左利き肝臓専門医ブログ

2016.01.19更新

薬物と食品の飲み合わせにより 
薬物の効果が 予想以上に強く現れたり 
逆に期待した効果が得られなくなることがあります

血圧が高くて降圧剤を服用されている患者さんは
降圧剤の種類によっては 
グレープフルーツジュースを飲まないように指導されたり

不整脈や脳梗塞の治療で抗凝固薬のワーファリンを服用されている患者さんは
納豆を食べすぎないように注意されたり


こうした「ある種の食品は 薬を飲むときはダメ」という事実だけが
詳しい解説抜きでネット上にでまわっていて
それを読まれた 降圧剤以外の薬を服用されている患者さんが 
「私はグレープフルーツジュースを飲めないのですか?」と 
過度に心配されて聞かれることが少なくありません

お気持ちは解りますが
心配のし過ぎは 精神衛生上よくありません

一方で グレープフルーツや納豆などの食品だけでなく
健康食品やサプリメントも
種類によっては薬物との相互作用がみられるので注意が必要です

サプリだから大丈夫と安心していると 
心配な結果を招いてしまうこともあります

そこで 薬物シリーズの最後に
食品・サプリメントと薬物の相互作用について説明します

dililast



<どんな食品・サプリメントがマズいの?>

既にお酒と健康に関する解説で
アルコールと薬物の相互作用については説明しましたが

薬物との相互作用で問題となる食品・嗜好品は
タバコとアルコールで全体の50%以上を占めます

それ以外には
*高蛋白食
*牛乳
*チラミンを多く含む食物
 :チーズ・ワイン・ビール・コーヒー カジキ・ニシン・タラコ・スジコ
  そら豆・鶏レバー・イチジク など
*お茶・コーヒー(カフェイン含有飲料)
などがあり

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ) 
クロレラ イチョウ葉エキス ビタミン含有品などの
健康食品やサプリメントの一部でも 
薬物相互作用が起こり得るので注意が必要です


<どんな薬剤が 影響を受けるの?>

これらの食品やサプリメントにより代謝に影響を受ける薬物は
中枢神経薬が断然多くて4割近くを占め
次いで多い循環器官用薬抗生物質を加えた3種で 7割を占めます

中枢神経薬のなかには 風邪や頭痛で使われる
総合感冒剤解熱鎮痛消炎剤が含まれていますし

循環器官用薬には血圧や脂質異常症の薬も含まれます

抗生物質
もひどい風邪や膀胱炎などでよく使われますから

食物との相互作用を注意すべき薬は 
意外に日常的に使われる薬が多いので 注意が必要です


では 具体的な例を見ていきましょう

@アルコール
アルコールは既に解説したように
薬物代謝酵素に対し阻害と亢進の両方向に作用 
代謝酵素を阻害すると 薬物の作用を増強させることがあります

また アルコール常飲者は薬物代謝酵素活性が亢進しているため 
他の薬物に対しても代謝を促進し薬効を減弱させることがあります

具体的には
*インスリン・トルブタミド・グリベンクラミドなどの糖尿病薬で 
 血糖降下作用が強く現れることがあり
*トリアゾラムなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬で作用が強まり
 ふらつき めまい 記憶障害などが起こることがあります


@煙草
煙草に含まれるニコチンなどが薬物代謝酵素を活性化させるので
薬物の作用は減弱することが多いとされています

薬物相互作用の項で解説した
喫煙患者は非喫煙者より 
喘息薬のテオフィリン効きが悪くなることを参照してください


グレープフルーツジュース
グレープフルーツに含まれる
フラノクマリン類(ベルガモチン ジヒドロキシベルガモチン)が
CYP3A4 を阻害するので 薬品濃度が高まり作用が数倍増強されます

3A4で代謝される薬物には
*降圧剤のカルシウム拮抗剤 (ペルジピン アダラート コニールなど)
*脂質異常症の薬のアトルバスタチン (リピトール)
などがあります

