左利き肝臓専門医ブログ

2017.08.11更新

今日からお盆休み!

という読み手の方も多いことでしょうから
小難しい 欲望と民主主義のお話 は中断して、、、(苦笑)


7月末の週末の夜にWOWOWを見ていたら

今年5月に行われた スガシカオのデビュー20周年ライブ の録画が
放映されていました

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スガシカオ
 書き手は何気にファンなのですよ

ファンキーなメロデイも良いけれど
ちょっとナイーブでセンチメンタルな香りがする歌詞もお気に入りで

元気が欲しいときに 彼の曲をYouTubeで見聞きしたりします

そうか スガさんも 苦節20年なのですね

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だけど 今日の主役はスガさんではなくて
ライブにゲスト出演していた 初めて見聞きしたグループです

Unison Square Garden

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ギター ベース ドラム のシンプルな3人編成のグループで
もうデビューして10年になるそうです

アニメの主題歌やゲームのBGMに多用されて
そこから徐々にヒットが広がっていったようなので

アニメやゲーム好きの読み手の方がおられたら
このグループをご存知かもしれません


そんな彼らが スガさんとのコラボで演奏していた曲が

シュガーソングとビターステップ

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イントロで流れてきたギターソロで始まるポップで軽快なメロディラインに
年甲斐もなく 思わず惹き込まれてしまいました(笑)

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スガさんも 3人の中に入って 楽しそうに歌っていましたね!


で この曲 気になったので YouTubeで探すと
血界戦線というアニメの主題歌のようです

ギターの男の子がボーカルも担当していますが
ブラインドで聴いていたら 女性が歌っているのかと思うような
男性にしては繊細な声質です


そして 歌詞が気になるのですよ


超天変地異みたいな狂騒にも慣れて こんな日常を平和と見間違う
rambling coaster 揺さぶられながら 見失えないものは何だ?

平等性原理主義の概念に飲まれて 心までがまるでエトセトラ
大嫌い大好き ちゃんと喋らなきゃ 人形とさして変わらないし

宵街を行く人だかりは 嬉しそうだったり 寂しそうだったり
コントラストが 五線譜を飛び回り 歌とリズムになる

ママレード&シュガーソング ピーナッツ&ビターステップ
甘くて苦くて 目が回りそうです

南南西を目指して パーティを続けよう
世界中を驚かせてしまう夜になる

I feel 上々連鎖になってリフレクト

蓋然性合理主義の正論に揉まれて 僕らの音楽は 道具に成り下がる?
こっちを向いてよ 背を向けないでよ それは正論にならないけど

祭囃子のその後で 昂ったままの人 泣き出してしまう人
多分同じだろう でも言葉にしようものなら 稚拙が極まれり

、、、、



いったい何を言っているの? といった感じがする歌詞ですが
妙にメロデイと合っていて 節回しも絶妙で 耳に残るのですよ(笑)


ボーカルの隣で ベースの男の子が
ものすごい勢いで ステージの上を弾きながら跳ね回っていて

彼が作詞作曲をしている田淵さん

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YouTubeで彼らのインタビューを見つけたのですが

田淵さんは「ポップな曲なのに 詩が難解で哲学的ですね?」と問われると 

「どうしたらメロデイがより強く印象に残るか考えて
  わざと聞きなれない難解な単語を多く使った歌詞にしている」

と答えていました

確かに 書き手の琴線に触れたのも
まさに田淵さんが意図した メロデイと歌詞のアンバランスさでした

文語調で妙に難解な言葉が
ポップでキャッチーなメロディラインにのっているのは
不思議な新鮮さです

オヤジ いい歳をして 田淵さんの思惑にしっかりはまっています(笑)

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でも ボーカルの男の子が言っていましたが

トータルで歌詞を眺めると
ちゃんとストーリーが出来上がっていて メッセージもあり
単なる言葉遊びではないことがわかります


熱しやすく冷めやすい書き手は
すぐにAmazonで彼等のライブDVDを見つけて
即買いしてしまいましたよ

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そして もう2週間以上たつのに まだ飽きていません(苦笑)


まだ 明るいノリとポップさが前面に出ている彼等ですが
この先 どんなふうに作品が変化していくのか ちょっと楽しみです


ちなみに シュガーソングとビターステップのエンディングの歌詞は

goes on 一興去って一難去ってまた一興

一難去ってまた一興 この感覚 好みです!(笑)



