左利き肝臓専門医ブログ

2017.10.27更新

当院には 糖尿病の患者さんが たくさん受診されており
基本となる食事療法 運動療法に加えて
飲み薬やインスリンの治療を受けておられる方も多くおられます

治療効果は人それぞれですが

糖尿病のコントロールの指標として 
採血時から2~3か月間前の血糖の動態を表す
HbA1cという血液検査項目が用いられ

jdoit01


その値の変化に 患者さんも医者も 一喜一憂します(笑)

「あれっ 今回は前回よりA1cが上がっちゃいましたね?」
「あ やっぱりそうでしたか
 油断して食べ過ぎて 体重が増えちゃったのですよ」

「おや 今回はA1cが良いですね!」
「頑張って1日1万歩 歩いたのですよ」
「よかった! 努力の成果が数字に出ましたね!」

こうした悲喜こもごものやりとりが 診察室で交わされますが

HbA1c を どれくらいにコントロールすべきなのでしょう?


jdoit02


基準値上限は 6.2(%)ですが
糖尿病の患者さんで そこまで改善するのは なかなか難しい

日本糖尿病学会の治療ガイドによると コントロール目標値は

*合併症予防のためには 7.0未満

*血糖正常化を目指す際は 6.0未満 

とされています

jdoit03


ですから HbA1cが6%代になっていれば まあ良いでしょう 
ということになりますが


そんな甘いことではダメだ! もっと厳しくしないと!


という趣旨の臨床研究論文が
一昨日 Lancet diabetes endocrinology という
世界的に有名な権威ある医学誌のオンライン版で発表されました

jdoit04



この臨床研究を行ったのは 東大の門脇先生をまとめ役とした
日本全国の81施設の医師・研究者からなるグループです


治療を行っている糖尿病患者さんが
心筋梗塞 脳梗塞などの合併症を起こさないようにするためには
治療中の血糖値 血圧 脂質の管理目標値を どのくらいに設定すべきか?

この疑問点を明らかにする目的で
全国81施設の2542人(男女比 6:4 年齢45~69歳)の患者さんを

*現行指針通りのコントロール目標値になるように治療した 従来群
 (HbA1c<6.9% 血圧<130/80mmHg LDL<120mg/dl)

*より厳しいコントロール目標値まで改善するように治療した 強化群
 (HbA1c<6.2% 血圧<120/75mmHg LDL<80mg/dl)

に分け(1271人ずつ)

2006年以降 平均8.5年間 経過観察を続けて
心筋梗塞や脳卒中などの合併症が起きる割合を比較しました


ちなみに 従来群と強化群の 治療の違いですが

強化群では
*インスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン または インスリン
*血圧降下剤のアンギオテンシン受容体拮抗薬
*LDL降下作用が強力なタイプのスタチン製剤
が それぞれ より高頻度に投与されていました


で 結果ですが

両群とも 治療により HbA1c 血圧 LDLはいずれも低下しましたが

改善の程度は 強化群(赤)の方が 従来群(青)より著明でした

jdoit06
jdoit07
jdoit08


糖尿病専門医さんによると

この折れ線グラフの左端の 最初の下がり具合が大切で
初期治療でしっかりとHbA1c値を改善させること
心血管系合併症の予防に重要なポイントだそうです


さて 心筋梗塞 脳卒中などの合併症の発症率を見ると

時間経過とともに増えてきますが
赤の強化群の方が 青の従来群よりも 低い傾向を認めます


jdoit09


さらに 合併症の種類別に検討すると

心筋梗塞 狭心症などの心血管系合併症の発症率は
赤の強化群の方が 青の従来群よりも 低い傾向を認めます

jdoit10


また 脳梗塞 脳出血などの脳血管系合併症の発症率は
赤の強化群の方が 青の従来群よりも
統計学的に有意に低いことが示されました

jdoit11



さらに 糖尿病の重大な合併症である 糖尿病性腎症 網膜症の発症率も
強化群では従来群より低く
腎症については 統計学的に有意な差があることが示されました

jdoit12



このように

治療目標値をより厳しく設定して 的確な治療を行うことで
重篤な合併症の発症を予防できることが 明らかにされたのです


糖尿病専門医さんの解説によりますと

治療目標値を厳しく設定することの効果は
過去に欧米からも報告されていましたが

今回の日本からの発表は
糖尿病や脂質異常症の新たな治療薬の効果も反映されているので
業界ではインパクトが強く

2019年に改訂予定の日本糖尿病学会の治療ガイドに
この厳しさが反映されるのではと推測されているようです


*HbA1cは 6.9 でなく 6.2

*LDLコレステロールは 120 でなく 80

*血圧は 130/80 でなく 120/75


実は書き手は 糖尿病の患者さんのHbA1cが7%を下回ると
たとえ6%の後半でも
患者さんと一緒に喜んでいましたが

これからは 6.2まで下がらないと 患者さんに笑顔を見せないようにします!

jdoit13

糖尿病の患者さん ご覚悟ください?(笑)


HbA1c 6.2 を目指して 一緒に頑張りましょう!


