左利き肝臓専門医ブログ

2017.06.29更新

腹痛の程度はさまざまで その原因も多岐にわたりますが
すぐに医療機関を受診した方がよい腹痛は 下記のようなタイプです

*突然 お腹がはげしく痛みだしたとき

*今まで経験したことのない痛みや 普段の腹痛とは異なるとき

*もどした物や大便に 血液がまじっているとき

*お腹にしこりがあるとき

*尿が濃くなったり 体が黄色くなったとき

*下痢や便秘をともなうとき

*体重の減少をともなうとき

*発熱をともなうとき

*腹痛は軽いが 最近 健康診断をうけていないとき

こうした場合は 放っておかず すぐに受診してください

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最後に 日常の診療で遭遇することが多い
危険な腹痛を呈する代表的な病気について説明します


<急性虫垂炎>

いわゆる盲腸です

盲腸につながっている虫垂という小さな臓器に 感染・炎症が起きた状態で 

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最初は 激しい胃痛 おう吐 食欲不振などの症状で始まることがあり
その時点では 急性胃腸炎と診断されることも少なくありません

しばらくしてから 右下腹部に痛みが移動してきて
そこで初めて虫垂炎とわかることがあるので 要注意です

虫垂炎では 痛みが嘔気に先行する ことが多く
痛みより先に嘔気があると 胃腸炎のことが多いようです

右下腹部の痛みが歩くと増悪する場合も 虫垂炎を疑います

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<大腸憩室炎>

大腸憩室とは

大腸粘膜の一部が 腸管内圧の上昇や腸管壁の脆弱性のために
囊状・風船状に腸壁外に突出した状態です

年齢とともに増加し 憩室がある人は
40歳以下では10%以下ですが
70歳代では50%で 80歳以上では約70%に及びます 

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この憩室に 何らかの原因で炎症が合併したのが大腸憩室炎

大腸憩室があっても ほとんどは無症状ですが

約5%が大腸憩室炎を起こし
憩室内の細菌感染や虚血性変化により 限局性の痛みを感じます

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最も一般的な症状は
限局した腹痛と圧痛(お腹を押さえたときの痛み)

腹痛は 初期には良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く
次第に持続した痛みへと変化します


日本では 比較的軽症とされる右側大腸憩室炎(盲腸と上行結腸が中心)が
多いとされていましたが

最近では欧米と同様の
重症化しやすい左側大腸憩室炎(S状結腸に多い)が増えています


軽症で合併症がない場合は
絶食と点滴および抗菌薬投与によって保存的に治療します

抗菌薬は キノロンやβラクタマーゼ阻害薬配合剤が投与されることが多く
抗菌薬投与は7~10日間継続することが推奨されています

再発することが多いので
一旦症状が落ち着いたとしても 慎重な経過観察が必要です


憩室症のある人は 普段から腸管の圧が高くならないよう
下剤の服用を最小限にして 食物繊維の多い食事を心がけることが大切です

大腸憩室炎は 強い限局した腹痛の原因として 比較的高頻度にみられます


<虚血性腸炎>

動脈硬化や腸管内圧の亢進によって 腸管の虚血が起きて生ずる粘膜傷害で

血圧低下 動脈硬化などの血管側因子と
腸管内圧亢進などの腸管側因子がからみあい
腸粘膜あるいは腸管壁の血流低下を引き起こして 虚血状態が作られます

その結果 発赤 出血 浮腫 潰瘍などがみられます


高齢者に多い病気ですが 最近は便秘のひどい若い女性にもみられます

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急激な腹痛と血便・下痢が典型的な症状で

突然 強い下腹部痛が出現し
その後下痢になり 徐々に新鮮血の血性下痢がみられます

発症時間がはっきりしていて 左下腹部に痛みが起こることが多く
約半数に 悪心 嘔吐 発熱が認められることもあります

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多くは軽症の一過性型で
数日で症状はおさまり 下血も改善し 予後は良好です

軽症の場合 薬物治療は必要とせず
腸管の安静を保つため絶食 輸液を行います


日頃から 動脈硬化や便秘を予防するような食生活や
適度な運動を心がけることが大切です



2017.06.28更新

お腹が痛くて医療機関を受診したとき

患者さんが感じておられる痛みを どのように説明したら
お医者さんとのコミュニケーションがうまくいくでしょう?


<お腹のどこが痛い?>

まずは お腹のどこが痛むか 場所の説明です

内臓痛の場合は 痛みがお腹の一部に限局して生じることが多いので
その痛む場所を どう表現して伝えるか?

まあ このあたりが痛いんです と指差してくださればいいのですが

口で伝える場合には お腹を

上 中 下 と
右 中 左 の

両方で 9つの場所にわけて どこが痛いかを伝えます

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そうすることで 医者は どの内臓が原因か推測することができます

*上の右だと 肝臓(肝臓が痛いことはまずありませんが)や胆のう
*上の真ん中 左だと 膵臓

*真ん中高さの多くは ですが
*真ん中の高さの右や左が痛い場合は 腎臓 尿管の可能性もあります

*下腹部の右だと 虫垂(盲腸)や大腸の一部の上行結腸
*左だと 大腸(下行結腸)
*真ん中だと 膀胱 男性では前立腺 女性では子宮などの女性器

が疑われます

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痛みが どこか一部に限局せずに お腹全体が痛いこともあります

その場合の痛みの原因は
腸全体だったり 腹膜の炎症による体性痛だったりします


<いつから痛い?>

*だいぶ前から だらだらと痛いのか?