2017.06.30更新

佐野さんの  スポークンワーズ  の続き


ユニオンスクエアでパフォーマンスしていたミュージシャンに
佐野さんは こう問いかけられます


「アーテイストとして 今 いちばん大事にしている気持ちは?」

その答えは 「検閲に対抗する気持ち」


「大きく社会が変わる中で アーテイストがやるべきことは何か?」

その答えは

「ワードとビートで 人々が気がつかないことを 気づかせてあげる」


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佐野さんらしい答えですが

2番目の問いへの答え そこまで考えているのか とも思いました


まあ トランプが世の中を荒らしまくっている2017年のNYの路上で
こんな問答が行われるのは 旬といえば旬かな?(笑)



番組では 佐野さんがスポークンワーズにたどり着いたバックグラウンドも
紹介されました

1950年代のアメリカで
企業 メデイア 近代文明 資本主義 差別 検閲 富といった
あらゆる矛盾に反抗の矛先を向けていた
ビートと呼ばれる文学者たちへの共感

ボブ・ディランの 言葉とビートによるレジスタンス への共感

そうした共感から生まれた 言葉と音楽の融合のための基礎実験


さらに 1980年代 日本での大ヒットの渦中に
その状況から逃避するように 突然NYに移り住んだときに

社会の底辺の若者たちが
自らのアイデンティティを証明するために作った
ヒップホップとの衝撃的な出会い


そうした土壌のなかから スポークンワーズが生まれてきたそうで

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なるほど 背景が少しわかったような気がします

10代で感じた言葉へのこだわりを ずっと追求し続けてきたのですね


歳を重ねて
さらに表情に色濃くにじみ出るようになった彼の意志の強さの源を
垣間見た気がしました

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さて 2001年から スポークンワーズを一緒に作ってきた
佐野さんの盟友とも言えるミュージシャンは

彼ほど メッセージを真剣に鋭く発する人は それほどいない
歌を超えた 広がりと深みを求めている

と 佐野さんのことを評します


メッセージ性の強さ

確かにそこが 惹きつけられるポイントなのかもしれません


番組のタイトルにもなった Not yet free という曲のなかで

世の中のさまざまな生き方を例示したあと

「君はどっち? 僕はこっち」 と 彼は問い 答えます

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そう 自分のスタンスは はっきり明示するけれど
ヒトに敢えて自分の意見に従わせようとしない

そんな彼の優しさも 惹きつけられるポイントなのでしょう


セッションの最後の曲となった

What makes us mad? 何が俺たちを狂わせるのか

という ちょっと刺激的なタイトルの曲では

俺たちは 3個のダイアモンドを掘り当てて 4個のダイアモンドを失う
と アメリカ生まれのエゴなグローバル資本主義を批判します

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そして 番組のエンディングには

NY滞在中に インスピレーションを受けて書き上げた新しい曲

こだま アメリカの友人 日本の友人に

の スポークンワーズが流されます

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今の分断された世の中でできることは 友達の痛みに寄り添うこと

でも 寄り添うことしかできない


僕は問う 君はどこにいるか?

亡びに抗うか? 亡びに酔うか? 亡びを炊きつけるか?

亡びをただ待っているだけの野蛮な今か?
眼を開いて 前に一歩進むか?


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確かに 佐野さんは
「ワードとビートで 人々が気がつかないことを 気づかせてあげる」
ことを トライしているようです


でもなあ そんなことを いきなり正面から問われてもなあ

いつものように 
彼の真摯さをはぐらかすかのように そんなことを思いつつ

でも この先も佐野さんのことは フォローしていくのですよ(苦笑)


それにしても 今回の番組での佐野さんの表情は厳しかった

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2017年 春のブルックリン

まさに あの変人が好き放題に掻き回しているアメリカの街の雰囲気は
それまでとは違う何かを 彼に感じさせたのでしょうか?


2017.06.26更新

ニューヨーク ブルックリンのライブハウスのステージに立った彼


いつものラフな衣装と違って
珍しく 黒のタイトなスーツに 白いワイシャツに黒のネクタイ

でも いつものように
左手に詩が書かれた紙を持ち バックに流れるビートに合わせながら
マイクに向かってポエトリーを語り

語ったあとに 響きを確認するように あるいはリズムをとるように
右手でハートのあたりを 小刻みにたたきます


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そう 彼は 言葉を大切にするのですよ

彼のそんな姿勢は 以前にもご紹介しましたが


いつの間にか彼は そんなスタンスを突き進めて

スポークンワーズ という 

彼独特の表現形式にたどり着いたようです


そして トランプ現象で揺れるニューヨークで

自ら作曲したビートをバックに
日本語で 自ら紡ぎ出したポエトリーを語ります


もちろん オーデイエンスはアメリカ人なので

日本語で詩が語られるステージには
映像と キーワードの英訳が 同時進行で映し出されます

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言語が異なっても ポエトリーはユニバーサルだと思うけれど
異文化との接触だから これくらいはしないと

