左利き肝臓専門医ブログ

2016.06.10更新

今日は 代謝調節に悪影響を及ぼす悪玉ヘパトカインの紹介をします


<Fetuin-A>

炎症を惹起し インスリン抵抗性を誘導することで 
糖尿病や心筋梗塞などの心血管系疾患の発症に関わる悪玉です


feta0


また 単球や脂肪細胞からの炎症性サイトカイン産生を増強し
善玉アディポネクチンの産生を抑制します


feta3


NAFLDでは 血中で増加しますが 
体脂肪の量とFetuin-Aの量は関係ありません

NAFLDと生活習慣病を結び付ける因子と見做されています


血中Fetuin-Aの増加は 糖尿病発症のリスク因子と考えられていて
糖尿病では血中で増加しますが 
体重を減量するとFetuin-Aは減少します

また Fetuin-Aの遺伝子多型が 糖尿病の発症に関与します


一方 生活習慣病では 動脈硬化のマーカーと正の相関を示します


高血糖になったり 栄養過多で血中遊離脂肪酸が増加すると
それらの刺激により 肝臓からの産生が促進します


興味深いのは 

遊離脂肪酸がTLR4という受容体に結合するときに
Fetuin-Aがその結合を強めるアダプター分子として働いて

単球や脂肪細胞からの炎症性サイトカインの分泌過剰
→インスリン抵抗性の誘導を促進することです


feta1


過剰な遊離脂肪酸により

慢性炎症やインスリン抵抗性が誘導される機序
関与しているかもしれません



<Selenoprotein P:SeP>

骨格筋や肝臓でのインスリンのシグナル伝達を障害して 
インスリン抵抗性を誘導し 糖尿病などの原因となる悪玉です

sep1


生理的な状態では インスリンにより
肝臓のSePの遺伝子は発現抑制されていますが

空腹時でインスリンが存在しなくなると SePは発現するようになり
インスリン抵抗性を誘導することで低血糖になるのを防ぎます

つまり 生理的な状態では
インスリンとSePが協調して血糖レベルを維持しているわけです


しかし 肝臓がNAFLDになると
肝臓ではインスリン抵抗性が存在するため
インスリンによる抑制がとれて発現が増加します

sep6


実際に NAFLDや内臓肥満では 血中SePが増加し
糖尿病でも増加してインスリン抵抗性を増強します


sep5



また 善玉アデイポカインのアディポネクチンの産生を抑制します


NASHを悪化させる要因のひとつである小胞体ストレスでも
SePの発現が誘導されるので 悪循環が形成されてしまいます


一方 VEGFという血管増殖因子による血管新生を抑制するので
糖尿病の合併症の血管病変の進行を助長するという
別の悪玉作用も有しています

sep3

<LECT2>

骨格筋に選択的に作用して インスリン抵抗性を誘導するとともに
NAFLDや動脈硬化の病態を促進させる悪玉です

肥満の方やNAFLDの方では 血中LECT2値は高値
BMIやインスリン抵抗性の程度と 正の相関を示します


lect21


エネルギー過剰状態で発現が上昇する飽食応答ヘパトカインで

細胞内の栄養状態が飢餓になると発現してくるAMPキナーゼにより
LECT2の発現は低下しますが

栄養過多でエネルギーが過剰になると AMPキナーゼが不活化されるので
LECT2の発現が増加してきて
インスリン抵抗性の誘導といった悪さをします

SepやLECT2に関する研究には 
日本の金沢大学の研究グループが大きく貢献しています



lect23



このように 
悪玉ヘパトカインの多くは
栄養過多の状態で発現が誘導され その悪玉ぶりを発揮します

またNAFLDになることで発現増加してしまうものもあります

NAFLDや糖尿病の患者さんの血中で高値を示すものが多く

インスリン抵抗性の誘導
善玉アディポカインのアディポネクチンの産生抑制により

まさにNAFLDと他の生活習慣病をリンクさせる因子です

将来は 悪玉ヘパトカインを制御できる物質が
NAFLDや糖尿病の新たな治療薬として登場するかもしれません

研究の発展が楽しみです



2016.06.09更新

肝臓が 糖代謝や脂質代謝の制御に関与する 
ヘパトカインというホルモン様物質を何種類も産生していることを
ご説明しましたが

今日は 代謝調節に良い影響を及ぼす善玉ヘパトカインの紹介をします

善玉ヘパトカインの代表選手は FGF21とSHBGです


<FGF21>

FGF21は 主に肝臓で産生されますが
筋肉細胞脂肪組織でもわずかに産生され
マイオカインアディポカインとしての側面も有しています

白色脂肪組織での糖 脂質代謝を調節し 脂質分解を抑制し

*肝内の脂肪量を減らす
インスリン抵抗性を改善する

といった作用により 糖質 脂質の代謝を改善させる善玉です

fgf213