2017.08.30更新

インスリン分泌低下インスリン抵抗性により
血糖値が高い状態が続くと 細胞がダメージを受けてしまいます

こうした状態を 糖毒性 と呼びます

ins71


糖毒性は 糖尿病のコントロールが悪いときに起こりうる病態で

高血糖自体が

*β細胞のインスリン分泌能力を低下させ

GLUT4の活性を低下させてインスリン抵抗性を誘導し

更なる高血糖を招いて 悪循環を形成してしまいます


ins72



年単位で経過する高血糖状態の持続により惹起され
β細胞の減少・線維化 β細胞内の分泌顆粒の減少を起こし
インスリン分泌低下が起こります


その原因のひとつは β細胞内の酸化ストレスの亢進です

高血糖状態が持続すると 酸化ストレスが誘導されますが

ins73

β細胞には抗酸化物質が少なく 酸化ストレスに脆弱なうえ
活性酸素により損傷を受けたDNAの修復能も低いとされています

また 酸化ストレスは
インスリン遺伝子そのものの発現を低下させたり
β細胞のアポトーシスを誘導することが 明らかにされています



インクレチンGLP-1の低下も 糖毒性に関与します

インクレチンは β細胞上に存在する受容体に結合して
インスリン分泌促進 β細胞のアポトーシス抑制 β細胞増殖促進
などの機能を発揮しますが


ins74


糖尿病ではインクレチンの受容体が発現低下しているうえに
高血糖自体がインクレチン受容体発現を低下させている可能性があります



糖毒性には 小胞体ストレス応答 も関与します

小胞体
細胞内で造られるタンパク質の品質管理を行っている細胞内小器官ですが

ins75

高血糖状態が持続して β細胞でのインスリン合成が増加すると
小胞体でのタンパク質品質管理がインスリン新規産生に追いつかず
未成熟のインスリンが蓄積して 小胞体ストレス応答が生じます


ins76


この小胞体ストレス応答により
β細胞はアポトーシスを起こして死んでしまいます


ins77



小胞体の働きと 小胞体ストレスの病気への関与は
また 稿を改めて解説します 



さらに 高血糖状態が続くと
UDP-GlcNAcという物質が産生されますが

UDP-GlcNAcは タンパク質のセリン残基に結合してグリコシル化し
こうして糖化されたタンパク質はしばしば機能異常を呈し
β細胞の機能不全やインスリン抵抗性を惹起して 悪循環を誘導します



高血糖状態では
血中にIL-1β IL-6  TNFαなどの炎症性サイトカインが増加し
インスリン抵抗性 インスリン分泌低下 β細胞のアポトーシス誘導などに
関与するとされています



このように

糖毒性によりβ細胞の状態が悪化して悪循環が生じるので
糖毒性の解除が重要な治療戦略になります


その観点から注目されているのが
新たな糖尿病治療薬の SGLT-2阻害薬 です

腎臓の糸球体で濾過されたグルコースは 近位尿細管で再吸収されますが
その能動的再吸収にかかわるのがSGLT-2という分子で
SGLT-2により約90%のグルコースが再吸収されます

SGLT-2阻害薬は
このSGLT-2を阻害することにより グルコースの再吸収を抑制し
尿中にグルコースを排泄させて 高血糖を是正する薬です

ins78

インスリン分泌とは全く関係ない機序による血糖降下作用であることから
すみやかに糖毒性を解除できる可能性があり 注目されています

また SGLT-2阻害薬により
インスリン分泌能 インスリン抵抗性の改善が見られ
体重減少 脂質プロファイルの改善 尿酸値の低下も観察されています

ins79


当院でも 
糖毒性の存在が疑われるような患者さんには SGLT-2阻害剤を投与し
良好なコントロールが得られている方がたくさんおられます



2017.08.29更新

糖尿病の発症・進展には
インスリンの分泌低下インスリン抵抗性が関わっています


ins51


では インスリン抵抗性って なんでしょう? なんで起きるのでしょう?


<インスリン抵抗性とは?>

インスリン抵抗性


インスリンが 標的とする肝臓 筋肉 脂肪などの細胞に作用しない状態


ins52


インスリンが分泌されても働かないので
肝臓 筋肉などの細胞にグルコースが取り込まれず
血糖が下がらず

そのため 膵臓のβ細胞はさらに過剰にインスリンを分泌し
高インスリン血症になります

ins53


高インスリン血症では インスリン受容体が減少し
インスリン抵抗性がより一層増悪します


こうした悪循環を経て

やがてβ細胞は疲弊し インスリンを分泌しなくなってしまう

これが 糖尿病が進行した成れの果ての姿です


欧米の白人における2型糖尿病の大部分に強く関与していますが

日本人ではインスリン抵抗性がそれほどひどくない糖尿病もかなり存在し
インスリン分泌が減少しやすいことの方が
病態に関与すると考えられています


<生活習慣病とインスリン抵抗性>

インスリン抵抗性は 糖尿病だけでなく
高血圧 脂質異常症などの生活習慣病の背景に存在すると推察されています

インスリン抵抗性のために高インスリン血症になると

肝臓のVLDL産生増加をきたし 高中性脂肪血症をひきおこし
HDLが低下します

ins54


腎尿細管でのナトリウム再吸収が亢進し 水分貯留を引き起こし
高血圧になります


ins55


さらに 血管内皮細胞を増殖させ 動脈硬化症を発症させます

このように インスリン抵抗性は全身に悪影響を及ぼします


ins56



<インスリン抵抗性が起こる機序>

では インスリン抵抗性は なぜ起こるのでしょう?

