左利き肝臓専門医ブログ

2016.03.08更新

高尿酸血症・痛風のシリーズの最後に
 
尿酸は決して悪者ではない? 

という これまでとは少し趣が異なる話題を提供します


@尿酸には「抗酸化作用」があります

生体内では 常に活性酸素という物質が作られていて
これがさまざまな悪さをして
病気になったり 老化の原因になったりします


ks0



活性酸素がどうして体内で作られるのか?
具体的にどんな悪さをするのか?
といったことについては 近々中に詳しく説明しますが

体内には 活性酸素を抑えこむ抗酸化作用を有する抗酸化物質があり

活性酸素と抗酸化物質のバランスが保たれているので
普段は活性酸素の悪さが前面に出てきません

ksa0


抗酸化物質の代表選手は 赤ワインに含まれるポリフェノールですが
尿酸にも抗酸化作用があるのです

しかもその作用はかなり強力で 
強い抗酸化作用で知られるアスコルビン酸(ビタミンC)にも
ひけをとらないとか

uaksa

上のグラフに示されているように
◯の尿酸は他の抗酸化物質より
濃度(横軸)あたりの抗酸化作用(縦軸)が高いのがわかります


尿酸値を上昇させる激しい運動や肥満などは 
活性酸素の産生を増強するので

激しい運動や肥満で上昇する尿酸に抗酸化作用があるのは 
ある意味で合目的的と言われています

神様は うまい具合に人間の体を作られた ということ?


パーキンソン病 アルツハイマー病 多発性硬化症などでは
病気の原因として 活性酸素による神経細胞障害が推定されていますが 
興味深いことに これらの病気の患者さんは 尿酸値が低い

また 血中尿酸濃度が高い人ほど パーキンソン病の発病頻度は低い

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こうした事実から パーキンソン病 アルツハイマー病の発病に
尿酸値の低下による抗酸化作用の減弱 
が関与している可能性も推測されています


ただ 抗酸化作用を発揮するのは尿酸だけではないので
他の抗酸化物質の動態がどうか 明らかにする必要があると思われます



さて〆は「ホントなの?」という ちょっと眉唾な話題

@尿酸値が高い人は 頭が良いかも?

尿酸はカフェインと同じ分子骨格を有するので
中枢神経を刺激して 知的機能を高める作用がある? 
との仮説があります

前に紹介したように 歴史上の偉人で痛風に苦しんだ人
ミケランジェロ レオナルド・ダ・ビンチ ダンテ 
ゲ-テ ニュ-トン ダ-ウィンなど
いかにも頭がよさそうな方々です

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もちろん 歴史上の偉人ではなくても 
痛風に苦しんだ人は たくさんおられたのでしょうが(笑)


蛇足ですが 上記の有名人たちは 
いずれも当時の平均寿命からすると とても長生きだったそうで

長寿の理由を 上述した尿酸の抗酸化作用に求める論もあるようです
(こじつけに近い気もしますが:笑)


また アメリカ海軍予備兵の検討では 
*知能テストの成績と尿酸値が相関する
*高学歴者は一般集団に比べると尿酸値が高い
といったデータもあるようです

うーん どうなのでしょう?


尿酸なるもの
痛風や生活習慣病を誘導するだけではなく
実は 頭を良くして 寿命も伸ばしている?


まあ 今日の話題は お遊び感覚ということで
あまり真剣にうけとっていただかないよう 
宜しくお願いします(笑)



 

 

 

2016.03.03更新

前回に引き続き 高尿酸血症と生活習慣病との関わりについて説明します


<肥満との関連>

血清尿酸値と肥満度は正の相関を示し 
肥満度が高いほど高尿酸血症や痛風の発症頻度が上昇
体重減少は痛風発症の予防因子であることが
明らかにされています

肥満は 糖尿病や高血圧のみならず 尿酸値の上昇にも関与するのです

悪役としての肥満の一面が また増えてしまいました

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肥満には皮下脂肪型と内臓脂肪型があることを説明しましたが

高尿酸血症の合併率は 
皮下脂肪型肥満群で71% 内臓脂肪型肥満群で73%と同程度ですが

興味深いことに
皮下脂肪型肥満では 尿酸排泄低下型が大部分
内臓脂肪型肥満では 尿酸産生過剰型が主体で
両者に違いが認められます

メタボリックシンドロームをきたす内臓脂肪型肥満では
脂肪細胞が分泌するアディポサイトカインの分泌パターンの異常により 
インスリン抵抗性が惹起されますが

インスリン抵抗性があると種々の代謝経路に異常が生じ
その結果として 体内での尿酸産生が過剰になると想定されています

肥満が高尿酸血症を誘導する原因のひとつと考えられます



<糖尿病との関連>

@高尿酸血症・痛風→糖尿病


痛風患者さんの糖尿病合併率は0.8~9.0%とそれほど高くありませんが 
耐糖能異常合併率は40~60%と高率で 
特に肥満者における合併が多くみられます

また 高尿酸血症患者さんにおいては
23.5%が耐糖能異常を合併しているとの報告や 
約63%にインスリン抵抗性を認めるとの報告があります

高尿酸血症の患者さんは 糖尿病になりやすい傾向があるようです


@糖尿病→高尿酸血症・痛風

一方 糖尿病患者さんは「かくれ高尿酸血症」とも言われています

というのも 糖尿病の病期により血清尿酸値は変化するのです

*耐糖能異常の段階では 
 インスリン抵抗性のために高インスリン血症となり 
 インスリンの作用により尿酸排泄量が減って尿酸値が上昇しますが

糖尿病が発症してくると
 高血糖に伴う浸透圧利尿 糸球体濾過量の増加 
 尿細管機能の低下に伴う尿酸再吸収の低下
 などにより 血清尿酸値は低下します(逆U字現象と呼ばれています)

 下図のグラフのように 
 HbA1cや血糖値(横軸)が増加してくると 尿酸値(縦軸)は下がってきます

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そのため 糖尿病患者さんは
見かけ上は尿酸値を正常を保っている「かくれ高尿酸血症」
であることが少なくありません

