左利き肝臓専門医ブログ

2018.09.21更新

働くのは 何のため?

そんな根源的な問いを突き付けながら 番組はエンデイングを迎えます


<第10章 ゲームは終わらない>

イギリスの経済学者のロバート・スキデルスキー

18ybs91

働くことについて こう語ります

人は働かないことへの恐怖がある

働かないことは 余興ではなく失業と捉えられる
働かないと所得が減り 生き甲斐がなくなることと同じになる

仕事を減らす自動化が進む社会で 人々はどうすべきか?
働かないことは人々を開放するのか それとも生きる意欲を喪失させるのか?

18ybs92

やがて 今存在している仕事の50%はAIや機械に代替されてしまい
労働時間は減って週20~25時間になるという

その時に 社会や人々は 所得減に対してどう対処すればいいのか?


オランダの歴史家・ジャーナリスト ルドガー・ブレグマン

18ybs94

減った所得を 国家がベーシックインカムとして保証すべきか
について論じます

18ybs93

ニクソンは70年代に ベーシックインカムを試みようとしたが
民主党のより高い額の要求で頓挫した経緯がある

その時行われた ベーシックインカムの社会実験では
社会保障費は下がり 犯罪は減少し 子どもの成績は上がり
人々は労働を止めなかった

ベーシックインカムは
危惧されていた社会的混乱も引き起こさず 健全に機能していたのである

18ybs95

離婚率が50%に上がるとされたので 共和党は反対したが
そのデータは間違いだったことが判明した

ベーシックインカムがアメリカで葬り去られたのは 悲劇だった


一方 カビール・セガールは こう語ります

自動化で仕事が減る社会では
富を生み出すために皆が働く必要はなくなる

そして 自由に使える時間こそが富 有限の貨幣となり
自由な時間こそが 最高の価値を持つようになる

18ybs96


でも 仕事人間は
そう簡単に自由な時間を楽しめないのではないかな?(笑)



再び コーエンがシュンペンターの警句を引用します

シュンペーターは 資本主義は生き残れないと予想した

なぜなら 官僚的なプロセスのせいで
資本主義に必要な起業家精神が失われる 

と考えたから

18ybs97a

シュンペーターは

資本主義は その成功ゆえに
土台である社会制度を揺さぶり 自ら存続不能に陥り
社会主義へと向かう状況が必然的に訪れる

と予測したのです


世界を覆い尽くした資本主義の
成功ゆえに失われるもの
成功ゆえに生まれる裂け目

それは 何なのか?


ウルリケ・ヘルマンは 現代の資本主義の問題点を指摘します

現代資本主義世界では 複数の巨大企業に売り上げの大半が偏り
競争は実際には存在していない

村のような狭い社会 エリートのお友達集団で 全てが決定され
競争なき 富の固定化が起きている

そして

資本主義は
人類がはじめて発明した経済成長を生み出す魅力的なシステムだが
残念ながら 永久に成長し続けることはできない

資本主義が崩壊するのが先か
人々が資本主義から抜け出る道を見つけるのが先か?

と 資本主義の未来について やや悲観的に語ります



ロバート・スキデルスキー

資本主義は 資本を蓄積する仕組みだが
それがもはや重要でなくなったときに 資本主義のシステムはなくなる

代わって現れるのは 社会主義ではなく

もうけるというモチベーションが 重要ではなくなる世界である

と予測します

18ybs97


遂に人々は 欲望からの解放されるのでしょうか?

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ガブリエルは 資本主義の将来をどう考えているのでしょう?

資本主義の代替案があるだろうと考えて
モノの生産と消費に関する理論をたくさん考えたが
そのすべてが間違っていたことが 技術の進歩の歴史で証明された

資本主義は さらに多くの矛盾を生み出し 人類を滅ぼしかねない

現在起きていることについてのマシな理論をたてないと
人類の滅亡は本当にやってくるだろう

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やはり かなり悲観的で しかも切羽詰まった意見です



光を追い求めるうちに 闇を忘れ去ったのか?

リンゴを高く売ることに夢中になって
リンゴの味を忘れたかのように

18ybs101



専門家たちの悲観的な意見を相次いで聞いて
ナレーターは ポツリとつぶやきます


最後に登場するのは セドラチェク

資本主義は 何とか機能しているが
誰も なぜ機能できているかはわからない

現象の細部まで全てを説明できる完璧な理論はない

資本主義はある程度までは機能するが
完璧ではないということにいつも注意すべきである

現在の世界について確実なことは 誰にもわからない

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うーん 世界の俊英たちが議論した結論が そこですか

書き手も
確かに 世の中に確実なことなんてないとは思いますが

でも 最後は もう少しポジテイブなメッセージが欲しかったな(苦笑)


数字のゲームから 誰も逃れられない
でも ゲームにはルールがある

そして ルールを決めるのは 
時代の 私達の欲望


今夜もルールは 書き換えられていく


欲望の資本主義


最後の数秒 こうしたナレーションが流れて 番組は終わりました


うーん 面白かったけれど 
最後の結論はインパクトに欠けたかな?

今度は ポスト資本主義の未来社会 について語る番組を
企画していただきたいものです

最近は そうしたテーマについて書かれた本をよく目にしますが
それこそ世界のエッジの人たちは どう考えているのか?

そのとき 本当に人々は欲望から解放されて
自由な時間を楽しめるのでしょうか?

そのためには
やはり 資本主義に代わる新たな経済システムが必要だと思います


それが ベーシックインカムのようなものか?
それとも シェアリングシステムのようなものか?
または 全く新しいシステムなのか?

NHKさん そのあたりにフォーカスした番組 期待しています!

  

2018.09.20更新

欲望の資本主義 2018

番組は いよいよ終盤にさしかかります


<第8章 交換だけが駆け巡る>

イノベーションを どう評価するか?

そう問われた ノーベル賞受賞経済学者のステイグリッツは こう答えます

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不思議なことに
マクロ経済の視点から見て
イノベーションによる生産性の向上は認められていない

イノベーションで得られた富が 一般の人たちからは見えないのだ

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ここで イノベーションに絡めて インターネットが話題になります

ダニエル・コーエン
インターネットが経済に及ぼす影響について こんな指摘をします

インターネットは
生産者と消費者をマッチングさせる市場の機能を効率化し
需要と供給の法則を強化していて

それ自体が とても秀逸な「市場」として機能している

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つまり

インターネットが 市場の新たな「見えざる手」になっている

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一方で 現代社会では 多くの人々が過大な競争圧力にさらされているが

Google Apple Facebook Amazonなどは例外で
他者には競争圧力をかけながら
自らは競争を回避して利益を独占できている

こうした格差も生まれつつある


インターネットについて ステイグリッツは 

検索エンジンやFacebookなどの恩恵は確かに大きく
人々の生活に影響を及ぼしているけれど

それらは 経済学的な統計には反映されていないし

同様に社会に大きな影響を及ぼしてきた電気やDNAに比べて
インターネットはどれほど重要なのか?
 
