左利き肝臓専門医ブログ

2018.09.27更新

ご先祖様から受け継いだ体質と
現代社会の生活環境のミスマッチから生まれ
世の人々を蝕んでいる生活習慣病

このディスエボリューションを どうしたら解決できるのでしょう?

繰り返しになりますが
ヒトの身体は 数百万年かけて作られた進化を引継いでいるので

*カロリーが豊富で 糖分 塩分 単糖類が多く
 食物繊維 ビタミンなどが少ない食事を摂っている

*体を動かさず 過度に快適で清潔な暮らしをしている

といった現代の生活環境には ほとんど適応できないのです


現代の環境の問題点は

*安価だが 食物繊維が少なく 糖質が多い食事が
 たとえ夜中でも 大量に摂取できる

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*身体活動が 著しく低下している

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の2点に尽きます


しかし 

既に確立した
便利で飽食な食生活や 動かないで済む生活習慣を変えるのは
お金も時間もかかるので難しい

たとえそれが 薬による治療より より効果的だとわかっていても、、、


さらに厄介なことに

生活習慣病は 中年になってから発症するので
進化の一番の促進因子である繁殖成功度には あまり影響しません

だから ヒトの身体に
生活習慣病を克服するような進化 自然選択が起こる必然性は
ないかもしれません

たとえ何百年待っても
進化 自然選択によるミスマッチ解消は 起きないかもしれない


一方で現代人は

*美味しい加工食品を食べたい 

*苦労を最小限にしたい 

*清潔でいたい

といった欲望に満ち溢れていて

そうした欲望が有害なものであると うすうす気がついていても
今の生活を楽しめる効果が大きいと判断すれば

合理的でなくても 欲求や快楽に身を任せ 許容して満喫してしまう


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快適さのあくなき欲求があり
安楽にしてくれるものは おしなべて良いものであると信じてしまう

ましてや 安楽な生活の健康への有害性は
時間がたたないと現れてこないので なかなか気がつかない

いったい どうすればいいのでしょう?


また 

ミスマッチ病の治療は
病気の原因を本当に治しているわけではなく 
異常値を改善しているだけです


糖尿病 高血圧 脂質異常症などを薬で治療している患者さんは

薬を止めることはできますか?

と よく聞かれますが

今 使われている薬は
病気の原因となる体質を根本的に治しているわけではありません

たとえば脂質異常症の治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害剤)は

*肝臓でのコレステロール合成反応に関わる酵素の働きを抑制して
 肝内コレステロール量を下げますが 
*体は ホルモン合成などに必要なコレステロール量を確保するため
 肝臓のLDLレセプター発現量を増やし 血中LDL-Cを肝内に引きこみ
*その結果として 血中LDL-C値を低下させています

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ですから 薬を止めれば血中LDL-C値は 再び増加してしまいます


但し ミスマッチの原因を解決できれば
つまり 生活習慣を改善することができれば
薬の量を減らしたり 止めることが出来る可能性はあります

この点は強調しておきたいところです


では 生活環境は どうすれば改善できるのか?

環境の変化 と 行動の変化 が必要ですが

前者は成し遂げるのが難しく 後者は順守するのが難しい

しかも 繰り返しになりますが
ヒトが本能的に好む 甘く 脂肪たっぷりの食物は
長い歴史の過程で それを切望するように進化したヒトが望むもので

ましてやヒトは快楽を求める厄介な生き物なので
その本能を乗り越えるのは至難の業です


さらに 体質を変えることはできません 

単一な遺伝子を作り変えることはできるようになっても
生活習慣病は複雑に絡んだ遺伝要因により起こってくるので
体質は容易には変えられません

最先端の生命科学技術によっても
自らの体質は 容易に変革できないのです

だから 環境 生活習慣を変えるしかないのです

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ダニエル先生は
ミスマッチを認識する知識を得るだけでは不充分で

環境を変化させるために必要で
基本的な衝動を乗り越えさせることができる
動機付け それを維持させる支えが必要だと主張されます

たとえば 政府による対策も重要だろうと指摘されます

*日常食べている食品の栄養情報の徹底した開示
*体育活動を充実させる
*諸悪の根源のジャンクフードの広告の規制

などなど

そうしたシステムの変化や社会啓蒙が 充実することが望まれますが

でも やっぱり
 
個人の危機意識の認識と 欲望の克己こそが
一番必要なのではないでしょうか?

