左利き肝臓専門医ブログ

2015.06.23更新

時計遺伝子が作るヒトの慨日リズムは24.5時間です

地球の自転で生じる1日のリズムは24時間ですから 放っておくと毎日0.5時間のズレが生じ
最初は地球の朝とヒトの体の朝は同じでも やがて地球の朝はヒトの昼という具合に
時差ボケに似たような状態が生まれてきてしまいます

と 以前から言われていましたが 
最新の研究では 24時間10分 が定説になっているようです

しかも興味深いことに 概日リズムが何時間かは人によって個人差があります
遺伝的に規定されていて 24時間10分より長い人もいれば短い人もいる

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ただ上の棒グラフに示されているように
24時間より長い人が75%と圧倒的に多く 放っておくとズレが生じて夜型になりやすい

それでなくても前回ご紹介したように 現代の社会環境はヒトをして夜型生活を遅らせやすい環境なわけですから

そうした事態を避けるために ヒトの体は毎朝 慨日リズムをリセットします

リセットを行う部位が 脳の視床下部の視交叉上核で中枢時計と呼ばれます
朝起きて光を浴びると 光を感じた目の網膜から中枢時計に情報が伝わりリセットされます

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そして中枢時計から全身の細胞に「朝だよ」情報が伝達されるのですが

興味深いのは 全身の細胞1個1個が 独自の時計遺伝子を有していることです(末梢時計)

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そんなこと イメージされたことはありますか?

自分の肝臓や胃の細胞が別々に独自の時計を有していて それに従って活動している
しかもさらに興味深いことに 臓器別に細胞の慨日リズムの長さが微妙に異なるようです

肝臓の細胞があくびしているときに 胃の細胞は既にしっかり働いているとか(笑)

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そんなマンガのような世界にならないために
末梢の個々の臓器の細胞も 朝に慨日リズムをリセットして 
全身の全ての細胞が同期して同じリズムで働くように調整します

このリセットは中枢時計からの情報伝達にもよりますが
朝食の摂取により 末梢時計のより完全な位相の補正がなされます

つまり

中枢時計は朝の光によりリセットされ
末梢時計は朝食の栄養素によりリセットされる というわけです

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このような2重のリセットシステムにより 毎朝体全体の概日リズムが調整され
ホルモン分泌 栄養素の代謝 自律神経などの生体機能が滞りなく行われるのです

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逆に この朝のリセットによる中枢時計と末梢時計の同期がきちんと行われないと
細胞がうまく働かないので さまざまな生体機能に支障が出てきてしまうことが明らかにされています

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ということは 体をきちんと働かせるためには朝食が大事! ということです

次回は朝食をきちんととらないとどうなるか 不規則な時間に食事をしているとどうなってしまうか
についての詳細をご紹介します


いやー それにしても 
細胞ひとつひとつがマイ時計を持って活動しているなんて 想像したことすらありませんでした

もちろん医学生時代に習ったこともありません
全く知らない世界でしたから ネタ本を読んでいてとても面白かったです

びっくりしました~(笑)

2015.06.15更新

6月12日から豚の生レバーが食べられなくなりました

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レバ刺しにはあまり興味がないので(むしろちょっと苦手) 
個人的には6・12ショックはありませんでしたが
テレビニュースなどを見ると 11日夜に駆け込みで食べに行かれて
「ああ これで生食文化がまた一つ消えてしまう」
と嘆いておられたファンが多かったようですね

どうしてこうした規制がかかったかというと
豚のレバ刺しを食べてE型肝炎に感染した患者さん
の報告が増えてきたからです


E型肝炎ってなんだ? 聞いたことないぞ」
という方がほとんどでしょうから ちょっと解説します

E型肝炎はE型肝炎ウイルス(HEV)の感染により急性肝炎になる病気です

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HEVは中央アジア 東南アジア アフリカなどに多く存在し 
HEVに汚染された飲料水を介して大規模な感染が時折起こっています

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飲料水などを介して口からHEVが体内に入り経口感染と言います) 
血液を介して肝臓に達すると 肝細胞に侵入して肝細胞を壊します