という疑問について 経済学者の間で議論が尽きないのが現状である

と指摘し


イノベーションとインターネットをまとめて

イノベーションを生む側にとっては
人々の暮らしに影響を与えることは喜びだろうが

しかし 人が24時間
インターネット すなわち他人に駆り立てられることは
それほど幸せなことか?

と疑問を呈します

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うーん 耳が痛い警句ですね!

イノベーションによって生まれたインターネットは

人々の日常生活を “駆り立ててしまう”
新たな価値観になったのでしょうか?

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では 根本に立ち返って

経済における価値とは何か?
何が価値を決めるか?
なぜそれに価値を見出すのか?


セドラチェクは それらの問いに こう答えます

価格は客観的で簡単だけれど 価値は難しい

価値は主観的で人それぞれだから 

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では なぜ 金(価格)と モノ(価値)を 交換できるのか?

マルクスは この交換に 神秘を見出しました

商品が貨幣になる 命がけの跳躍

これは 資本主義世界に潜む謎 である


価値は 主観的なので 測れない 比べられない
価格は 客観的なので 誰もが認める評価ができる

人々は そんな価値と価格の関係を理解しようともがいてきたけれど
結局それは困難だ

それでも人々は 日々の経済のなかで価値を交換している


うひゃー 話が抽象的で難しくなってきましたね(苦笑)

価値と価格の関係ねえ、、、

これまで 考えたことはないし
そんな疑問を思いついたことすらありません(再苦笑)

オークションなどは
価値を価格で評価するわかりやすい仕組みだと思いますが

日々の生活のなかで
オークションみたいなことを いつも行っているという実感は
ないなあ

この謎が語っているのは どういうことなのでしょう?

価値と価格の関係 なかなか難しいです、、、



<第9章 闇の力が目覚める時>

コーエンは イノベーションの話を引継いで こう語ります

現代は 創造力の追求が 人々に要求される新たな義務となった

イノベーションによって
人は 創造力を必要としないルーティンワークをすることがなくなり
その代り 創造力の追求を認められる

そんな社会に変化した

創造的であれ さもなくば 死ね

と 迫られているようなものだ

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そして そこには
創造性がグローバル経済に搾取される というストレスもある


生産性を高め 想像力を高め 
職を奪うAIや機械に打ち勝たなければならない

これが新たな競争の世界で 人々は緊張感を強いられている

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世界はかつてないほど「経済のルール」に支配されつつあり

その資本主義のルールを作ったのは テクノロジー なのだ

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えっ どうして急に テクノロジーが出てくるのでしょうか?


マルクス
機械の怪獣性 悪魔的な力を 既に見抜いていました

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手動の製粉機は 封建社会を生み
蒸気式の製粉機は 資本主義社会を生む

生産の形態 条件が 社会の構造を決める
テクノロジー 経済の在り方が 社会や人間のありようを決める

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これこそが シュンペーターがマルクスの著作に見出した
闇の力 の正体なのです


経済や社会は 独自の力で動く

そのなかで人々は 自分の希望に関係なく 一定の行動を選ばされてしまう
自由を奪われるというより 自ら心理的に選択の幅を狭めてしまう

個人がいくらあがいても その流れを変えることはできない

資本主義の構造の力 こそが 闇の力

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前にも書きましたが

そのシステムの中で生きている人々は 意識することがなく
意識できたとしても 抵抗できない

そうした社会や経済の構造の力が まさに闇の力だ

というコンセプトは とても興味深いものがあります

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そして 創造的であれ さもなくば死ね
という世界は 確かに厳しいですね

そんな世界に 本当になっているのかな?
なんだか 空恐ろしいきがします



さて こうした分析を受けて コーエンが再び語ります

今の時代は 常に自分を変革することを強いられている


フロイトは「文化への不満」という著書の中で 

芸術家のように生きるのは不可能だ
人の人生を 芸術家のようなものにしてはいけない

なぜなら芸術家は不幸だから

芸術家はいつも創造性の欠如への恐怖にさらされているから

と述べているが

今の新しいテクノロジーの世界では 常にそうした緊張がある


芸術家になることを 日常的に迫られる苦悩

いつも 自分が得意なことは何か と
自分自身に問いかける生活を強いられる

それがストレスと緊張を生むので 燃え尽きてしまう人が大勢いる

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人々は能力を限界まで出し切ることを求められる
それが昔の労働者との大きな違いである


このフロイトの芸術家の苦悩のたとえは なかなか的を得ていますね!


新しいテクノロジーがやっているのは 前の文明の破壊である
より素晴らしい明日に向けて 人々は変化に心を躍らせる

しかし それが義務になったら
楽しいはずの創造が いつの間にか苦しくなる

では 働くのは 何のため?


この章は こんなナレーションで終わります


うーん 人は何のために働くのでしょう?



2018.09.19更新

欲望の資本主義 2018

番組の後半は 人の貨幣への愛 の話題から始まりました


<第6章 幻想の貨幣愛>

投資銀行のトレーダーで
巨大な額のマネーを日々取り扱ってきた カビール・セガールさん

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人は頭の中に いつも金に関する関心や欲望がある と指摘します


お金を使っているつもりで お金に使われている

そこが 金の厄介なところで
人生を左右してしまうほどの強い力がある

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一方 金が多ければ多いほど 将来の不安がなくなる
だから人は 安心するために過剰な金を求める


このように 

人は 恐怖と欲望からできている

だから もっともっと金を となってしまう

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しかし 人々が貯蓄に走ると 社会に恐慌が起きてしまう



マルクスは 資本論のなかで

カネが王 モノが家来 という幻想がある

と書きました

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セドラチェク

現代は GDP神話に生きる時代なので

金に対するフェテイッシュな欲望 執着がある

と指摘します


お金への幻想愛 確かにあるかも?(苦笑)



さて ケインズは世界恐慌に際して

失業が社会の最大の不安なので
欲望の対象である貨幣をたくさん作ればいい

人はいつも 手の届かないモノへの憧れにとらわれてしまう

その無意識をコントロールすることが 資本主義の鍵である

と述べました

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このことを セドラチェクは こう解釈します

金が 道具でなく 目的になっている

金はあらゆるものと交換可能だから 人は金を欲望し
使うことでなく 貯めこむことが目的になる

こうした目的と手段の逆転により 人は金の奴隷になってしまう

18ybs56


いやはや ですね

読み手の皆さんは 耳が痛いですか?
書き手は ちょっと、、、(苦笑)