それを理解するには
インスリンの作用により 細胞が血中のグルコースを取り込む機序
を知っておく必要があります


インスリンが 細胞膜に存在するインスリン受容体に結合すると
受容体の細胞質部分に結合しているチロシンキナーゼが活性化され
IRS-1という情報伝達分子のチロシンがリン酸化されます

そして IRS-1→PI3キナーゼ→PKB
細胞内で情報を伝達する分子が 次々と連鎖反応でリン酸化され
信号が伝達されます

ins57

情報伝達系のしんがりに位置するPKBが リン酸化されて活性化されると

細胞質に存在している 糖輸送体分子のGLUT4 が 細胞表面へ移動して
GLUT4がグルコースを血中から細胞内へ取り込みます

このようにして インスリンは
グルコースを細胞内に取り込ませるのです


ins58

そして インスリン濃度が低くなると
GLUT4は細胞膜から細胞質に戻っていき
グルコースは細胞内に取り込まれなくなります


ちなみに前回説明したように

運動は こうしたインスリンによる機序とは異なる機序により
GLUT4の細胞膜発現を誘導し 
筋肉細胞内へのグルコース取り込みを増加させます

これが 運動がインスリン抵抗性を改善させる機序のひとつです



さて 本題のインスリン抵抗性が起こる機序ですが

インスリン抵抗性は
肥満による脂肪細胞の肥大 異所性脂肪の存在が関与します

つまり 肥大した脂肪細胞が産生する物質
特に 悪玉アデイポカインとよばれる因子が

インスリン抵抗性を誘導するのです

ins59



その代表選手が 遊離脂肪酸

遊離脂肪酸は肝細胞や骨格筋細胞内に入ると
それぞれのIRS-1分子の適切なリン酸化を阻害してしまいます

そのため 上述した
グルコースを細胞内に取り込むためのGLUT4の細胞膜移動が起きなくなり
インスリンが存在していても 細胞内にグルコースを取り込めなくなります

これが インスリン抵抗性が起こる機序です


また 肥大化した脂肪細胞が分泌するTNF-α
インスリン抵抗性を誘導します

TNF-αは
インスリンによるIRS-1のチロシンリン酸化やPI3-キナーゼの活性化を抑制し
GLUT4を介する細胞内へのグルコース取り込みを抑制し
GLUT4の発現そのものも抑制します


このように 

インスリン抵抗性は
肥満により脂肪細胞が分泌する悪玉因子により誘導されるわけですから

肥満が改善されれば 当然 インスリン抵抗性も改善します


減量の大切さが 理論的に裏付けられるわけです


一方 善玉アディポカインアディポネクチン
インスリン受容体の感受性を向上させますが

脂肪細胞の肥大化により アディポネクチン分泌が低下してしまうので
インスリン抵抗性が進むことになります


ins60



少し長くなりましたが
インスリン抵抗性が起こってくるメカニズムを
ご理解いただけたでしょうか?


<インスリン抵抗性を改善させる薬剤>

インスリン抵抗性を改善するには
食事療法や運動療法による体脂肪や内臓脂肪の減少が最も効果的ですが

インスリン抵抗性を改善する作用がある薬剤もあります

*脂肪細胞の分化などに関わる転写因子のPPAR-γを活性化させる
 糖尿病治療薬のピオグリタゾン(商品名:アクトス)

ins61



血圧降下剤の
*アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
*ACE阻害剤
*長時間作用型Ca拮抗剤

などで

ins62

糖尿病の治療 糖尿病にともなう高血圧の治療に用いられています



2017.08.24更新

前回に引き続き インスリンの作用
特に脂肪組織への作用について説明します


インスリンは 脂肪組織に対して

*血中から脂肪細胞への グルコースの取り込み促進

*脂肪細胞内での グルコースから中性脂肪への合成促進

*脂肪細胞内での 中性脂肪の分解抑制

の3つの作用を行います

ins41


つまり

脂肪細胞内に中性脂肪を貯めやすくするわけで
インスリンが「太るホルモン」と呼ばれる所以です

ins42


このメカニズムを詳しく説明しましょう


<中性脂肪の代謝を仕切る2種類のリパーゼ>

まず 中性脂肪の代謝は
2種類のリパーゼ(LPL・HSL)と呼ばれる酵素によって行われます


@リポタンパク・リパーゼ(LPL)

血管内皮細胞の表面に存在し

カイロミクロンやVLDLに含まれるアポC-IIにより活性化され

血中の中性脂肪を 脂肪酸とグリセロールに分解し
分解で出来た遊離脂肪酸を脂肪細胞内に取り込ませやすくします


ins43



この作用により 血中の中性脂肪は下がり

脂肪細胞に取り込まれた脂肪酸とグリセロールは
中性脂肪に再合成されて 脂肪細胞内で貯蔵されます

この貯蔵された中性脂肪こそが 皮下脂肪や内臓脂肪の正体です


@ホルモン感受性リパーゼ(HSL)

