左利き肝臓専門医ブログ

2017.03.30更新

前回に解説した活性酸素と並んで 酸化ストレスを起こす張本人が
フリーラジカルです

フリーラジカルは 活性酸素と何が違うのでしょう?


フリーラジカルは
不対電子という 対になっていない単独の電子を有する原子や分子です

sks21


通常の原子や分子は
いちばん外側の電子軌道を回っている軌道電子が
2つずつ対になって存在し

そのために安定していて 他の原子や分子とは反応しません

しかし ここに熱や光などの形でエネルギーが加えられると
片方の軌道電子が軌道を外れて飛び出して

残った電子が ひとりぼっちの不対電子になり 

フリーラジカルができます

sks22

フリーラジカルは
ひとりぼっちの不対電子を安定化させようとするため
他の物質から電子を奪おうとします


sks23

ひとりぼっちの電子は 寂しがり屋なので
他の人とコンタクトしたがるわけです

だから 反応性が高く

いろいろな物質と容易に酸化還元反応を起こしてしまい
電子が次々に受け渡される連鎖反応が起きます


量はとても少なく 寿命もとても短いのですが

生成された局所で瞬間的に働いて
酸化ストレスによるダメージを起こします

sks24


で 活性酸素との違いですが

活性酸素は 酸素をもとにした反応で生じてくる物質ですが

フリーラジカル
酸素だけでなく 窒素や脂質など さまざまな物質が反応して生じます


sks26



また 反応性の基となる不対電子を持っているかどうかがポイントで

前回ご紹介した活性酸素のうち

スーパーオキシドとヒドロキシラジカルは 不対電子を持っているので
フリーラジカル

過酸化水素と一重項酸素は 不対電子を持っていないので
フリーラジカルではありません

sks25


大丈夫ですか? 混乱していませんか?(笑)



フリーラジカルに属するものとして

*酸素 水素原子

*活性酸素の スーパーオキシド ヒドロキシラジカル

*窒素化合物 : 一酸化窒素 二酸化窒素

*過酸化脂質 : 脂質ペルオキシラジカル 脂質アルコキシルラジカル

などがあります


上述したように 酸素だけでなく
窒素や脂質などから産生されるものがあるのが
活性酸素との大きな違いです



窒素化合物
は 反応性に富むフリーラジカルで

なかでも注目されているのが 一酸化窒素・NO です

no1

一酸化窒素合成酵素・NOSの働きにより
酸素とアミノ酸のアルギニンから合成されますが

no2


さまざまな生理機能を有しています

no3


サイクリックGMP を合成させ 細胞内のシグナル伝達に関与したり

no6

神経伝達物質としても働きます

また 血管内皮細胞で産生される内皮型NO
血管の平滑筋を弛緩させて 血管を拡張させ 血圧を調節しています

no4

血小板凝集抑制作用もあるので 抗動脈硬化作用を発揮します


no5


一方で
脂質過酸化物を分解するグルタチオンペルオキシダーゼの働きを抑制するので

NOがあると細胞内で脂質過酸化物が分解されず 過酸化脂質が増え
細胞障害につながります


このように NOは 生体にとって有益な面と不利益な面を併せ持っています


過酸化脂質は 話が長くなるので稿を改めて解説します



ということで
生体にとって有害な酸化ストレス反応の主役
活性酸素とフリーラジカルの違いが イメージできたでしょうか?

ともに他の物質との反応性が強く ダメージを与える厄介者ですが

活性酸素は ヒドロキシラジカルが主たる悪者ですが
フリーラジカルは役者が多く さまざまな作用を有している

そんなイメージでとらえていただければ良いと思います


次回は 活性酸素やフリーラジカルが産生される場面について説明します



2017.03.29更新

生体にとって有害な酸化ストレスを起こす正体が
活性酸素・フリーラジカルであることを 前回ご説明しました

ただ 活性酸素やフリーラジカルという単語は
色々なところで見聞きすることが多いと思いますが
なにがどう違うのか よくわかりませんね?(笑)