<第7章 二つの世界を欲望が覆った>

資本主義と社会主義が 力の均衡を示していた時代

その終盤の1980年代に
レーガンとサッチャーによる 大胆な経済改革が起こりました

18ybs57

世にいう 新自由主義 の流れですね

市場原理主義 とも呼ばれていました


ダニエル・コーエンは この改革をつぎのように評します

当時 進歩的な学者などにより喧伝されていた
生産にとらわれる時代ではない ポスト物質主義が到来しているという
そんな考え方は 間違いだとする改革だった

この改革は
それまでの社会の型を破壊し変形させ 悪徳の栄え を引き起こした

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強欲 を 成長の原動力として解き放ったのだ


18ybs59

1980年代以降の資本主義は
社員や労働者の切り離しに新たな価値を見出し
大企業は社員を守らなくなった

レーガン・サッチャーの革命により

市場の力が解放され

世界中にウオール街のマネーパワーが解き放たれた

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ウオール街の暴れ者たちは
真の価値を見ず 目先の利益を得るためだけのために
会社を分割して売り払いバラバラにした

これが 新しい「金融資本主義」の基礎になっている


資本の増殖を求めて
バーチャルな価値が行き交い増殖する現場

自由な取引を掲げてきた市場だが

その実情は

一部のトップ投資家だけが市場を支配し
巨大なマネーが さらなるマネーを引き寄せる

18ybs62

それが 資本主義のリアルである と指摘します



また セガールは 実際にトレードをしていた人らしく
金融と政府の関係について言及します

政府からの借金の要請を 銀行などの金融界は断らない

それが現代経済 現代社会の基盤なので
大手銀行は 政府に金を貸すことで巨大なパワーを持つに至り

政府と大手銀行の関係は
今や 互いに共存する生物のようなものになっている と


いや~ ”あなたの知らない世界” ですね(苦笑)


閑話休題で

さて 資本の暴走の歯止めともなっていた社会主義が崩壊すると

膨れ上がる資本の運動の勢いは 止まることがなくなり
グローバリゼーションは さらに加速化したのです

18ybs63


ここで再び セドラチェクとガブリエルが議論します


セドラチェクは こう指摘します

社会主義との葛藤があったから 資本主義は発展できた

資本主義社会では 
社会主義がやっていることの追試実験ができたので
自らの方針を修正することができたけれど

社会主義社会では それができなかったので 行き詰まってしまった

18ybs64


そして 社会主義が崩壊すると 今度は資本主義が迷走し始めた


ガブリエルはこう答えます

資本主義においては 常にシステムが変化している

昨日の資本主義は 今日の資本主義ではない
そして 創造と破壊のスピードは上がり続ける



こうして考えてみると
資本主義のカウンターパートとしての社会主義の存在は
大きかったのですね

資本主義の暴走の歯止めの役割も果たしていたわけで

その社会主義が崩壊した後に 金融資本主義が抜鈎するようになった

という歴史の流れは

その時間の流れのさなかをリアルに生きてきただけに 
ちょっと昔を振り返ってみて そうだったのか~! と思うようで
なんとなく感慨深いです


それにしても

金融資本主義とグローバリズムが推し進めた 金への偏愛

この路線が先鋭化していったのは
それが人間の本能に根差しているから なのでしょうか?(苦笑)


2018.09.18更新

欲望の資本主義 2018

番組は 資本主義が暴れまわり始める様子を 分析していきます


<第3章 ショウの幕が上がるとき>

ここで セドラチェク
やはりこのシリーズの常連さんのマルクス・ガブリエルの対話が展開されます

ガブリエルは 語ります

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資本主義とは
商品生産にともなう組織的な活動全体のことで
現代の資本主義社会は 商品の生産活動そのものである

そして 商品の生産とは 見せるためのショウに他ならない

生産とは 新たに「見せる」ことで
今の資本主義は 全てがショウ化している経済システムである

そういう意味では トランプはまさに資本主義そのものの顔で
ショウこそがいちばんの商品になっている


そんな状況下でのベストな商品は フェイク

フェイクは 大量生産の差異化が行き着く果てであり
それが理想の商品となっている

でもそれは しょせん 安く作れて浮ついたモノにすぎない

いかにも彼らしい ちょっとシニカルな 現代の資本主義のとらえ方です(笑)

18ybs32



そう語るガブリエルに対し セドラチェクはこんな風に答えます

市場でなく 社会の見えざる手 の存在を信じている

歴史を振り返っても 社会の自動調節機能が繰り返し働いている

例えば チェコで共産主義が行き詰ったとき
方向性を示したのはアーティストだった

それは 経済の外側からやってくる見えざる手で
アートや哲学などの 人文系学問に期待されるものである


「資本主義は 無秩序に暴れはじめた」と分析するガブリエル

「人文系の知恵により それは制御できる」
 
と希望を語るセドラチェック


片や 冷静に深く思考し
片や 情熱的に物事を分析する

ふたりの特徴が良く現れたディスカッションは 面白いです!

そして書き手は
人文系の知恵が経済の混乱を救うという セドラチェックの意見を
もろ手を上げて支持したいです! 


さて ふたりの会話は 意外な方向に展開していきます



<第4章 フォースの覚醒>

話題は グローバル化 貿易 投資 にひろがります


資本をさらに増やそうと試みる人 そこから取り残される人
引き裂かれる欲望の世界

資本主義は どこに向うのでしょう?


セドラチェクは

ヨーロッパは
もともと 経済移民は受け入れないが 政治移民は受け入れる
というスタンスだったが

現実は逆で

経済移民は仕事をしてくれるし 消費もしてくれるので
良いと評価して どんどん受け入れるようになり

逆に 仕事でなく自由を求める政治移民は 受入れなくなった


これは 理屈でなく本能に基づいた行動とも言えるが
移民政策の決定の裏側に ”経済のホンネ” の存在が透けて見える

いつから政治の裏側に 経済という本音が張り付いたのか?
経済と政治の錯綜は なぜ生まれたのか?

と問います

18ybs33


それに対して ガブリエルは論を転がして
移民政策を語るときに必ず出てくるポピュリズムについて こう答えます

昨今の政治的風潮を ポピュリズムで片づけようとするのは
無意味で的外れな診断で

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今起きていることは グローバル化への抵抗の一種である

人々が 突然 政治的に国粋主義に目覚めるようになったわけではなく

世界中で人々が
グローバル化による経済的な不公平を目にするようになったので
ポピュリズムのような現象が起こり始めたのだ

政治でなく経済が原因なのだ と


はい グローバリズムの社会や経済への悪影響

これまでも度々指摘された 現代社会を読むキーコンセプトのひとつですね

18ybs35


ここでセドラチェクは 新しい 興味深いコンセプトを披露します

邪悪な力 フォースが目覚めたのだ と

ポーランドでは
たった2週間の短期間で 突如 邪悪な力 フォースが目覚めた

それは ポピュリズムではなく 暗い悪のようなもの

悪のフォース

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2015年頃に なにか構造的な変化が起きたのかもしれない

その頃から 人々が良い人ではいられなくなってきた

誰も自分を助けてくれないのに
どうして人のことを助けなければならないのだ?