彼はそんな風に説明していました


うん その試みは 面白いかもしれない

オリジナルな言語の 響き は 確かに大切かもしれない



Not yet free 何が俺たちを狂わせるのか


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NHKのBSプレミアム

佐野元春さんが
彼が大切にする言葉の力を最大限に生かす表現法
と考えるスポークンワーズを 初めてNYでセッションするために

日本で準備して
現地でアメリカ人のベーシストやドラマーたちと さらに練り上げる

その準備風景を 彼のインタビューも交えながら
ドキュメンタリー風の番組に仕立て上げて 放送していました

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NHK・BSさん
かなり高頻度に面白い番組を作ってくれて ありがとうございます(笑)


以前のブログでも紹介しましたが
書き手は 佐野元春のことは どうも気になるのですよ、、、

だから ついつい見てしまいます(笑)


でも 冒頭に記したようなスタイルで
ビートをバックに詩を語る光景は なんとなく奇妙に見えます

というか 見慣れない


佐野さんは

詩とビートの融合こそが 言葉の力を最大限に生かす と語ります


ここで言うビートとは
ベース ドラム フルート バイオリンによるセッション


言葉とビートのハーモニーにより 言葉の意味が変化し広がる

言葉とビートが 良い次元でコンバインすると
とても強力なメッセージになり 解き放たれ
聴く人の心 脳を直撃し そこから新しい意味が生まれていく


うーん 正直言って 理解できるような できないような


歌とも違う 朗読とも違う

あくまでメインは言葉で 音楽は引き立て役だけれど
でも 引き立て役がなければ 言葉はより一層響かない

確かに そうなのかな?



番組冒頭のインタビューで 彼はこんな風に語るのですよ

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僕の仕事は 詩を書くのではなく
メロディに内在している言葉を 丹念に引っ張り出すこと


うーん この感覚がいまひとつ理解できないので
どうもしっくりこないのかな?

ちょっと戸惑っている書き手など放っておいて
番組は進行していきます



2017.06.09更新

さて バッハの話が出てきましたが

バッハは 作曲家より前にオルガン演奏家として有名になったそうで
若い頃から オルガン鑑定士の資格も持っていたそうです

今回 鈴木さんが演奏された3つのパイプオルガンは
いずれも バッハが鑑定したリ 実際に演奏したそうです

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鈴木さんも それぞれのオルガンで バッハの曲を演奏されましたが

鈴木さんが演奏席で弾かれている姿のアップから
画面がひかれて
大きなパイプオルガン全体の姿や 教会全体の光景が映し出されます

それが 美しくて、、、

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パイプオルガンが奏でる音色が 教会全体に響き渡り

特別な空間が作られているようで
昔の人々がこの空間と音色に 神々しさを感じていたのが想像できます

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そして 演奏台で弾かれる鈴木さんが
その大きな空間を 全てひとりで作り上げておられるのかと思うと

なんというか 凄いというか 羨ましいというか、、、



ちなみに 糖尿病専門医さんは 無類のバッハフェチで
彼女の影響で 書き手も色々と学ばせていただいていますが(笑)

一緒に番組を見た彼女が いちばん感心していたのが
鈴木さんの 足さばき でした

パイプオルガンでは 低音は足鍵盤を用いて演奏され
番組でも 鈴木さんが演奏されている映像の途中で
両足を巧みに使って 足鍵盤を操作する模様が映し出されましたが

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手鍵盤だけでも3層もあるのに
それと同時に あんなにひっきりなしに足鍵盤を操作するなんて
考えられないと 感心しきりでした


確かに 足鍵盤は直接目で見えませんし
両足をともに使って同時に操作するわけですから
見ている方は 不安定じゃないのかなと余計な心配をしてしまいます

手鍵盤を弾くのも
ピアノと違ってかなりの重労働だと言われていたので

きっと演奏が終わると 全身クタクタになられているのではないかな?