そこがなんとか出来れば 少なくとも個人レベルでは なんとかなる

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そんな思いで患者さんたちと接していますが
正直なところ 現実は難しいと感じることも少なくなく、、、


うーん ミスマッチ病の克服 難しいですね

患者さんと一緒に悪戦苦闘していく日々が続きます

 

2018.09.26更新

人類の身体の進化を考えるうえで
農業革命と産業革命は とても大きな影響力があった

と ダニエル先生は論を展開します

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特に 農業革命
食べるもの 眠り方 人間関係などを 徹底的に変化させた

そして「銃・病原菌・鉄」の著者のジャレット・ダイアモンド氏は
農業は 諸悪の根源にして人類史上最大の過ち
と評したそうです

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ご先祖様が農業を始めたことによって
狩猟時代より多くの食物を得られるようになり

摂取カロリー量も増えたので 多くの子供も得られるようになり

定住して大家族を営めるようになり 人口爆発が起こったけれど

その分 必死に働かなくてはならなくなった

また 天災により 飢餓に直面する機会も増えたし
共同生活による社会的ストレスも増えた


このような環境的変化に身体の機能がついていけず
初期のミスマッチ病が生じてきました

それは 感染症 です

村や都市の発展により人口密度が増えたので
感染症が発生しやすくなった

結核 ハンセン病 梅毒 ペスト 天然痘 インフルエンザ
多くの感染症は 全て農業の開始とともに流行が始まったそうです

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そして 産業革命により さらに多くのミスマッチ病が起きてきた

幸いにして 細菌学や公衆衛生の発達等により
感染症は制御できるようになりましたが

今度は 別のタイプのミスマッチ病が発症してきます

生活習慣病のルーツが現れてくるのです


産業革命により 便利な世の中になると

身体活動量が劇的に減少し
座っている時間がどんどん長くなった

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そして 安価で高カロリーな工業食品が 登場してきた

脂肪 デンプン 糖 塩分が 安上がりに手に入るし
糖 菓子 油脂 炭酸飲料は安くなる

工業製品化食物は 糖 精製デンプン 飽和脂肪酸が多く
タンパク質が少なく 線維質が格段に少なく
ビタミン ミネラルがとても少ない

栄養的には貧しく カロリーが豊富なだけの食品の登場

食物線維が少なく 糖 脂肪 食塩が多い

そんなヒトが昔から好んでいた食物を
食品加工技術により 安価で大量に得られるようになったのです

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そして こうした加工食品は ヒトの消化器系機能を変質させました

消化に必要な負担が減り 血糖値が早く上がるようになったので
インスリンの早期大量分泌が起こるようになり
そこから 低血糖による空腹が起こり また食べる の悪循環

こうして カロリー摂取量が大幅に増加したのです


そして ヒトが罹る病気の種類が 大きく変わりました

栄養不良や感染症での死亡率は減少し 平均寿命は延長したけれど

肥満に関連した 非感染性慢性疾患が増加し始め
死亡率は低下したけれど 病気に罹っている人は増え続けている

こうした非感染性の慢性的な病気(NCDs)こそが
ミスマッチ病 まさに 生活習慣病 なのです

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そして 人々の不健康寿命が延びてきて
それにともない 医療費は莫大になり 国家財政を圧迫する事態


ミスマッチ病の原因である新しい環境要因は なかなか変えられません

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しかし ここで対処しないと
病気は予防されず さらに広がっていってしまう

これこそが 人類が直面する最大の難事のひとつだと

ダニエル先生は警鐘を鳴らされます


健康を増進する食べ物を食べること
もっと活発に体を動かすこと

人類は ミスマッチ病を克服することができるのでしょうか?

 

2018.09.25更新

夏休みも終わったので ブログもいつものスタイルに戻り
中断していたミスマッチ病の話を続けることにします


前回 紹介したように
倹約遺伝子を持ち 脂肪を蓄積しやすい体質となったヒトは
やがて狩猟生活に別れを告げ 農業を始めます

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では 農業の開始により 食はどう変化したのでしょう?

