性炎症が 老化につながると考えられていますが
この点については 次回 詳しく説明します


以上のことから

老化細胞関連分泌因子の炎症惹起作用を抑制する物質
抗老化作用を示す可能性が示唆され

放線菌が産生するラパマイシンや糖尿病薬のメトホルミン
抗老化作用が検討されています



このように
細胞レベルでの老化が 生体レベルでの老化に直接関与する可能性が
示されたわけですが

細胞レベルの研究は in vitro研究
生体レベルでの研究は in vivo研究 

と呼ばれます

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生体レベルでの研究は 実行がなかなか難しいので
細胞レベルでの研究の方が盛んに行われますが

in vitroで得られた成果が 必ずしもin vivoでも認められるわけではなく
その逆の現象が認められることもあります

一方で 今回説明したように
片方で得られた研究成果が 他方の研究のヒントになることもあります

これが 細胞レベル・個体レベルでの
研究の醍醐味でもあり難しさでもあります



2017.07.19更新

ヒトの体が老化するメカニズムを明らかにするうえで 
重要な情報を与えてくれるのが 細胞の老化に関する研究です

体を構成する細胞ひとつひとつが どのように老化するのか?

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体全体の老化 = 個体老化は

細胞の老化 = 細胞老化の積み重ね とも言えます

というのも

*生体内で 老化細胞が検出されていること

*細胞老化で見られる現象が 個体老化でもみられること

*個体老化に関わる遺伝子が 細胞老化にも関わること

など 個体老化と細胞老化の間に共通点があることが明らかにされ

細胞と個体 両方の研究の統合が進んでいて
最近では 個体老化の原因は細胞老化ではないかと 考えられています



さて 細胞老化の研究で明らかになった有名な現象が
ヘイフリックの成長限界です

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動物の体を構成する細胞は 限られた回数しか分裂・増殖することができない

という事実で

生体から細胞を分離して 試験管やシャーレの中で培養するときに
一定数の分裂しかできないことから 明らかにされました


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その限界は 細胞が由来する組織 生物の種類によって異なり
また 細胞自身が分裂回数をモニターしている可能性も考えられています



限界まで分裂した細胞は 老化細胞と呼ばれます

老化細胞では増殖が抑制されており
増殖を促す処理を施しても 再度増殖が始まることはありません


どうして老化細胞は増殖しないのか?

そのメカニズムには 細胞周期が関連します


細胞周期とは 細胞が分裂・増殖するプロセスで
通常 G1期→ S期(DNA複製)→ G2期→ M期(細胞分裂)
という4つのステージにより
ひとつの細胞が ふたつに分裂・増殖します


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老化細胞では この細胞周期がG1期で停止して
G0期という静止状態にあるのです

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細胞周期はCDK/サイクリン複合体という物質の作用により
次の期に進行しますが

老化細胞では
通常では存在しないp21 p16Ink4というCDK抑制因子(CKI)が発現し

それによりCDKの活性が低下しているので
細胞周期が前に進まず 細胞が分裂・増殖することが出来ないのです

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では どうして老化細胞では p21 p16Ink4が発現してくるのでしょう?

そこには テロメアの短縮が関わっています

既に説明したように 細胞分裂を繰り返すと テロメアが短小化しますが
そのために起こる染色体の構造変化が DNAがダメージされたとして認識され

細胞がDNA傷害を受けた際に その傷害から守るための反応である
DNA 損傷応答(DDR)が生じます

このDDRにより p21 p16Ink4の活性化 発現が誘導されるのです

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またp21 p16Ink4は 細胞寿命を迎えていなくても
細胞が酸化ストレス 放射線 がん遺伝子の異常活性化
といったストレスを受けたとき 発現が誘導されます