特にキリスト教文化では イスラム教文化より経済的反応が強く出て
“良い人疲れ” が起こり始めた


良い人疲れ 面白いコンセプトですね!(笑)

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ガブリエルは セドラチェックが指摘した悪のフォースに 敏感に反応します!

悪について 考え直す必要がある

そして 彼が研究した
ドイツの哲学者 フリードリヒ・シェリング を登場させます

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シェリングは 悪の研究の第1人者で

悪は人の心の中にあるだけでなく
実在するポジティブなフォースである

と主張しました


どんなシステムでも
継続的に維持させるためには 他のシステムを排除しなければならない

外部がないシステムは
内部に「異質なもの」を作りださなければならない

これが シェリングのいう 悪のダイナミクスだ と指摘します

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そして このシェリングの理論を
グローバリズム全盛の現代社会に当てはめてみます

「外部がある」という感覚を失うと 帝国は崩壊を始める
そうした崩壊を防ぐには 内部に悪を作らなければならない

だから”外部”を消失させたグローバリゼーションは
社会や政治に 新しい悪を生み出させたのかもしれない

資本主義は 経済的な帝国を作り出したけれど
帝国というものは 困ったときは 内部から悪を作り出す

これが ナショナリズムなどが復活している背景なのだろう

確かに 悪に似ている

18ybs40


いつもながらガブリエルは 面白いことを言いますね!

この「内部に敵を作る」というアイデアは
フランスにおける民主主義の変貌について語られたときも
大きな要因として語られていましたが

いずれのコンテクストでも
ナショナリズム的なものに結びつくのが興味深いです

ナショナリズムの本質なのかな?


では その悪は 個人に生まれるのか? 社会に生まれるのか?



<第5章 イノベーションの呪縛>

セドラチェクは

資本主義は 過度に効率的になり 道徳的規範を失った 

と指摘します


資本主義の支配的な観念 強迫観念は

*役に立つことだけをすべし
*自分を愛するものを愛し 嫌うものを嫌え
*よくしてくれる者によくして 意地悪するものにはやり返せ

というもので

人々は こうした観念に生まれたときから親しんでいるので
あらゆるところに その価値観が根付いていて

それが 道徳的規範の喪失に繋がる

そして そのことに気がついていないのだ と


うーん セドラチェクの論理展開は
わかりやすいし シンパシーが持てて(?:笑)いいですね!



で それを受けて ガブリエルは 次のように論を展開させます

資本主義は どこまでも拡大しつ続ける性質を有する

成功の概念の上に成り立っていて
ひとたび成功すると 次の何かを求めようとする

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成功者であり続けるには 同じことをしていてはダメで
絶えず新たなことを考えて 成功し続けて 
それにより 自らを維持する必要がある

だから これまで目をつけてこなかった新たな存在を見つけて
値段をつける作業を続けていく

このように 全てを商品化することが 資本主義の根本的な性質である

新しさを追いかけ あくなき創造と破壊を継続することこそが
資本主義のエネルギーとなるのだ と



ここで ダニエル・コーエンが再び登場し
シュンペーターについて言及します

彼は 資本主義の歴史を 創造的破壊の連続だとした

この番組のキーワード「創造的破壊」の登場です!

人々は 創るための破壊を繰り返してきたが
それは強迫観念のように人々を駆り立て
資本主義社会では ずっと継続して行われてきた


しかし シュンペーターは こうも予言します

資本主義は その成功ゆえに 自壊する

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またシュンペーターは マルクスを次のように評価しました

マルクスの体系には 構造の力が際立つ

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そして 偉大なものには 闇の力 がある

18ybs44


うーん ”構造” には ”闇の力” が内包されているのでしょうか?

社会の構造は
その中で生活していると無頓着になってしまいますが

それが大きな力 しかも闇の力を持つという概念は
なかなか面白いと思います!

社会の構造に 闇の力が内包されている?

うーん 興味がそそられます!(笑)


2018.09.17更新

今週は夏休みなので いつものお勉強ブログなどはお休みして

欲望と不条理
 な話題を提供します


去年 NHKの特番で放送され
とても面白くて印象に残り ブログでもご紹介した

欲望の資本主義

その2018年版が放送されました(もう 少し前のことになりますが) 

18ybs01


やめられない 止まらない

欲望が欲望を生む 欲望の資本主義

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人は 何のために働くのか?

金と欲望をめぐる物語


そんなキャッチコピーで宣伝された番組ですが サブタイトルは

「闇の力」が目覚める時

18ybs03


うーん 興味をそそられる 意味深なタイトルです(笑)


またしても面白かったので 番組内容を紹介します


<第1章 分断する世界>

番組ではまず
NYで行われた 起業家と投資家のイベントの模様が紹介されます

資本とアイデアが出会う場所

起業家は
自分が開発した新たでユニークなアイデアを 実現させるために
投資家に売り込みます

こうした場が 新たな富が生み出される土壌となります

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ベンチャー投資家たちは 語ります

投資家の役割は 金と起業家・アイデアをつなぐことで
見込みのある起業家に投資し 彼等彼女等を育て
新たに作った会社を 大企業に売って稼ぐ

これは 資本の増殖を巡るリアルゲームだ と


彼等の目的は 新たなシステムを作る こと

「デジタル技術による効率化」が彼等の投資哲学で

時間とコストの削減をいかに効率的に行うかを
起業家のアイデアをハンティングして 追い求めます

効率化こそが 至上命題で
テクノロジーにより 世界を変えることを目指す

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インターネットを使い 低コストで拡張性を高くして
99%の人が恩恵を被れるようにして
世界の富のバランスをよくするのが投資家の役目

と主張します


うーん 富のバランスを良くしようという目標は立派ですが
効率性をそんなに過度に追い求めるのは どうなのかな?
と 怠け者の書き手は思ってしまいます(苦笑)


そしていよいよ「欲望の資本主義」について語られ始めます


資本主義は 創造と破壊の連続である


日々 新しい技術で 新しいモノを作る

そうした競争の繰り返しこそが資本主義で
その原動力は 起業家によるイノベーション

資本主義の本質を こう著したのは
ケインズと並ぶ巨人経済学者の ヨーゼフ・シュンペーター

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彼は 資本主義のダイナミズムの本質を追い続け

呈したキーワードのひとつが 創造的破壊

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創造のためには 破壊し続けなければならない

これが 資本主義の掟



シュンペンターは
この後も重要な場面で繰り返し登場し
「創造的破壊」は この番組のキーワードになります

いやー 不勉強な書き手は ケインズは知っていましたが
シュンペンターさんとは ”はじめまして!” でした(苦笑)