農民が食べていたものは
小麦 ライ麦 大麦 エンドウ豆 レンズ豆 ミルク チーズ
たまに 肉 季節の果物
といったものでした

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狩猟民族の食事内容に比べると
質と多様性を犠牲にして 量を優先するように変化しています

デンプン質は豊富ですが
食物繊維 タンパク質 ビタミン ミネラルは少ない

保存のために穀物を精製し始めたのも
食物繊維などが低下した原因のひとつです


困ったことに
こうした質の変化は 不健康を導くリスクが高い

農業により 安定した食物の供給が得られるようになりましたが

皮肉なことに それは
高カロリーで栄養の質が低い食事の提供になってしまいました

カロリーをとるか 栄養の質をとるか?

農民は 集団を維持し繁殖を維持するために
カロリーを優先する食事を選択せざるを得ませんでした

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こうした食内容の変化が
ミスマッチ病の発症 蔓延につながっていきます

食物繊維を除去したデンプン質の食事は 血糖を上昇させますが
それまで血糖上昇など経験したことがなかった消化器系は
大量の糖を急速に対処できる機能を備えていません

そこでインスリン産生を高める適応が生じます

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繰返しになりますが ご先祖様の進化を受継いでいるヒトの身体は
余剰エネルギーのほとんどを脂肪として貯蔵します

余分な糖質は インスリンの作用により脂肪として貯蔵されます

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また 糖が多いとインスリンが過剰分泌され
すぐに空腹になるので 食べる量が増えてしまいます


一方 食物繊維が欠乏すると 糖の吸収が急速になるので

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消化器系の対応が追い付かず
糖は全て脂肪に変換されてしまいます

脂肪は 一部は肝臓 筋肉で貯蔵されますが
それらの貯蔵能を上回った過剰分は
内臓脂肪をはじめとする 全身の脂肪細胞に貯蔵されます


その 内臓脂肪は 諸悪の根源であることが明らかにされてきました

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内臓脂肪は皮下脂肪に比べて

*脂肪の蓄積能が悪く 放出のスピードは速いので
 全身に遊離脂肪酸をまき散らす

悪玉アデイポカインを産生して
 肝臓や骨格筋などのインスリン抵抗性を誘導する

といった 悪しき性質を有しています

こんな内臓脂肪が増えるのが まさに生活習慣病の原因なのです


ちなみに内臓脂肪は 身体活動レベルを上げれば減少しますが
現代は昔に比べてはるかに運動量が減っています

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現代でミスマッチ病が増える理由を 再度 ご理解いただけたでしょうか?

 

2018.09.13更新

農業革命と産業革命により ヒトの生活環境 食環境は
食物に渇望する環境から飽食の環境へと 大きく変化しましたが

それ以前の700万年の歴史で
飢餓に備えるために栄養を蓄える体質を有していた人類は
新たな飽食な環境に対応できず ミスマッチ病が蔓延し始めます


では 具体的に食はどのように変化し
それが身体にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?


最初の類人猿は 果実で腹を満たしていました

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しかし 気候変動 乾燥化により アフリカでは森林が減ってきて
豊富な果物がなくなり 食事環境が変化しました

森林を出て 草原で生活するようになり
果物以外の木や植物の葉や茎も 食べないといけなくなったのです

そして400万年前に
木の茎などの 固い繊維質の食物でも食べられるヒトの祖先が
自然選択で生き残るようになりました

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やがて人々が狩猟を行うようになると
植物が食事の大半になり 狩猟により肉もたまに食べるようになりました


ここで 腸と脳のトレードオフ という現象が起こります

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腸が小さくなり その代わりに 脳が大きくなっていったのです

狩猟時代になり肉を食べるようになると
それまで繊維の多い食物の消化のため大きな負担を強いられていた
腸の役割が減少し
エネルギーが腸でなく脳で使用されるようになります

こうして

腸の代わりに 脳が大きくなり始めたのです

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興味深いことに
そうした変化にともない
ヒトの身体は 多量の脂肪を貯めこめる身体になっていくのです

そうなった原因は こういうことです

脂肪はグラム当たりのエネルギーが他の栄養素より高いので
脂肪の蓄積は エネルギーを溜めるのに最も効率的な方法ですが



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発達し始めた脳が 常に多量のエネルギーを要求するので
身体は脂肪を豊富に蓄える必要性が出てきたのです