ところで 演奏後のレストランでの食事の場面で

鈴木さんは バッハのことを

あんなにエネルギッシュなのだから 肉をたくさん食べていたに違いない

と コメントされていましたが

糖尿病専門医さんは それを聞き 大きくうなずいておられました(笑)

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最後に 鈴木さんが とても印象的なことを語られました

オルガンは人を見る 

というのですよ


弾く人のアプローチの仕方により うまく鳴り響いたり 鳴らなかったり

歴史的な楽器には そういうところがあって
人格ならぬ“オルガン格”のようなものがあって
弾いていると オルガンと語りあっている感覚になってくる そうで 

いやー 斯界の達人の言葉は 味わい深いです、、、


噛みしめて味が出る ジビエの肉と同じだね

地元のレストランで 美味しいドイツビールと鹿肉を味わいながら
そんなことも語られていました

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今年は クリスマスのメサイア公演で指揮をされる鈴木さんの後ろ姿が
今までとは少し違って見えるかもしれません(笑)


とても素敵な番組でした



2017.06.05更新

さて 番組では 鈴木さんが
中部ドイツのザクセン地方を中心に 旅してまわられます

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ザクセンは 旧東ドイツの地域で
ドレスデンやライプチヒなどの大きな工業都市が
東ドイツ経済を支えていました


パイプオルガンは動かせない
その土地 その教会のために作られ その地の文化に馴染んだものだから
移動させたら 全く音色が変わってしまう

だから パイプオルガンの奏者は
各地の旅を続け その土地その土地で演奏して
感動しながら旅を続けていくのが 理想的なパイプオルガンの楽しみ方です

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番組冒頭に 鈴木さんがそう語られていましたが

うーん なんだか優雅というか ちょっと浮世離れしているというか

でも 日々の精進の果てに
そうした楽しみ方をすることが出来るようになった鈴木さんを
とても羨ましく思いました


まず 最初に訪れたのが ライプチヒ近郊の フライベルグ

バッハの時代のもっとも有名なオルガン制作者
ジルバーマンが1714年に作製した 聖マリア大聖堂のオルガンを奏でます

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このパイプオルガンは ジルバーマンが修行したフランスの優雅な香りがあり

重厚で明るく 銀のような響きがあり
きつくなく 耳に心地よく やわらかく
低音もよく響く 輝かしい音色だそうです

鈴木さんは じわっと攻めると 輝かしく鳴る と評されていました

なるほどねえ

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ここのオルガンでは
自由でみずみずしい曲想の 幻想曲 ト長調
変奏曲の多い壮大な物語の バッサカリアとフーガ ハ短調
などを 鈴木さんは弾かれていました



次に訪れたのが アルテンブルク

トローストという製作者が1739年につくったパイプオルガンで

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外観の装飾が 象眼細工 象牙などをふんだんに使っていて
ぜいたくで きらびやかなのが印象的です

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トローストは
シルバーマンとは対照的な とても先進的な考えの持ち主で
実験的なストップや新しい構造を たくさん使った
近代的なオルガンを創り上げました

力強いシルバーマンのオルガンに比べ
室内楽のように 繊細で 弦楽器的な響きを持っていて

手鍵盤の数も多く
弦楽器系のストップが沢山あるので
どれを選ぶかが オルガン奏者の腕の見せ所だそうです

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そして だからこそ バッハの音楽にとても向いているそうです

でも 鍵盤は重いし 粘る 叩いても音が出なくて
弾きにくいのだそうです


ひと口にパイプオルガンといっても
オルガンそれぞれによって いろいろな個性があるのですね

とても印象的でした



そして 最後に訪れたのが ナウムブルクの聖ヴェンツェル教会

ジルバーマンの弟子で この教会のオルガン製作をジルバーマンと競った
ヒルデブラントという製作者が 1746年に完成したパイプオルガンです

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軟らかく豊潤な響き 室内楽的な音色がでるオルガンで
シルバーマンの力強さ トローストの繊細さを兼ね備えていて
規模が大きく 無限の可能性を秘めている

バッハの理想に 最も近かったのかもしれない と
鈴木さんは語られていました


実際 ヒルデブラントは
バッハが活動したライプチヒで バッハのオルガンなどの調律をしていて
バッハのお気に入りだったそうです

旅の終わりに 鈴木さんはこのオルガンで
いちばん好きなバッハの作品で これまでに何百回も演奏されている
前奏曲とフーガ ホ短調 を弾かれました

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弾かれている姿は とても集中されていて 充実していて
でも とても楽しそうに見えました