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それとも 

*短期間で急激に痛くなってきたのか?

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これは とても重要な情報です

急に痛くなってきた場合の原因は
急性胃腸炎 急性虫垂炎(盲腸) 胆石発作 尿管結石 急性膵炎
などが多く

頻度はそれほど多くありませんが 重篤な病気としては
腸閉塞 腹部大動脈瘤切迫破裂 などもあります


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一方 数日以上も痛みが持続する場合の原因は
胃・十二指腸の潰瘍 過敏性腸炎 クローン病 潰瘍性大腸炎など
女性では子宮内膜症などがあります

ですから

*いつ頃から痛いか

*痛みが急に来たか それとも 前からだらだらと持続して痛いか

*痛みの程度は どの程度か
 我慢できないほどの強い痛みか 気になる程度の痛みか

を伝えていただけると とても参考になります


<どんな痛みか?>

どういうときに 痛みが強くなるか あるいは 改善するか

も 重要なポイントです


たとえば

*食事をたべると 痛みが強くなるか あるいは改善するか

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*大便をすると 痛みが軽くなるか 逆に強くなるか

*安静にして 飲まず食わずにしていれば 痛みは改善するか
 (腹膜炎などでは 安静時にも痛みは改善しません)

*特定の姿勢(前かがみなど)でいると 痛みは改善するか

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*体を動かしたり 歩いたりすると 痛みは増悪するか

*精神的なストレスを感じると 痛くなるか

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また 腹痛にともなって 何か変わったことがあるか

*吐き気や嘔吐 下痢

*胸焼け

*全身倦怠感

*背中の痛み

*食欲の低下や 体重の減少

こうした情報も とても重要です


お腹のどこが いつ頃から どんなふうに痛いか

どんな風にすると 痛みは改善するか あるいは逆に増悪するか

そんなことを考えていられないほど 急に痛くなったか

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お腹が痛くて医療機関を受診される際は
お医者さんに 上記のことをうまく伝えられると
診断がスムーズにいくことが多いので 参考にされてください



2017.06.27更新

患者さんが お医者さんを受診される理由で 最も多いもののひとつが

お腹が痛い!

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腹痛が主たる症状の病気は
他の症状を主訴とする病気より はるかに種類が多いと言われています

腹痛はそれだけポピュラーな症状で さまざまな病気によって起こってきます


お腹は 他の体の部位に比べて面積が広いですからね

胃や腸の病気はもちろん
肝臓 胆のう 膵臓の病気 
泌尿器系の病気
血管や筋肉の病気
*稀ですが 心臓の病気
*そして女性では 婦人科系の病気

みんな お腹が痛くなります

そこで これだけポピュラーな腹痛について 解説したいと思います


そもそも どうしてお腹が痛くなるのでしょう?

腹痛は 大きく分けて3種類あります


@内臓痛

文字通り 胃 腸 胆のう 尿管などの お腹にある臓器(内臓)が
無理やり伸びたり 強く縮んだりした時に起こる痛みで

内臓そのものに分布する知覚神経によって 痛みが自覚されます

うずくような痛みが一定の時間をおいて繰り返し起こるのが特徴で
こうした腹痛は 疝痛と呼ばれます

お腹の調子が悪いときに感じる

腸管の蠕動運動にともなう 波がある間歇的な痛みも 内臓痛です

*痛みの場所が漠然として限局していない
*どんな痛みか具体的にうまく説明できない 漠然とした痛み
 (キリキリやズキズキではない) 

であることが多く

吐き気 嘔吐 顔面蒼白 冷や汗などの症状を伴うこともあります


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@体性痛

内臓そのものの痛みではなく 腹膜というお腹を包んでいる膜で感じる痛みで

腹膜そのものの炎症や刺激
炎症が内臓から腹膜まで波及した刺激 による痛みです

内臓痛と異なり

*痛む場所ははっきりしていて 炎症を起こしている場所を押すと強く痛む
*突き刺すように鋭く 内臓痛より強い痛みが長く(30分以上)続く
*内臓痛のような 波がある間歇性の痛みではない
*体を動かすことで痛みが増すことが多く 歩くと「ひびく」ことがある
*内臓痛より重症で 自然に治まらず 手術が必要になることが多い

といったことが特徴です

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@関連痛

内臓に生じた炎症の刺激があまりにも強いとき
周囲に隣接する神経線維が刺激されることにより 別の部位に起こる痛みです

腹部が原因の痛みでも
腹部以外の部位に痛みを感じることがあり 放散痛と呼ばれます

胆のう系の異常では 右肩や右側胸部
膵臓や十二指腸の異常では 背部

それぞれ 関連痛を認めることがあります

ちなみに 心筋梗塞や狭心症では
左肩や下顎に痛みを感じることがありますが
これも関連痛です


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このように 腹痛は さまざまなメカニズムによって起こってくるため
医者は 患者さんの痛みの訴えを詳細に聞いて 診察して
痛みが起きている場所や その性状をはっきりさせて
痛みの原因として疑わしい病気を思い浮かべ診断する必要があります

腹痛の診断は 何気に医者の腕のみせどころでもあります


でも 患者さんは
なかなか上手にお腹の痛みを表現することができないことが多い

そこで お医者さんに 自分のお腹の痛みをどのように説明したらいいか
次回 解説します



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