感染してから平均6週間の潜伏期を経て
倦怠感 食欲不振 発熱 悪心嘔吐などの症状が出現し
ひどい場合は黄疸(白目が黄色くなり尿が濃褐色になる)も見られます
黄疸になるのは肝細胞が大量に破壊されるからです

一般的には1~2週間ほどベット上で安静にして
点滴を受けているだけで自然に治りますが
妊婦 高齢者 臓器移植を受けている方などでは
重症化し死に至ることもあります

B型肝炎やC型肝炎のように慢性化することはなく
一度感染するとHEVに対する抗体ができるので 
風疹などと同じように二度と感染することはありません

HEVに汚染された食物や水を経口摂取することで感染しますが
B型肝炎のように性交渉で感染することはなく 
インフルエンザのようにくしゃみなどの飛沫で感染することもありません


日本でもときどきE型肝炎の患者さんはおられましたが 
その多くはアジアを旅行され帰国された方でした

しかし2003年に兵庫県で
野生のシカの生肉(レバーではない)を食べてHEV感染した報告
がありました

このとき 患者さんが食べた生肉と患者さんの血液中から
同じ遺伝子型のHEVが同定されたことから
世界で初めて食肉を介してHEVがヒトに感染することが証明されたのです

2004年には北海道でブタの生レバーを食べたあとに集団発生があり 
このときは1人の患者さんが劇症肝炎で亡くなっています

2005年には福岡
野生のイノシシの生肉
を食べてE型肝炎になられた患者さんが報告され

こうしてブタ シカ イノシシなどの生の食肉やレバーを食べると
E型肝炎になる危険性
が明らかにされました
現在では日本でE型肝炎患者さんの約1/3は
生食肉を食べて感染したと推定されています

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ところで 日本のE型肝炎患者数は2011年までは年間40~70人程度でしたが
2012年から連続して120人を超えるようになりました

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急増した理由として考えられているのが2012年の牛レバ刺し禁止です

牛レバ刺しの代わりにブタレバ刺しがお店で供されるようになって 
E型肝炎が急増したと推測され

それにより今回 ブタレバ刺し禁止令が出されることになった次第です


さて 動物に感染しているウイルスや細菌がヒトに感染して 
ヒトが病気になること
は珍しくありません

この種類の感染症は人獣共通感染症と呼ばれ
エボラ出血熱 狂牛病(牛海綿状脳症:BSE) 新型鳥インフルエンザ 
前回紹介したSARS MERSなどが有名です

なかでも今回のE型感染のように
動物や魚の生肉や加熱不十分な肉を食べることで
感染してしまう病気
が多くあります

有名どころでは
動物の腸管や肝臓に存在し ヒトが生で食べると食中毒や感染性腸炎を起こす
腸管出血性大腸菌(O157など) サルモネラ カンピロバクター

魚介類 特に淡水魚の生食で感染するアニサキス 横川吸虫などの寄生虫 
などなど

上述した2012年に牛のレバ刺しが禁止された理由は
生レバーを食べることによるO157感染の危険性に因るものでした

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今回は豚が問題になりましたが 
イノシシ シカ ウサギなどのジビエ料理の生肉にも
充分に注意しなければなりません

生肉ファンには残念なことでしょうが 致し方ないかなという気がします


ちなみに このブログを書くために読んだ文献によると
豚は集団飼育されているので 
1~3ヶ月齢の子豚の時期に集中してHEV感染が起こり
出荷される6ヶ月齢の豚の多くは
HEVに対する抗体が出来ていて血中HEVは消失しているとの報告があります

しかし6ヶ月齢の豚の肝臓に
本当にHEVがいないかどうかは明らかにされていません

そのあたりをもう少しクリアにできると 
ブタレバ刺しがお店に復活できる可能性もあるかな?


今日は東京は梅雨の晴れ間のようですが 暑くなりそうですね
それでも 意外に風邪の患者さんが少なくありません
職場などでクーラーの風に直接あたらないようにご注意ください

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