2017.05.29更新

鈴木雅明さんが 

中部ドイツ・ザクセン地方の小都市を旅して
その地の教会にあるパイプオルガンを弾いて回る

という特番を NHKで放映していました

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鈴木さんは バッハ・コレギウム・ジャパンを主催される
世界的な指揮者で オルガン奏者でもあります

書き手たちも 毎年クリスマスにメサイア公演を楽しませていただいています 

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番組の冒頭で
僕は指揮者でなくオルガニストだ と言われていました

全てはオルガンから始まる そうで
それだけ パイプオルガンに対する思い入れが強いのでしょう

番組の進行が楽しみです

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さて 番組の内容を紹介をする前に 
主役であるパイプオルガンについて説明します


ヨーロッパでは
ある程度の規模の教会には 必ずパイプオルガンがありますし

日本の大きなコンサートホールにも パイプオルガンがあることが多い

ですから パイプオルガンには馴染みがあるのですが

でも どうやって あの荘厳な響きを出しているか
ほとんど知りませんでした

番組では 簡単にその構造などの説明もしていたので
とても勉強になりました

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パイプオルガンは 立派なものは本当に大きい

教会の壁面全体を覆い尽くすかのように
たくさんのパイプが林立していて

その装飾も豪華絢爛で
思わず口をあけて 下から上まで見上げてしまいます


そして その裏側は 実に込み入っていて、、、


パイプオルガンの音色を出す原動力は パイプに送られる風です

昔のオルガンは
こんな風にフイゴで空気を送って音を出していましたが

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パイプオルガンでは もっと大掛かりなフイゴになります

ひとつのパイプオルガンに必ず2つ以上
規模が大きいオルガンでは 4つ以上備わっているそうです


ひとつのフイゴが閉じる前に 別のフイゴを開けて
次々に引き継いでいく仕組みで

現代のオルガンでは自動的にフイゴの操作がされていますが
昔はフイゴ職人さんが 手作業でフイゴを操作して
風を送っていたそうです


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今でも 風の送り具合にメリハリがあるので
機械より人の手によるフイゴ操作を好む演奏家もいるとか



そして 音色を出すのが 林立したパイプ

木製もあれば 金属製もあり 長さも千差万別ですが

パイプの素材 形を工夫して音色の違いを出し
さまざまな楽器に近い音をだせるようにされています

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しかし 1本のパイプからは 1種類の音しか出せません

ですから ハーモニーのある音色を奏でるためには
たくさんのパイプが必要です

ひとつのパイプオルガンには 何千本ものパイプがあり
オルガンの規模が大きくなればなるほど パイプの本数も増えます

サントリーホールのパイプオルガンには 5898本ものパイプがあるそうで



1本のパイプから出る音色を ストップ と呼びますが

オルガンの演奏中に音色を切り替える装置が ストップレバー です

このストップレバーの操作で
鳴らしたい音が出るパイプ群に風が通るようになります

フルートの音を出したい 弦楽器の音を出したい

奏者がそう思ったら
それぞれの音のパイプにつながるストップレバーを引き出します

そうすると トラッカーと呼ばれる装置が連動して動いて

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どのパイプに風が送られるか決まります


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ストップレバーは鍵盤の両隣にボタンのような形で設置されていて
奏者や助手さんが 演奏中におりに触れ
引っ張ったり戻したりしています

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当然 大きなパイプオルガンではストップレバーの数も多く
サントリーホールのオルガンには
74種類ものストップレバーがあるそうです



そして 音階を決めるのが鍵盤

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鍵盤とストップレバーの組合せにより どのパイプに風が通るか決まり
奏でたい音色が決まります


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ピアノの鍵盤とは異なり 単なる音色のオンオフ・スイッチなので
強く押しても弱く押しても 音量と音色は変わりません

むしろ演奏家的には
いつ押して いつ離すかのタイミングが重要だそうで

パイプオルガンを演奏している姿は
ピアノを演奏しているように見えますが
鍵盤を操作しながら 管楽器を演奏している感じなのでしょう


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パイプオルガンから どのようにして あの華麗で荘厳な音が出るのか
その仕組みがよくわかりましたが

想像していた以上に大掛かりで 
何千本ものパイプを組み合わせて どんな音を出すか考えるなんて
なんだか 気が遠くなるような作業です

それを 18世紀から手作りで製作していたなんて
きっと大変だったのだろうなあ と いたく感心した次第です



2017.01.20更新

雅楽について色々と説明してきましたが
極めつけの面白さは 今日ご紹介する 残楽(のこりがく)だと思います


まずは こちらをお聞きください

平調越天楽残楽三返(ひらぢょうし えてんらくのこりがくさんへん)