糖尿病性腎症の発症段階になると 
 糸球体濾過量の減少により尿酸の排泄が低下し 
 再び血清尿酸値は上昇してきます


どうして「かくれ」と呼ばれているかわからないけれど
尿酸値が低下しているのだから結果オーライじゃないの?
と思われるかもしれませんが そうは問屋が卸さないのです 

糖尿病患者さんが有する 
過食やメタボが下地となった高尿酸血症発現体質が改善されないまま
 
糖尿病の薬物治療を行い血糖値が改善してくると 
高血糖による”見かけ上の”尿酸値降下作用がなくなってしまいますから
尿酸値は上昇してきてしまいます

これが「かくれ」と呼ばれる所以です

初診時にHbA1cが10%を越えている患者さんでは 
糖尿病の治療を開始したあとの尿酸値の増加はほぼ必発

とされていますから
糖尿病の初診時に尿酸値が基準範囲内にあっても安心できません

ましてや 軽度でも尿酸値の上昇が認められたら さらに要注意です

ということで 
糖尿病治療を開始してから半年以内には 必ず尿酸値の再検査が必要です

このことは意外に医者の間でも知られていませんから
不安な方は主治医によく相談されてください

専門医の ちょっとした腕の見せ所です


また ちょっとオタクな話ですが

糖尿病の傾向がありインスリン抵抗性が存在すると 
糖の主たる代謝経路である解糖系(下図左側)が障害されて
その脇道であるペントースリン酸経路が活性化されます

このペントースリン酸経路では
プリン体の原料となる核酸(DNAやRNA)を形成するペントース
が産生されるので
(下図の中段に示されているように
 プリン体(プリンヌクレオチド)の合成が進み核酸が合成されます)
核酸の代謝産物である尿酸値が上がります

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この機序も 糖尿病での尿酸値上昇に関与していると考えられます


なお 
尿酸値を下げる薬による血糖値への影響はありませんから
糖尿病と高尿酸血症は 安心して同時に両方の治療を行えます



<脂質異常症との関連>

高尿酸血症の患者さんの44.6%が 
高トリグリセライド(TG:中性脂肪)血症を合併しているとの報告があり

逆に高TG血症の患者さんの82%に 
高尿酸血症がみられるとの報告もあります

このように 高尿酸血症は脂質異常症との関連もあります


高TG血症では 
TGの分解や再エステル化にともなって
ATPの代謝回転が促進されますから 尿酸の原料のプリン体が増えて 
高尿酸血症をきたすわけです


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また 上で説明した
糖尿病傾向の患者さんで活性化される
ペントースリン酸経路
では 
脂肪酸の合成を促進する補酵素NADPH合成され
その結果としてTGなどの脂質の合成も促進するので(下図・右下)

上記のようにTGの分解からますますプリン体が増えて 
尿酸値が上がります


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このように
糖尿病傾向 高尿酸血症 高TG血症がサイクルを形成して
それぞれの状態をさらに悪化させてしまいます

生活習慣病は まさに互いに悪影響を及ぼし合うのです


また 高尿酸血症に高TG血症を合併している場合の治療には 
フェノフィブラートのような 
尿酸値低下作用を併せ持つ薬の使用が有用です



以上 2回にわけて 高尿酸血症と生活習慣病の関連について解説しましたが

高尿酸血症は 他の生活習慣病の病態に大きな影響を与えますし
他の生活習慣病の治療により 尿酸値の変動が見られることもあります

このあたりのマネージメントは 専門医の腕の見せ所でもありますから
心配な方は 是非 相談にいらしてください

 

 

2016.03.02更新

最近は 高尿酸血症も
生活習慣病 メタボリックシンドロームの一部と見做されています

生活習慣病で厄介なのは
複数の生活習慣病を併せ持つと 動脈硬化のリスクが相乗的に増えることです

そして ひとつの生活習慣病になると 他の生活習慣病を合併しやすい


尿酸値が高い方も 他の生活習慣病を合併しやすいことが報告されています

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各疾患の合併率は
高血圧 49.2%
肥満 42%
*中性脂肪が高い方は 42.8%
*悪玉コレステロール(LDL)が高い方は 37.6%

尿酸値が高い方は 
心血管障害や脳血管障害になるリスクが他の人より高いことが報告され
尿酸値の上昇とともに 
高血圧や慢性腎臓病などのリスクが高まることも 明らかにされています



<メタボリックシンドロームとの関連>

尿酸値が上昇するにつれて メタボリックシンドロームの頻度は高くなり
逆にメタボリックシンドロームの構成要素数が増加するにつれて 
尿酸値が上昇することも報告されていることから

現在 高尿酸血症は
わが国のメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていないものの
少なくともメタボリックシンドロームの周辺徴候であることが示唆されています


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メタボリックシンドロームの発症には 
脂肪細胞からのアディポサイトカインの分泌異常が深く関与していますが

尿酸のトランスポーターのURAT1は 
尿細管のみでなく 脂肪細胞にも発現していて

尿酸が URAT1によって 脂肪細胞に取り込まれると 
*酸化ストレスが高まり
*アディポサイトカインの分泌異常が起こり 
メタボリックシンドロームが発症する

といった可能性が推測されています

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尿酸は 脂肪細胞にも悪影響を及ぼしているのですね!