しかし狩猟で動物を仕留めることはそう頻繁ではないので
肉や脂肪が得られる機会はそんなに多くありません

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ですから

脂肪を得られるときは
それを体内に出来るだけたくさん蓄えることができるように

ヒトの身体は 進化 適応し始めたのです

倹約遺伝子が選択されました



また 脂肪の蓄積で体内のエネルギーが豊富な状況になると
脳が発達するだけでなく 繁殖にも有利になります

繁殖は 進化の方向性を規定する一番重要なことですから
そこに有利に働く 脂肪を溜めこむような変化は
まさに自然選択される進化にほかなりません


他の動物より優位に立てる脳の発達を促し
最も重要な繁殖の面でも役に立つ

そんな 脂肪をできるだけ多く貯蔵できる身体になるように
倹約遺伝子が石器時代に選択されたわけです


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しかし そのことが 現代では仇になってくるのです

 

2018.09.12更新

ミスマッチ病の話を続けます


ヒトの身体は

食物が少なく そのため走り回って食物を探す という
現在とは異なる環境で 飢餓に備えることができるように進化した ために

現在の飽食な食事や運動不足の生活には うまく適応できない

端的に言うと 肥満になってしまう のです!

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では ご先祖様が成し遂げた進化を引き継いだ私たちの身体は
具体的には どんな身体なのでしょう?

それは なんと

糖質などのエネルギーの高い食物を欲しがり
身体活動に必要なエネルギーでは消費しきれない余分なカロリーを
効率よく脂肪として蓄積する身体


なのです!

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いつ襲ってくるかもしれない飢餓環境に対応するには
当然の進化なのですが

しかし

このような身体が 現代の飽食 運動不足な環境で生活すると
ブクブクと太ってしまい
糖尿病などの生活習慣病が蔓延している

言われてみれば ごもっともです(苦笑)

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こうした事実から ミスマッチ病 というコンセプトが生まれてきます

狩猟民族は
定期的に食料不足に直面し 活発に身体を動かさないといけなかったから

エネルギー豊富な食物を切望し
休めるときには休もうとする自然選択が働いて
今の身体が出来上がったので

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ドーナツなどの高カロリーで甘いものを食べたがり
休日には運動せずのは家で寝転がっていたいのは

ヒトの原始的な衝動なのである

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しかし それらは 
かつては意義がある適応であったけれど

現代では むしろデメリットになってしまっている

この150年あまりで
食生活を含めた生活環境は 大きく変化したけれど
身体の遺伝的 解剖学的 生理的な本質はなんら変わっていない

そこに 現代人の不幸の原因があるのです

まさに 生活習慣病はミスマッチ病 というわけです

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では どうしてヒトの身体は
新しい生活環境に適応して進化していないのでしょう?

それは 近年の生活環境の変化が あまりにも急速すぎたので
ヒトの身体に 環境の変化に対応するような自然選択が起こるには
全く時間が足りていないのです


ヒトの身体は250万年の長い時間をかけて進化してきたけれど
飽食で運動不足のライフスタイルになってから まだ100年も経っていない

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つまり

私たちの祖先であるホモサピエンスが登場して以降
重要な生物学的進化は 実のところ全く起こっていないのです

現代は 生活環境の変化といった文化的進化の方が
自然選択よりも強力な力となっているけれど
身体は そうした劇的な環境変化に対応できず変化できていない

なぜなら

自然選択は 何百世代も経過しないと劇的な効果を表さないからです


なるほど
文化的環境の変化のスピードに
進化のスピードがついていけていないのですね

仮に 現代の生活環境に適応するような身体の自然選択が始まっていても
それはまだ始まったばかりで
その成果が出るのは 何百万年も先のことになる

ということでしょうか?


