左利き肝臓専門医ブログ

2018.01.11更新

健康診断で 血液検査以外で肝臓に異常が指摘されるのは
エコー(超音波)検査で 肝血管腫 肝のう胞 が指摘された場合が多いです

画像検査で肝臓に腫瘤が認められますので 精密検査をお受けください

D判定!


などと書かれると びっくりして心配になりますよね

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当院にも 心配して来られる方がたくさんおられます

そこで 肝血管腫 肝のう胞について説明します


<肝血管腫>

肝血管腫は 肝臓にできる良性腫瘍で
成人の1~5%に認められるほど 頻度の高いものです

女性にやや多いとい言われていますが
これには 女性ホルモンのバランス乱れが関与すると推察されていて
出産経験の多い人の方がなりやすいと言われています


肝臓はもともと血管が豊富な組織ですが
その毛細血管の一部が増殖して 腫瘤のようになります

あくまで良性腫瘍なので がんとは異なりますので安心してください

ほとんどの場合 たまたま健康診断の画像検査で見つかり
自覚症状もありませんので
そのまま治療をせずに経過観察をしてくことになります

また 時間経過とともに 大きくなったり 数が増えることもありません


エコー検査では 肝血管腫は白い丸い塊として見えます

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血流がとても豊富な腫瘤なので
造影剤を用いた腹部CT検査や MRI検査で 
肝がんとの鑑別することができます

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肝がんは数カ月で大きくなりますが
肝血管腫は良性なので 大きくなることはありません

したがって 検診で指摘されてから3ヵ月後くらいに
念のためCT検査やMRI検査を一度は行った方が安心です



<肝のう胞>

肝のう胞は 肝臓のなかに液体のたまった袋ができるもので
ほとんどの場合は 無症状で健診などのエコー検査で発見されます

のう胞は 1個の場合も複数の場合もあり
その大きさは数mmから10cmを超えるものまで さまざまです

50歳以上の女性に多くみられ
エコー検査を受けた人の約5~20%に発見されると 報告されています

kknh04


ほとんどが先天性で良性の病気で 原因は不明です

基本的に大きくなったり 数が増えたりすることはありませんし
がん化することもありませんから

経過観察や治療の必要はありませんし 一生悪さをしないまま過ごします


但し 大きさが10cmを超える場合や かなりたくさんある場合は
念のために 年に1回ほどエコー検査で経過観察をした方が安心です



ということで

検診のエコー検査で 肝血管腫や肝のう胞を指摘されても
むやみに心配したりあわてたりする必要はありません

但し 肝がんとの鑑別は重要ですから
結果を放置せず
肝臓専門医のいる医療機関を受診されることをお勧めします



2018.01.10更新

前回は 肝細胞が傷害されて上昇するAST ALTについて解説しましたが

今日は ALP γGTP について説明します


肝臓を構成する主な細胞は 肝細胞と胆管細胞と説明しましたが

AST ALTが 肝細胞の傷害の程度を反映するのに対し

ALP γGTPは 胆管細胞の傷害の程度を反映します


前回ご説明したように
胆管細胞は 肝細胞で作られた胆汁を腸に流す胆管という管を構成する細胞です

胆汁は 胆管を通って胆のうに溜められ
十二指腸に脂質が入ってくると それを分解・吸収するために分泌されます

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<ALP>

ALPは 
脂質に含まれるリン酸エステル化合物を分解する酵素
肝臓 腎臓 骨などの細胞に存在します

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特に肝臓(胆管細胞)
傷害された場合に 血液中に漏れ出て 高値を示します

また 胆汁中にも多く存在するため
なんらかの原因により胆管が閉塞して 腸への胆汁の流出が滞ると

胆汁中から血液中にALPが漏れ出すので高値を示します

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また ALPは骨の細胞にも存在しますから
骨が発育する成長期や 骨の病気の場合も 高値を示します