アドレナリン ノルアドレナリンなどのホルモンの作用により
活性化する酵素で

LPLと異なり 脂肪細胞内に存在します

ホルモンで活性化されると
脂肪細胞内の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解し
血中に送り出すので 血中の中性脂肪は上がります

ins44




<インスリンのLPL HSLへの作用>

さて インスリンは

*LPLを活性化し
*HPLを抑制します

つまり
脂肪組織の血管内皮細胞のLPL活性を上昇させるので
脂肪細胞内に中性脂肪を貯めやすくし

ins45

脂肪組織のHPL活性を抑制するので
脂肪細胞内の中性脂肪分解が抑制されます

ins46


インスリンが太るホルモンなのは
こうした脂肪細胞のLPL HSLへの相反した作用により
脂肪細胞内に中性脂肪をためやすくするからです


ins47




また インスリンは

脂肪酸の合成を促進し 分解を抑制し
コレステロールの合成を促進します


このように 血糖値を的確に制御するインスリンも

脂質代謝に関しては
必ずしも優等生とは言えない立場にありますし

ins08

脂肪組織に中性脂肪を蓄えさせて 太らせてしまうホルモン

という一面もあるのです



2017.08.23更新

インスリンは 体内のさまざまな臓器の細胞に働きかけますが

主な作用の対象は

*肝臓

*骨格筋

*脂肪組織 

です


ins21

それぞれに対する インスリンの作用の仕方を見ていきましょう


<肝臓への作用>

肝臓の 糖代謝に関する生理的な働きは

*食後にグルコースを取り込み グリコーゲンとして蓄える


ins22



ちなみに 食後には
肝臓の重量の8 %(大人で100~120 g)までの量のグリコーゲンを
蓄えることができます

*空腹時に 糖新生やグリコーゲン分解により
   グルコースを放出する(糖放出)

ins23


ことです


インスリンは 前者の作用を促進し 後者の作用を抑制します

血中のグルコースを取込み 
血中にグルコースを放出させないことにより
血糖値の維持をはかっているわけです



<骨格筋への作用>

@グルコースの取込み

骨格筋は 肝臓と同様に
食後にグルコースを取り込みグリコーゲンとして蓄えます


ins24



しかし肝臓と異なり
骨格筋中ではグリコーゲンは重量の1~2 %程度しか貯蔵できません

インスリンは このグルコースの取り込みを促進します


食物から吸収されたグルコースは
消化管から肝臓に直結する門脈という特殊な血管を経て
肝臓に取り込まれますが

門脈以外の普通の血管内のグルコースの多くは
肝臓よりも骨格筋に多く取り込まれます

ins25


ですから 骨格筋も血糖値の維持に大きく関与しているわけです


@運動によるグルコースの取込みの増強

ここで 骨格筋ならではのテーマである
運動と血糖の関係について解説します

運動すると
骨格筋内に溜めこまれていたグリコーゲンが分解され
エネルギー源として使われます

こうしてグリコーゲンが消費されると 消費された分を補充するために
骨格筋へのグルコースの取り込みが促進され
インスリン感受性も増強します

つまり 運動はインスリン感受性の増強につながります

ins26



一方 運動すると
骨格筋内ではエネルギーのATPが消費されるので
そのために AMPキナーゼ(AMPK)という酵素が活性化されます

AMPKは 細胞内でATPが減ると活性化される
いわば細胞内エネルギーセンサーのような物質ですが

糖質や脂質の代謝だけでなく
細胞増殖 アポトーシス 酸化ストレスなど
多くの生体反応に関わる重要な酵素です


ins27


で AMPKが活性化されると
GULT4という 血中のグルコースを細胞内に取り込む輸送体分子が
細胞内から細胞表面に移動します

ins28

GULT4とグルコースの取込みに関しては あとで詳しく説明しますが

肝臓の細胞等では
GULT4の細胞表面への移動は
インスリンの作用によって起こりますが

骨格筋では 運動すれば
インスリンがなくても GULT4が細胞表面に移動するので
骨格筋へのグルコースの取り込みが増大します

このように

骨格筋では運動により
インスリン非依存性のグルコース取込みが促進するのです

ins29



糖尿病では 骨格筋でもインスリンの作用が悪くなり
インスリン抵抗性の状態になって
グルコースの取り込みが低下し 血糖値が上昇してしまいますが

運動すればインスリン非依存性にグルコースの取り込みが増えるので
その結果としてインスリン抵抗性が改善されます

糖尿病で運動療法が勧められる理由は まさにここにあります


ちなみに アディポネクチン
運動しなくても AMPキナーゼを活性化して
インスリン抵抗性を改善します

アディポネクチンが善玉アディポカインである 大きな原因のひとつです

ins30


@アミノ酸の取込み

また インスリンは 骨格筋では
血中のグルコースだけでなく アミノ酸の取り込みも促進します

ins31



取込まれたアミノ酸はタンパク質の合成に使われ 筋肉量がアップします

筋トレ後に
プロテインのみならず 少量の糖分を摂取した方が良いのは
インスリンにより 筋肉へのアミノ酸取込みが促進されるからです

ins32


長くなったので 脂肪組織への作用は次回に持ち越します



2017.08.22更新

このブログを書き始めた頃は オムニバス形式で書いていて
今のように ひとつの病気について系統的に説明していなかったので

糖尿病に関する解説は 他の病気のそれのような まとまりがありません

そこで これまでのブログで足りないところを補う意味も込めて
糖尿病の病態の肝である インスリン について解説しようと思います

ins01


<インスリンは血糖値を下げる>

インスリン
膵臓のランゲルハンス島・β細胞でつくられるホルモンで

ins02

体内で唯一 血糖値を下げる働きをしているホルモンです

ins00



ちなみに

血糖値を上げるホルモンは 上表に示したように何種類もあるのに
なぜ下げるホルモンは インスリンだけなのか?