脂肪細胞から分泌されるアディポカインとしてのFGF21は
善玉アディポカインのアディポネクチンに類似した作用を有しており

肝臓が産生するFGF21も 同様の作用を持つと考えられています

そしてFGF21は アディポネクチンより上流で
肝や骨格筋でのインスリン感受性発現などの効果を発揮していると
推測されています


飢餓状態で脂肪から遊離され肝に取り込まれた
遊離脂肪酸の働きで発現増加するほか
種々のストレスによっても発現が増加します

fgf217


ただ 肥満 糖尿病 NAFLDといった
インスリン抵抗性がある状態でも 血中のFGF21は増加しています

にもかかわらず それらの病気のインスリン抵抗性は改善されません

おそらく インスリンやレプチンと同じように 

FGF21も 産生されているにもかかわらず 効果が発揮できない
抵抗性のような状態になっている可能性が考えられています

このあたりの機序の解明が
FGF21の善玉ヘパトカインとしての臨床応用の鍵になると思われます



<Sex hormone-binding globulin:SHBG>

SHBGは
テストステロンやエストロゲンなどの性ホルモンと結合し 
その機能を制御するタンパク質ですが

肝臓のインスリン感受性を改善する 
善玉ヘパトカインであることが明らかにされました

この善玉作用は 上述のFGF21と異なり
善玉アディポカインのアディポネクチンとは無関係な作用です


糖尿病や生活習慣病では 血中SHBGは低値で
より低値だと 糖尿病の進行が早まるとされています

さらに肥満により低下し BMIとは負の相関があります 

shbg2

また血中SHBGが低いと
糖尿病や心血管病変の発症リスクが高くなると言われています

shbg5


肥満や糖尿病の病態を形成する慢性炎症で増加する
TNFαやIL-1などの炎症性サイトカインが
SHBGの発現を低下させると考えられており

shbg4

また 肝内の脂肪沈着が増えると 内臓脂肪量が少なくても
SHBGの発現は低下します

ですから NAFLDでは 当然 血中SHBG値は低い

shbg0



しかも 興味深いことに
生活習慣を改善して肝内脂肪量が減ると 
SHBG発現は増加してきます

さらに アディポネクチンにより SHBG発現は増加します


このように NAFLDや糖尿病ではSHBGが低下していますが

これが原因なのか 結果なのか?

NAFLDや糖尿病だから SHBGが低下しているのか
SHBGが低下しているから NAFLDや糖尿病になるのかは
未だわかっていません


またSHBGで興味深いのは
そのオリジナルな作用である 性ホルモンの機能制御との関連です

女性は閉経後に女性ホルモンのエストロゲンが低下するので
糖尿病などの生活習慣病になりやすいことは何回か説明しましたが

最近は女性ホルモンのみならず
男性ホルモンのテストステロンの生活習慣病発症との関連
大きな注目を集めています
(この点については 近々中に詳しく説明します)

NAFLDや糖尿病でのSHBGの低下により

ホルモン作用を発揮する SHBGと結合していない
フリータイプのエストロゲンやテストステロンが増加し

肝臓 筋肉 脂肪などへの性ホルモンの作用が変化することで
NAFLDや糖尿病の病態に影響するか?

shbg3

とても興味深い点で 今後の研究の進展が待たれます


このように 
善玉ヘパトカインは
NAFLDや糖尿病では 発現低下したり抵抗性になっていたりで
作用が発揮できていないことから

善玉ヘパトカインの補充や抵抗性解除による 
新たな治療法の開発が期待されます



2016.06.08更新

NAFLDNASHの解説の最後に ヘパトカインの話題を提供します

以前に 内分泌臓器以外の臓器でも
ホルモン様の液性因子を産生しているお話をしました

脂肪細胞が分泌する アディポカイン
筋肉細胞が分泌する マイオカイン

いずれも 糖質や脂質の代謝に影響を及ぼしていますが

肝臓も そうした作用を有するホルモンのような液性因子を
何種類も産生していることが明らかにされました

それらは ヘパトカイン と呼ばれています


hepatokine1


既にご説明したように 肝臓は病気がない生理的な状態では
糖質や脂質の代謝の中心的な役割をはたしていて
脂肪細胞や筋肉細胞と協調して 代謝調整に寄与しています

ですから 肝臓が何らかの因子を産生して
筋肉や脂肪のインスリン感受性に影響を及ぼすなどして
代謝を制御しているというアイデアは 昔からありました


また 今回説明してきたNAFLDやNASHのように
肝臓自体に代謝的な病気が生じると
病的な肝臓では 産生する代謝調節性液性因子も変化して

そのためNAFLDは
糖尿病をはじめとする他の生活習慣病と関連するのではないか?