その鑑別には アイソザイム分析という解析が行われます

同じALPでも
胆管細胞のALP(1 2型)と  骨のALP(3型)ではタイプが異なるのです

ですからどのアイソザイムか分析することで
胆管細胞由来か 骨細胞由来かを 鑑別できます

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興味深いことに 
ALPは血液型がB型 O型の人は高値を示すことがあります

これは小腸の細胞に含まれるアイソザイムのALP(5型)が
脂肪の多い食事を食べたあとに血液中に出現する傾向があるからで
肝臓に異常があるからではありません

また 妊娠時にも ALPは高値を示します

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ALPが高値を示す肝疾患は

*胆石や悪性腫瘍による胆汁うっ滞

*薬物性肝障害

*原発性胆汁性胆管炎

*原発性硬化性胆管炎

などがあります

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<γGTP>

γGTPは
抗酸化物質であるグルタチオンのγグルタミルペプチドを加水分解し
他のペプチドやアミノ酸にγグルタミル基を転移し
タンパク質を作る酵素です

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男性では女性より高い傾向がありますが

それには女性ホルモンが関係しているようで
女性でも閉経後には 男性と同じくらいの値になります

また 男女とも加齢によって 増加します

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多くの細胞に存在しますが 特に肝臓で大量に認められ
肝臓では主に胆管細胞胆汁中に存在しています

上記のALP値が高くなるような肝疾患では
γGTP値も並行して高くなることが多いのですが

γGTPだけが高くなる場合もあります

代表的なのが アルコール性肝障害
アルコールを飲みすぎると γGTPが大量に作られるため
血液中のγGTP値が高くなります

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さらに最近多いのが
お酒も薬物も摂取していないのにγGTP値が高値を示す場合で
その多くの場合が 脂肪肝によるものです

脂肪肝でγGTPが増加する機序としては
後述するγGTP増加と肥満との関連が想定されています


ところで 一部の健診では
γGTPは測定しても ALPは測定しない場合があります

説明したように
ALP γGTPが両方とも高値を示す場合と
どちらか片方のみが高値を示す場合は
原因となる病気の種類が異なりますから

γGTPしか測定していない場合は
是非 肝臓専門医にご相談ください



<γGTPは 生活習慣病のバロメーターになる?>

さて 最近 γGTPは

肝障害だけでなく
心血管疾患 糖尿病 メタボリックシンドローム 
などとの関連が注目されています


というのも

γGTP値の上昇は
肥満(BMI) 喫煙 血糖値 尿酸値 中性脂肪 LDLなどの
メタボ関連項目と関連することが明らかにされ

なかでも いちばん強い相関を示すのがBMI
それにともない インスリンの分泌低下や抵抗性との関連も示唆されています


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逆に 善玉コレステロールのHDL 運動習慣がないこと 
などとは逆相関し

さらに 生活習慣の改善(減量 禁煙 運動習慣の確立)により
γGTP値は減少します


そして 興味深いことに こうした現象は
血中γGTP値が異常に高値でなく 基準値内にあってもやや高目の方でも
認められています


ですから 肥満があり 運動習慣がなく 煙草を吸われる方で
ASTやALTが基準値内にあっても

γGTP値が 
*基準値を超えて高値の方 や

*たとえ基準値内でも高目の方 は

脂肪肝 糖尿病などの可能性を考えて
精査や経過観察をする必要がありそうです


生活習慣病以外にも

心不全 心筋梗塞などの心血管障害(CHD)
脳梗塞などの脳血管障害(CVD)

といった疾患との関連性も指摘されていますから

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図のRR値が大きくなればなるほど 右欄に記した病気との関連性が増します


γGTPを侮ってはいけない

単純にアルコール性肝障害のマーカーだけではないぞ!
というご時世になってきています

健診でγGTPが高値だった方 ご用心ください!



2018.01.09更新

さて 今日からお勉強シリーズの再開です!

新春第1弾は 書き手が専門の肝臓ネタからスタート!


当院には 健康診断などで肝機能がC判定やD判定になり
心配して来院される方が数多くおられます

そこで 肝機能検査値 について解説します

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始めに 肝機能検査について理解していただくために
肝臓の解剖と機能について 簡単に説明します


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肝臓には大きく分けて2種類の細胞が存在します


ひとつが 肝細胞

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栄養素の代謝・合成 アルコールや毒物の解毒といった
肝臓の主たる機能を果している メインの細胞です


もうひとつは 胆管細胞

肝臓の中には
肝細胞で作られた胆汁を腸に流す胆管という管が 張り巡らされています

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図の緑で示された部分が 肝臓内の胆管
胆汁は胆のうに貯められて 十二指腸に出ていきます


胆管は
肝細胞の間に存在する 下図で黄色い星のように見える毛細胆管から始まり
徐々に太くなって肝内胆管を形成します

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胆管細胞は この胆管を構成する細胞です


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このように 肝臓の中には
沢山の肝細胞からなる肝小葉という機能単位が存在し
その中を 血管や胆管が流れています


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肝細胞

*腸から入ってくる門脈という血管から栄養素を取込み
 それらを代謝して 血管に戻し 全身に行き渡らせます

*また 胆汁を作り胆管に流し込み

*取り込んだ異物や薬物を解毒して 胆管に排泄します

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これが 大まかな肝臓の働きです

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肝炎 アルコール性肝障害 脂肪肝など
さまざまな原因で肝臓がダメージを受けると
肝細胞や胆管細胞が傷害を受けます

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病気が慢性化して 傷害から上手くリカバーされないと
肝臓の中に繊維が溜まり やがて肝硬変に至ります

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肝機能検査値は
そうした過程で生じる肝細胞 胆管細胞の傷害の程度を表すものです



では 代表的な肝機能検査値であるAST ALTについて説明します


AST(GOT)は 

タンパク質が分解されてできるアミノ酸の
アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸を
オキサロ酢酸とグルタミン酸に相互変換する酵素で
アミノ酸を体内で使われやすい形にする働きを示します


一方 ALT(GPT)

同様にアミノ酸のピルビン酸とグルタミン酸を
アラニンとα-ケトグルタル酸に相互変換する酵素で
アミノ酸を体内で使われやすい形にする働きを示します

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ちなみに 昔はGOT GPTと呼ばれていましたが
書き手が医学部を卒業するころから AST ALTと呼ばれるようになりました


ASTもALTも 普段は細胞の中で働いていますが

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細胞が傷害を受けると 血管の中に放出されて流出してきます


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そこで 血中のAST ALTの量を計測して
細胞がどれくらい痛んでいるか 推察するわけです



さて ASTとALTのいちばん大きな違いは その存在部位です

ALTは ほとんど肝細胞にしか存在しないのに対して
ASTは 肝細胞以外にも 心筋 骨格筋 赤血球などにも存在します

ですから 肝細胞の傷害の程度を見るには ALTの方が適しています


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しかし アルコール性肝障害では
ALTよりASTの方が上昇しますから  他の原因の肝障害との鑑別できます

アルコール性肝障害では 次回説明するγGTPも上昇するので
ALTよりASTの方が高くて しかもγGTPも高い方は
飲みすぎにご注意ということになります



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ときどき お酒を飲まないのに ALTよりASTが高くて
再検査に来られる方がおられます

そうした方で意外に多いのが

血液検査をする数日前に
マラソンなどの激しい運動をされたり

定期的に筋トレをされている場合で

運動の際に筋肉からASTが流出して高くなります

運動を控えて再検査をすると 何の問題もない場合が多いです



ということで

AST ALTが基準値上限を超えて高値の場合

特にALT値が高値の場合は
肝臓に何らかのトラブルが起こり
肝細胞が傷害を受けている状態が推察されます

*ウイルス性肝炎

*アルコール性肝障害

*脂肪肝


*自己免疫性肝炎


などの病気が疑われますので

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基準値上限を超えていたら 必ず再検査を受けてください

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特に数値が 100 を超えている場合は 危険ですから
至急 医療機関を受診してください



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