<高血圧との関連>

@高尿酸血症→高血圧

高尿酸血症患者さんの約20% 痛風患者さんの約30~70%が高血圧を合併し 
血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の合併率は高くなります

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高尿酸血症は 高血圧発症のリスク因子であるわけですが

尿酸が高いと血圧が上がる原因としては 

*尿酸が 血圧を上昇させるホルモンのレニン・アンジオテンシン系を亢進する
 (レニン・アンギオテンシン系は腎臓と高血圧のところで解説しました)

*尿酸トランスポーターURAT1が 
 尿細管のみでなく血管平滑筋細胞にも発現しており

 URAT1を介して血管平滑筋へ取り込まれた尿酸が 
 ・血管を弛緩させる働きを持つ一酸化窒素(NO)の合成を抑制する
 ・フリーラジカルを産生し 酸化ストレスを亢進させる
 ・炎症性サイトカイン 増殖因子を活性化する
 といった作用を発揮して

 血管の炎症や血管平滑筋細胞増殖を引き起こし 
 高血圧発症や臓器障害に関与する可能性が推測されています

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尿酸は 色々な細胞にさまざまな影響を及ぼすようで
その効果発現には URAT1が絡んでいるようで 興味深いです


@高血圧→高尿酸血症

一方 高血圧が高尿酸血症を引き起こすリスクもあります

男性高血圧患者さんの約30%が高尿酸血症を合併していて
高血圧では尿酸排泄が低下すると考えられています

高血圧では 
レニン・アンジオテンシン系の亢進やカテコラミンの分泌が認められますが
そのために乳酸産生が増加して 
乳酸は腎尿細管で尿酸と競合的に排泄されるので 尿酸の排泄が低下してしまう


また 
高血圧の治療で用いられる利尿剤やβブロッカーの副作用で 
尿酸値が上昇する場合があるので要注意です



<心血管疾患との関連>

尿酸値高値が心血管疾患発症の独立した危険因子かどうかは 
議論がわかれるところです

心血管疾患では血管の障害がベースに存在し

血管の障害には 
血液凝固状態 炎症反応 活性酸素産生が関与しますが

尿酸結晶は そのいずれも亢進させるので
高尿酸血症は心血管疾患発症のリスクファクターではないか?
と推測されています


また 高血圧との関連で説明したように
尿酸トランスポーターのURAT1
血管平滑筋細胞血管内皮細胞にも発現しており

URAT1を介して血管平滑筋へ取り込まれた尿酸が 
血管の炎症や 血管平滑筋細胞増殖を引き起こし 
血管障害に関与している可能性も推測されています

さらに 尿酸が産生される際にはATP分解が亢進していますが

ATPの分解時には大量に活性酸素が発生するため
この活性酸素が血管壁の炎症を起こし 動脈硬化を促進するとも考えられます

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このように 高尿酸血症はさまざまな機序により血管障害に関与し
ひいては心血管疾患の発症に関わる可能性が高いですが

尿酸が本当に心血管疾患の発症リスク因子であるか明らかにするためには 
尿酸値を低下させる治療による心血管疾患発症の低下
の証拠を示す必要があります

こうした研究は未だ成されておらず 今後の検討を待ちたいと思います



いずれにせよ 
高尿酸血症が痛風や腎疾患に関わるのみならず

尿酸の 脂肪細胞や血管を構成する細胞への直接的な影響を介して
メタボリックシンドロームや高血圧・心血管疾患にも深く関わることを 
理解していただけたかと思います

尿酸 そんな色々な作用を有していたなんて 侮れません!


次回は 高尿酸血症と肥満・糖尿病との関わりについて説明します



2016.03.01更新

1週間のブランクがありましたが
今日は高尿酸血症・痛風の治療の解説をします

<尿酸値がいくつになったら 薬を飲んだ方が良いのか?>

皆さん 気になるところだと思います

以前解説したように 
尿酸値が7.0mg/dlを超えたら 尿酸結晶が出来てくるリスクがあるので
7.0mg/dlを超えたら要注意で まずは生活習慣を見直すことから始めます

前回お話ししたような 食生活や生活習慣に注意して1~2か月頑張っていただき
再度 血液検査で尿酸値をチェックします

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<薬物治療を開始するタイミングは?>

@過去に痛風発作をおこした経験があり 
その後 継続して薬を飲んでいなかった方は
尿酸値が7.0mg/dlを越えた段階で すぐに薬を飲み始めていただきます

@過去に痛風発作をおこした経験がない方は 
他に持病があるかないかで 方針が異なります

*腎障害 尿路結石 高血圧 狭心症・心筋梗塞 糖尿病 
 メタボリックシンドロームがある方は
 尿酸値が8.0mg/dlを越えたら 薬による治療を開始した方が良いでしょう

*そうした持病がなければ 尿酸値が8.0mg/dlを越えても9.0mg/dl以下なら 
 もう少し生活指導を続けて経過を見ます

*尿酸値が9.0mg/dlを越えたら 
 全ての方が薬による治療を開始すべきです

ということで 薬物治療を開始する目安は
腎臓やメタボ関連の持病がある方は 8.0mg/dl
そうでない方は 9.0mg/dl
になるわけです

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<治療の実際と改善の目標値>

では どのように治療を行い 
治療によりいくつまで尿酸値を下げるべきでしょう?

実際の薬物治療は 
少ない量から初めて 徐々に増量して 3~6ヶ月で維持量を決めます


尿酸値改善の目標値は 6.0mg/dl以下

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6.0mg/dl以下の状態が維持できると 沈着している尿酸結晶が溶け出して
再発作のリスクが減るとされています

特に 過去に発作を起こしたことがある方 高血圧の方は 
この目標を厳守する必要があります


<尿酸値を下げる薬>

尿酸値を下げる薬物は 大きく分けて2種類あります

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@尿酸の生成を抑制する薬物

尿酸の合成に働く酵素のキサンチンオキシダーゼ(XO)を阻害して 
生成を抑制します

*アロプリノール(ザイロリック アロシトール)
*フェブキソスタット (フェブリク)
*トピロキソスタット (トピロリック ウリアデック)
といった薬物が良く使用されます