グレープフルーツの薬物に対する相互作用は 比較的長く持続し
長いものでは3~7日間持続するとの報告もあります

しかしSNPの項で解説したように
3A4による薬物代謝能もグレープフルーツの影響も 
かなり個人差があります

これまで報告されている相互作用の検討結果は
血中薬物濃度の変化を検討したものがほとんどで
薬効 (例えば血圧の低下作用) に著しい影響が出たという研究報告は
あまり多くありませんから
過度に神経質にならず 主治医とよく相談されるのが良いでしょう

gfj1


@納豆
ワーファリン納豆の関係も有名です
納豆は 腸内でビタミンKを産生しますが 
このビタミンKが 血液凝固因子の働きを強めるので 
抗凝固作用を持つワーファリンの効果を減弱させることがリスクです

ワーファリンの投与量の調整は 
降圧剤や脂質異常症に比べてより重要で微妙ですので
必ず主治医の指示に従ってください


@セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)
最後にハーブ系の健康食品で 
うつ状態に対するヒトでの有効性が示唆されている
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)ですが

CYP3A41A2などの酵素誘導が起こるので
*ジゴキシン(強心薬) 
*シクロスポリン(免疫抑制薬) 
*テオフィリン(喘息薬) 
*ワーファリン(血液凝固防止薬) 
*経口避妊薬
などの効果が減少する可能性があります

spl1

こうした薬を飲まれている方は 
健康食品やサプリだからと言って安心せずに
よく主治医と相談されてください


このように 頻度はそれほど多くはありませんが
食品やサプリ・健康食品と薬物の相互作用は意外にバカにできません

心配な方は 是非 主治医にご相談ください



2016.01.14更新

同じ薬物を服用していても ヒトによって効き目が異なる場合がありますが
この原因の多くは 薬物代謝酵素の遺伝子多型(SNP)によるものです

SNPについては 既に何回か説明しましたが
同じタンパク質を作るもとになる遺伝子の塩基配列等が
ヒトによって微妙に異なるために
できてくるタンパク質の量や機能が変化してくる現象で
以前説明したように いわゆる体質を形成する大きな要素のひとつです


で SNPの存在が知られている薬物代謝酵素には
CYP 2C9 2C19 2D6 NAT2 UGT ALDH などがあります

こうした薬物代謝酵素のSNPにより
さまざまな薬物の代謝速度に個人差が現れ 
効き目が異なってくることがあるのです


実際にSNPにより薬物代謝に変化を認める場合
その影響は次のように分類されます

*RM : rapid metabolizer  
                 代謝活性が過度に亢進している

*EM : extensive metabolizer   
                 通常の代謝活性を示す

*IM : inter mediate metabolizer 
                 EMの約50%の代謝活性しか示さない

*PM : poor metabolizer       
                 代謝活性が低くほとんどない


RMでは 薬物が過度に代謝されてしまうので 常用量では効き目が弱く
IMでは 代謝が弱いので 常用量では効き目が強く出てしまい
PMでは 代謝されないので 常用量の投与でも副作用が現れてしまいます


dilisnp1



具体的には CYP 2D6の場合
このCYPは 
感冒薬のPL顆粒 アレルギーの薬剤の抗ヒスタミン剤のゼスラン 
鎮咳薬のコデイン

など多くの種類の薬物を代謝しますが

2D6*1X2 *2X2 というような遺伝子が重複したタイプの多型は
日本人の1%に認められ このヒト達はRMなので あまり効かない

2D6*10 タイプは 日本人の40%でみられ IMなので そこそこ効く

2D6*3 *4 *5タイプは 日本人の1%未満で 
PMなので副作用が強く出てしまう可能性がある

2d6SNP

もしもPL顆粒やゼスランを服用して 眠気などの副作用が強くでたら
その方は 2D6のSNPが 2D6*3 *4 *5タイプかもしれません


また CYP 2C19
胃潰瘍薬のプロトンポンプ阻害薬 催眠鎮痛薬のジアゼパム 
抗てんかん薬のフェニトイン 抗うつ薬のイミプラミン 
などの代謝に関わりますが 

SNPと薬物代謝の関連は
2C19 *1/*1だと RMで 日本人では約35%
2C19 *1/*2か*1/*3だと IMで 約49%
2C19 *2/*2 か*2/*3か*3/*3だと PMで 約16%
となります

