左利き肝臓専門医ブログ

2018.09.13更新

農業革命と産業革命により ヒトの生活環境 食環境は
食物に渇望する環境から飽食の環境へと 大きく変化しましたが

それ以前の700万年の歴史で
飢餓に備えるために栄養を蓄える体質を有していた人類は
新たな飽食な環境に対応できず ミスマッチ病が蔓延し始めます


では 具体的に食はどのように変化し
それが身体にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?


最初の類人猿は 果実で腹を満たしていました

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しかし 気候変動 乾燥化により アフリカでは森林が減ってきて
豊富な果物がなくなり 食事環境が変化しました

森林を出て 草原で生活するようになり
果物以外の木や植物の葉や茎も 食べないといけなくなったのです

そして400万年前に
木の茎などの 固い繊維質の食物でも食べられるヒトの祖先が
自然選択で生き残るようになりました

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やがて人々が狩猟を行うようになると
植物が食事の大半になり 狩猟により肉もたまに食べるようになりました


ここで 腸と脳のトレードオフ という現象が起こります

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腸が小さくなり その代わりに 脳が大きくなっていったのです

狩猟時代になり肉を食べるようになると
それまで繊維の多い食物の消化のため大きな負担を強いられていた
腸の役割が減少し
エネルギーが腸でなく脳で使用されるようになります

こうして

腸の代わりに 脳が大きくなり始めたのです

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興味深いことに
そうした変化にともない
ヒトの身体は 多量の脂肪を貯めこめる身体になっていくのです

そうなった原因は こういうことです

脂肪はグラム当たりのエネルギーが他の栄養素より高いので
脂肪の蓄積は エネルギーを溜めるのに最も効率的な方法ですが



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発達し始めた脳が 常に多量のエネルギーを要求するので
身体は脂肪を豊富に蓄える必要性が出てきたのです


しかし狩猟で動物を仕留めることはそう頻繁ではないので
肉や脂肪が得られる機会はそんなに多くありません

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ですから

脂肪を得られるときは
それを体内に出来るだけたくさん蓄えることができるように

ヒトの身体は 進化 適応し始めたのです

倹約遺伝子が選択されました



また 脂肪の蓄積で体内のエネルギーが豊富な状況になると
脳が発達するだけでなく 繁殖にも有利になります

繁殖は 進化の方向性を規定する一番重要なことですから
そこに有利に働く 脂肪を溜めこむような変化は
まさに自然選択される進化にほかなりません


他の動物より優位に立てる脳の発達を促し
最も重要な繁殖の面でも役に立つ

そんな 脂肪をできるだけ多く貯蔵できる身体になるように
倹約遺伝子が石器時代に選択されたわけです


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しかし そのことが 現代では仇になってくるのです

 

2018.09.12更新

ミスマッチ病の話を続けます


ヒトの身体は

食物が少なく そのため走り回って食物を探す という
現在とは異なる環境で 飢餓に備えることができるように進化した ために

現在の飽食な食事や運動不足の生活には うまく適応できない

端的に言うと 肥満になってしまう のです!

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では ご先祖様が成し遂げた進化を引き継いだ私たちの身体は
具体的には どんな身体なのでしょう?

それは なんと

糖質などのエネルギーの高い食物を欲しがり
身体活動に必要なエネルギーでは消費しきれない余分なカロリーを
効率よく脂肪として蓄積する身体


なのです!

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いつ襲ってくるかもしれない飢餓環境に対応するには
当然の進化なのですが

しかし

このような身体が 現代の飽食 運動不足な環境で生活すると
ブクブクと太ってしまい
糖尿病などの生活習慣病が蔓延している

言われてみれば ごもっともです(苦笑)

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こうした事実から ミスマッチ病 というコンセプトが生まれてきます

狩猟民族は
定期的に食料不足に直面し 活発に身体を動かさないといけなかったから

エネルギー豊富な食物を切望し
休めるときには休もうとする自然選択が働いて
今の身体が出来上がったので

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ドーナツなどの高カロリーで甘いものを食べたがり
休日には運動せずのは家で寝転がっていたいのは

ヒトの原始的な衝動なのである

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しかし それらは 
かつては意義がある適応であったけれど

現代では むしろデメリットになってしまっている

この150年あまりで
食生活を含めた生活環境は 大きく変化したけれど
身体の遺伝的 解剖学的 生理的な本質はなんら変わっていない

そこに 現代人の不幸の原因があるのです

まさに 生活習慣病はミスマッチ病 というわけです

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では どうしてヒトの身体は
新しい生活環境に適応して進化していないのでしょう?

それは 近年の生活環境の変化が あまりにも急速すぎたので
ヒトの身体に 環境の変化に対応するような自然選択が起こるには
全く時間が足りていないのです


ヒトの身体は250万年の長い時間をかけて進化してきたけれど
飽食で運動不足のライフスタイルになってから まだ100年も経っていない

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つまり

私たちの祖先であるホモサピエンスが登場して以降
重要な生物学的進化は 実のところ全く起こっていないのです

現代は 生活環境の変化といった文化的進化の方が
自然選択よりも強力な力となっているけれど
身体は そうした劇的な環境変化に対応できず変化できていない

なぜなら

自然選択は 何百世代も経過しないと劇的な効果を表さないからです


なるほど
文化的環境の変化のスピードに
進化のスピードがついていけていないのですね

仮に 現代の生活環境に適応するような身体の自然選択が始まっていても
それはまだ始まったばかりで
その成果が出るのは 何百万年も先のことになる

ということでしょうか?