フェブキソスタット トピロキソスタットは 新たに開発された薬物で

フェブキソスタットは 
産生過剰型 排泄低下型のいずれに対しても同等の尿酸低下作用があり

トピロキソスタット
慢性腎臓病の患者さんに対しても効果を示し 腎保護作用があります

これらの薬物を使用できるようになり
高尿酸血症の治療は 新しいステージを迎えつつあります


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@尿酸の排泄を促進する薬物


近位尿細管での尿細管トランスポーターURAT1による
尿酸の再吸収を抑制することで 尿酸の排泄を促します 

*ベンズブロマロン (ユリノーム)
*プロベネシド (ベネシッド)
*ブコローム (パラミチン)
といった薬物が良く使用されます

しかし 尿中に大量の尿酸が排泄されると 尿路結石が出来やすくなるので
その防止のために 
充分に水分をとっていただき 尿アルカリ化薬を併用していただきます

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<いつまで薬を飲み続けなければいけないのか?>

多くの患者さんが この点をとても気にされます

以前 体質のお話をしましたが
高尿酸血症に限らず 多くの生活習慣病にもあてはまりますが
高尿酸血症になるような体質があるので 高尿酸血症になってしまう

そして 薬物は尿酸値を低下させる作用はありますが
残念ながら 根本的な原因である体質そのものを改善させるわけではない

ですから 薬を飲むのを止めれば 
残念ですが また尿酸値は上がってしまう

したがって 尿酸値が改善しても
面倒くさいかもしれませんが 薬は飲み続けてください 
ということになります

もちろん 薬の量や種類は少なくすることはできるかもしれませんが
基本的には継続した治療が必要です

このあたりは 主治医の先生とよく相談されてください



<痛風発作時の治療>

さて 不幸にして 痛風発作が起きてしまった時の治療は
@前兆期(関節の違和感 むずむず感があるとき)は 
 予防的にコルヒチンを1錠服用します
@発作の極期には 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)短期間大量服用します
@回復期になっても痛みが持続するときは NSAIDの通常量を服用します

温めたりもんだりすると逆効果ですし 歩きまわっても症状が増悪しますから
そうしたことは避けるようにしてください

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注意が必要なのは
過去に尿酸値を下げる薬物を服用していたことがあり
その薬が残っていた場合
痛風発作を起こして 自己判断でそうした薬を飲んでしまうことです

痛風発作は 尿酸値が急に下がっても起きやすいので
発作時に尿酸値を下げる薬物を服用すると
かえって症状が増悪してしまうリスクがあります

発作時には 局所を冷やして 消炎鎮痛剤を飲むことが一番の対処です


尿酸値を下げる薬は 
発作が治まって約2週間してから服用を開始すべきですので

自己判断で発作時に尿酸値を下げる薬を飲むことは
絶対に避けるようにしてください


逆に 発作がおさまったら 
尿酸値を下げる薬を飲まなくてもよいというわけではありません

以前に説明したように 尿酸値が高い状態が続けば
かなりの高頻度で痛風発作が再発します


痛みがなくなった後も 継続した治療が大切ですので 是非 ご留意ください


 

2016.02.18更新

高尿酸血症 痛風の患者さんは 
食生活や生活習慣について 以下のことに気をつけて
日々の生活を送っていただきたいと思います

<食生活の注意>

@腹8分目にして 標準体重を維持する
*以前に説明しましたように 肥満は高尿酸血症のリスク因子ですから
 肥満を合併している高尿酸血症は 減量のみで改善することが期待されます

プリン体の多い食事を控える
*プリン体は旨み成分なので 
 悲しいかな 美味しいものに含まれていることが多いのです
肉類 魚の干物 エビ 鶏ささみ カツオ ビールなどには多く
 大豆 プロセスチーズ 卵などには少ない

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ただし以前に説明したように 
食事から摂るプリン体より 体内で合成されるプリン体の方がはるかに多く
食べ物からのプリン体を制限しても 
血中尿酸値は1.0mg/dl程度しか低下しません

だからといって プリン体の多い食物をたくさん食べれば 
リスクは確実に増えますから
食事の内容に充分に注意する必要はあります

乳製品を多く摂る
*乳製品はプリン体増加や痛風のリスクを低下させるので 
 積極的に摂ると良いとされています

ショ糖果糖は 控えめに
*ショ糖や果糖の摂取量に比例して
 尿酸値が上昇するとの報告がありますから
 これらを多く含むような 甘いものやジュース 果物
 などの取りすぎは控えた方がよいでしょう

尿をアルカリ性にする食品を多くとる
*前回説明したように 尿が酸性に傾くと尿酸は溶けにくくなり 
 結石ができやすくなります

*尿がアルカリ性だと ある程度解けやすくなるため 
 海藻 緑黄色野菜 牛乳といった
 尿をアルカリ性にする食品を多く摂取してください

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*また尿管結石は 尿酸以外にシュウ酸も原因になりますから
 シュウ酸を多く含む ほうれん草や青菜などは
 量を控えるようにしてください

@1日に2リットル以上の水分をとり 尿量を増やす
*既に何回か説明しましたが 
 尿酸は尿に排泄されますので 尿量が多いほど排泄されやすい
 ですから お水をたくさん飲まれて尿量を増やしてください

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@アルコール飲料の多飲は慎む
*ビールにはプリン体が多く含まれますし
 アルコールは体内で分解される際に尿酸が作られるので要注意です


<生活習慣 運動の注意>

@軽い有酸素運動(ウォーキングなど)を行う
1日に15~30分の早歩きを 週に3回以上 が目標です

筋トレは適度に
*筋トレなどの無酸素運動
 ATPが多量に消費されるために 尿酸の生成が増加する一方 
 腎臓の血流量が落ちるため 尿酸の排出が減少してしまいます
*ですから 筋トレのし過ぎに注意してください

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@ストレスを上手に発散する
*以前に説明しましたように
 せっかちで行動的なA型行動タイプの方は 痛風になりやすいので 
 ストレスと上手く付き合い 
 のんびりリラックスすることを心掛けてください

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高尿酸血症に限らず 生活習慣病一般にあてはまることですが

食生活や生活習慣に関する意識と 
日々の地道な努力 がとても大切です

どうか 頑張ってください!