これは 以前もご説明した
飢餓時代を生き抜いたご先祖様の体質によるものと推察されています

飢餓の状況では 血糖値を上げる状況は頻繁にあり
そのためバックアップ的な意味合いも兼ねて
上げるホルモンは何種類もありますが

当時は血糖値を下げないといけない状況は 滅多になかったでしょうから
下げるホルモンはインスリンだけで充分だった のかもしれません


さて

食後に血糖値が上がると β細胞がその状態をすばやくキャッチして
すぐにインスリンを分泌して血糖値を下げます


ins03


糖尿病の患者さんでは このインスリンの

*分泌が悪い
*分泌していても うまく働かない(インスリン抵抗性

のいずれか あるいは両方の状態にあるため

インスリンが血糖値を下げてくれないので さまざまな障害が生じてきます

ins04



<血糖を下げるメカニズム>

では インスリンは どのようにして血糖値を下げているのでしょう?


インスリンが細胞のインスリン受容体に働きかけると

その細胞は インスリンの作用により 糖を取り込むゲートが開いて
血中の糖(グルコース)を取込むようになります





ins05



こうした細胞への糖の取込みは
筋肉 肝臓 脂肪組織 などで起こります


ins05a


だから 血糖値が下がる


細胞内に取り込まれたグルコースは

解糖系から ミトコンドリアTCA回路 電子伝達系に供与され
エネルギー(ATP)産生の材料になります

ins06


インスリンが分泌されなかったり 抵抗性で働かないと
細胞がグルコースを取込んでエネルギーを作ることができません

糖尿病の患者さんがだるかったりするのは そのせいです


そもそも ヒトが食事で炭水化物を摂取すると
小腸でグルコースに分解され 大量のグルコースが吸収され
血糖値が上がります

グルコースは
インスリンの作用により細胞内に取り込まれて
エネルギー産生の原料として使われますが

インスリンが働かず細胞内に取り込まれないと
血糖値が高いままで維持されます

この高血糖状態が 細胞に悪さをします

グルコースのアルデヒド基の反応性の高さのため
体内のタンパク質と反応して糖化反応を起こし
細胞にダメージを与えるのです


ins11

だからこそ インスリンにより
血糖値が高くならないように制御されているのです

高血糖状態の怖さについては 稿を改めて説明します



<インスリンは中性脂肪を貯めこむ>

一方で インスリンは

肝臓 筋肉 脂肪組織などに糖を取り込ませて
グリコーゲン 中性脂肪などの
細胞内貯蔵栄養物質の新生を促進します

細胞内にエネルギー源となる物質を備蓄させるわけです

ins07


エネルギー産生に利用されなかった余分なグルコースは
インスリンの作用により

肝臓や骨格筋内で グリコーゲンに変換されて貯蔵されたり
脂肪組織内で 中性脂肪として備蓄されます

インスリンが肥満を招くホルモンと呼ばれる所為です

ins08



<糖新生による血糖値の上昇を抑える>

また 血糖値が低下すると
肝臓内のグリコーゲンはグルコースに分解されて 血中に放出されます

この現象を 糖新生 と呼びますが


ins09


血糖値が上がりインスリンが分泌されると 糖新生が抑制されます


つまり インスリンは
必要以上の糖新生により血糖値が上昇しないよう制御しているのです

ins10



インスリンが さまざまな機序により
血糖値の恒常性維持に関わっていることを
イメージしていただけたでしょうか?

次回は インスリンの作用について もう少し詳しく説明します



2016.05.12更新

最近の中央区は 人口増加率が東京23区で一番高く
特に30~40歳代の若い人口が増えている
そうですが

gdm1


当院に来院される患者さんを見ていても 
ベビーカーを押して来院されるお母さんも多いので
このデータは納得できます


今日は そんなお母さんや 
これからお母さんになろうとしている方に参考になる
妊娠糖尿病の解説をします


@妊娠したお母さんが糖尿病の場合は 糖尿病が妊娠に及ぼす影響が心配です

お母さんへの影響ですが
妊娠初期の血糖コントロールが不良の場合 流産率が高くなると言われており

赤ちゃんへの影響としては
妊娠初期にお母さんの血糖が高値だと 赤ちゃんの先天奇形の発生が高率となり

妊娠中期 後期にお母さんの血糖が高値だと
巨大児 新生児低血糖症 
高ビリルビン血症 低カルシウム血症 呼吸窮迫症候群 多血症
などが起こりやすくなることが示されています


gdm2

ですから 専門医による適切な治療が必要ですが


@妊娠時にホンモノの糖尿病ではなくても
 妊娠経過中に 糖尿病に近い状態になることがあります

これを 妊娠糖尿病 といいます

gdm3

妊娠時に診断されたホンモノの糖尿病は含まれず

妊娠中にはじめて発見または発症した 糖尿病に至っていない糖代謝異常
のことを指します

*妊娠初期の血糖値が100mg/dl以上の場合
*妊娠24~28週の血糖値が100mg/dl以上の場合
妊娠糖尿病と診断されます


妊娠糖尿病の頻度は 約10%とされています

意外に高率ですね!