こうしたコンセプトは 当然 有り得そうです

生理的な状態で代謝を調節しているヘパトカインが
肝臓の病気では その産生パターンや産生量が変化してしまい
他の生活習慣病の病態に影響を及ぼす という考え方です

肥満によって 脂肪細胞が分泌するアディポカインの質が
善玉から悪玉に変化するようなイメージです


ヘパトカインが NAFLDと糖尿病などの病態を結び付ける縁になる 

というアイデア


そして 脂肪細胞や筋肉細胞のときと同じように
肝臓の遺伝子発現の網羅的解析が行われ
多くの細胞外分泌タンパクの遺伝子を有していることが判明しました

hepatokine0

肝臓は さまざまなヘパトカインを産生しているのです

現在 特に糖質や脂質の代謝との関連
NAFLDと糖尿病などの生活習慣病との関連の視点から
いくつかのヘパトカインが同定され 詳細な研究がなされています

hepatokine2


アディポカインの説明をしたとき 善玉悪玉に分けて解説しましたが

ヘパトカインも

*NAFLDや糖尿病の病態を進行させる悪玉と
*改善させる善玉

にわけることができます


次回は 善玉ヘパトカインについて解説します



2016.06.07更新

肥満により インスリン抵抗性が惹起されて
肝細胞内に中性脂肪が蓄積してNAFLになることを説明しましたが

ここに 新たな要因が加わることにより
炎症や線維化が生じてNASHになる 

と考えられています


当初は この要因の正体 すなわちセカンドヒットは 
酸化ストレスとされていました

前回 説明したように NAFLの状態では
ミトコンドリアからの活性酸素種(ROS)の産生が増加します

また
*鉄沈着(内臓脂肪蓄積と相関する)
*脂質過酸化
*ペルオキシゾームでの脂肪酸β酸化
などによってもROSが産生されます

さらに 腸管由来のエンドトキシンにより
肝臓内のクッパー細胞や 線維化を促進する星細胞が活性化されて
それらの細胞もROSを産生します


nashpathoros

こうした さまざまな機序で誘導される酸化ストレスにより
肝臓内で線維化が進んで その結果 NASHになる


nashpatho10


これが 最初の頃に推定されていたTwo hit theoryです

*インスリン抵抗性の状態に 
*酸化ストレスがセカンドヒットとして加わり

NASHの病態が形成される



しかし最近は セカンドヒットには 
酸化ストレスだけでなく さまざまな要因が関与すると考えられ

Multiple parallel hit hypothesisが推定されています


nashpatho12


さまざまな要因には

*小胞体ストレス
*悪玉アディポカイン
*腸内細菌叢の変化
*オートファジーの異常
*飽和脂肪酸による炎症の惹起

などが 候補として考えられています

nashpatho11



小胞体ストレス
飽和脂肪酸 高インスリン血症 慢性炎症 酸化ストレスなどで
誘導される現象ですが

ループを形成するようにして 酸化ストレスを増大させ

肝内での脂肪酸合成促進 VLDL産生抑制により 
中性脂肪の蓄積も促進します


悪玉アディポカインは 
炎症を促進し インスリン抵抗性も誘導します


腸内細菌叢の変化により 
脂肪酸合成が促進され
免疫系を活性化させることで炎症が生じます


オートファジー
飢餓状態になったときに 細胞を壊して 
アミノ酸などをエネルギーに用いる反応ですが

この失調により 肝細胞内に脂肪滴が蓄積したり

ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)の異常により
酸化ストレスが増大すると考えられています


また インスリン抵抗性で増加した血中の遊離脂肪酸
CYP2E1(長鎖脂肪酸の酸化に関与する酵素)の発現亢進により
ROSを産生させ

肝臓 骨格筋 膵臓などでの異所性脂肪蓄積を誘導し
各組織でのインスリン抵抗性を惹起します

異所性脂肪蓄積については また詳しく説明します


さらに 飽和脂肪酸は
TLR4という 細菌成分を認識して免疫反応を活性化する受容体に結合し

それを活性化して 炎症を惹起するとともに
酸化ストレス 小胞体ストレスを誘導し インスリン抵抗性も誘導します


ffatlr4



このように 最初は酸化ストレスだけと考えられていたセカンドヒットには
さまざまな因子が関与していることが明らかにされ
NASHの病態形成は かなり複雑であることが判明してきています


*小胞体ストレス
*オートファジー
*脂肪酸がリガンドしてTLR4を活性化して炎症を惹起する
*腸内細菌叢の変化

こうした現象は 細胞生物学や免疫学の最先端のトピックで
次々と新たな事実が見出されています

腸内細菌叢については 既に解説しましたが
小胞体ストレス オートファジー TLRなどについても
いずれ詳しく説明したいと思います


こうした研究成果を基に NASHの病態がより詳細に解明され
新たな治療薬の開発につながることが期待されます

 

2016.06.02更新

NAFLDシリーズの最後に 病態生理解説します

数年前まで NAFLDの病態はTwo hit theoryにより説明されていました


まず 肥満になり インスリン抵抗性が惹起されて
肝臓のなかに脂肪が溜まって NAFLになるのが 第1段階

この状態に なんらかのセカンドヒットが加わると
炎症や線維化をともなうNASHが生じる

という 2段階発症仮説です

nashpatho0
今日は 第1段階の 
肝臓に脂肪が溜まってくるメカニズムについて解説します


まず 肥満になると
特に内臓脂肪組織内における 慢性炎症によるマクロファージ活性化と
それに引き続く 炎症性サイトカイン ケモカイン産生や
アディポネクチン産生低下が生じ

インスリン抵抗性が認められるようになります

この 病態の基盤としてのインスリン抵抗性により
肝臓に中性脂肪が溜まり NAFLとなります

nashpatho2


なぜ インスリン抵抗性になると 肝臓に中性脂肪が溜まるのか?