次回は治療について解説しますが

花粉症のシーズンが始まったので 来週は花粉症の解説をします

高尿酸血症・痛風の解説シリーズは 
3/1から再開しますので しばらくお待ちください 

 

2016.02.17更新

痛風放置すると 
徐々にしかし確実に 下記のようにステージを踏みながら
慢性的に進展
していきます

@無症候性高尿酸血症期
*自覚症状はありませんが 高尿酸血症の持続により 
 関節腔内等に尿酸塩結晶が析出・沈着し始めます
*この時期から尿路結石を生じることもあります
*このまま放置して10年以上経過すると 高頻度に痛風発作が起こります

@急性痛風発作期
*痛風発作が一度でも起これば 急性痛風発作期に入ったと考えます
*治療せずに高尿酸血症を放置すると 痛風発作は高い確率で再発しますし
 徐々に発作の頻度が増し 発作の間隔が短くなり
 やがて発作が寛解しないうちに 次の発作が発症してしまうようになります
*アメリカの調査では 
 痛風発作は初回発作から2年以内に78% 1年以内に62%が再発し
 初回発作から10年以上再発しない患者さんは
 わずか7%にすぎないと報告されています

@結節性痛風期
*痛風発作があっても治療をうけずに放置すると 慢性通風期になります
*尿酸塩結晶が関節以外の部位にも析出し 
 痛風結節 腎障害(痛風腎)骨破壊などを発症してしまいます
*痛風結節は体温の低いところにできやすく 
 耳介 手指の関節 ひじの後ろ側 くるぶし 足指の関節などに
 高頻度に見られます

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このように 最初は無症状でも 高尿酸血症を放置すると痛風発作を起こし
それでも適切な治療を継続して行わないと
腎臓の機能を低下させたり 骨の破壊が起こってきてしまいます

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発作の痛みが改善すると 自己判断で治療を止めてしまう方もおられますが
放置するとこのように厄介なことになりますから
たとえ自覚症状がなくても 継続して治療を続けることが大切です

この点は 是非お願いしたいと思います


つぎに 
痛風にともなって起きてくる腎臓の合併症について解説します

@CKD:慢性腎臓病
CKDだと 糸球体からの尿酸濾過量の減少による尿酸排泄低下があるので 
 尿酸値が増加しますが

*高尿酸血症そのものが 結晶沈着を介さずに
 CKDの発症進展に関係すると考えられています

*それには 尿酸値増加により 
・糸球体の機能(推定糸球体濾過量:eGFR)が低下する
・腎機能の指標であるクレアチニンが上昇する 
 といった機序が関わり

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 上図に示されるように 
 尿酸値の増加とともにクレアチニン値上昇の危険度が高まりますが
 薬物治療で尿酸値が改善すると eGFRやクレアチニンも改善してきます

*つまり 高尿酸血症の持続が 腎機能を徐々に低下させてしまうのです

@痛風腎
慢性的に尿酸が高値を持続し 尿酸塩が腎臓内に沈着することで生じ
 人工透析や腎移植が必要となる末期腎不全に進展する
 大きなリスクファクターとなります

@尿路結石 
*高尿酸血症が持続すると 
 尿酸を始めとする尿中の水に溶けにくい物質が尿路に析出し
 結石を形成してしまいます

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*尿管結石は 痛風患者さんの10~30%にみられ 
 なかには痛風発作よりも先に尿路結石が起こる場合もあります
*また 約40%に再発がみられます

*尿管に結石がつまると 
 背部 側腹部から下腹部にかけて 激しい痛みが生じます

 患者さんにうかがうと この痛みはかなり激烈で 
 前かがみの姿勢をとらないと 痛みが我慢できないほどだそうです

尿に血液が混じることも少なくありません

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尿管結石ができやすい危険因子としては
・尿量あるいは水分摂取不足
・尿中尿酸排泄量の増加
・酸性尿の存在
 などがあります

 あとで治療の項で詳しく説明しますが
 高尿酸血症の患者さんに 
 水分を充分に補給してください とか
 尿をアルカリ性にする食物を食べて下さい
 とお願いするのは こうした理由によるものです

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高尿酸血症や痛風を放置すると 
*人工透析や腎移植につながるリスクがあること
*尿管結石で激しい痛みに悩まされるリスクがあること
を ご理解いただけたでしょうか?

次回は 食生活 日常生活の注意について説明します



2016.02.16更新

痛風発作がいかに痛いか脅かす前に(ドクハラ?:苦笑)
高尿酸血症のタイプについて説明します

高尿酸血症は 成因別に 以下に示す3タイプに分かれます

@尿酸産生過剰型 
食事からのプリン体が多く 尿酸が作られ過ぎるタイプで 
痛風患者全体の10%程度を占めています

@尿酸排泄低下型
腎臓の尿酸排泄能力が弱くなったために尿酸値が上がるタイプで
痛風患者にもっとも多いタイプ 全体の50~70%を占めています

既に説明した 尿細管での尿酸の排泄・再吸収に関わる
尿酸排泄輸送体(トランスポーター)の遺伝子多型
関与していると考えられています

具体的には
ABCG2遺伝子多型による機能低下
GLUT9遺伝子多型
の関与が報告されています

@両方のタイプの混合型
20~30%ほどいます

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食事が直接絡む産生過剰型が意外に少ないので 
びっくりされたかもしれませんが

プリン体の過剰摂取は 尿酸排泄低下型の病態にも 
当然 悪影響を及ぼしますから
まず食事に気を配ることが重要なのは 変わりません



さて いよいよ 
イタイイタイ 痛風発作 の話を始めます

痛風発作は 血中の過剰な尿酸が析出して
それが針状結晶になって関節や皮下組織に沈着して 
激しい炎症を引き起こす病気です

goutattack11


通常は 足の親指のつけ根などが
赤く腫れあがり 局所に熱をもち
少しでも動かしたりすると 局所に激痛が走る

gouta12

患者さんのお話を聞くと 本当に痛くて
涙を流しながら 局所がどこにも触れないように 
はって移動するほどだそうです

放置すると激しい関節の痛みを繰り返したり 
体のあちこちに結節が出来たり 
さらにひどくなると 腎臓が悪くなったりします

gouta13



発作そのものは 鎮痛薬などで治療すれば1-2週間で治りますが 
もともとの原因である高尿酸血症を治療しないと 
やがて合併症がおこってきますから
たとえ発作の痛みが良くなっても 継続的な治療が重要です