妊娠糖尿病になりやすいリスク因子としては

*妊娠前のお母さんが肥満であること
(非肥満者に比べ BMIが25~29.9だと2倍 30~34.9だと3倍のリスク)
*妊娠初期の空腹時血糖値が高いこと
(<75mg/dlに比べ 100~105mg/dlでは12倍のリスク)
*妊娠糖尿病歴がある
*妊娠中に過度の体重増加がある
*糖尿病の家族歴がある
*巨大児の出産歴がある
*高齢出産

などがあげられます

gdm4


妊娠糖尿病と診断された場合
本格的な糖尿病にならないように 糖尿病専門医に食事や運動について
相談していただく必要がありますが


妊娠糖尿病でいちばん問題になっているのが 
無事に出産したあとのことです

というのも

妊娠糖尿病だった妊婦さんは
その後 かなり高い確率でホンモノの糖尿病や生活習慣病になることが

最近の研究で明らかにされてきたのです


たとえば 糖尿病の発症に関しては

妊娠糖尿病だった妊婦さんは そうでない妊婦さんに比べ

7倍の発症リスクがあり

gdm5


産後5年の調査では 
正常血糖の方の発症率は1%なのに
妊娠糖尿病だった妊婦さんは20%にも達するという報告もあります


また アメリカの産後3年の検討では
妊娠糖尿病の妊婦さんは そうでない妊婦さんと比べて

生活習慣病に 約4倍なりやすく 
糖尿病の原因となるインスリン抵抗性には 約3倍なりやすい

とされています


つまり
妊娠中に妊娠糖尿病と診断された方は
たとえ妊娠後に血糖値が正常化していても 
数年以内に糖尿病を発症するリスクが高いので

注意して経過観察する必要があるのです


しかし 残念ながら 妊娠糖尿病と診断された方で
出産後もきちんと経過観察されている方は60%あまりで
40%の方は放置されてしまっている との報告があります


女性は閉経を境にして 女性ホルモンの分泌が減り 
糖尿病や生活習慣病になりやすいことは既に説明しましたが

妊娠糖尿病だった方は 
それ以前に糖尿病を発症するリスクがあるのに
放置されている場合が多いのは とても心配なことです

特定健診が始まるのは40歳からですから
30歳代前半までに出産されて その際に妊娠糖尿病だった方は
40歳までに糖尿病を発症してしまう可能性があるので

経過観察をしていないと 発症が見落とされてしまう危険性があります

逆に 出産後も定期的に経過観察していれば
糖尿病や生活習慣病の発症を 早期に見つけることができ
閉経後のそれらの増悪に 早くから対処できます

ですから 

*妊娠経過中に妊娠糖尿病と診断された方
*糖尿病の家族歴がある方
*巨大児の出産歴がある方

などは

出産後は子育てに忙しくて大変だと思いますが
年に何回かは内科を受診されて 
糖尿病のチェックをされることが大切です


gdm6



お母さんたちに 是非お願いしたいと思いますし

当院も お母さんたちが糖尿病にならないよう 
尽力したいと思っています



 

2016.04.01更新

前回に引き続き
 
健康診断でD判定やE判定になっていなくても
糖尿病発症のリスクがある方がおられる 

という話をします


<血糖値が基準値内でも 安心できない?>

以前に隠れ糖尿病の話題を提供しましたが

アメリカでは「前糖尿病」という定義があり
空腹時血糖値が 100~125mg/dl
HbA1c値が 5.7~6.4%
というふたつの項目が定められています

いずれも基準値内なので 
健康診断の結果がこの値でも 糖尿病の注意は喚起されません

しかし 健康診断や人間ドックで 糖尿病とは診断されなかった方でも

上記のふたつの基準の 
片方だけ 両方ともあてはまる方は
いずれにも当てはまらない方に比べて
数年後の糖尿病発症リスクが高くなります

片方のみ当てはまる方(下グラフのBまたはC)は 6倍
両方ともあてはまる方(下グラフのD)は 32倍 

リスクが高まることが明らかにされました

dmrisk4


つまり 繰り返しになりますが

空腹時血糖値やHbA1c値が基準値内にあっても
基準値上限ギリギリにある場合は
その状態が長期間持続すると 糖尿病を発症するリスクが高い

ことになります


「隠れ糖尿病」の話題のときに
空腹時血糖が基準値内にあっても 食後高血糖の方は危険だと説明し
*空腹時血糖が126mg/dl未満でも HbA1cが5.8%を越えている
*HbA1cが基準値内でも 空腹時血糖が110mg/dlを越えている
方は 要注意と説明しましたが

本当に安心できるのは 
*空腹時血糖が100未満 
*A1cが5.6以下 
ということになりそうです


ご自身の健康診断や人間ドックの過去のデータを保存されている方は
糖尿病について これまでに指摘されたことはなくても
いちど 数年前の血糖値やHbA1c値をチェックされることをお勧めします


<健康な肥満者は存在するか?>

肥満ではどうしていけないかというと
肥満をベースにして 
高血圧 糖尿病などの生活習慣病が発症するからです

では 肥満でも生活習慣病を発症していなければ
それは「健康な肥満」で 良いのではないの?
という考え方が 特に欧米では幅を利かせているようです


そこで メタボリックシンドロームの基準
(高血圧 高トリグリセライド血症 低HDL血症 空腹時血糖異常
 のうち ふたつ以上を有する)
を用いて

*肥満だが メタボではない人 (健康な肥満者 下図のMH-O)
*肥満でなく メタボでもない人 (非肥満者 下図のMH-NW)