ここで フランスの経済学者 ダニエル・コーエンが登場し
現代の世界経済が抱えるパラドクスを指摘します

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ここ10年あまり
新しいテクノロジーの広がり・発展が 経済を活気づけているが
先進国の経済成長は ずっと停滞している

テクノロジーの発展は 世界の人々を富ませていない
富んでいるのは トップの一部の人々だけ

テクノロジーは
トップの人の世界を広げることで 強者をさらに強者にしただけで
経済格差を広げるのに貢献したにすぎない

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その結果 人口の中核をなす中間層の人々が つらい思いをしている

サービス業 銀行 保険会社 役所などに勤める人は
新しいテクノロジーの恩恵を受けていない

そればかりか テクノロジーは
中間層の人々の仕事を時代遅れにして 職を奪っている

生き残れるのは
ロボットやテクノロジーで置き換えられない低賃金の飲食業などだけ


このように

テクノロジーの進歩は 経済発展に結びついておらず
むしろ多くの中間層の人々の職を奪い 生産性を失わせていく

そして 世界の富豪8人の総資産が
底辺の36億人の総資産と同じ額になるという
圧倒的な経済的格差社会を生み出している

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こうしたことは 以前にもあった

産業革命のとき
テクノロジーによる生産性向上により
農業などに従事する労働力が不要になった

しかし そのときは
農業に従事していた人々が 地方から都市に出てきて
工場などで職を得られた

そして 幸いなことに これが経済成長につながった


しかし 失業は 常に社会に緊張をもたらす

AIやロボットに職を奪われようとしている現代の中間層は
経済的格差で分断された社会のなかで
この先 どうなっていくのだろう?

コーエンは
イノベーションが進み AIやロボットが跋扈する現代社会の現状に
こうした疑問を投げかけます


よく指摘される中間層の没落」ですね

グローバリゼーションが
中間層の没落の原因になったという説は
これまでも何度か見聞きしましたが

イノベーションやテクノロジーの進歩が 中間層の没落を招く

というアイデアは 書き手にとって新鮮でした



<第2章 革命の夢のあとさき>

この章では 反資本主義の流れ が紹介されます


アメリカでは 自由だけでなく平等を という流れが
若い人々に広がっているそうです

大統領選挙でサンダースさんが 若い世代に好評だった流れで
社会主義が再評価されているとのこと

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そんな状況の中で
ドイツの女性経済ジャーナリスト ウルリケ・ヘルマン
マルクスについて語ります

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マルクスが分析した資本主義とは

人が金を商品に投資して より多くの金を獲得すること 

を目的とした「狡猾な」システム

貨幣はモノに支払われたのでなく 前貸しされたに過ぎない

増やすことを目的とした貨幣の利用が 資本である と

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資本主義の一側面である 拝金主義的なところが
少しずつ見えてきましたね?(笑)

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ヘルマンは

産業革命により資本主義が始まった と解説します

産業革命が なぜ イギリスで1790年に起こったか?

それは 当時のイギリスが 最も賃金が高い国だったから
なんと他のヨーロッパの国の2倍だったそうです


資本主義は 人件費が高くないと活性化されない

労働者が低賃金で購買力がないと
技術革新で作られたものが売れない

大量消費 大きな需要がないと 技術革新は機能しない

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なるほどです! そんなこと 考えたことがりませんでした、、


しかし

アメリカでは1975年頃から ドイツでは2000年頃から
実質賃金が増えていません

日本も同じ

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賃金が増えないから 消費も沈滞してしまう
過剰産生と売り上げの落ち込みが 世界の至る所で起きているのです


そこで企業は
利益を出せない「生産性向上」に見切りをつけ 投資をしなくなり
代わりに 金融市場での投機が行われるようになっている


賃金が上がらないのは
労働者が失業を恐れるあまり 賃金の値上げより職の確保を優先した
という理由もあるが

いずれにせよ 世界中で賃金が頭打ちになっている現状は
資本主義にとって危険な状態で

労働者の賃金を上げないと 一握りの経営者ばかりが富んで
ますます格差が広がってしまう

と懸念します


ここで再び マルクスの予言が紹介されます

資本主義は その矛盾ゆえに 滅びる

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なるほどです

書き手にとっては

賃金が上がらないので消費が冷え
利潤が得られなくなった企業は 投資でなく投機をするようになる
 

という解説が とてもびっくりでしたし ショッキングでした

企業経営の厳しさを 思い知らされたような感じがしました


さて この番組の常連の チェコのセドラチェクが登場します

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マルクスは

企業が得た利益は 労働者に還元されるべきだが
労働者の賃金を上げると 経営者の利益は減るので
自主的に賃金は上がらない

だから 賃金を上げるには革命しかない

と説いたと解説します

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実際に ロシアで革命による社会主義は起きたけれど

最終的には上手くいかず
平等な社会が築かれることがなかった

そして 資本主義のカウンターパートである社会主義が消え去り

ひとり勝ち状態となった資本主義は
いったいどこに向ったのか?

続く



2017.11.24更新

2008年 リーマン・ショックが起こります

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金融工学を駆使して生み出された 住宅ローンの不良債権化に端を発し
アメリカでは 800万人が家を失い 1000万人が失業し
全世界に大きく深刻な爪痕を残しました

正直に告白すると 書き手も ちょっと”火傷”しました(苦笑)

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この期に及んで ようやく 金融工学の罪が 問われ始めます

そして 金融工学者にも 
全てではないが 一部の罪はあると考えられるようになりました

金融工学は重要な技術革新ではあったが
リスクを隠していた部分もあり

粗悪な証券が破綻することに賭けて儲けた 

そんな金融機関すら あったようです


結果的に 金融工学は 暴走してしまった

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前提条件を常にチェックして
壊れたときにどうなるかを考えてやらないと 危ない

数式の前提が崩れると 数式は機能しなくなる

物理学や数学と金融の世界は 似て非なるものだった

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大志を持って金融の世界に転向した科学者たちは 今になって述懐します

私達は 思い違いをしていたのです

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人間がパニックになると 
どんな行動をとるか そのとき価格がどう動くか

それを数学や物理学で計算するのは不可能だ


うーん このコンテクストだと
ノーベル財団さんは 1997年以降の世界の経済状況の紆余曲折を鑑みて
自嘲を込めて 今年の賞を行動経済学に与えたのかな?(笑)


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それに 金融工学は 他の自然科学で行われる実験が出来ないので
実際にお金を投入して取引をしないと 検証できない

また 金融工学はブラック・ボックス

数式は 表に出れば 真似られてしまうので
決して表に出ることはない秘密主義
(数式では特許がとれない というハンデもあるようですが)

オープンにされていない 議論が出来ない 
それでは 発展できない

だから 金融工学は 本来の科学ではない

とする意見もあります

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リーマン・ショック後には こうした議論を背景に
金融機関の動き 金融派生商品への規制が必要という意見が出てきて
現在 多くの規制がかけられ コントロールされようとしています