*過剰に供給され 過剰に作られる
*消費されない
*排泄されない

この3つの現象により 肝細胞内に中性脂肪が溜まります


<過剰に供給され 過剰に作られる>

インスリン抵抗性になると インスリンの効果が出にくくなるので
膵臓のβ細胞は インスリンの効果を得ようと 
たくさんのインスリンを分泌します

また NAFLD状態での肝臓のインスリンクリアランスが低下するので
血液中インスリン濃度がとても高い 高インスリン血症になります


ここで ポイントとなるのが

インスリン抵抗性の状態においても 
糖代謝以外のインスリン作用は保たれているということです


インスリンは血糖値を減らすホルモンですから
生理的状態では 
肝臓での糖新生を抑制し 血糖値を上げないようにしていますが

インスリン抵抗性があると 糖代謝への効果は減弱するので
肝臓での糖新生の抑制は弱くなり 
糖が作られて 血糖値がさらに上がります


一方 インスリン抵抗性でも 
インスリンの脂質代謝への作用は保たれているので

インスリンにより 
脂肪酸合成を促進する酵素SREBP-1cが誘導され
脂肪酸の量は増えて それが原料となり中性脂肪になり 
中性脂肪が 肝細胞に沈着します



また 脂肪組織では 
ホルモン感受性リパーゼ(HSL)により中性脂肪が分解され
遊離脂肪酸となって血液中に出て 肝臓に運ばれますが

インスリンはHSLの働きを抑制するので 
脂肪組織の中性脂肪が分解されません

しかしインスリン抵抗性では この抑制が効きにくくなり
脂肪組織から遊離脂肪酸が放出され 
肝臓に供給されて 中性脂肪となって溜まります

それでなくても 
インスリン抵抗性のために高血糖となり過剰になった糖質は
脂肪組織で中性脂肪に変換され 脂肪の量が増えていますから

肝臓に供給される遊離脂肪酸の量は さらに増えることになります


ということで インスリン抵抗性の状態では

*肝臓に大量の脂肪酸が供給され
*肝臓内で大量の脂肪酸が合成されるので

それらが大量の中性脂肪になり沈着して 脂肪肝になってしまうのです

もちろん 過食による中性脂肪の過剰流入も 
肝細胞の中性脂肪沈着に貢献します


nashpatho3



<消費されない>


一方 NAFLDでは 肝内での中性脂肪の消費の低下が起きています

生理的な状態では 脂肪酸は 
肝細胞のミトコンドリアで β酸化によりアセチルCoAに変換され
TCA回路・電子伝達系でのエネルギー産生の材料となり消費されますが

インスリン抵抗性にともなう上記の機序により
肝細胞内に過剰に存在するようになった脂肪酸を 
ミトコンドリアが処理しきれなくなり

その結果 脂肪酸の消費が低下して 中性脂肪が減らない


供給と産生は増加するのに 消費は減少するので
ますます 肝細胞内には中性脂肪が溜まる一方になります


さらに厄介なことに 過剰な脂肪酸処理でミトコンドリアが疲弊すると
エネルギー産生の過程で活性酸素種(ROS)が多量に産生されてしまいます

活性酸素種(ROS)は 
NASHを引き起こす代表的なセカンドヒットと考えられていますから
事態はさらに悪い方向に進んでしまいます



nashpatho4


<排泄されない>

さらに 高インスリン血症により
肝内の中性脂肪を血中に運ぶキャリアーのVLDLの放出が低下します

肝細胞内の中性脂肪は
ApoB-100というタンパク質で出来たカプセルに入れられて
VLDLというリポタンパク質として肝臓から血液中に運び出されますが

インスリンはVLDLの形成を抑制するので
インスリン抵抗性により高インスリン血症となった状況では
中性脂肪がVLDLとして肝臓から排泄されなくなります



このようにインスリン抵抗性が存在すると 
肝細胞内において 中性脂肪の材料の脂肪酸が 

*過剰に供給され 作られる
*消費されない
*排泄されない

状態となり 

その結果として 肝細胞内に中性脂肪が蓄積しNAFLになります


今日のお話では

中性脂肪と脂肪酸 
ミトコンドリアでのエネルギー産生
ミトコンドリアからの活性酸素の発生
中性脂肪を運搬するリポタンパクのVLDL

などといった あまり聞き慣れないことがたくさんでてきて
理解しづらかったかもしれませんが

これらについては また詳しく解説しますので
今日のところは なるほど~ と流してください(笑)