実際に
細胞はある程度の強さのストレスを受けると 分裂を停止して老化細胞になる
ことが明らかにされています

ストレスが弱ければ 細胞はストレスに対する反応系により対処できますが
ストレスが強くて反応系の処理能力を超えれば
細胞は老化して増殖を停止してしまいます



このように 細胞は

DNA傷害を認知したり

ストレスにより生じた細胞内傷害を感知すると

傷害を修復するために いったん細胞周期を止めて増殖を止めます

細胞の老化は 細胞のこうしたストレス対応反応により生じているのです


DNAの異常が蓄積されると やがて細胞はがん化しますが
細胞老化は がんの増殖を抑制しているという防御的な側面もあるのです


細胞老化 なかなか奥深くて 侮れません



2017.07.18更新

老化には 錆び 焦げ も関与します


体の構成成分に錆びを起こさせるのは

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以前解説した 酸化ストレスの原因となる活性酸素です


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活性酸素の働きを抑える抗酸化酵素の量や活性は
加齢により低下しますし

酸化ストレスによって生じるDNA障害の修復能が高い生物種ほど
最大寿命が長いことも明らかにされていますから

酸化ストレスが老化に関与することは明らかです


特に 最も酸化活性が高く 消去する酵素が存在しないヒドロキシラジカル
DNA タンパク質 脂質といった重要な生体構成成分と反応して
遺伝情報や機能を変化させてしまいます

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こうした変化の積み重ねが 老化につながると考えられています

自動車や機械製品は 経年変化により錆びてきますが
ヒトの体でも似たようなことが起こり 老化していくようです



一方 錆びだけでなく 焦げも 老化に関与します

焦げの現象は タンパク質に糖が結合することにより生じ
それによりタンパク質が劣化して 老化につながっていきます

この タンパク質が焦げて劣化した状態を AGE・終末糖化産物と呼びます

高血糖状態では タンパク質と糖が体温で焦がされて 褐色の物質に変性します

この過程は 糖化・メイラード反応と呼ばれ
いちど起きると一方通行で 元には戻りません

メイラード反応は 酵素を必要としない珍しい反応で
体温程度の温度で反応が進むことが特徴です

生体内には カルボキシメチルリジン ペントシジン クロスリン など
数十種類のAGEがあります


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ちなみに 糖の種類により メイラード反応の起こりやすさが異なり

フルクトース・果糖は グルコース・ブドウ糖より
AGE化するスピードが10倍速いとされています

フルクトースは果物などに含まれる糖分ですが
以前にご説明したように グルコースより脂肪に変換されやすく
内臓脂肪や脂肪肝の原因になりやすい

さらにAGEにもなりやすいので なかなか厄介な糖といえます


また ハンバーガー フライドポテトなどのファストフードはAGEを多く含み
それらを食べることによっても 体内にAGEが蓄積されます

ファストフードが体に良くないと言われるのは こうした理由にも依るのです


さて AGEが体内のあちこちに蓄積すると 老化が起こります

血管内皮に存在するタンパク質が焦げると 動脈硬化が起こりますし
皮膚や骨に多く存在するコラーゲンが焦げると
皮膚のたるみ・しわが起こり 骨粗鬆症も生じてきてしまいます

こうした焦げが体内で生じていて 老化につながるなんて驚きです


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錆びと焦げ なかなか厄介な問題です、、、



2017.07.13更新

老化を制御する重要な因子のひとつが テロメア です

テロメアは 細胞の分裂をつかさどる分子で
染色体の端に存在して 染色体の端を守る役目をしています

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その本体は TTAGGGという単位(塩基配列)の繰り返しです


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細胞が分裂するたびに
テロメアが1単位ずつ切り取られ短くなっていきます

ですから 細胞分裂の回数をカウントしている物質とも言えます


テロメアが短くなくなると 細胞が分裂できなくなります

これが細胞老化の本態と考えられていて
出生時には10000単位あるテロメアが
5000単位に短縮すると 寿命が終わると考えられています

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病気になると テロメアが短縮しますし
テロメアが短縮すると 病気になりやすくなります

病気で臓器が傷害されると
死んだ細胞を補うために細胞分裂が増え テロメアが短縮します

臓器の細胞のテロメア短縮が限界になると
臓器の寿命が尽きてしまいます


テロメアが短縮すると

*膀胱がん 肺がん などになりやすい

*心筋梗塞 脳卒中のリスクが増える

*動脈硬化 糖尿病が悪化する

*感染症に罹りやすくなる

といったことが報告されています



テロメアが短くなることには どのような因子が関与しているのでしょう?