その一方で 規制に対応した新たな金融工学を開発している科学者もいて
彼等は 規制を新たな利益を得るチャンスと とらえています

科学者は 障害があると乗り越えたくなるそうです(苦笑)



さらに最近は AIの参入という 新たなトピックが世を賑わせています

クリスタルという洒落た名前のAIは
過去20年間の膨大な市場データにより 有利な売買パターンを学習し 

High Frequency Trading HFT 高頻度取引 と呼ばれる
まばたき1回の間に1万回の取引という 
圧倒的なスピードによる売買を行います

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人間は 対応不可能です(苦笑)

やがて コンピューターがトゥルースを生み出す時代が来るかもしれません
トゥルースの基本は人が作り AIがそれをより効率的に改善する

しかし
AIコンピューターの暴走による 瞬時の異常な株価の変動も起こりました

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何が金融危機のきっかけになるか 原因を特定できなくなる時代

そんなリスクが囁かれ始めています

所詮は その時代の技術の限界を越えた金融危機には 対応できないのです



では そんなお騒がせの金融工学は 世の中に必要なのか?

多くの市場関係者は ないとダメ! と言われます

今更 勘 経験 度胸 の世界には戻れないし
第一 既にシステムのバックボーンになっているので
金融工学なしの市場は成り立たない



では 金融工学者の社会的責任は どうなのか?

もちろんそれは重大で
金融は知識の格差が非常に大きいので ブラック・ボックス化できやすいため
余計に倫理感を持ち

何が正しくて 何をやってはいけないか という考えをしっかり持ち
金融工学的手法に取り込む必要がある

その不具合により被害を受ける人がいて
社会的影響が大きいことを認識すべきである

市場関係者は そのように自らに警鐘を鳴らしています


ただ 彼等のホンネの中には
強欲な面がないと金融工学者には向かない という意見もありました

まあねぇ これまでも何回か話題提供しましたが

ヒトがその本性の一部である ”強欲” をコントロールするのは
簡単ではありませんからね(苦笑)

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そして ソープもショールズも
いくつも会社を破綻させ 多くの人々に不幸を及ぼしましたが
ともに70歳過ぎて 悠々自適の生活を送っているそうで

さらに今年2月には トランプ政権により
リーマン後に続いていた金融市場への規制が 緩和され始めました

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さて 世界の経済は どんな方向に進んでいくのでしょう?

過ちを再び繰り返さず
地に足がついた発展を遂げられるのでしょうか?



エピローグには ニュートンのこんな言葉が登場します

星の動きは計算できるが 人間の狂気は計算不可能だ

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そして番組は こんな警句で〆られます

トゥルースは 狂気さえも計算できるか?

科学は誘惑する

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うまい!(笑)

この番組の企画制作に携わった方々のセンスに
敬意を表したいと思います!


で 最後に

リーマンで火傷してから 色々と勉強した書き手は 
正直言って こう思うのですよ

額に汗して働いて得たお金と
金融工学的に楽して(?)儲けたお金 Easy Money  では
持つニュアンスが少し違わないかな?

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こんなことを書くと
お金に質の差があるか! と 怒られるでしょうか?(苦笑)

 


2017.11.20更新

NHK特番の「ザ・トゥルース(真実)世界を変えた金融工学」の続きです

ソープが生み出した 金融工学 は
数学者ブラックと経済学者ショールズによって 大きく成長します

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彼等は 金融派生商品の適正価格を的確にはじき出せる

ブラック・ショールズ方程式を 作り上げました

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これは ソープ理論を学問的により洗練させた 非常にシンプルな数式で
条件を変えることで 色々な金融商品の価格が計算でき

これまでランダムとされていた 市場の動きのかなりの部分を 
この方程式で説明することができ
株式市場に革命をもたらすことになりました

この方程式を用いて
次々と金融派生商品が生まれ 市場が拡大していきます


1994年には ショールズ自らが
Long-Term Capital Management LTCMという投資会社を立ち上げ
ブラック・ショールズ方程式を用いて12兆円を運用

年率40%の利益をあげ続け!

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なんと1997年には ノーベル経済学賞を受賞したのです

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えーっ ノーベル経済まで 

しかもそんな短期間で 獲っちゃったの?
知りませんでした、、、


ちなみに それから20年後の今年

ノーベル経済学賞は
行動経済学の魁 リチャード・テイラーさんに贈られました

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20年前にノーベル財団が 先見の明を示して
ショールズさんでなくテイラーさんに賞を授与していたら
世界の経済の模様は変わっていたかもしれませんね?(笑)



さて ブラック・ショールズ方程式は

ザ・トゥルース 真実という名の数式

と呼ばれました

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予測不可能な市場の動きも 解析・数式化して的中させるための試み
全てを統一できると 科学者たちが信じた数式でしたが

その一面で 富を得るための数式 錬金術 とも揶揄されました

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しかし 栄華が長続きしないのは世の常で

新たな市場開拓のために
ロシアなどの新興国の国債をターゲットにしたLTMCは
1998年のロシアのデフォルト・債務不履行により破綻して

損失は46億ドルにも上りました

ブラック・ショールズ方程式では
0.0003% 100万年に3回の確率でしか起きない事象と計算していた
ロシアのデフォルトが 現実に起こってしまったのです


世のエコノミストたちは

ショールズらが数式に頼りすぎていた 目の前の現実より数式を信じていた

数式は 平常時の状況は予測できるが 金融危機は予測できず対応できない

破綻はごくレアな現象ではあるが
数式が成り立つ前提条件が破綻すると うまくいかなくなる

これが 金融工学の限界である 

などと論評しました



一敗地に塗れた 金融工学


しかし たくましく復活してきます

マネーゲームの魅力は強力で
一度よい目を味わうと 失敗してもあきらめきれず

より効率的なトゥルースを求めるため
金融会社は 多くの科学者を雇い
たくさんの新たな金融派生商品を作り出します


ちょうどその頃のウォール街には
アポロ計画の終焉により職を失った科学者・ロケット工学者が参入し始め
彼等は トゥルースの在り処を 月でなく金融の世界に求めたのです

当時 ロケット物理学から金融工学の世界に転入した物理学者は

金融業界での仕事は
物理学のそれとほとんど変わりなくエキサイティングで

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物理学の法則が金融工学の世界にもあると信じていた そうです

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マーケットに進出してきた科学者たちは

自分たちの理論の正しさを証明したい
金融市場で利益をあげたい 金儲けがしたい

という

数学としての純粋な面 儲けたいという貪欲な面 の2面性を持ち

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金融商品をヒットさせて 巨額のボーナスを得るという
いかにもアメリカ的な価値観に基づく  サクセスストーリー

