左利き肝臓専門医ブログ

2017.04.21更新

約1か月にわたり 酸化ストレスに関する説明を行ってきました


活性酸素
フリーラジカル

生体にとって避けがたい不条理のように
生命活動に必須のエネルギー(ATP)産生過程で発生してしまうこと

sks31


核酸 タンパク質などを痛めつけて

遺伝情報の保持 伝達の障害や
酵素などのタンパク質の機能低下を引き起こし
病気の発症や進展に関与すること

sks08


生体膜の不飽和脂肪酸が酸化されると
脂質過酸化反応が連続して起こり

その反応により生じた物質が さらに酸化ストレスを誘導するという
悪循環が形成されてしまうこと


高血糖になると タンパク質や脂質を糖化し
そこに酸化もからんできて 厄介なことになること



生体内には 
こうした活性酸素やフリーラジカルの発生を防いだり
それらを消去する抗酸化ストレス機構が存在し

それらの働きにより 
生体内では過度の酸化ストレス傷害は起きていないこと

抗酸化ストレス機構の一翼を担う抗酸化物質
食物に含まれることが多いこと


ksk01



活性酸素と抗酸化システムのバランスが崩れてしまうと
酸化ストレスが生じて そのデメリットが前面に出てきてしまうこと

ssbss02


活性酸素やフリーラジカルは 単に生体高分子を傷つけるだけでなく
細胞の機能を制御するシグナル伝達分子としても機能していて
その異常は病態形成にも関わること

などを説明してきました



さて 当院には
糖尿病 脂肪肝 脂質異常症 高尿酸血症 高血圧などの
生活習慣病で通院されている患者さんが多いのですが

それらの病気の病態に 酸化ストレスが関わることも明らかになっています


ssbss01


しかし 前回お話ししたように
体内の酸化ストレス状況や抗酸化システムの状況を
保険診療の血液検査で評価することは困難です


では 日々の診療に 酸化ストレス 抗酸化システムの知識を
どのように生かしていけばよいのでしょう?

月並みな結論で恐縮ですが

日々の食事に気をつけて バランスのよい食材を摂ること

適度な有酸素運動を定期的に行い
体内の抗酸化システムを活性化すること

そして抗酸化サプリの効果を過信しないこと

活性酸素には 低い濃度ならば体に有用な作用もあるわけですから
過度に抗酸化サプリを服用して
必要以上に活性酸素を抑え込んでしまうことは 危険かもしれません


毎回 同じようなオチで耳にタコかと思いますが

生活習慣病の対策としては
食事や運動に関する 日々の地道な努力に勝るものはありません

患者さんの皆さんは 頑張って地道な努力を継続してください!