こうした現状から

ディスエボリューション というコンセプトが生まれてきます

ミスマッチ病の原因である 新たな生活環境を変化させるのは現実的に難しい

飽食で運動不足となる環境は 実は便利で有難いものだけに
それが病の原因になると解っていても
是正できず次世代に伝えてしまい 次世代も同じ病気に悩む

という悪循環が生じてしまう

先祖から受継いだ身体
新たに築かれた昔とは異なる生活環境
その便利な生活環境を選んでしまう判断

それらの相互作用により
危険なフィードバックループが形成されてしまう状況を
ダニエル先生は「ディスエボリューション」と呼びました

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現代社会では
生物学的進化より 文化的進化の方が はるかに大きな影響を与えている

文化的進化では
人間が作りだした新たな考えや行動を 子供や周囲の人々に伝達するが

そうした新しい行動である
過度に豊富な食物環境と身体活動の少なさが 体の具合を悪くさせている

でも 身体はそうした状況に対応して進化できていない

それは 生物学的進化より 文化的進化の方が
はるかにスピードが速いから

まさに ディスエボリューションが生み出す ミスマッチ病の世界


でも 進化を促す原動力が 子孫を増やすことなら

現代社会でミスマッチ病が蔓延していても 子孫は増やせているわけだから
身体が進化する必要はないのでは?

天邪鬼な書き手は そんなふうにも思えるのですが どうなのでしょう?(笑)

 

2018.09.11更新

現代人に生活習慣病が多いのは ご先祖さまから引き継いだ体質のためだ

というお話を 糖尿病 高血圧 について説明しました


こうした考え方は ミスマッチ病 という
ハーバードで人類進化生物学を教えるダニエル・E・リーバーマンさんが
新たに提唱しているコンセプトに依っています

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人類の祖先が 何百万年も前から続く進化により形成してきた体質が
私たちが生活している現代社会の生活環境と合っていない 

まさに ミスマッチが生じているから
さまざまな生活習慣病が発症し 蔓延している

という考え方です

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人体 600万年史  科学が明かす進化・健康・疾病

というハヤカワノベルズに その内容は詳しく書かれていますが
とても興味深いので その内容を紹介しようと思います

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まずダニエル先生は

現代は 予防可能な 非感染性の慢性疾患が 世を覆っている

と指摘します


肥満 糖尿病 心臓病 骨粗鬆症 脳卒中 アレルギー 腎臓病 

認知症  うつ病 不安障害 不眠症 

などなど

その多くは 生活習慣病 と呼ばれている病気です


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どうして そうした事態に至ったのか?

ダニエル先生は その理由を説明するために
ヒトの身体における 進化と自然選択 について説明されます


ヒトの身体には 進化の歴史という 重要な物語がある

進化により
ヒトの身体が どうして今のようなシステムになったかを説明でき

そこから
身体は 何に適応していて 何に適応できていないのか? を
明らかにすることができる


では 進化とは何か?

進化は 人が健康になることを目的としてなされたのではなく

出来るだけ多くの子供を持てるよう
自然選択の作用を受け 適応したこと で

そうした進化が 身体の中に適応を蓄積してきた

私たちの今の身体は
何百万年もの間に生じた適応の寄せ集めなのである

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えっ 自然選択って なに?

自然選択は ダーウィンが「種の起源」で訴えた 進化の概念ですが

生存と繁殖の確率を高めてくれる遺伝的な変化を起こした者が
生き残る現象 

です

遺伝変化により首が長くなったキリンは 高い木の葉も食べられたので
繁殖できて生き残ったけれど

首が短いままのキリンは 高い木の葉は食べられないので
子孫を増やすことができず絶滅してしまった

これが 自然選択


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私たちのご先祖様の身体は
大昔から 狩猟採取民として生存し繁殖するように
適応させられてきた

その結果である身体を 今のヒトが引き継いでいるわけですが

ここで重要なことは

そうした適応は
現代に生きるヒトが考えるような
肉体的 精神的な幸せを促進するような進化ではない

ということで

残念なことに
何を食べ どれだけ運動するかについて
合理的な選択ができるようには 進化していないのだ

と 論が進みます

逆に
そのような進化の産物であるひとの体と
現代の食生活や生活環境などがマッチしていないから
生活習慣病のような病気が生じてきてしまう

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うーん 書き手はこれまで
進化について考えたことなんて あまりなかったし

ましてや 医学の視点から 人類の進化について俯瞰するなんて
全く思いもよらなかった視点なので ビックリしました


でも そうした話を聞くと

ダニエル先生が

進化医学という研究分野は
なぜその病気が生じるのかを説明するのに役立つのだ

と説かれるのが 納得できるような気がしてきます

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そして ミスマッチ病 ディスエボリューション

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というコンセプトが生まれてきます

 