を描いていきました


そして

新たな局面を迎えた金融工学の大躍進により

為替 原油 住宅ローン 天候 などが 投資の対象となり
市場はカジノのようになり 規模は500兆ドルに膨れ上がりました

金融派生商品(デリバティブ)は
世界のGDPの7倍以上のマネーで運用されるという
 

実態をともなわない まさにバブルで異様な世界と なっていったのです

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でも 世の人々はその時点で
BRCISなど新興国の好景気も合わせた 右肩上がりに浮かれてしまい

そうした浮かれた状況の背景に潜む異様さに
哀しいことに 気がついていなかった

もちろん 少し火遊びをしていた書き手も
ことの重大性や異様さに 全く気がついていませんでした(苦笑)

 
そして あの 2008年を迎えるわけです


2017.11.17更新

書き手は  大学院で免疫学を学んでいました
(学ぶというより遊んでいた?:苦笑)

当時はインターロイキンという 
リンパ球が産生するホルモン様物質が同定され始めた頃で
免疫の分野は とても活気づいていました

ちなみに 現在ではインターロイキンは40種ほど同定されていますが
書き手が遊んでいた30年ほど前は
まだ数種類しか発見されていませんでした

日本は この分野の研究で世界をリードする立場にあり

そのフロントランナーの研究所のひとつが
今年 文化勲章を受勲された松原謙一先生が率いられ
IL-6の発見者 岸本忠三先生が活躍されていた
大阪大学・細胞工学センターでした

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細胞工学 Cell Engineering  という言葉は

それまで聞いたことがなかったのですが
その響きはとても印象的でした

細胞 という単語と 工学 という単語の結びつきが
なんだか違和感があるようで
それでいて なんとなく先駆的な格好良さも感じて


で 長い前振りになって恐縮ですが

書き手がもっと大人になってから(笑)

工学という単語が 別の単語とくっついているのを見聞きして
もっと驚いたのですよ!

それが 今日のお題の 金融工学 です

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NHKの「ザ・トゥルース(真実)世界を変えた金融工学」

という番組を見ました

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なぜか最初に 吉川晃司(なつかしい!:笑)が出てきて
ショーペンハウアーが語ったという こんな警句を紹介します

富は海水に似ている 飲めば飲むほど  喉が渇く

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うまい導入ですよね!(笑)


金融工学

その響きは 細胞工学よりも
もっと違和感があって もっとアヤシイ!(笑)

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番組では まず 金融工学が何たるかを紹介します

数学 物理学の数式を駆使して 富を拡大して 儲けようとする科学で
現在の金融ビジネスのほとんどの分野で 金融工学が使われており
金融工学の登場により 世界の富は500兆ドルまで膨れ上がっている

確率論をベースに構築されたもので
株価を 単純な数式で表し予測することを 初期の目的としていた


金融工学が出てくる以前の投資は
企業の経営に関する情報を集め
そのうえで カン 経験 度胸 で 投資判断をしてましたが

金融工学の登場により その景色が一変してしまい
次々と新しい金融派生商品(デリバティブ)が生まれて
市場は巨大に膨れ上がった

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そして そのあと 突然 暴走を始めて
かってないほどの規模の経済危機を生み出したのは ご承知のとおりです


では 金融工学は 誰が いつ どのようにして 生みだしたのでしょう?

1960年代のマサチューセッツ工科大学に
エドワード・ソープという 金融工学を生み出した数学者がいました

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世界恐慌の時代に子供時代を過ごし
経済的自由の重要性を認識していた彼は
要は 金儲けが好きだった?(笑)

自らの数学的才能を駆使して
確率論によりブラックジャック必勝法を見出し

そのアイデアを基に
株価の不規則でランダムな動きを 数学的に表現し予測する試みを始め
ウォール街の投資の世界に持ち込んで 巨額の富を得ようとした

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Beat the Market マーケットをぶっとばせ という書籍を執筆 出版し

従来の投資の重要な参考資料だった 会社の財務状況 経営方針など全く無視し
自らが考案した数式のみを信じて 投資を行う

そんな当時としては破天荒なやり方に
多くのウォール街関係者は 興味を示しませんでしたが

彼の出現を契機に
金融界は 数学者・物理学者が幅を効かせる世界となりました


個人的に 彼の業績(?)で注目だったのは
「空売り」という方法を発明したことです

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空売りは 今でこそ投資家さんやヘッジファンドさんらが
マーケットで巨額の利益を得るために
日常茶飯事的に行われていますが

値上がりだけでなく 値下がりでも儲けようという 空売りのアイデア

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書き手は 初めてそのやり方を知ったとき
ずいぶんとえげつないことを考えだした奴がいるものだと
びっくりしたものですが

なんとエドワード・ソープが思いついたものだそうで

ワラントという
金融派生商品とリアル株の割合を 絶妙に調整する数式を作り上げ
年に20%の利益をたたきだしていたそうです


さて ソープが生み出した金融工学 
この先 どんな風に暴れていくのでしょう?(笑)

 

2017.09.01更新

民主主義とは何だ? 

NHKの特番 欲望の民主主義

だらだらと感想を述べ綴ってきましたが やっと最終回です
ここまでお付き合いいただいて 有難うございました(苦笑)

さて 冒頭に記した 根源的な問いがなされる最終パートでは
ドイツの哲学者の マルクス・ガブリエル の登場頻度が増えます

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彼は 民主主義について こんな風に語ります

民主主義は 情報処理の特定の形であり
人間の行動を組織化する方法で 真実を中立的に判断すること である

ともすれば人は
民主主義を 真実を得る方法 うそつき政府を暴く方法 と信じがちだが
そうした解釈では混乱を招いてしまう

また 現在 直面しているさまざまな問題は
感情的な判断から引き起こされているので
感情的でない民主主義が必要だ


民主主義は あくまで社会を機能させるシステムであり
そこに善悪の判断や 過度な感情的な期待を求めてはいけない

ということでしょうか?


また 彼は こんな風にも語ります

民主主義の機関は 巨大な情報処理システムである

現代では 大きな社会システムが どのようにして稼働しているか
誰も理解できていない

政府の仕事は この仕組みを理解できている者がどこかにいる
という錯覚を生み出し それを維持することである


現代社会を支配する巨大で複雑化したシステムを
俯瞰的に理解できている人なんていない

という指摘は 確かに色々なところで見聞きします


でも そうしたら 人はどうすれば良いの?
見通しの効かない霧のなかで ひたすらもがくしかないの?

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彼は テロリズムについても言及します

テロリズムは 恐怖を作り出すことによる支配 統治であり
人々の間に恐怖が増しているが 

極端な恐怖と不安には 大抵 根拠はない
根拠のない視線が恐怖を作り出している

うーん ここは わかったような わからないような、、、(苦笑)


そして彼は 民主主義の未来について こう語り続けます

民主主義は 手続きや制度の中で 普遍的価値観を実現する試みで
私達は まだ民主主義を実現していない

民主主義は 未完成なもの 常にこれから実現されるもので
今の民主主義が正しい規範だと勘違いしてはならない


では どのような方向に 作り上げていくのか?