日本人には 
RMで 薬があまり効かないタイプの人が3割近くいるというこです


さて プロトンポンプ阻害薬は 
胃潰瘍 逆流性食道炎 ピロリ菌の除菌療法に用いられますが

それらの治療効果2C19のSNPの関連が明らかにされています

潰瘍では RMの方は初期段階での治癒が遅く
逆流性食道炎では RMの方は治癒率が低い
除菌治療では やはりRMの方は除菌率が悪くうまく除菌できないことが多い

RMのSNPを持っている方は 薬物代謝が速いので効きが悪い
そうした方には 投与量を増やす必要があります


このように薬物代謝酵素のSNPが薬物の効果に影響を及ぼすことから
将来的には
患者さんに投与する薬物の代謝に使われるCYPのSNPをあらかじめ解析し
その結果に応じて投与量を調整するといった
まさに個々人に応じたテーラーメイド医療が行われるようになるでしょう

現に今でも 上記のCYPのSNPは
検査会社に依頼すれば解析することができます
(健康保険扱いで検査することはできず実費扱いになりますが)

薬を飲んでいるのに 
どうも効きが悪いとか 副作用がひどい といった場合に
その薬物の代謝に関連する分子の遺伝子多型を調べて対処する時代が
もうそこまで来ています



2016.01.13更新

薬物性肝障害の解説をしましたので 
この機会に 実際に薬物を服用している方に注意していただきたい
薬物相互作用について解説したいと思います

薬物相互作用とは 
複数の薬物を服用する際に ある薬物が別の薬物の作用に影響を与えることで
*薬物の作用が増強する場合 
*減弱化する場合 
*新たな副作用が生じる場合
があります

薬物相互作用の主役は
既にご紹介した薬物代謝の第1相で活躍する
薬物代謝酵素のシトクロームP450(CYP)です

dlilss1

CYPは ヒトでは50種類ほどの種類がありますが
薬物代謝に主として関わるのは 
1A2 2C9 2C19 2D6 3A4 の5種類です

そして 薬物によって代謝に利用されるCYPの種類が異なります

ですから
同じ種類のCYPで代謝される2種類以上の異なる薬物を服用した場合
薬物相互作用が起こる可能性があります

CYPの中でも 3A4で代謝される薬物が最も多いため このCYPで代謝される
*免疫抑制剤のシクロスポリン
*抗生物質のマクロライド
*降圧剤のカルシウム拮抗薬
*抗てんかん薬のカルバマゼピン
等の薬物を併用した場合に 相互作用が起こり得ます

これらの薬物の中で 3A4に対する親和性が高いものと低いものがあり 
複数の薬物を併用する際は
親和性が低い薬物は 親和性が高薬物にCYPを利用されてしまい
その代謝が阻害されてしまうので 薬物の血中濃度が上昇するため
効きすぎたり 副作用が出やすくなります
 

ということで これらの薬物を併用する際には注意が必要になります

降圧剤のカルシウム拮抗薬抗生物質のマクロライドの併用などは
通常の外来診療であり得ることですから 
高血圧の治療をされている方が風邪などで受診される際には 
服用されている降圧剤のことを 医師に相談された方がいいでしょう



またCYPには 
特定の薬物により発現が誘導されたり 働きが阻害されるものがあります

ss21


最初にCYPの働きが阻害される例をお示しします

不整脈や脳梗塞の治療で用いられる抗凝固薬のワーファリンは 
2C9により代謝されますが
胃潰瘍治療薬のシメチジン(H2受容体遮断薬)2C9の働きを阻害するので
ワーファリン服用者がシメチジンを一緒に飲むと 
ワーファリンが代謝されず 効きすぎて出血しやすくなり得るので注意が必要です