2018.09.06更新

CKDの治療の柱のひとつが 日々の食事療法です

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<エネルギー摂取量>


エネルギーが多すぎると CKDの原因となる肥満が助長され
糖尿病などのリスクも増えます

一方 少なすぎると エネルギー維持のために筋肉が壊され
血中の尿素窒素などの老廃物が増え CKDが悪くなってしまいます


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多すぎず 少なすぎず

体重の変化と相談しながら 適切な量のエネルギーを摂取することが肝心です


<食塩制限>

食塩を摂りすぎると 血圧が上がり CKDが悪くなりますから
塩分の制限は とても大切です

高血圧と塩分摂取の項で説明しましたが
日本人の1日の塩分摂取量は10gと多いのですが

CKDでは1日6g未満を目標とします

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食塩制限すると 降圧薬の効きが良くなるという利点もあります


但し 極端な制限で 1日3g未満にすると
低ナトリウム血症になって危険なので 注意が必要です


具体的な対策としては

*めん類の 汁 つゆは飲まない
*醤油は かけずに つけるようにする
*汁ものは 具だくさんにして 飲み干さない
*味付けの濃いおかずを減らす
*加工食品を食べ過ぎない
*ラーメン 牛丼 親子丼などは それだけで7gいくので要注意
*梅干し 漬物 干物・シラス・魚卵系を食べ過ぎない

といったことがあげられます

塩分の多い食材やメニューを避けるとともに
醤油などの調味料の使い方に注意することが大切です

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<タンパク質制限>

タンパク質が分解されると 尿素などの老廃物ができますが
腎機能が低下していると排泄されず 血中値が上がり尿毒症になります

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ですから 腎機能の低下が見られ始めたら タンパク質制限が必要になるのです

タンパク質制限により 腎機能の回復はできませんが 進行は止められます


CKDのステージにより 制限の程度が異なります

*1~2では 過剰にタンパク質を摂らないようにする

*3では1日に0.8~1.0g

*4~5では 1日0.6~0.8g

に制限します

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タンパク質の量だけでなく 質も重要です

体内で合成できない必須アミノ酸の摂取が不足すると
体の働きに色々と支障が出てきてしまいます

そこで 必須アミノ酸をバランスよく含んだ食品の摂取が必要になります

*肉 卵 乳製品

*大豆

などを より選択して食べるようにしてください


一方で むやみにタンパク質摂取量を減らすと エネルギー不足になり
エネルギー補充のために筋肉が壊されて
尿素窒素が増えて CKDが増悪してしまいます

そこで 炭水化物や脂質でエネルギーを補う必要が出てきますが
炭水化物を摂りすぎると 肥満や糖尿病のリスクが高くなり
それはそれで CKDを悪化させてしまいます

ですから 上手にタンパク質摂取量を減らす工夫が求められます


具体的な対策としては

*タンパク質を含む食品の摂取量を 現在量の2/3程度に抑える

*主食を
 低タンパク質のタンパク質調整食品の ごはん パン めん類などにして
 その分 おかずを減らさない

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*アミノ酸スコアが高い肉 魚 卵はなるべく減らさない

といったことが大切です


<カリウム制限>

腎機能が低下すると
カリウムの排泄が低下して 血中カリウム値が上昇しますが
カリウム値が増加すると 危険な不整脈が出て危険です

ですから CKDではカリウムの制限も必要になります

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具体的な対策としては

*タンパク質を減らすとカリウムも減ってくるので タンパク質摂取を減らす
*野菜や果物はカリウムを多く含むので 食べ過ぎないように気をつける
*肉や魚は下ゆでするとカリウムが減る
*野菜はゆでる 切って水にさらす 

カリウムは水に溶けるので 水にさらされると減ってくるのです


<食事療法を持続することの困難さ>

現実的には これまで説明してきた食事療法は
「言うは易し 行うは難し」で 持続はなかなか困難です

*自覚症状がないので 食事療法の必要性がわからない 感じられない
*うまく作れない
*薄味で不味くなり口に合わない

患者さんの多くはそのように言われます


そうした場合の対策としては

*宅配食品などを利用する
*医療機関の管理栄養士に相談する

といったことがあげられます


食事療法は 日々の地道な積み重ね が大事で
それによりCKDの進行を食い止めることができます

是非 頑張っていただきたいと思います

 