こうした現状から

ディスエボリューション というコンセプトが生まれてきます

ミスマッチ病の原因である 新たな生活環境を変化させるのは現実的に難しい

飽食で運動不足となる環境は 実は便利で有難いものだけに
それが病の原因になると解っていても
是正できず次世代に伝えてしまい 次世代も同じ病気に悩む

という悪循環が生じてしまう

先祖から受継いだ身体
新たに築かれた昔とは異なる生活環境
その便利な生活環境を選んでしまう判断

それらの相互作用により
危険なフィードバックループが形成されてしまう状況を
ダニエル先生は「ディスエボリューション」と呼びました

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現代社会では
生物学的進化より 文化的進化の方が はるかに大きな影響を与えている

文化的進化では
人間が作りだした新たな考えや行動を 子供や周囲の人々に伝達するが

そうした新しい行動である
過度に豊富な食物環境と身体活動の少なさが 体の具合を悪くさせている

でも 身体はそうした状況に対応して進化できていない

それは 生物学的進化より 文化的進化の方が
はるかにスピードが速いから

まさに ディスエボリューションが生み出す ミスマッチ病の世界


でも 進化を促す原動力が 子孫を増やすことなら

現代社会でミスマッチ病が蔓延していても 子孫は増やせているわけだから
身体が進化する必要はないのでは?

天邪鬼な書き手は そんなふうにも思えるのですが どうなのでしょう?(笑)

 

2018.09.11更新

現代人に生活習慣病が多いのは ご先祖さまから引き継いだ体質のためだ

というお話を 糖尿病 高血圧 について説明しました


こうした考え方は ミスマッチ病 という
ハーバードで人類進化生物学を教えるダニエル・E・リーバーマンさんが
新たに提唱しているコンセプトに依っています

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人類の祖先が 何百万年も前から続く進化により形成してきた体質が
私たちが生活している現代社会の生活環境と合っていない 

まさに ミスマッチが生じているから
さまざまな生活習慣病が発症し 蔓延している

という考え方です

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人体 600万年史  科学が明かす進化・健康・疾病

というハヤカワノベルズに その内容は詳しく書かれていますが
とても興味深いので その内容を紹介しようと思います

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まずダニエル先生は

現代は 予防可能な 非感染性の慢性疾患が 世を覆っている

と指摘します


肥満 糖尿病 心臓病 骨粗鬆症 脳卒中 アレルギー 腎臓病 

認知症  うつ病 不安障害 不眠症 

などなど

その多くは 生活習慣病 と呼ばれている病気です


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どうして そうした事態に至ったのか?

ダニエル先生は その理由を説明するために
ヒトの身体における 進化と自然選択 について説明されます


ヒトの身体には 進化の歴史という 重要な物語がある

進化により
ヒトの身体が どうして今のようなシステムになったかを説明でき

そこから
身体は 何に適応していて 何に適応できていないのか? を
明らかにすることができる


では 進化とは何か?

進化は 人が健康になることを目的としてなされたのではなく

出来るだけ多くの子供を持てるよう
自然選択の作用を受け 適応したこと で

そうした進化が 身体の中に適応を蓄積してきた

私たちの今の身体は
何百万年もの間に生じた適応の寄せ集めなのである

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えっ 自然選択って なに?

自然選択は ダーウィンが「種の起源」で訴えた 進化の概念ですが

生存と繁殖の確率を高めてくれる遺伝的な変化を起こした者が
生き残る現象 

です

遺伝変化により首が長くなったキリンは 高い木の葉も食べられたので
繁殖できて生き残ったけれど

首が短いままのキリンは 高い木の葉は食べられないので
子孫を増やすことができず絶滅してしまった

これが 自然選択


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私たちのご先祖様の身体は
大昔から 狩猟採取民として生存し繁殖するように
適応させられてきた

その結果である身体を 今のヒトが引き継いでいるわけですが

ここで重要なことは

そうした適応は
現代に生きるヒトが考えるような
肉体的 精神的な幸せを促進するような進化ではない

ということで

残念なことに
何を食べ どれだけ運動するかについて
合理的な選択ができるようには 進化していないのだ

と 論が進みます

逆に
そのような進化の産物であるひとの体と
現代の食生活や生活環境などがマッチしていないから
生活習慣病のような病気が生じてきてしまう

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うーん 書き手はこれまで
進化について考えたことなんて あまりなかったし

ましてや 医学の視点から 人類の進化について俯瞰するなんて
全く思いもよらなかった視点なので ビックリしました


でも そうした話を聞くと

ダニエル先生が

進化医学という研究分野は
なぜその病気が生じるのかを説明するのに役立つのだ

と説かれるのが 納得できるような気がしてきます

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そして ミスマッチ病 ディスエボリューション

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というコンセプトが生まれてきます

 

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