民主主義は 共同体の倫理の実践であるが
それは 反対派の共同体とも言え

異なる意見を意見として認めること
声なき声を尊重する制度 少数派の気持ちを尊重することが
民主主義の必要最低条件である

民主主義が機能するのは
普遍的価値を受入れたときだけだと認識すべきで
その普遍的価値は 他人の苦しみを理解する 人間の度量にかかっている

苦しんでいる人の気持ちを推し量り
それを自分のこととして認識することが 倫理感の原点であり
それがないと 民主主義は機能しない


結局 民主主義のキモは 前回も言及しましたが

他者への思いやりであり 反対意見への寛容さ 

ということでしょうか?

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そして彼は こんな警句も発します

もし民主主義の価値観が世界で崩壊したら
かってない規模の戦争が起こるであろう

だから 民主主義を守るのは価値があることで
今のところ 人間がみんなで生き残るための唯一の選択肢である



最後に 民主主義と欲望の資本主義の関係 について言及します

民主主義は 欲望の資本主義と明らかに関係している
この恐怖の欲望を乗り越えなければならない

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では どうすれば乗り越えられるか?

そのための唯一の道は
民主主義の最大の価値を思い起こすことである


彼が敢えて具体的な言及をしなかった 民主主義の最大の価値とは

再度 他者への思いやりであり 反対意見への寛容さ

ということでしょうか?



ということで 欲望の資本主義 の続編 欲望の民主主義

アメリカ フランスという 民主主義の老舗の国々において
民主主義がいかに苦悩しているかがよくわかりましたし

民主主義とは何か? という根源的な議論も交わされ

今回もなかなか面白かったし 勉強になりました



意外な収穫だったのは マルクス・ガブリエル を認識したことです

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実は彼のことは そのうちに紹介しようと思っている
「いま 世界の哲学者が 考えていること」という とても面白い本に
現代哲学界のスーパースター 的な扱いで紹介されていたので


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彼の名前は知っていたし 興味を持っていたのです

それが この番組で 実際の風貌 話し方などを見ることが出来て
驚きましたし とても面白かった

確かに
番組のまとめのパートのほとんどを 彼のインタビューが占めていたように

彼の意見は面白かったし 説得力がありました

今後も注目したいと思います

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プロデューサーの丸山さん さすがのご人選でしたね!(笑)



さて 一昨日 哲学者の中村雄二郎さんの訃報を新聞で知りました

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書き手が学生時代 自分の価値観を形成しようとしていた時期に
中村さんの著作をむさぼり読んで とても大きな影響を受けたものです

ものを考えるときの指標を与えてくださった方 のひとりです

共通感覚論 魔女ランダ考 感性の覚醒 などなど

懐かしいです、、、

ご冥福をお祈りしたいと思います



2017.08.28更新

久々にNHK特集の 欲望の民主主義 の話題に戻りますが


番組も終盤にさしかかり まとめに入っていき

民主主義とは何だ? 

という根源的な問いが投げかけられます


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番組をリードする形でコメントしてきたマルセル・ゴーシュは 
こんなことを語ります

自由の本来の意味は 自らの運命を決定する力である

そして 社会全体として より高度な目的を達成するために
個々人の自由の領域を超えて 互いの自由を結集することが出来る

民主主義とは 理想の世界であり
個々人の自由の領域を超えて
同意できないことについて議論することこそが面白い

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さまざまな人たちから構成される社会で
お互いの違い 対立 矛盾 根本的な多様性から
創造的なものを生み出すことが民主主義であり
その結果 文明は発展していく



一方 精神分析のシシリア・フルーリー
民主主義の熟成を阻むものについて言及します

度を超えた個人主義は 民主主義を危険な状況に陥れるので
個人主義でなく 個性化を確立することが大事である

個性化を確立するということは
自分は他とは異なるけれど 公共的なことにも参加する ということで

自分自身の特異性 才能を明確にしつつ
他人とともに集団的物語を築くことである

民主主義が進化するには この点が欠かせない

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こうしたコメントを受けて ナビゲーターの吉田さんが こうまとめます

感情の民主主義を越えるために

*他者の存在を尊重すること

*理不尽さを和らげる社会を作っていくこと

が 大切なのではないか?


民主主義の根幹を成す部分が なんとなく 見えてきたような気がします

他者への思いやりと寛容を持てる個の確立

目新しさがない 言い古されたことですが
民主主義には それが大切ということでしょうか?

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ここで 政治学のヤシャ・モンクが とても興味深い意見を語りました

現状の解決策は
民主主義からの撤退でなく グローバリゼーションからの撤退でもない

民主主義を再活性化し グローバリゼーションによる衝撃を緩和するような
新たな政策を採用すること

グローバリゼーションが国内にもたらす影響に対応するには
どうしたら良いか考えること

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欲望の資本主義と民主主義の関係について考えてきた番組をまとめるには
なかなか好ましい(?:笑)意見です

歯触りの良い意見で
なにをどう 具体的に実現するかは難しそうだけれど(苦笑)


以前 BS朝日で日曜夜に放送している
世界情勢を報道する「いま世界は」という番組で

コメンテーターのエコノミストの伊藤洋一さんが

これからの社会で重要なのは いかにしてグローバリズムを修正していくかだ

と述べられていたのが 印象に残っていますが


民主主義は 欲望の資本主義を修正できるか?

どうなのでしょう?



番組の中で 民主主義における欲望 についても
度々言及されていたのが面白かったです


前述のヤシャ・モンクは

欲望の資本主義によるグローバリゼーションに対抗する
そうした役割を求められる国家のなかでも
人々は見えない敵におびえながら 欲望を渦巻かせている 

と語り 民主主義にも欲望が関わってくることを示唆しています


また 前回にご紹介したように
18世紀のアイルランドの哲学者・政治家 エドマンド・パーク
フランス革命後の混乱を揶揄し

我々の本性が抱える大きな過ちは
次から次へと 飽くことなき欲望の追求の果てに
手に入れた全てのものを 失うしかないことである

と 民主主義の理念が 欲望によって変容するリスクを看破しています


マルセル・ゴーシュは

人は 理性的な理由ではなく 情動的な理由で思考を維持する 

と語り やはり 民主主義と情動 欲望との関連を指摘しています



これらの意見を受けて 番組では

民主主義は 人々が生き延びようとする欲望の集合に過ぎないのか?

という ネガティブで刺激的な問題提起もしています

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グローバル資本主義にも 民主主義にも 大きな影響を及ぼす 欲望

うーん 厄介ですね、、、

 

 

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