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お聞きいただいてわかるように 同じ曲を3回 繰り返して演奏していますが


*最初は 全ての楽器により奏でられるフルオーケストラ

*2回目は 徐々に打楽器管楽器が音を消していきます

*そして最後は
 篳篥と箏の掛け合いから箏のアルページオで余韻を残して幕引きする

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こうした演奏形式は雅楽独特で 残楽(のこりがく)と呼ばれるものですが

最後の篳篥の 微妙な間をとった箏との絡み具合は
まさにモダンジャズを彷彿させるようで
実際にジャズのような 即興演奏も行われていたそうです


いやー初めて聞きましたがびっくりしました!
おしゃれですね

平安時代の日本人は雅なだけでなく
しっかりと 遊び心も持っていたようです

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解説の方が語られるに

雅楽は西洋音楽のような作曲者・オーケストラから聴衆への一方通行でなく
舞台と聴衆との相互作用を求める音楽だそうで


聴衆は 最初のフルオーケストラを聞きながら
全体の旋律をイメージとして 頭のなかに残しておきます

2回目の繰り返しでは
演奏の途中で篳篥の音が突然消えて しばらくその状態が続き
その間 箏と琵琶だけが演奏を続けるわけですが

既に説明したように 管弦で旋律を奏でるのは篳篥なので
その音が消えるということは 骨組みの旋律が消えるということです


そんな状況で 聞き手は
頭の中に残しておいたイメージを利用して 全体の旋律を再合成して

なおかつ 残って演奏している箏と琵琶の音色の個性を 存分に堪能する

そしてまた 篳篥と箏との掛け合いの妙も味わう


残楽は そんなふうにして
聴衆に能動的な聴き方を楽しんでもらおうとする
遊び心を持った演奏形式 なのだそうです


全体から個へという 西洋近代の分析的手法のような感じがして
平安時代に近代の先駆け? これは何気に凄いかも
と思ったりしながら聴いていました



残楽の解説には 最後にオチがありました

ハイドンの交響曲第45番 ヘ短調 告別 は

各楽器の奏者は
自分の演奏が終わると ひとりひとりステージから退場し

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最後の14小節は 第1バイオリンの奏者がふたりだけ残って
そこで全曲が終了されます

まさに 残楽のような構成


ハイドンは この交響曲を作ったとき
はるか昔 遠い日本の平安時代に演奏されていた残楽の形式を
パクったのでしょうか?(笑)

長い年月や 西洋と東洋という文化の差異を越えて
こんなアナロジーが見られるのは とても面白いと思いました



もうひとつ オチがあります

平調越天楽残楽三返

どこかで聞いたことがあるようなメロディだなあ、、
と思われた方も多いと思いますが

はい さあ~け~は~ のお~めえ~ のお~めえ~ の

黒田節の原点になったのが
この平調越天楽残楽三返だったのですね

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左利きの書き手は もちもん 黒田節は知っていましたが
平調越天楽残楽三返は知りませんでした(苦笑)


ブログを書くために 雅楽について復習していたら
また あの独特な音色や旋律の生演奏を ナマで聴いてみたくなりました

お正月に聴けなかったのは 本当に残念

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最近は 東京楽所さんは 定期演奏会をされていないようなので
また復活してくれないかなあ、、、

 

 

2017.01.16更新

弦楽器と管楽器の間に 優劣があるか?

そんなこと 考えたこともありませんでしたが


そういえば バッハ・コレギウム・ジャパンの
演奏会のパンフレットに出ていた座談会

バロック音楽全盛期には
トランペット奏者のお給料が 弦楽器の奏者よりも高かった

と書いてあり びっくりしたのを憶えています

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一方 雅楽でも 管楽器と弦楽器のヒエラルキーがあるようです

既に説明したように 管弦の世界で主旋律を奏でるのは
西洋音楽と異なり弦楽器でなく管楽器

だから弾物より吹物の方が優位?