次回は 炎症や線維化が生じる 第2段階について説明します



2016.06.01更新

NAFLDは生活習慣病だと しつこく解説してきましたが
他の生活習慣病と 大きく異なる点があります

それは 高血圧 脂質異常症 糖尿病などと異なり

有効な治療薬がない という相違点なのです


残念ながら 
この薬を飲めばNAFLDは良くなりますよ という特効薬が
現時点では存在しないのです

困ったものです


しかし良い薬はなくても 
NAFLDには 効果100%の治療法があります

それは 痩せることです

生活習慣の改善により
体重が5%減れば 病因のインスリン抵抗性が改善
10%減れば 線維化すらも改善すると 報告されています


nashweightloss


生活習慣の改善は 食生活の見直しが中心になりますが
運動療法を併用すると より改善するという報告もあります

週に3~4回 30~60分持続した有酸素運動を 4~12週継続すると
体重減少がそれほどでもなくても 肝臓の脂肪化が改善したというのです
(下のグラフの真ん中のAerobic 黒が運動前 グレーが運動後)


nafldexercise


確かに NAFLDの病態の中心は 肝臓における脂質の蓄積ですから
脂質を燃やす有酸素運動(Aerobic)が有効なのは納得できます



また NAFLDそのものを良くする薬はなくても

他の生活習慣病を合併している場合は その病気の薬を服用することで
NAFLDの改善が見られます


糖尿病を合併している場合は
インスリン抵抗性を改善する作用を有する糖尿病治療薬の
チアゾリジン誘導体:ピオグリタゾンを服用すると

肝機能(ALT値)が改善し 

naflddmtherapyalt

さらに 肝内の炎症や線維化の改善も認められます

naflddmpio2
naflddmpio2


ですから 糖尿病合併NAFLDには ピオグリタゾンの投与により
まさに ひとつぶで二度おいしい効果を狙う価値があります

但し 服用を中止すると効果は消退してしまうので 長期投与が必要で
それにともなう体重増加 心不全 骨折 膀胱癌等には 
注意しなければなりません


脂質異常症を合併している場合には 脂質異常症の治療に用いられる
HMG-CoA還元酵素阻害薬
コレステロールトランスポーター阻害剤を投与すると

いずれも肝機能の改善が認められ


nafldstatinalt

コレステロールトランスポーター阻害剤では 
NASHの組織学的活動性を改善すると報告されています



生活習慣病の薬以外で 
唯一 NAFLDに効果があるとされているのが

ビタミンE製剤αトコフェノールです

次回説明しますが NAFLDの病態形成には
インスリン抵抗性に加え 酸化ストレスが関与しているとされています

ビタミンEは 抗酸化作用を有するので
糖尿病を合併していないNAFLDの方の第一選択となる治療薬

肝機能の改善に加え

nafldvite1

肝内の脂肪化の有意な改善を認め 
線維化の改善も見られたとする報告もあります

nafldvite2


但し 有効な症例と 無効な症例があり
全てのNAFLDの方に効果を示すわけではないのが問題点です

当院でも ビタミンE治療を行っているNAFLD患者さんが何人もおられ
一部の方ではALT値の改善が見られています



一方 未だ開発段階ですが
NAFLDの治療薬として有望視されているのが

合成胆汁酸アナログの オベチコール酸(OCA)です


nafldoca1


FXRという 
胆汁酸をリガンドとする核内受容体を刺激する作用がとても強く

NAFLDの患者さんに投与すると
肝機能の改善 肝内線維化の減少 インスリン抵抗性の改善
が見られました


これまでに 肝機能の改善を認めた薬はいくつかありましたが
有意な線維化の改善が認められた薬は OCAが初めてです

慢性肝疾患で線維化の改善が見られるのは 
本当に凄いことなので このデータには驚かされました


nafldoca3

OCAがFXRを刺激して発現させる
脂肪蓄積改善 抗炎症作用 線維化抑制 糖代謝異常改善 といった作用により
NAFLDの病態が改善すると考えられています



nafldoca2 



但し 掻痒感と悪玉(LDL)コレステロールの増加といった
気になる副作用も指摘されています


ちなみに 糖尿病専門医さんからの
プレリミナリーな情報によると

糖尿病治療の世界を変えたGLP-1アナログ
(特にリラグルチド)
NAFLD・NASHに対する治療効果があるそうで

糖代謝の改善に加え 
体重減少 炎症性サイトカインの減少をともない

肝機能の改善のみならず 肝内脂肪化の改善もみられるそうで

OCAと肩を並べる存在になるのか 要注目です!


このように 現在のところ 
NAFLDに有効な治療薬は見出されていませんが

OCAは有力な候補で
近い将来 NAFLD治療の第一選択薬となる可能性があり楽しみです

日本でも現在 OCAの臨床治験が進行中で
早ければ2018年にも健康保険で使用できるようになるかもしれません


しかし それまでは
いちばん確実で しかしいちばん難しい 減量にいそしむのが
地道で確実な治療法であることは 間違いないようです

NAFLDの治療中の皆さん 頑張りましょう!