2018.09.05更新

生活習慣病の腎臓バージョンとも言える
慢性腎臓病・CKDについて解説してきましたが

最後に CKDの予防と早期発見について説明します


<予防と早期発見>

ポイントは

*生活習慣の改善による発症予防

*健診で早期発見する

*見つけたCKDを放置せず 適切な治療を行い重症化予防する

ことです

これができれば 重症化して透析に至らないようにすることが可能です

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@発症予防

生活習慣病の徹底した管理 が重要です

*糖尿病 高血圧 脂質異常症 高尿酸血症などの
 生活習慣病の治療を適切に開始し 途中で中断しないこと

*適正な体重を維持すること

*CKDを引き起こす
 過度の食塩摂取 大量飲酒 喫煙 鎮痛薬などの常用といった
 生活習慣を是正すること


繰り返しになりますが 基本になるのは こうした地道な日々の努力です


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@早期発見

*尿蛋白(尿検査)

*血清クレアチニン・eGFRの検査(採血検査)

を 最低でも年に1回は行うことが推奨されます

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特に これまでしつこく説明してきたように
生活習慣病はCKDの発症の基盤となりますから

生活習慣病がある方は 必ず定期的に 尿蛋白 GFRの検査を行い
CKDの早期発見に努めてください


また 健診で尿蛋白を指摘された場合に
再検査を受けられる方は やっと半数に届く程度で
残念なことに 半数の方は無視されています

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無視せず 必ず医療機関を受診するようにして下さい


<重症化予防>

@CKDの重症度・ステージを把握する

尿蛋白が頻回に認められ CKDが疑われる場合は
尿蛋白定量検査 GFRなどの腎機能検査を実施して
CKDの重症度を把握して 適切な対処をすることが必要になります

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@原疾患の診断を行い 原因のコントロールを行う

CKDの原因疾患で重要な疾患は
透析導入が多い糖尿病性腎症 慢性糸球体腎炎 腎硬化症ですから
それらの疾患の適切な治療を行うことが肝要です

特に 治療によって蛋白尿を減らすことが大きな目標になります


また 再度 繰り返しになりますが

生活習慣病の治療目標を良好に保つことは
CKD重症化予防の重要なポイントです

目標とすべき最低限の指標は

*BMI 25未満

*禁煙

*塩分 3g/日以上6g/日未満

*血圧は
 糖尿病合併では130/80 mmHg未満 非合併では140/90 mmHg未満

*HbA1c 7.0%未満

*LDL-C 120mg/dL未満

です

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@糖尿病合併CKDの重症化予防

糖尿病性腎症の早期診断のため
尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)の定量検査が必要です

尿アルブミン/クレアチニン比が30~299 mg/gCrの
微量アルブミン尿は
心血管疾患の危険因子でもあります 

微量アルブミン尿の段階で発見される腎障害は
可逆的で治療効果が高いため
この段階での腎障害の発見が非常に重要になります

アルブミン尿の程度によって
同じGFRステージでも
心血管死亡や末期腎不全のオッズ比が異なりますから

糖尿病におけるCKD 重症化予防を予測するうえで 重要な指標となります

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このように
糖尿病の方は 尿蛋白定性検査の結果で重症度を判断していると
持続的蛋白尿の出る顕性腎症まで発見されず
予防可能な時期を逃してしまう危険性がありますから

定期的な尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)を
受けるようになさってください

 

2018.09.04更新

CKDにおける生活習慣病の管理の解説を続けます

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糖尿病

糖尿病性腎症の発症・進展抑制には
厳格な血糖値と血圧のコントロールが重要です

厳格な血糖コントロールにより 糖尿病性腎症の発症・進展を抑制できます


管理の目標は

*HbA1c 6.9%(NGSP)未満 5.8(JDS)未満

*血圧は 130/80 mmHg以下

です

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また 糖尿病網膜症の合併頻度が高いため
初診時に必ず眼科で網膜症の評価を行い
定期的な眼科でのフォローアップが必要です


@脂質異常症

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CKDでは 脂質異常症治療薬のスタチン製剤を用いて
脂質異常症の治療を行うことにより
蛋白尿 微量アルブミン量の減少と 腎機能低下の抑制が期待されます

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目標は LDL-C値を 120~100mg/dL未満 にコントロールすることです