痛風発作に襲われやすい条件 があって

*大量の飲酒(とくにビール)をしたあと
*飽食をしたあと

*サウナに長く入ったあとなど 汗をたくさんかいて脱水状態になったあと
*マラソンやウォーキングのように 長い距離を歩いたり走ったりしたあと
*テニスやマシン・トレーニングなどの激しいスポーツをして疲労したあと

*忙しい仕事が続いたあと 精神的なストレスのたまったあと

*きつい靴を履いて歩いたあと


*尿酸値を下げる治療を始めた直後

*利尿剤を飲んだあと

などが危険です

皆さん 充分にお気をつけください!


では どうして尿酸の結晶が沈着すると炎症が起こるか?
というと

ストレス 激しい運動 急激な尿酸値の変動などで 
この結晶がはがれ落ちると

白血球がこれを異物として認識して動員され 
炎症が起きて痛みが生じる と考えられています

白血球は尿酸結晶を貪食したあとに 
蛋白質分解酵素や炎症メディエーターを放出するので 
局所に炎症が起きてしまいます

だから 激痛も生じる


gattasn31



さて ここで少しオタクな話をしますが
 
この白血球が尿酸結晶を認識する際には
インフラマソームというタンパク質複合体が関与することが
明らかにされています


ヒトの白血球は 
いくつかの種類のセンサー(受容体)を利用して
生体にとって危険な因子を認識して 
それを排除するために炎症反応を起こしますが

ここ15年余りで 
異物を認識するセンサーが次々と同定されました

細菌やウイルスなどの微生物の成分を 
 細胞の表面で認識するセンサーがTLRs

*微生物成分に加え 
 傷害を受けた細胞から放出される危険因子DAMPs を 
 細胞の中で認識するセンサーがNLRs

TLRNLR


つまり 白血球は 
体外から侵入してくる微生物だけでなく 
体内の成分をも
危険分子として認識して 
炎症を起こすことがあるのです


インフラマソームは NLRsのメンバーの代表選手

尿酸だけでなく さまざまな分子を危険分子として認識し 
シグナル伝達分子を介してカスパーゼという酵素を活性化して

カスパーゼにより IL-1 IL-18などの炎症を起こすサイトカインの
前駆体が活性型に変換されて 
炎症反応が誘導されます


インフラマソームが危険分子として認識する体内成分には 
尿酸結晶 コレステロール結晶 遊離脂肪酸 βアミロイド ATP
などがあります

そして インフラマソームがそれぞれを認識して炎症が起こると
*尿酸結晶は 痛風
*コレステロール結晶は 動脈硬化
*遊離脂肪酸は 糖尿病
といった 
さまざまな病気の病態形成に深く関わってきます 

NLR3





たとえ体内の成分であっても 
過剰になれば 生体にとって不利益な炎症を起こしてしまう

こうした事実は 痛風の病態を考えるうえではもちろん
自己免疫疾患などの病態を考えるうえでも 
非常に重要かつ示唆に富むものです

このあたりについては いずれ稿を改めて詳しく解説しようと思います


ということで 最後はオタクな話になり恐縮ですが

イタイイタイ痛風の裏話 堪能していただけたでしょうか?



 

2016.02.11更新

尿酸を過剰に摂取したり 作られたり 排泄がうまくいかなくなると 
血中尿酸値が徐々に増加してきます

通常体温の37℃では 尿酸は7.0 mg/dlまでしか溶けないので 
7.0mg/dlを超えると結晶ができてしまう可能性があります

ga1


ですから 血中尿酸値が7.0mg/dlを超えると 高尿酸血症と診断されます

ua111

この高尿酸血症の状態は いわば痛風の予備軍で

血清尿酸値が7.0mg/dlを越える状態が数年間以上続くと
痛風発作が起こりやすいとされていて

高尿酸血症の患者さんの10人に1人が痛風になると考えられています

uagout22


尿酸値が高ければ高いほど痛風になりやすいので

goutua23

痛風発作がない高尿酸血症の患者さんでも
尿酸値を積極的に低下させることが重要です


痛風は 高尿酸血症が持続した結果 慢性に進行していく疾患
発作時には 体内にたまった尿酸が結晶になって
激しい炎症を引き起こします

gout112


そうそうたる歴史上の有名人物たちが 痛風で苦しんでいたようです

国王では アレキサンダー大王 プロシア国王フリ-ドリヒ大王 
フランスのルイ十四世 

宗教改革関係者では ルター 清教徒革命のクロムウェル

芸術家では ミケランジェロ レオナルド・ダ・ビンチ
詩人では ダンテ ミルトン 
文豪では ゲ-テ スタンダ-ル モ-パッサン

物理学者では ニュ-トン 生物学者 ダ-ウィン

枚挙にいとまがありません


しかし日本では明治時代までは 痛風で苦しむ人はいなかったようです

痛風が日本史に忽然と現れるのは明治になってからで
実際に患者さんの数が増えたのは 
戦後 それも1960年代になってからのことです

食生活の欧米化による
動物性蛋白の摂取量増加 飲酒量の増加 肥満などが
関与するとされています

昔は50代過ぎの男性に多かったですが
最近のピークは30代で 圧倒的に20代以降の男性に多い

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不思議なことに 痛風の患者さんの98.5%が男性で 
女性はわずか1.5%に過ぎません

女性ホルモンのエストロゲンが 
さまざまな生活習慣病の予防に役立っていることを解説しましたが
痛風でも エストロゲンが予防的な働きをしていて
腎臓からの尿酸の再吸収を抑え 排泄を促す働きがあるとされています