2016.05.31更新

NAFLDが
脂質異常症や高血圧などの 生活習慣病不良グループ仲間とつるむことを
前回ご説明しましたが

NAFLDと最高にウマがって 最悪の腐れ縁を形成するのが糖尿病です


そもそも NAFLDの概念が確立する前から

糖尿病患者さんで多いがんは 
膵がん 大腸がんについで 肝細胞がんだったり

糖尿病患者さんの死因の17.5%が 肝疾患であることが
報告されていました

一方 肝臓が悪くなると 糖尿病の治療効果が悪くなる
逆に 糖尿病があると 肝臓病の治療効果が悪くなる

そうした臨床的な経験から
糖尿病と肝臓は関係がありそうだな? と疑われていました


そして NAFLDという病気の存在が確立されたことで
NAFLDと糖尿病の腐れ縁が 明らかとなったのです


どれくらいひどい腐れ縁か

まずは糖尿病の NAFLD NASHとの関連を見ていきましょう

アメリカでは 糖尿病患者さんの65%にNAFLDを認めます


dmnafld1


日本での NAFLD有病率は
空腹時血糖正常群では27% 異常群では43% 糖尿病患者群では62%
やはり糖尿病患者さんで高率にNAFLDが発症しています


また たちが悪いNASHの有病率は 糖尿病があると1.9倍増加し
糖尿病はNAFLDの線維化進行の危険因子と考えられています


dmnafld2


以前ご紹介したように
糖尿病のコントロール状態が悪いと
NAFLからNASHに進行するという報告もあります

さらに これも既にご紹介しましたが
糖尿病が合併していると 合併していない場合に比し
NAFLDにおける肝がんの発症を数倍も高める

というデータもあります


dmnafldhcc


このように 糖尿病があるとNAFLDになりやすいだけでなく
NAFLDの肝内線維化を進ませてしまうリスクがあります



一方 NAFLDの糖尿病との関連を見てみると

糖尿病がないNAFLD患者さんの30~40%に
糖尿病を発症する前段階ともいえる耐糖能異常を認め

NASHでは 20~75%に糖尿病や耐糖能異常を認めます


nashdm1



NAFLDと診断された時点で糖尿病でなくても
経過中に高率(NAFLDでない人の3.5倍)に糖尿病を発症します

つまり NAFLDは独立した糖尿病の発症危険因子なのです


また一般的に 
肝臓の状態が悪いと 糖尿病のコントロールは悪くなりますから
NAFLDやNASHが糖尿病の経過に悪影響を及ぼしているのは
想像に難くありません

NAFLDがあると 糖尿病になりやすいだけでなく
糖尿病の治療効果を弱めてしまうリスクがあるのです


ですから NAFLDの方を経過観察したり治療する場合は

定期的に血糖やインスリンの状態を評価して
糖尿病の早期発見を心掛けなければなりません


このように NAFLDと糖尿病は お互いの発症リスクを高め
併発していると 互いの病気の進行を促進しあってしまう

まさに 腐れ縁 といえます


naflddmkusareen



まあ 前にもご説明したように

NAFLDも糖尿病も その根っこには 
インスリン抵抗性という 共通した原因が存在するわけですし

肝臓は 糖質や脂質の代謝の中心的臓器ですから
もともと糖代謝状態の影響を受けて 脂肪をため込みやすい

ですから NAFLDと糖尿病が最悪の腐れ縁を形成するのも
致し方ないこととも言えます



しかし 腐れ縁で悪影響を及ぼし合いますが
腐れ縁が転じて 良い成果をもたらすこともあります

NAFLDの状態が改善しない方の糖尿病発症率は16.1%ですが

生活習慣を改善されてNAFLDが良くなった方は
糖尿病発症率が3.1%に低下します

NAFLDが良くなれば 糖尿病の発症リスクも減る


つまり 生活習慣を改善して NAFLDまたは糖尿病がよくなれば 
互いに及ぼし合っていた悪影響がなくなり


糖尿病が改善すれば NAFLDは良くなりますし
NAFLDが良くなれば 糖尿病は改善します


不幸にして NAFLDと糖尿病の両方を患っておられる方は
ご自分の努力次第で
こうした「一粒で二度おいしい」効果を得られるわけですから

やはり大切なのは 地道な努力による生活習慣の改善

これに尽きるのですね


でも それがいちばん難しいのも事実で、、、



2016.05.26更新

生活習慣病は その名の通り
食事・運動・喫煙・飲酒・睡眠といった生活習慣の乱れにより
発症進展する病気の総称で

糖尿病 高血圧症 脂質異常症 肥満 高尿酸血症などが
代表的な病気ですが

metsnash

NAFLDもこれらの病気の仲間で 生活習慣病の肝臓バージョンです


生活習慣病は 不良グループのようなもので
厄介なのは グループ内で仲間同士でつるんで悪さをすること

それぞれの病気が 互いに関連しあって発症進展していくのです


たとえば

NAFLDになりやすい危険因子

第1位は 肥満
第2位以下には 脂質異常症 空腹時高血糖
生活習慣病・不良グループの代表メンバーが並んでいます

nafldmets

逆に NAFLDは
高血圧 脂質異常症 糖尿病などになりやすくなる 
独立した危険因子です

つまりNAFLDだと 
年齢や体重に関係なくそれらの病気になりやすい

実際に 肝機能異常でALT値が増加すると
生活習慣病 メタボリックシンドロームになりやすいことが
データとして示されています


ALTmets

また NAFLDにおける 他の生活習慣病の合併率
メタボリックシンドロームが40% 
高血圧が30% 脂質異常症が50% 糖尿病が30%

NASHでは
メタボリックシンドロームが50% 
高血圧が60% 脂質異常症が60% 糖尿病が30%と
さらに高率になります


NAFLDは 脂質異常症ともしっかりつるみます

脂質異常症患者さんの26~58%はNAFLDで
脂質異常症になると NAFLDの発症リスクが23倍も増加します

まあ 脂質の増加がNAFLDの病態の基本ですから
あたりまえといえば あたりまえです


高血圧も NAFLDになる独立危険因子です

NAFLDと糖尿病の関わりは 
話が長くなるので 次回詳しく説明します


ということで 

ほらね NAFLDは不良グループの一員として
糖尿病などの生活習慣病の他のメンバーたちと 
しっかりとつるんでいるでしょう?(笑)