テロメアは 肥満 喫煙 運動不足で短くなります

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一方 運動をすると テロメアの長さが伸びます
運動が体に良いとされているのは こうした効果もあるからです


また 酸化ストレスもテロメアを短くさせます

酸化ストレスの蓄積により テロメア長が短縮し
活性酸素は テロメアのGGGを分解して壊すことが明らかにされています

さらに酸化ストレスは テロメアのDNAに障害を及ぼします

酸化ストレスが生体に及ぼす悪影響は
テロメアの短縮が 大きなひとつの原因と考えられるわけです

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さて 生体内には テロメラーゼという酵素があります

短くなったテロメアを再生して伸ばす働きを有する酵素で
通常の体細胞では その発現が封印されています

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しかし がん細胞では過剰に発現しているのです

がん細胞は 無限に増殖することが可能なので
がんはどんどん大きくなっていきますが

その理由は
テロメアを伸ばすテロメラーゼの活性が高まっているために
細胞が老化しないからと考えられています

ですから テロメラーゼ活性を抑制する物質は
がん治療薬の有望な候補になります

正常な細胞の老化と がん細胞の異常な増殖が
テロメアという共通の物質を介して行われている現象は
なかなか興味深いです



さて 老化防止という観点からは
テロメアが短くならなければ長生きできる
というアイデアが生まれてきます

実際に 長寿のヒトはテロメアが長いことが確認されています

また あとで解説する長寿遺伝子 を活性化する作用がある
抗酸化物質の摂取 運動 カロリー制限などにより
テロメアの短縮速度が低下することが報告されています

もちろん 細胞の老化はテロメアだけで規定されるわけではありませんが
運動やカロリー制限といった 健康に良いと言われていることの作用機序に
テロメアの短縮を防ぐことが関与している可能性は大きいようです


2017.07.12更新

なぜ 老化現象が起きるのか?

さまざまな原因 理由が想定されています


まず 老化を規定する 大きな機序は何か?

老化には 遺伝要因と環境要因が関与することを説明しましたが


遺伝に関連する大きな概念が
老化というものはプログラムされたものだ という考え方です

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遺伝的に規定されたプログラムにより ヒトは老化する

そのプログラムにより 臓器や細胞の寿命があらかじめ決められていて
一定の時間を経過すると 機能しなくなるので 老化が起こる

老化のペースメーカーが存在するのではないか という考え方もあります


また 細胞が分裂できる回数には限界があること  も明らかになり
この回数は 遺伝的に決められていると考えられています

この点については 次回詳しく説明します

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一方 環境要因に関連する大きな概念としては
ホメオスタシス 恒常性の破綻 という考え方が重視されています

ホメオスタシス 恒常性という現象は
ヒトが生きていくうえで非常に重要なものです

生体の内部や外部の環境因子が変化しても
それに関わらず 生体の機能や状態が一定に保たれる現象
ホメオスタシス 恒常性と呼びますが

さまざまな生体活動で ホメオスタシスが維持されているので
ヒトは病気にならず
生理的な活動を継続して営んでいくことが出来ます

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しかし このホメオスタシス維持機構が衰えてきて
例えばストレスに対する修復機構が衰えてくると
傷害が蓄積して老化すると考えられます

また 色々な環境要因が過度に変化して
ホメオスタシス維持機構の能力を超えた負荷がかかると
維持が困難になり  やはり傷害が蓄積して 老化すると考えられます

ホメオスタシス維持機構も
遺伝的プログラムにより寿命が規定されているかもしれませんが
環境要因が大きく影響するのは事実です



このような大きな概念が 老化を規定すると考えられていますが

もう少し具体的に 老化の原因について見てみると

異常なものが蓄積するので老化する という説

例えば 酸化ストレスの蓄積により
DNAやタンパク質が傷害されて機能できなくなり老化する

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また 機能が低下したタンパク質などの老廃物が蓄積してくると
細胞の働きが低下して老化につながる


必要なものが足りなくなるために老化する という説もあります

性ホルモンや成長ホルモンなどが候補に挙げられていますが
ホルモン補充による老化予防効果は期待外れで
加齢によるホルモン低下が 老化の原因か結果かは証明されていません

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細胞周期の制御が上手くいかなくなるので老化する という説もあります

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老化に関連する遺伝子としては

*がん抑制遺伝子
*サーチュイン遺伝子
*解糖系代謝遺伝子
*リボソーム遺伝子 タンパク質合成関連遺伝子
*DNA修復遺伝子
*核タンパク遺伝子
*炎症関連遺伝子

などが候補として挙げられていて
これらの遺伝子の機能や発現の異常により 老化が進むと考えられています

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うーん わかったようで わからないような、、、 でしょうか?

要するに 老化に関与する因子は複雑多岐で 一筋縄にはいかない
というのが 今日のメッセージかもしれません(苦笑)

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次回から もう少し具体的に 老化の原因となる要因について説明していきます



2017.07.11更新

古今東西 この世で欲しいものがないほど 功成り名を遂げた人たちが
それでもなお 欲するもの

それは 不老不死 と言われています

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生きる人の宿命とも言える 老化を 何とかして食い止めたい


でも 功成り名を遂げていない人の間でも
最近は アンチエイジング というカタカナ言葉が大流行です

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Q:老化とは何なのか?


Q:なぜ老化が起きるのか?

Q:どうしたら老化を免れることが出来るのか?

今日から 老化の解説シリーズを始めたいと思います


まず 老化とは何か?


ヒトの最大寿命は120歳前後で
現在までのところ フランス人女性の122歳が最高で
日本人では 女性の117歳が最高だそうです

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しかし どんなに長生きする人でも 老化は避けて通れません


老化とは
物理学的には 体内のエントロピーが増大すること とされています

エントロピーの法則 なんとなく懐かしいですね(笑)

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宇宙も生物も 形あるものは全て 放っておくとエントロピーが増大する
ヒトの体も例外でなく 体内の乱雑さが増え バラバラになっていく


一方 生物学的には 歳を重ねるにつれて

*代謝がスムーズにいかなくなること

*細胞の分裂速度が落ちてくること

*生体の機能が全体的に衰えてくること

と定義されます


この 全体的に機能が衰えてくること がポイントで

特定の機能だけが衰えてきて 日常機能に支障が出てくると
それは病気です

つまり 老化は病気ではなく 生理的な現象と言えます

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また 生命活動と老化は表裏一体 という考え方もあります

老化現象があるからこそ 生理的な生命現象が滞りなく行えるわけで
老化の原因を除去・修復すると
他の生命活動に支障が生じてしまう可能性がある

そんな風に考える学者さんたちもおられます


一方で 老化は病気の進展に影響を及ぼすのも事実です

病気になる確率 病気で死亡する確率は
加齢とともに急激に増加します

そういう意味では 病死は老化の延長線上にある とも言えます

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また 老化が加速すると 生活習慣病や死に至る病が増えます

最もわかりやすい例を挙げると 老化は動脈硬化の危険因子となり
生活習慣病 心血管疾患 脳血管疾患のリスクを増やします

こうした事実は 老化予防は疾病予防にもなることを意味します

世でアンチエイジングがこんなに喧伝されているのは
こうした理由によるものと考えられます


さらに興味深いのは 老化には個人差があること

また 老化と遺伝的要因の関係性は低いこと です

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遺伝的要因は 老化を規定する因子の25%に過ぎず
残りの75%の因子は 生活習慣や環境によるものと考えられています

生活習慣や環境としては
アルコール タバコ 日々の食生活などが重視されています

一方 遺伝的要因による老化の規定には
次々にその存在が明らかにされた 長寿遺伝子が深く関わっています


こうした事実から 次のような仮説が生まれてきます

老化を規定する主たる要因である生活習慣 環境を見直すことで
長寿遺伝子を活性化させることができるので
その結果として 老化を防ぎ 長生きできるかもしれない

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ヒトが免れることが出来ない 生理的な現象である老化
病気になる確率 病気で死亡する確率を増加させてしまう老化

でも そんな老化を 生活習慣や環境の改善で遅らせることが出来る?

そんなことを聞くと その気になってしまいますが 本当でしょうか?(笑)


次回は なぜ老化が起きるかを説明します



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