また シメチジン1A2の働きも阻害するので
1A2で代謝される喘息薬のテオフィリン服用者がシメチジンを併用すると
テオフィリンが代謝されず半減期が長くなり 
動悸などの副作用が出やすくなります

ss22

CYPの阻害で忘れてはならないのが
グレープフルーツジュース3A4阻害して 
3A4で代謝される降圧剤のカルシウム拮抗剤などの作用を増強することですが
このことは食品と薬物の相互作用の項で詳しく解説します

ss41


次に CYPの発現が誘導される例をお示しします

1A2は 喫煙により誘導され活性が高まるので 
喫煙患者は非喫煙者より 
喘息薬のテオフィリンが効率よく代謝されて半減期が短くなるので
効きが悪くなってしまいます

ss31

またうつ病に効果があるとされる健康食品のセント・ジョーンズ・ワート
3A4発現誘導を引き起こします
上述したように 3A4で代謝される薬物は数多くあるので
そうした薬物とセント・ジョーンズ・ワートを併用する際には 
薬の効果が十分に得られないことがあり得るので注意が必要です

ss32


このように 異なる種類の薬物を併用することにより
特定のCYPの量や活性が変化してしまい

そのCYPにより代謝される薬物の効果が
強まったり 副作用が強く出たり
逆に弱まったり
することがあるので 注意が必要です


多くのお医者さんが薬物を処方するときに
1日量や副作用を必ず確認するのに参考にするバイブル的な
「今日の治療薬」という本には
CYP何某で代謝される薬との併用に注意
といった警告が 薬剤によっては記載されています

書き手も 既に他の薬を服用されている患者さんに
新しい薬を処方する際には 必ず確認するようにしています


ですから
既に薬物を服用されている方が 新しく別の薬物を服用される際には

主治医の先生にお薬手帳を見せて よく相談されることをお勧めします



2016.01.12更新

薬物性肝障害で見られる症状は
*全身症状  倦怠感 発熱 黄疸
*消化器症状 食欲不振 吐き気 おう吐 腹痛
*皮膚症状  発疹 じんましん かゆみ
などで
これらの症状が急に出現したり 持続したりすることがあります

dilisym2

発疹は比較的高頻度に見られますが その形態はさまざまで
薬物性肝障害に特徴的なものはありません


アレルギー性特異体質の薬物性肝障害は
*発熱(38~39℃)を認め 
*発疹・皮疹等が早期に現れ 次第に強くなる
*全身倦怠感 嘔気・嘔吐等の消化器症状がみられる
ことが特徴的で

肝内での胆汁うっ滞を起こしやすいため 
黄疸や皮膚掻痒感を認めることがあります

dilisym1


一方 中毒性や代謝性特異体質性の薬物性肝障害に
特徴的な症状はありません

また 何も症状がないこともあるので
服用開始後は定期的に肝機能検査を行うことが勧められます
特に新しく薬物を服用し始めたときは 注意が必要です


薬物を服用してから発症するまでの期間は
アレルギー性特異体質では 
中毒性や代謝性特異体質性に比べて比較的早いですが
服用開始後に活性代謝物と肝細胞成分との複合体に対するアレルギーを獲得し 
その結果として肝障害が生ずるので 服用後2~6 週で起こることが多い

たまたま以前に同じ薬を服用していて 既にアレルギーを獲得している場合は 
1 回のみの投与で すぐに症状が出る可能性もあります


中毒性や代謝性特異体質性はアレルギー性特異体質より長く
特に代謝性特異体質性では 数週から数か月と不定で長い傾向があり
90 日以降に発症がみられる場合も約20%あります


いずれにせよ 
新しい薬物を服用し始めてから上記のような症状を認めた場合は
薬物性肝障害の可能性を考えて すぐに受診することをお勧めします

dilisym3


薬物性肝障害の早期の対応策としては その薬物を飲まないことが大切ですが
血圧の薬などは勝手に中止すると危険ですので 
自己判断で服用を止める前に まずは早目に医師に相談してください