彼等が皆でつるんで何をしているかというと

動脈硬化を進展させて 
心筋梗塞 脳梗塞といった心血管疾患を発症させることです


NAFLDが 心筋梗塞や脳梗塞につながるなんて イメージできますか?


naflmetsheart


書き手が肝臓専門医の試験を受けた頃は
そんなアイデアはなかったし 
そんな問題も出題されませんでした(笑)


NAFLDになると 心血管疾患の発症率を2倍も高めます

しかも NAFLDの方の多くは 脂質異常症もありますから
余計に動脈硬化が進んでしまう

また NAFLDになると 血管の拡張能といった機能が低下していて
NAFLDが改善すると 血管機能も改善すると報告されています

NASHまで行くと 
発症率だけでなく 心血管疾患による死亡率も高くなります

NASHが原因の肝硬変の患者さんは
ウイルス肝炎が原因で肝硬変になられた患者さんと比べて
心筋梗塞や脳梗塞で亡くなる確率が高くなっています


NAFLDの方々は 生活習慣の改善をせずに放っておくと
糖尿病などの他の生活習慣病になりやすいだけでなく
将来 心筋梗塞や脳梗塞にもなりやすいのです

また NAFLDは 生活習慣病以外にも
慢性腎障害(CKD) 骨粗鬆症 肝臓がん以外のがんの発症にも
影響を及ぼすと報告されています


どうですか?

NAFLDの思いもよらない怖さを 認識していただけたでしょうか?


次回は 生活習慣病・不良グループのなかでも
最高に腐れ縁が強力な 
NAFLDと糖尿病の関連について説明します



2016.05.25更新

NAFLDの80~90%は 
単に肝臓に脂肪が溜まったNAFLな状態で

NAFLDの10~20%が
炎症が加わり 線維化している状態のNASHである

そしてNASHは NAFLと異なり
肝硬変や肝がんに進展するリスクがあり
生命予後も健常人に比べて悪いことを説明してきました


以前は NAFLとNASHは別個の独立した異なる病態で
NAFLからNASHに進行することはないと考えられていましたが
最近は NAFLがNASHになることもあると推定されています

では 

*どんなNAFLの方が NASHに進展するか?
*NASHの線維化は改善するか?
*NAFLとNASHを どのようにして鑑別するか?

健診で肝機能異常を指摘されて NAFLDが疑われている方は
そうしたことが とても気になると思います


NAFLの方が 
肝生検という 入院して肝臓の組織を採取する検査を行い
顕微鏡で肝臓内部の線維化がどれだけあるかを評価して

nashbiopsy

診断されてから5年後にもう一度肝生検をして 
再度 線維化の程度を評価した検討では

5年間の経過中に

*線維化が進行したのは 32~53% 
*変わらなかったのが 30~50%
*改善したのが 16~29% 

とされています

nashsenikakaizen

そして前回説明したように
肥満や 既に説明した食生活などの生活習慣が改善されないと
線維化は進行するし

経過中に糖尿病を発症すると やはり線維化が進行する

線維化の進行 つまりNASHになるリスク因子としては

*肝機能のAST(GOT)が高値
*年齢が高い
*糖尿病がある 経過中に発症する
*肥満 経過中に体重が増える
*高血圧を合併している

などがある

こうしたことが 明らかになりました

やはり 生活習慣を改め 
肥満や糖尿病のコントロールを充分にしないと
線維化が進行してNASHになってしまうリスクが高いようです

nashdmprogression


では NAFLかNASHかは どのように鑑別できるのか?

実は ここが頭の痛いところでして


NASHかどうか? 

つまり肝内で炎症があり線維化が進んでいるかどうかは
入院して肝生検検査を受けていただき
顕微鏡で実際の肝臓の状態を目で見ないことには 
正確に評価できないのです

エコーやCT MRIなどの画像検査では 
残念ながら炎症や線維化の程度は評価できませんし

血液検査でも NAFLとNASHを明確に鑑別できる項目はありません

しかし NAFLDが疑われている方 全てに入院していただいて
肝生検検査を受けていただくことは 非現実的です


そこで いくつかの検査項目を組み合わせて
NAFLとNASHを鑑別するスコアリングシステムの開発が試みられ

フェリチン インスリン 4型コラーゲン
の3つの血液検査項目の組合せで評価するNAFIC score
有望視されていますし

nashnafic

血小板という 血液を凝固させる働きを持つ血球細胞の数

nashplate

肝障害を反映するAST(GOT)とALT(GPT)の比率

nashastalt


を用いた NAFLとNASHの鑑別も行われています


AST ALTに関していうと 
ともに肝細胞がダメージを受けたときに血中に放出される物質で

肝障害の程度を評価するときは ALTが指標になりますが
ALTの値は線維化の程度は反映しません

だから NAFLの経過観察をしていくときに
ALT値が安定しているから大丈夫 NASHにはなっていない
とは言えないのです

線維化が進んでくると ALTよりASTの方が高くなってきますから
上述したようにASTとALTの比をみたり
血小板や4型コラーゲンなどの線維化を反映する項目を
あわせて評価していくことが大切になります