そこで まずは 活性酸素の説明から

sks10

活性酸素の正式名称は 

活性酸素種:ROS Reactive Oxygen Species

生体内で酸素を消費する過程で発生する
酸素が変化した 不安定で反応性の高い物質です

電子が1個足りない状態にあるので不安定で
足りない電子を補充するために
他の物質とやたらと反応したがります 

sks11

他の分子を酸化する能力が高く
生体成分である DNA 脂質 タンパク質などと反応して
それぞれに傷害を起こします

sks12




活性酸素の仲間は4種類あり

sks13


まず 酸素からさまざまな反応により
電子がひとつ放出されると
1番目のメンバーの スーパーオキシドができます

スーパーオキシドから電子がひとつ放出されると
2番目のメンバーの 過酸化水素になります

過酸化水素から電子がひとつ放出されると
3番目のメンバーの ヒドロキシルラジカルになります

また上記の連続反応とは別口で
酸素に紫外線などのエネルギーが加わると
4番目のメンバーの 一重項酸素ができます


sks14



では それぞれについて 少し詳しく見ていきましょう


@スーパーオキシド

わずかなエネルギーで容易に生成します

生体内での濃度は比較的高いですが
脂質との反応性は低く 細胞膜を通過することはできません

活性酸素のメンバーのなかでは おとなしいタイプ
自身の反応性は低いのですが

他の悪さをするROSの前駆物質の役割を果たしているので
侮ることはできません


@過酸化水素

肝臓で作られる 生体内の濃度は比較的高いROSで
非常に安定しています

細胞膜を通過できますが 生体分子に傷害を及ぼすことはありません

カタラーゼ ペルオキシダーゼにより分解され 酸素と水になります

傷の消毒にも用いられる有用性もあり 活性酸素の優等生的な存在です

sks15



@ヒドロキシルラジカル

酸化力が最も強い活性酸素で いちばんの悪者です

sks16


最も反応性が高く 強力な酸化作用を有し
アミノ酸 脂質 金属イオンなどの
生体を構成する分子に 大きなダメージを与えます

細胞膜の脂質を毒性の高い過酸化脂質に変え
そうした反応の誘導により
次々に反応が起こり 細胞死の引き金がひかれます


遷移金属(銅や鉄)の存在下で
スーパーオキシドや過酸化水素から生成されます


sks17

寿命はとても短いので
生成した局所のごく近くに存在する分子にしか反応せず
濃度も比較的低いのですが

なにせエネルギーが強く
分子を構成する結合のなかでも強力な 炭素と水素の結合さえも
簡単に切断できてしまうので 非常に厄介です


あとで詳しく説明しますが
生体には酸化ストレスに対する防御機構があり
スーパーオキシドや過酸化水素を消去する抗酸化物質は存在しますが

いちばん手強いヒドロキシルラジカルを消去する物質は
あいにく存在しないのです

そういう面からも ヒドロキシルラジカルは難敵です

sks18


@一重項酸素

スーパーオキシドや過酸化水素よりも反応性が高く

ヒドロキシルラジカルについで 酸化力が高い物質で
アミノ酸のヒスチジン トリプトファン メチオニンとよく反応します



このように 活性酸素は生体内で酸素が反応する際に生じる物質で
その寿命は短いものの
生じた局所でまわりの分子を傷害する性質を有しています

特にヒドロキシルラジカルは反応性が高く
さまざまな分子を傷害して疾患の病態形成に関わっています

活性酸素のイメージができたでしょうか?

次回は フリーラジカルについて説明します



2017.03.28更新

ミトコンドリアでのエネルギー(ATP)産生の解説をしたとき
電子伝達系での電子の流れが滞ると 

活性酸素が産生されて

それは体にとってリスクになることを紹介しました


この活性酸素によるリスクは 酸化ストレス という名前で
世間一般に広く認知されています

確かに酸化ストレスは さまざまな病気の病態形成に関わり
最近では 老化にも関与するとして 広く注目されている現象です


sks01


そこで今回から何回かに分けて 酸化ストレスの解説をします



そもそも 酸化ストレスとは いったいどんなものなのでしょう?

酸化ストレスとは
酸化反応により引き起こされる 生体にとって有害な作用のことです

えっ? この説明では わかったようで わかりませんね(笑)


酸化ストレスを引き起こす酸化反応とは


ある物質が酸素と反応することにより生じるもので



sks02

金属が錆びたり 古い油が茶色になったり

sks03

皮をむいたリンゴの色が変わったりするのは


sks04


全て酸化反応です

バーベキューで火が燃えるのも 酸化反応

sks05


リンゴがしわしわになったり バーベキューで火が燃えるのも
全て酸化反応なら 

酸化反応 なんとなく 身近な感じがしませんか?(笑)



食べた食物が胃腸で分解されて吸収された栄養素が 

細胞に運ばれ
ミトコンドリアの電子伝達系で エネルギー(ATP)に変換されるのも

栄養素と酸素が反応する酸化反応です

mt energy2

 

前にも説明しましたが
ヒトはこのミトコンドリアでの酸化反応を行うために
息を吸って体内に酸素を取込んでいるのです

ミトコンドリアでのATP産生は 栄養素が酸素により燃やされて
エネルギーが得られているイメージです

そもそも 生体内で物質が分解するときには
必ず酸素が必要とされます



さて 酸化反応を分子レベルで見てみると

その正体は 
分子と分子の間で 電子の受け取りがおこなわれている現象です

*分子が別の分子に向かって電子を放出するのが 酸化

*分子が別の分子から電子を受取るのが 還元

この対になった酸化還元反応
体中のいたるところで 絶え間なく行われています


sks06



では どうしてそのようなありふれた酸化反応が
生体にとって有害なストレスになってしまうのでしょう?

それは 酸化反応の過程で

活性酸素 フリーラジカルと呼ばれる
 
非常に反応性が高い物質
他の物質に反応を仕掛けて分解したり 変性させてしまう
そんな厄介な物質

が産生されてしまうからです


sks07


体の中で

*遺伝子を形成する核酸
*酵素などの重要な機能分子を作るタンパク質
*細胞膜などを形成する脂質

が それぞれ活性酸素 フリーラジカルにより
ダメージを受けてしまう

sks08



それが 有害な酸化ストレスの正体です


では 酸化ストレスを起こさせる
活性酸素やフリーラジカルとは何か?

次回から 詳しく説明します



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