ですから 血清尿酸値は閉経までは女性は男性より低いのですが
エストロゲンが減少する閉経後は女性の尿酸値が上昇し

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女性の患者さんも増えてきて 
高尿酸血症の頻度は 50歳未満で1.3%、50歳以上で3.7%です


現在の日本では 痛風の患者さんは 約80万人以上
予備軍の高尿酸血症の患者さんは 500万人以上いて
成人男性30歳以降の有病率は 痛風が1.7% 高尿酸血症が約30%

なんと成人男子の10人中3人は 痛風予備軍です

確かに当院でも 尿酸値が高い患者さんは多く通院されています



痛風になり易いタイプ というのがあり
*思春期を過ぎている人男性
*肥満の方
*肉食やアルコールが好きな人 とくにビールが好きな人 
*A型行動タイプの方 (管理職 科学者などに多い)
 具体的には 行動的な人 活動性が高い 猛烈社員 
 積極的 意欲的 せっかち 攻撃的 
 有能 責任感が強い 楽天的 学業成績の良い人 頭の回転の早い人
 課外活動などに活発な人 地域活動に熱心な人 
*家族歴がある方(痛風の30%以上は三親等以内に痛風の方がおられます)
*ストレスを受けやすい方
*過度の運動をされる方
などの方が あてはまります

注意したいのは肥満で
血清尿酸値と肥満度は正の相関を示し 
肥満度が高いほど高尿酸血症や痛風の発症頻度が上昇すること
が明らかにされており
体重減少が痛風発症の予防因子であるとの報告もあります

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なにかと肩身の狭い思いをさせられている肥満ですが
痛風においても 肥満は悪役のようです


また ストレスが多いと尿酸値が上がる理由は
ストレスを感じるとアドレナリンの分泌が増え 腎臓の血管の収縮が起き
尿量が減少する結果 尿酸の排泄が減少するためと推測されています

過度の運動により尿酸値が上昇する理由は
前回ご説明したように 無酸素運動により大量にエネルギーが使われると
尿酸のもとになるプリン体がたくさん作られるからです

A型行動タイプの人で 尿酸値が上がる理由は
うーん なんとなくイメージはできますが どうなのでしょうね?

このあたりについては このシリーズの最後で また話題提供したいと思います


高尿酸血症と痛風のイメージが できたでしょうか?

次回は 高尿酸血症のタイプ 痛風発作について解説します



2016.02.10更新

尿酸のもととなるプリン体が 
体内でどのようにして産生されるかを前回説明しましたが

過剰に摂取・産生されたプリン体や
エネルギー代謝により不要になったプリン体は 
主に肝臓で 
キサンチンオキシダーゼ(XO)という酵素により尿酸に変換され 
血液中に排出されます

キサンチンオキシダーゼは
肝臓 腎臓 心臓の血管内皮 十二指腸 乳汁をはじめとした
全身の組織の細胞に存在しており 

プリン体代謝の最後の2段階で 
ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸 と変換させる働きをします

xo

あとで治療のところで詳しく説明しますが
このキサンチンオキシダーゼこそが 
高尿酸血症の治療薬が作用する物質です


さて 前置きが長くなりましたが
生体内における尿酸の動態について説明します

プリン体が代謝されて出来た尿酸は 
その産生と排泄のバランスがとれているため
生体内の総量(尿酸プール)は 
常に一定(健康男性で約1200mg)に保たれています

ua2

飲食物から摂取するプリン体や 
新陳代謝や運動により産生されるプリン体の量が多く 
尿酸が産生過剰になったり
 
あるいは腎臓の機能が落ちて排泄低下したりして

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産生と排泄のバランスが崩れると 
血中尿酸値が高まり高尿酸血症になります

ua2

尿酸値が7.0mg/dlを超えると 
尿酸の結晶が析出してくる可能性が生じ 痛風のリスクがでてきますが
尿酸値が8.0mg/dlのヒトの尿酸プールは 
通常量の倍に近い2000mgに増大しています

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さて 尿酸は1日に 
尿中に約500mg(70%) 汗や消化液に約200mg(30%)排泄され
排泄の主役は尿です

高尿酸血症の患者さんに 
1日に2リットル以上のお水を飲んでくださいと勧めるのは
たくさんお水を飲んで尿を出して 尿酸を排泄してほしいからです

uanyou



さて 腎臓での尿酸処理は きわめて複雑です

腎臓は 
糸球体という血液をろ過して原尿を作るパーツと
尿細管という血液と尿の物質交換
(血液から尿への分泌・尿から血液への再吸収)を行うパーツに
わかれますが
(このあたりは 高血圧における塩分の再吸収の話題で解説したので
 参照されてください)

尿酸は 
糸球体でいったんは100%ろ過されますが 
その80~90%が尿酸管で再吸収され 
糸球体でろ過された量の10%程度しか尿に排泄されません

UAHAISETSU!

腎臓からの尿酸の尿中排泄が 
このように極めて能率が悪く不可解なしくみになっている理由は

尿酸が多量に尿中に排泄できると 尿中の尿酸濃度が上昇し 
腎結石や腎障害をおこしやすくなってしまうため 
尿酸を少量ずつ排泄することにより 
こうした危険を防止しているのではないかと 考えられています


さて 尿細管では尿酸輸送体(トランスポーター)が働いて
再吸収を行っています

現在までに 次の3種類のトランスポーターが同定されています

*URAT1
尿細管細胞の尿細管腔側の細胞膜に存在し 
細胞内の乳酸やニコチン酸などと交換する形式で
尿から尿酸を細胞内に再吸収します

高尿酸血症の治療薬の尿酸排泄促進薬
このURAT1の作用を抑制して 尿中への尿酸排泄を促進します

*GLUT9
尿細管細胞の血管側の細胞膜に存在し 
再吸収した尿酸を 細胞内から血管内の血液に戻します

*ABCG2
小腸・腎臓をはじめとする多くの組織に発現し 
尿酸を細胞内から細胞外へ分泌し 尿酸を排泄します

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次回以降に詳しく解説しますが
これらの尿酸トランスポーターの働きに異常があると 
尿酸の尿への排泄が低下し
高尿酸血症の大きな原因になると考えられています

また 尿酸トランスポーターの機能には 
遺伝子多型が関与することも明らかにされています
遺伝子多型については 以前に解説しましたので参照されてください)


体内での尿酸の動態を なんとなくイメージすることができたでしょうか?