と思いきや そうでもないようなのですよ


吹物は 直接息を吹き込んでいる間だけしか音は出ません

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一方 弾物は 爪弾く指が弦から離れても しばし音が持続します

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この余韻のような音に
昔のやんごとない方々は霊性を感じられたそうで

直接に息をかけないと音が出ないような楽器は
やんごとない者が嗜むものではなく

人の指を離れても なお音が響く高貴な楽器こそ
嗜むべきものである


ということで

古来から やんごとなき方々が好んで演奏されたのは 琵琶 か 

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笙や篳篥なんて とんでもなかったそうで


余韻のある音に 霊性を感じるのか~

うーん やんごとない方々がお感じになることは
難しいですねぇ(苦笑)



管弦でいちばん良い音環境を醸し出すのは
打楽器が3人 琵琶と筝が2人ずつ 笙と篳篥と龍笛が3人ずつ
計16人のチーム編成であることは説明しましたが

今でも 宮様方が参加される宮中の管弦では
琵琶や筝が10台も並んだりするそうです

そうなのですね~


確かに 琵琶は
琵琶法師とか 見聞きする機会が多いですし

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お正月に演奏を聴いた箏も 比較的ポピュラーですが

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笙や篳篥は 雅楽の演奏会以外では 接する機会は全くありません


管弦でメロディを奏でるのは 笙や篳篥で
琵琶や筝は 伴奏をつかさどっているにすぎないのに

今の世でも ポピュラーなのは琵琶や筝 という事実には

琵琶や筝が奏でる音の余韻が
日本人の感性に訴えかける 霊性との関わりが
影響しているのでしょうか?

なんだか とても不思議な感じがします(笑)


だったら シンバルとか トライアングルなどの
もっと音の余韻がありそうな楽器では ダメなのかな?

でも シンバルやトライアングルの音色では 霊性は感じられないか

やはり 弦が発する音の波長が大切なのかな?

なんでも興味の書き手は 色々と思案するわけですよ(苦笑)


それから 下衆な話で恐縮ですが

琵琶と筝の奏者と 吹物の奏者では
昔から お給料が異なっていたりするのでしょうか?


うーん やんごとない雅楽の世界は 奥が深いです(苦笑)



2017.01.13更新

雅楽管絃で メロディを奏でるのは
3種類の管楽器 篳篥 笙 龍笛 というお話しをしましたが

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篳篥 は 音量が大きく 世俗の音を表し
は 高さの異なる音を一度に鳴らすことができるので 天の音を表し
龍笛 は 天の音と世俗の音をとりもち 天と地を鎮める龍の声を表す

とされています

それぞれの楽器の音色の特性を組合わせて 宇宙観を表現しているのですね

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なかでも 圧倒的な存在感を示すのが
天の音を奏でる笙の音色です!

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パイプオルガンの音色を彷彿させて
まさに天空界の雰囲気を醸し出してくれます

初めてナマの音色を聞いたときはかなり感動しました!


また 演奏家が吹いている姿が 拝んだりお祈りをしているようで
とても楽器を演奏しているようには見えず  それも印象的でした


笙は 17本の長さの異なる細い竹管を 縦に円筒状に組んだ形をしていて

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竹管の下部に開けた指穴を押さえ
吹き口より 吹いても吸っても 音を出すことができます


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シングルリードの楽器で 篳篥や龍笛のように音が不安定でなく

また 長さの違う竹管で音階を生み出すことができるので
指孔を5~6つ同時に押さえて 和音を奏でることができます


ハーモニカと同じで吹いても吸っても音が出るため
まさに音で覆い尽くすようなパワフルな面もあり

それが故に より神々しい音色という印象を受けます



この笙を奏でる楽師さん達は

舞台上で自分のパートが終わると
小さなコンロの上で  しきりに笙をくるくるとまわしていて

その光景を見て とてもびっくりしました!


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なんでも 呼気により結露が生じリードに水滴がついて音が狂うので
それを防ぐためにこまめに乾かすのだとか

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面白いです!



笙には前回の篳篥と塩梅のように
ある言葉の語源にまつわる 面白いお話があります


笙は 中国から日本に伝わりましたが

日本で演奏されているうちに
もともとあった17本の竹管のうち2本には リードがつかなくなったとか

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どのような経緯で2本が使われなくなったのか
その理由も とても興味深いのですが

使われなくなった竹管の名称が也(や)と毛(も)だそうで
そこからなまってやぼ野暮の語源になったとか

ホント?(笑)

也(や)と毛(も)の竹管から出る音は
風流ではなかったのでしょうか?