が 2年後にどうなったか検討すると

メタボになる人の割合は 非肥満者に比べ 健康な肥満者では
倍以上も多くて20%にも達する ことが明らかになりました

下の棒グラフで 
いちばん左のグループのメタボでない非肥満者(MH-NW)では
2年後にメタボになる人(黒い棒:MA-NW MA-O)は増えていませんが

左から2番目のグループのメタボでない健康な肥満者(MH-O)では
2年後にメタボになる人(黒い棒)が増えているのがわかります


dmrisk6

また 糖尿病の発症を調べてみると

健康な肥満者は 非肥満者に比べて 発症リスクが2.7倍も高く

また 最初は非肥満者でも 
調査した2年のあいだに健康な肥満者になった方は
非肥満を維持している方と比べて 発症リスクが2.0倍高いこと

が 明らかになりました

一方 最初は健康な肥満者でも
2年の間に肥満が解消できた方は 解消できなかった方に比べ
発症リスクは 半分近くに減少すること

も 明らかになりました

dmrisk5

つまり メタボでない健康な肥満者でも
2年後には メタボになるリスクも 糖尿病を発症するリスクも
非肥満者に比べて高く

やはり 肥満そのものがリスク要因であることが再確認されました

もともと日本人は欧米人と異なり
それほど太っていなくても糖尿病を発症しやすいので
太ると余計に発症しやすくなるということでしょう


興味深いのは 健康な肥満者で糖尿病を発症する人は
脂肪肝を合併している人が多いようで
糖尿病と脂肪肝の縁は 浅からぬものがあるようです


以上 前回と今回のお話をまとめると

*若い頃に比べて体重が急激に増えたことがあるとマズイ

*BMI値 血糖値 HbA1c値 が基準値内にあっても 
 基準値内で高目の状態が持続するとマズイ

*健康な肥満という状態は 長続きしない

ということが はっきりしました


たとえ これまでに糖尿病の指摘を受けたことがない方でも
ご自分の過去の健診やドックの結果を振り返って 
その推移を検討してみることをお勧めします

特に ご両親や兄弟姉妹などの親族に糖尿病の方がおられる場合
残念ながら そうでない方に比べて 糖尿病を発症しやすいので
是非 過去のデータの推移と現在の値を比較検討してみてください

そして もし心配な場合は相談にいらしてください
糖尿病を発症しないですむように 早目に対策を立てていきましょう



2016.03.31更新

当院には 
健康診断で 糖尿病に関して要治療とか要精密検査と指摘され
心配になって受診される方が多いのですが

先日読んだ日本内科学会誌(105巻3号 P383 2016)に
「たとえ血糖値やHbA1c値が正常範囲内でも 安心できない方がおられる」
という趣旨の総説が出ていたので ご紹介します

この総説は 健診や人間ドックなどで得られた大規模なデータや
過去に発表された膨大な論文データを吟味して
どのような方が糖尿病発症に注意しなければならないか をまとめています


<どの時期にどれだけ体重が増加すると 糖尿病を発症しやすいか?>

まだ糖尿病を発症していないけれど 最近太ってきたので心配
という理由で相談にこられる方は少なくありません

よく 若い頃の体重より10Kg以上太ると心配 といった話を聞きますが
具体的に いつ頃 どれくらい太ると 
糖尿病発症リスクが高くなるのでしょう?

人間ドックで まだ糖尿病と診断されていない方を対象に

BMI値(肥満の指標:体重Kg/身長mの二乗 25以上が肥満)について
*現在
*20歳のとき
*人生で最大値
の各時点でのBMI値を調べ

BMIの変化量について
*20歳時から現在まで
*20歳時から最高体重時まで
*最高体重時から現在まで
の各期間の変化量を調べ

その後 糖尿病を発症された方は 発症しなかった方と比べて
どの値が いちばん違っていたかを調べると

人生で最大値のBMI値
 男性で26.1以上 女性で24.2以上になったことがあり
かつ
20歳時から最高体重時までのBMI値の変化量が 
 男性で4.6以上 女性で3.93以上ある方