2017.04.20更新

これまで 活性酸素
核酸やタンパク質などの生体を構成する分子を傷害する悪者
と さんざん悪口を書きたててきましたが

最後に 活性酸素の意外な一面を紹介します


実は活性酸素

細胞内情報伝達 代謝調節 免疫 
排卵・受精 細胞の分化 アポトーシス

といった さまざまな重要な生理的現象にも関与しているのです


たとえば
細菌感染時に好中球などの食細胞で発生する活性酸素は
細胞のなかで細菌を殺すのに役立っています

食細胞内でNADPHオキシダーゼが
NADPHから電子を受け取り酸素に渡すときに
スーパーオキシド過酸化水素が生成されますが
これらが細菌を殺す張本人です

ksgoo01


甲状腺ホルモンの合成には過酸化水素が必要となります

甲状腺ホルモン合成の最初のステップでは
甲状腺濾胞内に存在するサイログロブリンタンパクのチロシン基に
ヨウ素が付加されますが

kssthyroid

この付加は 過酸化水素の存在下で
甲状腺ペルオキシダーゼが触媒して起こります

次のステップの ヨードチロシン基の縮合反応にも 過酸化水素が必要です

この過酸化水素は 
Duox1 Duox2というNADPHオキシダーゼに似た酵素により
甲状腺上皮細胞内で生成され

この酵素に異常があると
甲状腺機能低下症が起こることが明らかにされています

過酸化水素は 細菌を殺すだけでなく
甲状腺ホルモン合成にも寄与しているのです



活性酸素の意外な一面として 最も大きく注目されているのが
シグナルを伝達する分子としての活性酸素の働きです

既に解説したように フリーラジカルの一酸化窒素・NO
血管平滑筋の弛緩 神経情報伝達 感染防御
といった場面で シグナルを伝達する分子として機能します

no

また 過酸化水素も シグナル伝達物質として機能しています

NOも過酸化水素も安定している分子なので
発生部位から離れた部位でも 作用することができます


さらに 活性酸素やNOで 酸化・ニトロ化され
化学修飾された脂肪酸や核酸

親電子シグナルを有するセカンドメッセンジャーとして機能することも
明らかにされています

活性酸素や化学修飾された脂肪酸や核酸は
反応相手から電子を受け取りやすく
相手を酸化させたり
正反対の化学反応性のあるシステインのチオール基などと反応します

チオール基が修飾されるタンパク質は それ自体が

細胞増殖・分化に関わるリン酸化シグナル関連酵素
*さまざまな遺伝子の発現制御に関わる転写因子

といった細胞機能制御に関わる機能分子や制御分子なので

活性酸素などによる修飾によって
そうしたタンパク質の機能が活性化・不活性化したりすると
結果として 細胞の機能が変化してしまいます



活性酸素は 単に生体高分子を傷害するだけでなく

さまざまな生命活動に関わるタンパク質の機能を修飾する
シグナル伝達分子として働く側面も有しているわけです

そして この活性酸素によるシグナル伝達に異常が起こることが
さまざまな病気の発症につながると考えられ始めています


活性酸素の世界は 想像以上に奥が深いです



2017.04.19更新

酸化ストレスにまつわる話題を解説してきましたが

糖尿病や肝障害や脂質異常症と異なり
酸化ストレスの状態を 健康診断などで評価することはありません

これまで解説してきたように
酸化ストレスによって傷害を受ける生体高分子は
核酸 タンパク質 不飽和脂肪酸と多岐にわたりますから

ひとつやふたつの項目を計測しただけでは
酸化ストレス動態を 俯瞰的に評価したことにはなりません


また 活性酸素フリーラジカル

寿命が短く 
局所で発生して その近辺に存在する生体高分子に悪さをするだけなので

血液中の酸化ストレスマーカーを測定して 意味があるのか?
という話にもなります



それでも 巷では 酸化ストレス状態がわかる! と銘打った
さまざまな血液検査キットが存在していますし
そうした検査で酸化ストレス動態を評価することも よく見受けられます

elisakit


研究レベルでも 血液中のそうした酸化ストレスマーカーを測定して
病態と酸化ストレス動態の関連についてモノを言うことも少なくありません

書き手も かってそうした研究をしたこともあります

でも データを解析しながら感じたのは
役者が多すぎて 何を見ているのかわからないなあ 
ということでした(苦笑)

まさに 木を見て森を見ず という感じなのですよ、、、



ただ これだけ世間で酸化ストレスについて喧伝されると

自分の体内の酸化ストレス状態はどうなっているのだろう
と気になるでしょうし

それが血液検査でわかると言われたら 興味を持つことと思います

そこで いわゆる 酸化ストレスバイオマーカーについて解説します


酸化ストレスの状態を評価するバイオマーカーとして使われているのは

比較的安定な物質である酸化損傷マーカー
血中や尿中での それらの物質を計測することが多い


既に何度も説明しましたように

活性酸素フリーラジカル
核酸 タンパク質 脂肪酸などの生体高分子を傷害します

こうして酸化された生体高分子のなかには 化学的に安定していて
血液や尿で測定できるものがあります


たとえば DNAの構成成分であるグアニン
酸化ストレスにより障害を受けて生成される8-OHdG
尿中で測定することができます

8ohdg


細胞膜のリン脂質のアラキドン酸
酸化ストレスを受けて生じる脂質過酸化反応の産物のイソプラスタン
尿中で測定することができ BMIが高いほど高いと報告されています


ω6系不飽和脂肪酸の酸化ストレスマーカーのヘキサノイルリジン(HEL)

ω3系不飽和脂肪酸の酸化ストレスマーカーのプロパノイルリジン(PRL)

脂質過酸化反応の産物4-HNE MDA 過酸化脂質(LPO)

動脈硬化の形成に関わる酸化LDL

などは 血中で測定することができます



糖が酸化されタンパク質に結合したAGEのひとつのCML
血中で計測できますし

タンパク質が酸化したジチロシン カルボニル化タンパク質
血液で計れます



一方 抗酸化能力も 血液測定で評価することができます

抗酸化作用がある
ビタミンC ビタミンE グルタチオン ポリフェノール類等の
トータルな抗酸化力を評価するために
銅イオンの還元能力を測定するキットもあり

総グルタチオン量 ビタミンC ビタミンE カロテンなども測定できます

さらに抗酸化酵素のSOD カタラーゼ GSHなどの活性を
評価することも出来ます



世間的には こうした項目のいくつかを計測して
酸化ストレス状態 抗酸化能力を評価している場合が多いようです


ただ これはあくまで書き手の個人的な感想ですが

これまで説明してきたように
酸化ストレスにしても抗酸化システムにしても
さまざまな因子が相互補完的に働き合って形成されるものですから

そのいくつかを測定して(しかも現場でなく血中で)
意味があるのかな?と 正直なところ 感じています

kiwomitemori

酸化ストレス動態の全体像を把握するのは なかなか困難なことです


ちなみに これらの検査は 健康保険で行うことはできず
自費診療で行われることが多いようです



2017.04.18更新

前回ご説明した抗酸化酵素
活性酸素フリーラジカル発生を防ぐのに対し

今回ご紹介する抗酸化物質

発生してしまった 活性酸素フリーラジカルを 補足して消去します


抗酸化物質は

水溶性と脂溶性に分かれて
互いに相互作用をしながら 巧みなネットワークを形成して
生体を酸化障害から守っています


代表的なのが ビタミン類です

@ビタミンC

vitc0


水溶性のビタミンで

主に細胞中や血液中の
スーパーオキシド ヒドロキシルラジカル 一重項酸素 と反応して消去します

vitc02


また 後述するビタミンE抗酸化作用を増強します

骨や腱などの結合たんぱく質であるコラーゲンの生成に関与し
皮膚のメラニン色素の生成を抑え 日焼けを防ぐ作用もあり
ストレスやかぜなどの病気に対する抵抗力を強める働きも有しています


@ビタミンE

脂溶性で

細胞膜を構成する脂質の脂質過酸化連鎖反応を止めることで
生体膜の機能を正常に保つ働きがあります


vite1


vitc11



上述したように ビタミンCと相乗効果があり
酸化反応を止めてラジカルになったビタミンEを 
ビタミンCが還元して再生します


vitc5


動物性・植物性に関わらず ほとんどの食品に広く存在し
米や小麦の胚芽油 マーガリンキャベツなどに多く含まれます


ビタミンEは α β γ δの4種類があり
生理作用が最も強いのは α-トコフェロールです

動脈硬化の予防 前立腺がんの発症予防などにも
効果があると報告されています


脂肪性肝炎・NASHの治療の項でも解説しましたが
ビタミンEは NAFLD・NASHの数少ない治療薬として 使用されています


@カロテノイド

ビタミンAの前駆体で 脂溶性の物質で
食物や葉の 黄色 赤 橙などの色を表す色素です

ニンジンなどに含まれる赤い色素のβカロテン
生体膜で発生したフリーラジカル反応を抑制し
一重項酸素を消去して 日焼けの際に生じる皮膚での酸化傷害を防ぎます

vitc6

トマトに含まれるリコペン
ほうれん草に含まれるルテイン
茄子のナスニン
トウガラシのカプサイシン

なども カロテノイドの仲間です



ビタミン以外にも 抗酸化物質は存在しています


@ユビキノン (コエンザイムQ)

ミトコンドリアの電子伝達系で ATP合成に関与する物質で

生体膜内の脂質の酸化で発生する脂質過酸化物を消去
やはり膜での脂質過酸化物消去作用を持つビタミンEの節約や再生も行います


@尿酸

痛風の話題のときにも紹介しましたが 尿酸は抗酸化作用を有していて

その作用機序は多岐にわたり

活性酸素・フリーラジカルを補足
脂質過酸化反応を抑え
鉄イオンと結合して過酸化水素からヒドロキシラジカルが産生されるのを防ぎ
ビタミンCが酸化されるのを防ぎます


@ポリフェノール 

食物に含まれる代表的な抗酸化物質です

強い抗酸化作用があり 脂質過酸化を防ぎます

LDLを酸化されにくくして動脈硬化を防ぐ作用は 世界的に有名になり
赤ワインブームの火付け役にもなりました

書き手も 毎晩 ポリフェノールを摂取するように心掛けています?(苦笑)


ポリフェノールは赤ワインだけでなくココアにも含まれていて
緑茶の渋み成分であるカテキンはポリフェノールの仲間で
紅茶やウーロン茶にも抗酸化作用があります


@セサミン・香辛料

ゴマに含まれるセサミン エピセサミン ジアセサミンには
ヒドロキシラジカル消去作用があり

ハーブや大豆に含まれるフラボノイドや コショウなどの香辛料にも
抗酸化作用があります


このように 食物には多くの種類の抗酸化物質が含まれていて

そのなかには
抗酸化酵素が対処できない悪玉ヒドロキシラジカルを消去する物質もあり

野菜をはじめとして(ワインも?:苦笑) バランス良い栄養を摂ることが
体の抗酸化システムを強化するためにも重要なことがわかります



で 最後になりますが
巷には こうした抗酸化物質を含有したサプリメント
たくさん出回っています

こうしたサプリメントは 積極的に摂取した方が良いのでしょうか?

 vitc7


ひとつ心配なのが
長期にわたる摂取の有害性の有無が証明されていないものが多いことで

たとえば 高濃度のビタミンEを長期に摂取すると
死亡率が高まることが明らかにされています

また 特定の抗酸化物質のみを突出して摂ると
システムとしての抗酸化系のバランスが崩れてしまう心配があります

前回もご紹介したように 生体内には多くの系の抗酸化系があり
それらが協力し合って 相互補完しながら
全体として強固な抗酸化システムを築き上げています


ましてや
これひとつでOK などという夢の抗酸化サプリはないのが現状ですから

1種類のサプリメントだけを服用するよりは
バランスのある食生活を心掛けるとともに
適度に運動をして内因性の抗酸化システムを活性化する方が良いと思います


書き手は この手の健康食品やサプリメントは 嗜好品だと思っています

信じて飲めば効くかもしれない という程度で
それ以上のものでも それ以下のものでもないのではないかな?と感じています



2017.04.13更新

活性酸素 フリーラジカルの発生を抑える予防的な働きをする
主な抗酸化酵素を紹介しましょう


@スーパーオキシドジスムターゼ (SOD)

酸素から悪玉ヒドロキシラジカルが産生される過程で
最初にできてくるスーパーオキシドを還元して
酸素や比較的害が少ない過酸化水素に変えることで
ヒドロキシラジカルの発生を抑えています

kskk11



代謝が盛んな肝臓に最も多く存在し

*多くの細胞の細胞質に恒常的に存在しているCu・Zn型
*ミトコンドリアに 酸化ストレス時に誘導されるMn型
*細胞外に存在するEC(細胞外)型

の3種類があります


SODの存在量は 加齢とともに減少すると言われています

kskk12


@カタラーゼ

過酸化水素を 水と酸素に分解して消去します

過酸化水素からも悪玉ヒドロキシラジカルが発生しますから
SODと同様 ヒドロキシラジカルの発生を抑えています


kskk13


さまざまな細胞の細胞内器官のペルオキシゾームに存在し
脂肪酸やプリン体代謝を行う酸化酵素の働きで生じた
過酸化水素を分解します



@グルタチオン (GSH)

グルタミン酸 システイン グリシンの3つのアミノ酸
からできています

kskk14

アミノ酸が連結したペプチドは
プロテアーゼという分解酵素で分解されやすいのですが

グルタチオンは特異的な構造をしているので分解されにくく
細胞内に高濃度で存在できます


システインの側鎖のSH基(チオール)
細胞内に存在する最も強力な抗酸化成分で


kskk15

このSH基が還元状態にある還元型グルタチオン(GSH)
細胞内の主要な還元物質として働きます


タンパク質のSH基が活性酸素により酸化され
ジスルフィド結合を起こすと
そのタンパク質は機能を失ってしまいますが

GSHは 他のタンパク質のSH基が酸化されるのを保護します


グルタチオンが働くには
グルタチオンペルオキシダーゼという酵素が必要で

GSHはこの酵素の基質として働くために
酵素が過酸化水素を水に変え
過酸化脂質を毒性のないものに変えることができます


kskk16


グルタチオンペルオキシダーゼは
あらゆる組織の 細胞外 細胞質 ミトコンドリアに広く分布し

このGHS・グルタチオンペルオキシダーゼのコンビ
細胞内の構成成分を酸化から守る
最も重要な抗酸化システムとして機能しています


なお GSHには
有害な薬物と結合してグルタチオン抱合を行い
水に溶けやすくして 体外に排出させる働きもあり
薬物代謝においても重要な位置を占めています

kskk17


このグルタチオン抱合を行わせる酵素が
グルタチオンSトタンスフェラーゼ(GST)


kskk18


ヘム ビリルビン ステロイドホルモンなどの
キャリアータンパクとしても働いています



@チオレドキシン

酸化ストレスにより誘導され

核 細胞質 ミトコンドリア 小胞体 ペルオキシゾームなどの細胞内器官に
それぞれの特異的ファミリーが存在します

上述したGSHと同様に

他のタンパク質のシステインの側鎖のSH基の酸化を保護
酸化により生じたジスルフィド結合の還元・切断を促進することで
抗酸化物質として機能します

kskk19

また ペルオキシレドキシンという
過酸化水素を水に変換し 脂質過酸化物を分解するという
上述したグルタチオンペルオキシダーゼに類似する働きを持つ酵素が
存在しますが

チオレドキシンとペルオキシレドキシンの関係は
上述のグルタチオンとグルタチオンペルオキシダーゼの関係に似ていて

ペルオキシレドキシンは
還元型チオレドキシンを利用して
過酸化水素を消去して 脂質過酸化物を分解するのです


細胞質に存在しているペルオキシレドキシンのサブタイプⅥは
作用発現に還元型チオレドキシンでなく 
グルタチオンを利用している可能性があり

GHS・グルタチオンペルオキシダーゼのコンビと
チオレドキシン・ペルオキシレドキシンのコンビは
相互連関があるのかもしれません


チオレドキシンは 酸化ストレス応答を制御するのみならず

*遺伝子発現
*タンパク質の合成・分解
*細胞の活性化 増殖 分化
*アポトーシス

といった さまざまな細胞の機能制御にも関わっています

この作用は 酸化ストレスで発現誘導されたチオレドキシンが
核に移行して行っているもので

転写因子のDNAへの結合促進 細胞内シグナル伝達に関与し
この制御の揺らぎが 発がん 炎症 糖尿病などの病態に関わっています

kskk20


チオレドキシンのレドックス制御の奥は深いのです

書き手はかって このあたりを少し齧って遊んだことがあるので
この解説を書きながら なんとなく懐かしい思いを感じています(笑)


さて 長くなって恐縮ですが

抗酸化酵素には

*細胞内に恒常的に存在するもの 
*酸化ストレスで誘導されるもの

など さまざまな種類があって

お互いの働きを補い合うように 複雑なシステムを形成して
抗酸化機構を構成していることを
ご理解いただけたでしょうか?

次回は 食物などに含まれる抗酸化物質の解説をします



2017.04.12更新

体の中では
核酸やタンパク質を傷害する 有害な活性酸素フリーラジカル
かなり頻繁に産生されていることを説明してきましたが

実は 
生体内では活性酸素やフリーラジカルによる実害は それほど起きていません


それは 活性酸素やフリーラジカルを処理するシステムが働いているからです

ほとんどの活性酸素は 抗酸化酵素抗酸化物質で消去されているのです


ksk01


しかし

過度の運動や運動不足 偏った食事 喫煙などの不健康な生活習慣
さらい 慢性炎症などによって

活性酸素の生成と消去のバランスがくずれると 酸化ストレスが生じて
糖尿病 動脈硬化 がん 老化などの原因となると考えられています

ksk02


生きるために酸素を取り込み
その酸素によって体に有害な活性酸素が生まれてしまう

そうした原初的な不条理に対して
ヒトはしっかりと防衛システムを築き上げたのです



抗酸化システムでは

*活性酸素やフリーラジカルの発生を抑制

*発生したラジカルを捕捉して分解処理

*生じたダメージを修復・再生

という 3種類の防御策がとられています


その働きの中心をなすのが 抗酸化酵素 抗酸化物質 です

抗酸化酵素は 活性酸素の発生を抑える予防的な役目を果し

kskk01



抗酸化物質は 自らが活性酸素により酸化されることで
 活性酸素を安定な分子に変化させる働きを示すようになります


kskb00



たとえば 酸素から活性酸素のメンバーが産生される過程で
抗酸化システムがどのように働いているかみてみましょう


最初の 酸素からスーパーオキシドができるステップでは
SODという抗酸化酵素が働いて スーパーオキシドを消去します

スーパーオキシドが過酸化水素になるステップでは
カタラーゼ グルタチオンペルオキシダーゼ グルタチオンなどの抗酸化酵素
過酸化水素を消去します

kskk02


このようにして
最大の悪者であるヒドロキシラジカルが産生されないように
抗酸化システムは働いているのですが


残念なことに そうした抗酸化システムの防御網をくぐり抜けて
ヒドロキシラジカルができてしまうと

残念なことに この最悪の厄介者を消去する防御システムを
ヒトの体は有していません

うーん なかなか うまくいかないものですね、、、



さて 運命を嘆いてばかりいないで
抗酸化システムについて もう少し詳しく勉強していきましょう


ラジカルの発生を抑える予防的な役割を果たす抗酸化酵素

適度な有酸素運動で生じる 微量のフリーラジカルの刺激によって
酵素活性が高められ その効果は数日間持続します

過度な運動は 活性酸素の産生を高めてしまいますが
適度な運動は むしろ抗酸化システムを活性化するようです


活性酸素やフリーラジカルを補足する抗酸化物質には

水溶性抗酸化物質脂溶性抗酸化物質があり

お互いが相互補完しながら巧みなネットワークを形成して
生体を酸化障害から守っています


抗酸化酵素や抗酸化物質以外にも

活性酸素により損傷を受けた核酸やタンパク質を修復・再生する
*ホスホリパーゼ 
*プロテアーゼ 
*DNA修復酵素 トランスフェラーゼ

などの修復再生型抗酸化物質も存在しますし

フェントン反応により悪玉ヒドロキシラジカルが産生されるときに働く
フリーの鉄イオンや銅イオンが存在できないように 
それらを制御する
*フェリチン
*トランスフェリン
*セルロプラスミン
*メタロチオネイン

といった金属制御タンパクも 抗酸化システムの一員です


次回は こうした頼もしい抗酸化システムのメンバーについて
もう少し詳しく紹介します



 

2017.04.11更新

酸化ストレスは
がん パーキンソン病やアルツハイマー病 慢性の炎症疾患 老化など
多くの病気の病態形成に関与していますが


sksdis01



主に生活習慣病の治療を行っている当院のブログですから
肥満 糖尿病 動脈硬化酸化ストレスの関連について解説します


<肥満>

肥満の脂肪組織では

活性酸素の産生に関わるNADPH オキシダーゼの発現が上昇

その一方で
抗酸化機構の主たるメンバーである
SOD グルタチオンペルオキシダーゼ カタラーゼ
などの発現が低下しています

つまり 肥満では 酸化ストレスが亢進しているのです

sksdis02


酸化ストレスの亢進により
MAPK NF-κBなどのストレス応答シグナルが活性化され

アディポサイトカインの分泌異常が生じて
糖尿病発症につながるインスリン抵抗性が誘導されます


また肥満の脂肪組織では
尿酸合成酵素のキサンチンオキシダーゼが
過剰に発現・産生されており

キサンチンオキシダーゼそのものが
活性酸素産生を促すのに加え

尿酸が脂肪組織で過剰に産生され 細胞内に引き込まれ
酸化ストレスが誘導される可能性もあります


このように肥満では 酸化ストレス状態にあり
それが 糖尿病などの肥満により生ずる病気の発症に
関与している可能性があります



<糖尿病>

糖尿病では

活性酸素産生系の
キサンチンオキシダーゼ NADPHオキシダーゼが活性化しており

高血糖状態では
ミトコンドリアからのスーパーオキシド産生が増加しています

一方で

抗酸化系SODが 糖化により変性し活性低下しており
還元型グルタチオンカタラーゼも 減少しています

肥満と同様 糖尿病でも 酸化ストレス亢進状態にあります

酸化ストレス亢進状態にあると
膵臓β細胞でのインスリン遺伝子発現低下 分泌低下がみられますし
肝臓や骨格筋でのインスリン抵抗性も誘導されます


sksdis03


また 前回にも解説しましたが

高血糖状態で生じる
糖が酸化されタンパク質と結合した異常な糖化タンパク質の増加も
大きな問題です

糖がタンパク質と結合すると アマドリ化合物が生成され
アマドリ化合物は 自己酸化する過程で活性酸素を産生します

さらにアマドリ化合物はAGEとなり AGEも酸化ストレスを誘導します

AGEは 分解されずに沈着して 血管内皮細胞の障害を引き起こすので
糖尿病性血管合併症の増悪因子となります

糖が高いと ろくなことがありません、、、



<動脈硬化>

動脈硬化の病態形成にも 酸化ストレスが大きく関与しています

血中LDL が上昇していて 血管内皮に生じた傷口へ 付着すると
LDL 受容体を介して LDLは血管壁内に移行します

血液中では 種々の抗酸化物質が存在しているために
LDLは容易に酸化されることはありませんが

血管壁内では
マクロファージ 好中球 血管内皮細胞などが
活性酸素・フリーラジカルを産生し

さらに 抗酸化物質が存在していないため

LDLが酸化されて 酸化LDLになります

LDLを構成するリン脂質が不飽和脂肪酸でできているので
活性酸素やフリーラジカルにより 酸化されやすいのです

sksdis04


以前にも説明したように
血管壁内では マクロファージがスカベンジャー受容体を介して
酸化LDLを貪食して泡沫化して壁内に沈着します

こうして 動脈硬化の病態が形成され進行していきます



このように

酸化ストレスは
肥満 糖尿病 動脈硬化の病態に深く関与しています

ということは
酸化ストレスをうまく制御すれば
こうした病気の改善につながる可能性があるということ?


そろそろ 抗酸化ストレスの話をした方がよさそうですね


 

 

2017.04.06更新

前回 ご説明したように

核酸やタンパク質が酸化反応で傷害をされると
遺伝情報やさまざまな生体機能に支障をきたしてマズイことは
容易に想像できますが

脂質が酸化されると どうマズイのでしょう?


脂質に対する 活性酸素やフリーラジカルによる攻撃は

*細胞膜 
*ミトコンドリアやミクロソームなどの膜

を構成する脂質に対して起こります

sks60


膜の脂質(特に多価不飽和脂肪酸)は
構造的に活性酸素・フリーラジカルの攻撃を受けやすく

ヒドロキシラジカルと遭遇すると 水素(電子)が引き抜かれて
不対電子を持つ脂質ラジカルになり

sks61

連鎖反応の脂質過酸化反応が開始されます


脂質ラジカルが酸素分子と反応し 脂質ペルオキシラジカルになり

脂質ペルオキシラジカルは
他の脂質と反応し新たな脂質ラジカルを生成させ

自らは過酸化脂質脂質ヒドロペルオキシド)になります

この反応が 連鎖的に繰り返されるのです


sks62



過酸化脂質が蓄積すると 細胞膜・細胞機能が傷害されますが

血液中の過酸化脂質は
動脈硬化 心筋梗塞 急性期脳梗塞 糖尿病 劇症肝炎などで
増加していることが 明らかにされています


sks64


また 不飽和脂肪酸が脂質過酸化反応により分解されると
さまざまな種類の 反応性の高い低分子アルデヒドが生成されます

アルデヒドは
核酸 タンパク質 リン脂質などと容易に反応し
最終的にDNA ミトコンドリア リソゾームなどを傷害します


sks65



このように

活性酸素やフリーラジカルにより 脂質の過酸化反応が起こると

*過酸化脂質や
*反応性の高い低分子アルデヒド

が産生されて それらが 核酸やタンパク質に悪さをしかけるのです

脂質の酸化により
有害な飛び道具がいくつも産生されてしまうわけで
なんともたちが悪いものです



さて ここにも糖化が絡んできます

細胞膜のリン脂質糖化されて アマドリ化合物になると

これが原因で脂質過酸化反応が起こり
過酸化脂質や反応性の高い低分子アルデヒドが産生され
病態が増悪していきます

sks66

タンパク質では 
糖化によりAGEができて 大きな問題でしたが

脂質でも 糖化が有害な酸化反応を誘導するとは
糖は本当に色々な場面で悪さを繰り返していて 厄介なものです



sks67


そして

酸化ストレスは 
糖質・脂質にも影響を及ぼし
最終的にタンパク質の変性を起こして 体に害をなす

酸化ストレスの複雑さ 怖さを ご理解いただけたでしょうか?



2017.04.05更新

活性酸素フリーラジカル
遺伝子やタンパク質などを傷害することで 体に害を及ぼしますが

sks12

では 具体的に どのように悪さをするのでしょう?


@遺伝子が傷害される場合

*核酸を構成する塩基が 酸化的に損傷を受ける

*DNAの1本鎖または2本鎖が切断される

といった現象が起こります

sks51

塩基が損傷したり DNAそのものが切断されたりすると
遺伝情報が正しく伝わらなくなりますから

細胞死や発がんのリスクが高まり
ひどい場合は突然変異が起こったりします



@タンパク質が傷害される場合

*アミノ酸の側鎖構造の酸化的修飾による タンパク質機能の劣化

*ペプチド結合の切断による タンパク質の分解

といった現象が起こります


sks52

こうした現象により タンパク質が変性したり機能を失ったりします


ヒドロキシラジカルなどの活性酸素が
アルギニン リシン プロリンなどのタンパク質のアミノ基に直接作用し

カルボニル化タンパクという
正常ではないタンパク質に変えてしまいます

sks53

神経変性疾患 糖尿病 高コレステロール血症などの疾患では
このカルボニル化タンパクが増えていることが 明らかにされています



酸化によるタンパク質の変性には 糖や脂質もかかわっています


糖やその酸化産物

タンパク質のリシンなどのアミノ基と反応して
ジカルボニル化合物を経て 最終的に不溶性のAGEになります


sks54


こうしたタンパク質の糖化反応を メイラード反応と呼びますが

AGEは組織に蓄積して 動脈硬化の増悪 老化などに関与します


sks55




また AGEは炎症や活性酸素の産生を促し

糖化反応と酸化反応は 密接に結びつき悪循環を形成し
タンパク質の機能を劣化させます


一方
脂質が酸化されてできる アルデヒドなどの脂質過酸化反応生成物
リシン システイン ヒスチジンなどのアミノ基と反応して
やはりタンパク質の機能を劣化させます

この脂質過酸化反応については 次回 詳しく説明します



2017.04.04更新

生体を構成する核酸・タンパク質・脂質などを傷害してしまう
厄介な活性酸素フリーラジカルですが

ヒトの体内では これらが常に産生されています

たとえば 体内に摂取した酸素の2~5%程度が
活性酸素に変化すると考えられています


では どんな状況で
活性酸素・フリーラジカルは作られているのでしょう?


いちばん多くが産生されるのが ミトコンドリアの電子伝達系です


sks31


既に説明しましたように 通常の電子伝達系では
最終過程の複合体Ⅳで 電子伝達系を流れてきた4個の電子と水素イオンが
酸素と結合して2分子の水が出来て 反応が完結します

しかし なんらかの理由で電子の流れに滞りが生ずると
電子伝達系の複合体Ⅰ・Ⅲで
酸素が漏れ出てきた電子1個だけと結合して

スーパーオキシドができ
さらに過酸化水素からヒドロキシルラジカルへと連鎖反応が進みます


活性酸素・フリーラジカルの産生は
細胞質での酵素反応によっても起こります

たとえば
キサンチンオキシダーゼという酵素が
核酸が分解して生じたヒポキサンチンを尿酸に変換させる反応を起こす過程

また
好中球という白血球に存在する
ミエロペルオキシダーゼ NADPHオキシダーゼという酵素が
細菌を殺す反応を起こす過程

さらに
小胞体という細胞内小器官で
NADPH依存性チトクロームP450還元酵素で薬物の代謝(酸化)が起きるときも
NADPHから放出された電子が酸素に渡され スーパーオキシドが産生されます


このように生体内で生理的反応が生ずる際に
活性酸素・フリーラジカルは 不可避的に産生されてしまい

心臓 肝臓などの代謝が活発な臓器では その産生が多いのです



一方 精神的なストレスが大きい状態でも
活性酸素・フリーラジカルが産生されますし

紫外線 放射線 大気汚染 タバコ 薬剤 金属などによっても
活性酸素・フリーラジカルが産生されます 

過度な運動によっても増加するので要注意です

sks32


このように体内では
さまざまな状況下で容易に活性酸素・フリーラジカルが産生され得るわけで

ミトコンドリアの解説をしたときにも言及しましたが

生体にとって不可欠な エネルギーの産生過程で
有害な活性酸素やフリーラジカルが産生されてしまうことは
ヒトが生まれ持った不条理のような面があります

sks33

 

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