さて 管弦は

これら3種類の管楽器に
弦楽器の 琵琶 箏(こと)
打楽器の 鉦鼓(しょうこ)鞨鼓(かっこ)太鼓 
が加わり

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各楽器について 管楽器は3人ずつ 弦楽器は2人ずつ 打楽器は1人ずつ 
それぞれ奏者がいて 
全部で16人編成になります

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管弦では 指揮者は存在せず

最前列の上手に座る鞨鼓の奏者が
曲全体の流れやテンポを統率する役割をします

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鞨鼓の奏者は 演奏が始まる前 終わったあとに 
目立たぬように聴衆にお辞儀をします


各奏者が互いに間合いをはかることで
演奏の調和が図られるのが 管弦の特徴で

それぞれの奏者が 他の楽器の演奏を聞き
前列にいる奏者の手の動きを見て 間合いをはかることで
まとまりのある合奏がなされます


このように 奏者の呼吸や間合いによって
演奏が始まり また終わるので

突然始まり 知らぬ間に終わる という感じで
最初に聞いたときは 面喰いましたよ(笑)



2017.01.09更新

お正月テーマパークで チケットがsold outで行けなかった雅楽の演奏会は

東京楽所(とうきょうがくそ)という 雅楽演奏家集団によるものでした

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東京楽所は 宮内庁式部の楽部のメンバーを主に創設された
芸術音楽としての雅楽演奏と普及を目的とする 数少ない雅楽演奏家団体で

書き手は数年前に 東京楽所さんの演奏会に行ったことがあります

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雅楽には 馴染みがない方が多いでしょうが
お正月の神社などで耳にされた機会があると思います

書き手も 数年前の演奏会に行ったことがあるだけですが

その演奏会は 初心者向けの解説付きで
「あなたの知らない世界」について 色々と学ぶことが出来て
とても印象的でした


その時のことを思いだして
雅楽について少し蘊蓄しようと思います(苦笑)

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そもそも雅楽とは

アジア大陸の諸国から伝わってきた音楽と 日本古来の音楽が融合し
平安中期・10世紀頃に完成した 日本で最も古い伝統音楽で

宮廷や貴族社会 神社などで 演奏されてきました

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雅楽独特の管楽器・弦楽器による合奏は


管弦(かんげん)と呼ばれ

世界最古のオーケストラ編成とされています

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管弦は

*吹物 と呼ばれる 管楽器
*弾物 と呼ばれる 弦楽器
*打物 と呼ばれる 打楽器

から構成され

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舞台では 後方から 吹物 弾物 打物 の順に配置されます

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管絃においてメロディを奏でるのは
西洋音楽のように弦楽器ではなく 竹でできた3種類の吹物

篳篥(ひちりき) 笙(しょう) 龍笛(りゅうてき)


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これらの音色が合わさることで 宇宙観が表現されるそうです



今日は 演奏会でうかがった
篳篥にまつわる興味深いエピソードを紹介します


ちょうど良いことを いい塩梅(あんばい)だ と表現しますが

この 塩梅 という言葉の語源には
篳篥という楽器の音の不安定性が関与しているそうです

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篳篥は ひとつの穴を押さえる同じ指つかいでも

リードを咥える唇の位置や深さ息づかい
穴を押さえる指の力の強さなどにより
一定の幅で音程や音色を自由に変えられるそうで

こうした篳篥に独特な演奏法を  塩梅(えんばい)と呼びます

この塩梅(えんばい)がなまって 塩梅(あんばい)になったそうで
語源は 篳篥を上手にちょうどよく奏でることだったのですね

面白いです!

 

もうひとつ 篳篥について印象的だったエピソードは

この楽器の音色を出すのに使われる
露舌とよばれるダブルリードに関することで

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この露舌は で出来ていますが

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いちばん美しい音色を出すことができる葦は
平安時代から現在に至るまで 一貫してある場所で獲られています

そこは 大阪・高槻周辺にある 淀川沿いの鵜殿


現代になって宮内庁式部の方々が全国調査されても
鵜殿の葦を上回る品質の葦がとれる場所は なかったそうで

平安の頃の人の目効きは 素晴らしかったのですね


ところがその鵜殿の葦が 存続のピンチに瀕しているとか

というのも
新名神高速道路の一部が 鵜殿の葦原の上に建築される予定だそうで

もしそうなってしまうと
品質の良い葦を得るために年に1回行われる野焼きもできなくなり

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篳篥の質の良いリードが得られなくなる危機がすぐそこに、、、


ということで
演奏会の終わりには署名運動がロビーで行われていて
書き手も長い列に並んで署名をしてきましたが

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あれは4年ほど前のことでしたから どうなったのでしょう?

ちょっと気になります、、、



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