が 糖尿病の発症リスクが高い
つまり 糖尿病になりやすい ことがわかりました

dmrisk1


以前 もとデブ・新デブといった話題を紹介したことがありますが
そのときに示唆したように

昔から太っていた方でも 
20歳時と比べてBMI値がそれほど増えていなければ
糖尿病発症リスクはあまり高くないし

逆に20歳時にそれほど肥満でなくても
その後にBMI値がかなり増加することがあれば
糖尿病の発症に注意しなければならない

と言えるようです


ただし 若い頃(18~24歳)に急に体重が増えた方は
中年以降に急に体重が増えた方と比べて
糖尿病発症リスクが高いというデータもあり

若い頃から体重増加には充分に気をつける必要があるようです


<糖尿病を発症する方の 発症前10年間の体重・血糖値の変化>

糖尿病を発症した方の 発症前の体重変化を振り返って検討すると

発症11年前にはBMIは23.1と基準値内にあるのに
その後 発症5年前までに徐々に上昇し続け
発症前の5年間は BMIが24前後の値を持続していました

一方 糖尿病を発症しない方は 
ずっと持続してBMIは23前後を維持し 変化はありませんでした

dmrisk2

上図の 青丸は糖尿病を発症した方 白丸は発症しなかった方です

つまり たとえBMI値が基準値内にあっても
軽度上昇が5年以上持続していると 
糖尿病発症リスクが高まることが示されました

BMIが基準値内にあるからといって 安心できないということです


血糖値(HbA1c値)に関しては

糖尿病を発症した方は 発症10年前から5.6%より高値を持続し
発症1年前に急上昇していたのに対し

発症しない方は 5.3%前後を維持し 
5.6%を越えることはありませんでした

dmrisk3

上図の 青丸は糖尿病を発症した方 白丸は発症しなかった方です

つまり 血糖値も体重と同様で
基準値内にあるからといって 
やや高目の方は 安心できないということです



これまでの人生で すごく太ったことがあり 
20歳時の体重といちばん太ったときの体重の差が大きい方は
糖尿病発症のリスクが大きい

そして

健診で体重や血糖値が基準値内にあっても
やや高目の値を 長期間持続している方は要注意

ということで 皆さん 大丈夫ですか?


次回もこの話題を続けます


2015.08.06更新

糖尿病を予防する食事スタイル

今日は「どんなものを食べると良いのか 悪いのか?」という具体的な話です


<赤身肉を多く食べる男性は要注意!>

これは意外でした

男性では肉類の摂取量が多い(100g/日以上)グループで 
糖尿病発症リスクが1.36倍に上昇し

特に赤身肉の摂取が多い人達はリスクがさらに上昇するそうです

akami

一方 コレステロールについては
男女ともに摂取量が多いグループ(約400mg/日以上)でも
糖尿病発症リスクは上昇しないという結果が得られました

コレステロール摂取量に関しては
今年2月にアメリカの食事栄養のガイドラインで摂取制限が撤廃されたように
摂取量の多さが問題なのではなく
その質が問題であることが明らかにされています
(これについては稿を改めて説明します)

ですから今回の結果もリーズナブルと考えられますが
赤身肉を食べすぎると糖尿病リスクが増えるというのは驚きでした
霜降り肉はダメだけど 脂身の少ない赤身ならOKだよ 
というのがトレンドですからね

お肉に多く含まれるヘム鉄 飽和脂肪酸 焦げた部分の糖化最終産物
酸化ストレスや炎症を引き起こし 
インスリン感受性や分泌に悪影響をもたらすのでは?
と推測されています

お肉に含まれるコレステロール以外の成分が悪さするというのは 
びっくりかもしれませんが
酸化ストレスが健康にとって大きな問題であることは間違いありません
(酸化ストレスについては いずれ詳しく説明します)

ただ この解釈はどうなのかな? 
議論の余地があるようにも思います


<魚を食べるとリスクが減る!>

魚に豊富に含まれる 
エイコサペンタエン酸(EPA) ドコサヘキサエン酸(DHA)
心筋梗塞や脳卒中の予防に役立つのは今や常識になりつつありますが

EPAやDHAによるインスリン分泌や抵抗性の改善も報告されています

それを裏付けるように今回の調査結果でも
男性では魚介類摂取が多いほど糖尿病発症リスクが低下する傾向がみられ
摂取量が最も少ない群に比べ 最も多い群ではリスクが約3割も低下し

sakana


特にアジ・イワシ・サンマ・サバなどの青魚 小魚が多いほど
低下することが明らかにされました

書き手は たまたま青魚が大好きなので 
これを書きながらよだれが出てきつつあります(笑)


<男性は野菜を食べましょう!>

野菜摂取がもっとも多いグループでは 
発症リスクが20%ほど低下することが明らかになりました

これも予想通りの結果ですね

葉野菜には 食後血糖値の上昇を抑える食物繊維に加え
インスリン感受性を高めるビタミンCやカロテノイドなどの
抗酸化ビタミンが多く含まれており
これらが糖尿病リスクを低下させると考えられています

またアブラナ科の野菜に含まれるイソチオシアネートには
抗酸化作用があります

特に肥満 喫煙習慣のある男性では
野菜効果が著明に認められるそうなので

yasai

メタボのお父さん 頑張って野菜を食べましょう!


<女性は大豆を食べましょう!>

糖尿病リスクの高い 肥満や閉経後の女性は 
大豆摂取が発症予防につながりそうです

大豆に含まれるイソフラボンインスリン抵抗性を改善するので
インスリン抵抗性が認められる肥満者の
糖尿病発症を予防する効果が期待できます

またつい先日ご説明したように 女性ホルモン(エストロゲン)
糖や脂質の代謝を調節して生活習慣病になるのを防ぎますが
エストロゲンと構造が似ているイソフラボンにも 
弱いながら同様の作用があると考えられます

es natto

実際に大豆を摂取していた女性では 
糖尿病発症リスクが最大で23%も低下していました

マダム 朝は納豆に豆腐と油揚げのお味噌汁ですよ!

natto gohan


以上まとめると 
肉より魚を多目に 野菜をたくさん 

やはり基本はそこですね!

目新しいことではありませんが
これまでに言われてきたことが正しいことが
10万人のデータで再確認されました

大切なのは こうした食生活のパターンを
日々の生活で習慣化することです

地道な努力に勝るものなしですから 頑張りましょう!

 

 

前へ

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら 高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら