左利き肝臓専門医ブログ

2016.09.29更新

腸内細菌叢について解説したとき
糖尿病などと腸内細菌叢プロファイルの変化の関連について説明しましたが


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腸内細菌叢の変化
機能性胃腸障害の病態にも関与していると推定されています


まず ストレスにより腸内細菌叢プロファイルが変化します

ストレスは 有害菌の増加 有益菌の減少方向に作用するとされ

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ストレス時に消化管局所で放出されるカテコラミン
有害菌を増やす機序が想定されています


一方 変化した腸内細菌叢プロファイルは
視床下部―下垂体―副腎系によるストレス応答の反応性に
影響を及ぼします

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腸内細菌叢が脳に影響を及ぼす機序は いくつか想定されています

まず 腸内細菌が 腸管の神経細胞を活性化させます

消化管から脳に情報を伝達する神経細胞には
細菌成分を認識して細胞機能に影響を及ぼす
TLR4という受容体が発現していて

腸管内に TLR4に認識されるLPSという細菌成分を注入すると
腸管の神経叢が活性化されることが明らかにされています


また 腸内細菌は 腸管でのセロトニン産生を促します

腸内細菌の嫌気性菌が
食物中の繊維性成分を分解してできる短鎖脂肪酸は
腸管のセロトニン産生性EC細胞を刺激し セロトニン産生を促します

セロトニンは前回説明したように 消化管の運動を促進し
さらに迷走神経を介して脳の延髄に情報を伝達します

EC細胞は 複数の種類のTLRを発現していますから
さまざまな種類の腸内細菌の成分が EC細胞を刺激して
セロトニンを分泌させる可能性も示唆されています


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このように

腸内細菌成分そのものや 腸内細菌により分解された代謝産物が
消化管から脳への情報伝達に影響を及ぼしたり

消化管局所でセロトニン分泌を促し
消化管運動に影響を及ぼすと考えられます


腸内細菌が産生に関与する 脳への情報伝達に影響を及ぼす物質としては
上述の短鎖脂肪酸や GABA ポリアミンなどの生理活性物質が
候補として考えられています



また腸内細菌叢のプロファイルは 腸管からの情報伝達のみならず
さまざまな中枢機能や行動に影響するとされていて

腸内細菌により変化するホルモン産生や免疫反応などが
関与すると推定されています

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実際に過敏性腸症候群の患者さんと健康な方を比較すると
腸内細菌叢のプロファイルが異なることが報告されています

しかし 過敏性腸症候群の患者さんで
どのような腸内細菌が増えているか 減っているかは
報告によって異なり
病気に特異的に増減している細菌は同定されていません


一方で ビフィズス菌などのプロバイオテイクス
腸内細菌叢のプロファイルを是正する働きを有していますが

機能性胃腸障害の患者さんに投与すると
消化管症状のみならず うつや不安障害の改善もみられることが報告され
広く治療に用いられています



以上より

機能性胃腸障害の病態形成への
腸内細菌叢プロファイルの変化の関与が推定され

一部の症例でプロバイオテイクスの有効性も認められることで
そうした推定が裏付けられると考えられます


今後は 疾患特異的に増減している腸内細菌の種類が同定され
病態がより詳細に解明されるとともに

症状を緩和するだけでない
根本的な治療法が開発されることを期待したいと思います



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