その際には
*服用している薬の種類
*服用開始から どのくらいの期間がたっているか
*症状の種類 程度
などについてまとめておかれると 診察がスムーズに運びます



また 肝臓のどの部位が障害されるかで臨床症状が異なります

dilisyoujyou4


肝臓には 
栄養素の分解・合成・貯蔵や 薬物や毒素の解毒といった
 さまざまな機能をはたす肝細胞
肝臓から腸管へ胆汁を流す胆管という管を形成する胆管細胞
の2種類の細胞が存在していますが

dilkishoujyou5

薬物性肝障害では
*肝細胞が障害されると 肝細胞障害型
*胆管細胞が障害されると 胆汁うっ滞型
の2種類のタイプの障害が生じます
dilishoujyou6

肝細胞障害型では 
AST ALTなどの肝機能検査値が上昇し
その程度がひどい場合は倦怠感などの症状を認めますが
軽度の場合は無症状であることが少なくありません

ですから 肝障害に気づかず起因薬物の服用を継続した場合は
肝障害が進行して 肝不全に陥ってしまうこともあります

そうしたことを防ぐためにも 繰り返しになりますが
新しく薬剤を服用し始めた場合は 
自覚症状がなくても 定期的に血液検査を行うべきです


一方 胆汁うっ滞型では
血液検査ではALP γGTPなどの検査値が上昇しますが
病態が進行してくると 黄疸が認められるようになります

だるさなどに加えて
白目が黄色い 尿の色が1日中紅茶のように濃い といった症状があったら
すぐにでも受診してください

dilishojyou7


薬物性肝障害は 疑うことが大切で
早期発見して 早目に原因薬物の服用を中止すれば 予後は良好です

逆に 発見が遅れて 肝障害や胆汁うっ滞がかなり進んでから見つかると
厳しい予後をとることになるリスクもあります

何度もしつこくて申し訳ありませんが
新しく薬剤を服用し始めた場合は たとえ自覚症状がなくても 
定期的に血液検査を行うことをお勧めしますし
今日ご説明したような症状が見られたら すぐに受診するようにしてください

 

 

2016.01.07更新

薬物性肝障害はその発症機序により 中毒性 体質性 に分けられます

<中毒性>

薬物自体またはその代謝産物が肝毒性を持つために生じるもので 
用量依存的
(少し飲んだだけでは症状が出ず たくさん飲んではじめて症状が出る) 
薬を飲んだ全ての人に肝障害が発生します

発症までに要する期間は 
後述するアレルギー性特異体質より長い傾向があります

有名なのが アセトアミノフェン・解熱消炎鎮痛薬によるDILIで
どんな人でも 大量に(規定量の10~20 倍以上を一度に)飲めば
高頻度に肝機能障害が出ますから
決められた用法・用量を守ることが重要です