糖尿病 脳梗塞 閉塞性動脈硬化症の合併がある場合も
LDL-C 120 mg/dL未満を管理目標とします


@高尿酸血症

CKDによる腎機能低下にともなう尿酸排泄低下により
高尿酸血症の頻度は高まりますが

痛風関節炎の発症頻度は それほど高くはありません

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しかし 女性で血清尿酸値が6.0mg/dLを超えると
末期腎不全のリスクが有意に高まることが報告されており

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血清尿酸値を下げるために
過食 高プリン・高脂肪・高たんぱく質食嗜好 
常習飲酒 運動不足の改善など
生活習慣の改善を指導することが推奨されています


また 腎障害合併例 尿路結石保有例では
尿酸生成抑制薬を使用します

従来から使用されてきたアロプリノール
腎機能に応じた減量が必要ですが

新たな尿酸生成抑制薬のフェブキソスタット(フェブリク)
中等度までの腎機能低下例では 腎機能に応じた減量は不要です


さらに
痛風関節炎を繰り返したり 痛風結石を認める場合は
薬物治療の対象となり
血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとされます

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痛風発作時の治療として行われる
非ステロイド性消炎薬の短期間大量投与は
CKD では腎機能悪化のリスクが高いため 避けるようにします


このように 生活習慣病がCKD発症に関与している場合
CKDの進展を防ぐために 厳密な生活習慣病の管理が必要になり
管理がきちんとできていれば CKDの進展は防げると考えられています

 

2018.08.30更新

CKDの治療は

*その原因となる生活習慣を改善すること

*併存する生活習慣病の治療をしっかりと行うこと

につきます

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まず基本は
生活習慣の改善(禁煙 減塩 肥満の改善など)を行うことです

*バランスの良い食事

*適度な運動

*禁煙

*肥満の是正

などを中心に 地道な努力が必要になります

ckd62



CKDにおける生活習慣病の治療について
今日は高血圧について説明します

ckd63


@治療目標

CKDにおける降圧の意義は
CKD進行の抑制 および心血管疾患の発症や死亡のリスクの軽減で

目標値は 130/80 mmHg
到達した血圧値が低いほど GFRの低下速度が遅くなります

ckd64

@生活指導

まず 生活習慣の改善 特に減塩(3 g/日以上6 g/日未満)
減塩により血圧降下薬の降圧効果が増強されます

食塩制限が困難なときには 利尿薬を少量から併用することもあります

サイアザイド系利尿薬(CKDステージG1~G3)や
長時間作用型ループ利尿薬(CKD ステージG4~G5)を併用することで
食塩排泄を促進できるとされています


@薬物治療 第一選択薬

生活習慣の改善だけでは効果が得られないときは
降圧薬を用いた治療になります

糖尿病がない場合は

尿蛋白が正常なら
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)カルシウム拮抗薬 あるいは利尿薬

尿蛋白がある程度あれば
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)



糖尿病がある場合は
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

が用いられます


ACE阻害薬やARBで降圧すると それらが有する腎保護作用により
尿蛋白や尿中アルブミンが減少し
これら薬剤のCKD進行抑制効果の大部分は 尿蛋白減少に依存しています

また 尿蛋白・アルブミン排泄量が多いほど
これらの薬剤による治療効果が期待できると報告されています

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@高齢者など

脳梗塞や狭心症・心筋梗塞などをすでに合併している患者さんでは
過度の降圧により病気を増悪させ かえって死亡率が高まるリスクがあり

特に高齢者では 過度の降圧は 腎機能を悪化させる可能性がありますから

2~3 カ月かけて経過を観察しながら降圧目標値を達成するよう
緩徐な降圧治療が必要とされます


高齢者では
140/90 mmHg を目標に降圧し

腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認してから
130/80 mmHg 以下に慎重に降圧します

また 過度の降圧は 腎機能を悪化させる可能性がありますから
収縮期血圧110mmHg 未満への降圧は避けます



@併用療法

第一選択薬を使用し 降圧目標が達成できないときには併用療法が必要で
ARBを第一選択薬として降圧目標が達成できないときは

長時間作用型Ca拮抗薬

サイアザイド系利尿薬(CKDステージ1~3)

長時間作用型ループ利尿薬(CKDステージ4~5)

による併用療法を考慮します

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