前回説明した 体内でプリン体から尿酸が産生されるプロセス
今回説明した 血液から尿に尿酸が排泄されるプロセス

このふたつが 高尿酸血症・痛風の病態を理解するうえで とても重要です

では 次回はいよいよ 高尿酸血症・痛風の解説をします



 

2016.02.09更新

健康診断で尿酸値が高い」と指摘され 
心配になって来院される患者さんは
糖尿病や脂質異常で来られる患者さんの数と肩を並べるほど多いです

そこで今日から
高尿酸血症・痛風の解説をシリーズを始めます


まず1回目は プリン体ってなんだ?


世の中にはプリン体がフリーのビールなどが出回り
プリン体という言葉は かなり広く認識されるようになりました

でも 言葉として聞いたことはあるけれど その本体は?
と疑問に思われる方は 多くおられることでしょう


プリン体は尿酸の原料です

プリン体の仲間にはさまざまな物質が含まれますが
分子構造の違いから 3種類に分類されます

pu1 
体の中でプリン体が産生されたり 
食物成分としてプリン体が摂取されますが
そうしたプリン体が体内で代謝されて 最終的に尿酸となる

あとで詳しく述べますが
通常の状態では 尿酸の産生と排泄のバランスが上手くとられているので
血中尿酸値は上昇してこない

この産生と排泄のバランスが異常をきたして
血中尿酸値が上昇してくると 高尿酸血症・痛風に至るわけですが

尿酸の原料ともいえるプリン体が体内で増えてくると
尿酸産生過多になるリスクが増えてくる

ですから 
尿酸値が高い方はプリン体の摂りすぎに注意しましょう と言われ
プリン体フリーのビールが注目されたりするわけです


でも 実情はちょっと違います、、、

前述しましたように プリン体のソースは
*体内で産生されてくるもの
*食物成分として摂取されるもの
に2分されますが

その比率は 体内で産生されるものが80%(1日に約500mg) 
食品に含まれるものが20%(1日に約100mg)で
体内で産生されるプリン体の方が 圧倒的に多いのです

pu2


ちょっと意外でしたか?


では 体内ではプリン体はどのようにして産生されるのでしょう?

体内でプリン体の原料になるのは 2種類の物質です

*ひとつは DNA RNAなどの核酸
*もうひとつは ATP という物質です

DNAやRNAは 
遺伝子診断エピジェネティクスの話題でご紹介したように
細胞の核の中に存在する遺伝情報を担う物質です

核酸の構成要素であるアデニングアニン
プリン体の仲間のプリン塩基ですから

pu3

細胞が新陳代謝を繰り返したとき 
核酸は分解されてプリン体が産生されます


ATPは 
初めて聞いたと言われる方も多いかもしれませんが
中学や高校の生物の授業で一度は習っているはずです
(そんなの 憶えていませんよね:笑)

アデノシンという プリン体の仲間のプリンヌクレオシドに 
リン酸が3つ結合している構造で

そのリン酸が結合した部位に 化学エネルギーを蓄えていて 
リン酸の結合が外れて遊離するとき このエネルギーが放出され
生体はこの化学エネルギーを利用して生活しています

ATP1

生物が日々の生活の運動 代謝などのさまざまな反応で利用している
重要な高エネルギー化合物で
生命反応におけるエネルギー通貨と呼ばれることもあります

この高エネルギー化合物ATPは 
生命活動で使われると リン酸基が外れてADPに分解されます

ATP2

通常ADPは リン酸と結合して再びATPになりますが 
激しい運動などで急激にたくさんのATPを使った場合は
ADPがですぎてしまい 
過剰のADPは分解されてプリン体となります

ATP3
ATPという重要なエネルギー物質は
この先 いろいろな話題でたびたび登場することになりますから
是非 記憶に留めておいてください


さて このようにプリン体は
細胞が新陳代謝を盛んに行ったり 
運動などで激しくエネルギー消費したときに
体内で産生されてくる いわば燃えカスのようなもので

プリン体が代謝されて産生されてくる尿酸は 
まさに生命活動の究極の燃えカスと言えるかもしれません

あとで詳しく解説しますが
高尿酸血症や痛風の患者さんに 
筋肉が激しく使われ エネルギーが大量に消費される
筋トレなどの無酸素運動をしないように勧めるのは 
こうした理由によるものです


ビールや魚の卵などのプリン体を多く含む飲食物からも
プリン体は体内に入ってきて代謝されて尿酸ができてきますが

実は食物中に含まれるプリン体は
腸内細菌で分解されることが多いことが明らかとなり 
昔ほど厳しい食事制限はされないようになっているのが現状です

ましてや上述したように
尿酸のもとになるプリン体は 
ベースとなる生命活動で 大量に産生されていて

食品に含まれるプリン体は 
生体内のプリン体の20%を占めるにすぎません

しかし そのように基本的な日々の生命活動で
プリン体が大量に産生されているからこそ
高尿酸血症や痛風の方は 食物からのプリン体摂取で
さらに尿酸の原料が増えないように 気をつけるべきでしょう

ビールや魚卵をたくさん食べたら 尿酸は確実に増えますから 
食生活の注意ことが重要なことに変わりはありません


プリン体は生命活動で生じた燃えカスであり 
その燃えカスが代謝されて出来てきた究極の燃えカスが尿酸である

プリン体 尿酸の実態のイメージが なんとなくつかめたでしょうか?

次回は 尿酸の体内動態について説明します



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