このタイプは 予防できますし 診断も比較的容易です

dili3-1
<体質性>

厄介なのが体質性ですが
日常的にみられる薬物性肝障害の多くは ほとんどがこのタイプです

体質性は中毒性と異なり
一般的に用量依存性でないため 発症の予測は困難です

しかも服用後すぐに発症せずに
一定の期間が経過してから発症してくることもあるので 
余計にたちが悪い

しかし 原因となる薬物の服用を中止すれば 
比較的速やかに改善して 完全に治癒することが多いので 
的確な診断さえつけば安心です


体質性には
*アレルギー性特異体質
*代謝性特異体質
のふたつのタイプがあります


@アレルギー性特異体質による薬物性肝障害

薬剤を服用した人のアレルギー体質により生ずるもので
薬物性肝障害のなかで いちばん頻度が高い

薬物の中間代謝産物の活性代謝物肝細胞の成分が結合した物質に対し
アレルギー反応が起こり 肝細胞が壊れて肝障害が起きます

非常に多くの薬物が原因になり得ます

飲んだ量に関係なく症状が出て
服用後数時間といった早い時期の発疹で始まるなど 
反応が急速な場合もありますが

多くの場合は 薬物服用後1~8 週間で発症します

他の人が服用しても何も問題ない薬でも 
別の人では少量でも かゆみ 発疹 じんま疹 肝機能障害
などが出ることがあり
薬を飲む前に予測することは困難です

別の薬を飲んでアレルギーが出たことがあったり
喘息やじんま疹などアレルギー体質がある方に
起こりやすい傾向があります

薬物の服用中止により 急速に改善するのが特徴です


@代謝性特異体質による薬物性肝障害

こちら
は アレルギー性より診断が困難です

薬物代謝関連酵素に特殊な遺伝的素因がある人に起こる肝障害で
長期に及ぶ薬物投与の間に 薬物代謝異常が起こり 
肝障害作用を持つ中間代謝産物が蓄積することで肝障害が生じる場合に
生ずると考えられています

原因となる薬物代謝関連酵素としては
前回説明した薬物代謝の第一段階(第1相)で働く
シトクロームP450(CYP)2A6 2D6 2C19
第1相で生じた毒性活性代謝物の解毒に関わるGSTなどがあり

これらの酵素の遺伝子多型により機能が変化し
それにより 特殊な遺伝的素因が生じるとされています

このタイプは 発熱 好酸球増多などのアレルギー症状を欠き
薬によっては6ヶ月以上(なかには2年以上)服用を続けた後に
発症することもあるので
なかなか診断されず 原因不明の肝障害として扱われることもあります

代表的な起因薬物としては
イソニアジド(抗結核薬) フルタミド(抗アンドロゲン薬) 
バルプロ酸(抗うつ薬)などがありますが
いかなる薬物でも起こり得るので注意が必要です

代謝性特異体質による薬物性肝障害は診断が困難ですが
上記の薬物代謝関連酵素の遺伝子多型解析などにより 
将来は発症しやすい体質の人の予測が可能になるかもしれません


このように 
薬物性肝障害は発症機序により大きく3つのタイプに分けられますが
各タイプによって 薬剤服用から発症に至る期間や臨床症状が異なります

次回はそうした点について説明します



2016.01.06更新

薬物性肝障害について知るには
肝臓で薬がどのように代謝されるかを 理解する必要があります

薬物のほとんどが肝臓で代謝されるので 薬物性肝障害は起こりやすい

dili2-1
肝臓での薬物代謝は 2段階に分かれます

第一段階(第1相)では
薬物は肝臓に存在する薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP)により代謝され
活性代謝物が生成されます

あとで詳しく解説しますが 
この活性代謝物が 肝障害を引き起こす 体にとって有害な物質です

ですから 肝臓には活性代謝物を分解する仕組みが備わっています

それが第二段階(第2相)
第1相で生成された活性代謝物 肝臓内の解毒機構により処理されて
水に溶ける形になり 尿中や胆汁中に排泄されます

解毒は抱合反応と呼ばれ
活性代謝物に硫酸 酢酸 グルタチオン グルクロン酸などの
内因性の物質が付加・抱合され 排泄されやすくなります


dili2-2


さて 繰り返しになりますが
実際に肝障害を起こすのは 第1相で生成された 活性代謝物 です


活性代謝物は 何種類かありますが 代表的なものは
*酸化的代謝で生ずる求電子物質 
*還元的代謝で生ずるフリーラジカル代謝物
です

dili22

求電子物質
肝細胞内のタンパク質
システイン残基のSH基 リジン残基のNH2基などに共有結合して 
障害を与えます
またDNAにも結合して変異を起こさせます

フリーラジカル代謝物
活性酸素(ROS)により 肝細胞の膜の脂質過酸化反応を惹起して
障害を与えます

これらの活性代謝物は 
主に細胞内のミトコンドリアを痛めつけるため 
肝細胞が機能しなくなり 肝障害が起きてしまいます

活性酸素などによるミトコンドリアの障害は
老化にもつながる重要な現象なので 改めて詳しく解説します
 


dili2-3

さて 薬物を過剰に服用して 第1相で活性代謝物が過剰に生成されたり

次回に説明する代謝性特異体質のため 薬物代謝酵素の働きに異常があり
第2相の解毒機構で活性代謝物が適切に処理されない
肝細胞内に有害な活性代謝物が残存してしまいます

そして 過剰な活性代謝物が 薬物性肝障害を起こすわけです


薬物性肝障害が生じるメカニズムを 
なんとなくイメージしていただくことができましたか?