また NAFLとNASHを鑑別できるバイオマーカーとして期待されているのが
CK18 fragment という物質です

この物質は 以前にお話しした 
アポトーシスという細胞死に関連するものですが

NASHになると NAFLと比べて 
肝細胞がアポトーシス状態になることが多いので

CK18 fragmentを測定して 
NASHかどうか鑑別しようという目論見です

実際にNASHでは非NASHに比べ 高い値を示します


nashck18 

まだ保険適応はされていませんが
将来 NAFLとNASHを鑑別する強力な武器になるかもしれません


ということで NAFLとNASHの鑑別は一筋縄ではいきませんが

NAFLの方が 生活習慣を改めずに
太ったままでいたり 糖尿病を発症したりすると
NASHになってしまうリスクが高いのは 
間違いないようです

次回は NAFLDの生活習慣病としての側面を紹介します



 

2016.05.24更新

NAFLD 脂肪肝は 贅沢な食事をしている証しだよ
と 自慢して(?)いられないのは

たちの悪いNAFLDである

NASHから 肝硬変や肝がんに進展してしまうことがある

ということが明らかにされてきたからです


このシリーズの最初にも書きましたが

脂肪肝が肝硬変になるなんて 従来の医学では考えられていませんでした
ましてや 肝がんにまでなるなんて 全くの想定外!


だから 医者も 脂肪肝を重視していなかった


しかし NAFLDの10~20%は
炎症や線維化をともなう たちの悪いNASH・脂肪性肝炎で

NASHの5~20%が 5~10年の経過で肝硬変になり

それからおよそ5年間の経過で 
肝硬変の0~15%が 肝がんになってしまう

nashlchcc



ウイルス性肝炎に比べれば 肝がんになる率は少ないものの
良性疾患と考えられていた脂肪肝が 
がんになることがあるなんて、、、

最初にそのデータを見たときには 本当に驚きました

しかし 今やそれが常識です


NASHから10年以上の経過を経て 70歳くらいで発がんすることが多い

発がん率は 男性に多い傾向があります

また 糖尿病や脂質異常症をともなっている方は 発がんしやすい


今やNASHは
日本の肝硬変の原因の2~6%
肝がんの原因の2~5%

C型肝炎がベースの肝硬変に比べ 
発がん率は少なく 予後も良いのですが

経口抗ウイルス薬の普及で 
C型肝炎からの発がんの減少が予測される近い将来
肝がんの原因でいちばん多いのはNASH という日が来るかもしれません


欧米では日本より状況が凄くて
肝がんの原因の10~24%はNASHによるもので

肝硬変や肝がんのために肝移植をしなければいけなくなる原因の第一位は
既にNASHになっています


しかし NASHの方でも 
線維化が進行して 肝硬変や肝がんになる方は少数派です

どんなNASHの方が 病気が進行しやすいのでしょう?

検討によると

*年齢が高い
*糖尿病を併発されている
*肥満が高度
*生活習慣の改善が見られない

といった方では 病態の進行のリスクが高いようです

nashprogression

ということは たとえNASHであっても
張って生活習慣を改善して 
体重を減らしたり 糖尿病にならないように努力すれば
肝硬変や肝がんに進展するリスクを減らせるということです


なお NAFLDの多数を占めるNAFLからの発がん率は低いので
日本で1000~2000万人いると推定されるNAFLDの患者さん全てが
発がんの心配をされる必要はありません


また 肝がんを発がんしなくても
NAFLDになると生命予後が悪いことが明らかにされていますから
注意が必要です

アメリカやドイツからの報告では
NAFLDは健常人に比し生命予後が不良で 死亡率が10%ほど高い

死因は 心筋梗塞などの心血管疾患 悪性腫瘍 肝疾患 の順番で

死亡に関わる因子として

*年齢が高い
*糖尿病を併発している(2.7倍も死亡率が高くなる)
*肝硬変に進展している

といったことが報告されています

特にNASHの予後は NAFLと比べても不良で
肝関連死が有意に高率で(NAFLの13.9倍) 
心血管疾患による死亡率も高率です


但し ここでも
NAFLの生命予後は健常人とほぼ同等との報告もありますから

生命予後に関してもリスクが高いのはNASH ということになります


NASHの危険性を ご理解いただけたかと思います


そうなると 健康診断などで 肝機能異常を指摘されて
NAFLDが疑われている方は

ご自分が NAFLなのか
それとも 
肝がんになるリスクがあり 生命予後が悪いNASHなのか

が とても気になると思います

次回は その点について説明します


もう1点 今日のお話で 気に留めておいていただきたいことは

NASHに糖尿病を併発すると
肝硬変への進展 肝がんの発がん 生命予後
の全てに悪影響を及ぼす 

ということです

NASHと糖尿病の関連については あとで詳しく説明しますから
憶えておいてください

 

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