こうしたことを理解したうえで 
次回は薬物性肝障害のタイプと発症機序について説明します



2016.01.05更新

肝障害の原因としていちばん有名なのは 
なんといってもB型 C型肝炎ウイルスですが

最近は脂肪肝から慢性肝炎や肝硬変に進展し得るNASH(脂肪性肝炎)
患者さんの数も増えて注目されています

NASHに関してはいずれ詳しく説明しますが

意外に盲点なのが 薬物性肝障害
患者さんの数はそれほど多いわけではありませんが 少なくもない

ウイルスも陰性 お酒も飲まない そんなに太られてもいない
それでも 肝機能の数値がかんばしくない、、、

そんな患者さんを診たときに 
肝臓専門医は 必ず薬物性肝障害を思い浮かべなければなりません

お薬を飲むことで 肝臓が痛んでしまう病態で
医療機関で処方される薬物だけでなく
最近は健康食品やサプリメントが原因で 
薬物性肝障害が起きるケースが増えています

そうした注意を喚起する目的で 
東京都医師会ではこんなチラシを作製しており
当院の待合室にもあるので 気づかれた方もおられるかもしれません

dili1-1

ちなみに業界では 
薬物性肝障害のことを ディリイ と呼びます

Drug-Induced Liver Injury の頭文字をとって DILI 
なんとなく可愛いでしょう?(笑)

dili1-2


さて このDILIですが
薬の多くは肝臓で代謝されるため 
肝臓内には さまざまな薬剤の代謝産物が出現します

dili1-3


そのため他の臓器に比べて肝臓が障害を受けやすい

基本的に どんな薬物でも肝障害を起こす可能性があります

そして あとで詳しく説明しますが 
アレルギーなどの特異体質が原因で起こることが多いので
同じ薬物を服用しても 
人によって 障害が起こることもあれは 起こらないこともある

要するに発症を予見することが不可能なわけで 
そういう意味ではかなり厄介です


薬物性肝障害を起こす薬物として代表的なのが
解熱消炎鎮痛薬 抗がん剤 抗真菌薬 漢方薬などで
市販の解熱消炎鎮痛薬 総合感冒薬のような医薬品で
みられることもあります

以前は抗生物質 解熱・鎮痛薬によるものが多かったのですが
最近は抗生物質が減少していて 
解熱・鎮痛薬が10%ほどで いちばん多い

最近のトレンドとして注目すべきなのが 最初に記したように
健康食品 サプリメント 漢方薬による肝障害が増加中なことで
健康食品やサプリが10% 漢方薬が7%と 増えています


多くは薬物を飲み始めてから
60 日以内に発症することが多いのですが
90 日以降の発症も約20%でみられます

一時期 話題になったウコンによる肝障害は 
服用開始から肝障害出現までの期間が長いのが特徴でした

このように 
飲み始めてからすぐに調子が悪くなることもあれば
一定期間服用してから調子が悪くなることもあります

そうした場合 患者さんが原因として薬物を疑われないので 
受診された際に 薬を飲まれていたことを自己申告されません

特に 健康食品やサプリは 薬物として認識されていないことが多く 
見逃されてしまうことが多々あり得ます


また1 回だけの内服で発症することもあれば
2 年以上の継続投与で発症した例もありますから 
服薬期間の長短で 薬物性でないと判断することはできません


しばらく飲んでいても大丈夫だったからといって 安心できないこと
健康食品やサプリでも 肝障害が起き得ることに
注意していただきたいと思います

次回は薬物性肝障害の発症機序についてより詳しく理解するため
肝臓内で薬物がどのようにして代謝されるか説明します



entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら 高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら