左利き肝臓専門医ブログ

2018.06.21更新

歯周病

*口腔内の清掃不良により増殖した口腔内の病原性細菌より
 歯肉に炎症が起こる歯肉炎

*炎症により歯槽骨が破壊されて歯が抜けてしまう歯周炎

に大別されます

dmssb01

日本人の中高年の約80%が罹患しているとされていますが
糖尿病とも深い関連があります

dmssb03



@歯周病の発症に糖尿病が関連します

HbA1cが6.5%以上になると

歯周病の新規発症も 

dmssb04

悪化(歯槽骨吸収の進行リスク)も

dmssb05


高まるとされています



その原因として 高血糖になると

*脱水状態になり 唾液の分泌が減るので 炎症が起こりやすくなる

*白血球の機能低下が起こり 抵抗力が減り 感染が起こりやすくなる

*過剰なブドウ糖がタンパクと結合してAGEsが作られ
 歯槽骨を支えるコラーゲンやラミニンの機能が変化してもろくなる

といったことが 考えられています


dmssb06


糖尿病のコントロールが悪いと 歯が抜けやすくなるリスクが高まるのです



@糖尿病の治療をきちんと行うと 歯周病は良くなるのでしょうか?

これまでの検討では 治療によりHbA1cが低下すると
歯肉周囲の炎症は軽減されますが 治癒にまでは至らないことが
明らかにされています

ですから 血糖のコントロールと 歯周病の治療を
並行して行うことが必要です


@歯周病は 糖尿病のコントロールに悪影響を及ぼすのでしょうか?

歯周病は 血糖コントロールに悪影響を及ぼすこと
歯周病の重症度が高いほど 血糖コントロールが難しくなること

が明らかにされています

dmssb07

歯周病の局所で生じた慢性的な炎症が
全身に軽微な慢性炎症を生じさせてしまうので

TNF-αなどのサイトカインが分泌され インスリン抵抗性が起こり
血糖コントロールが悪くなると考えられています


dmssb08


歯周病の患者さんは
糖尿病の発症リスクが2.1倍も高くなることが報告され

欧米の歯周病学会からは

軽度から中等度の歯周病は 糖尿病の進行リスクを上昇させ
重度の歯周病は 血糖コントロールを悪化させる

という勧告がだされています


dmssb09

また 重度の歯周病の患者さんは
糖尿病性腎症の発生率や 虚血性心疾患による死亡率の上昇が認められます


@歯周病の治療をきちんと行うと 糖尿病は良くなるのでしょうか?

こうしたことから
歯周病の治療により 血糖コントロールが改善するか検討され

歯周病の治療により 炎症性因子のCRPが低下すると

*HbA1cやインスリン抵抗性の改善

善玉アデイポカインのアデイポネクチンの上昇

が認められ 血糖コントロールが改善することが報告されています

dmssb10


以上のことから

*歯周病がある方は 糖尿病になりやすいので 注意が必要なこと

*糖尿病で歯周病がある方は
 その治療により血糖コントロールが改善すること

が明らかになりました

dmssb11


歯周病と糖尿病の悪循環 侮れません

最近は 歯周病は糖尿病の6番目の合併症 と言われているようです

dmssb12



糖尿病の患者さんは 是非一度 歯科の先生に相談されてください

 

2018.06.20更新

糖尿病では 大血管障害により 
足にさまざまな病変が生じやすい ので注意が必要です

というのも

下肢への血行が障害されると 歩行障害や潰瘍 壊疽を起こし
重症化すると 下肢の切断につながってしまうからです

dmabh01
@特徴

*潰瘍の有病率は 0.7%  欧米では1.5~10%

*再発が多い

*7~20%が下肢切断に至ってしまう
(非糖尿病患者さんの8倍 アメリカでは下肢切断の60%以上が糖尿病)

下肢切断者の生存率は低い

このように 頻度はそれほど高くありませんが

ひとたびなってしまうと
下肢の切断という 命に関わるリスクを背負うことになります

下肢切断後の5年以内の死亡率は なんと約70%にも及びます

dmabh07



@他の合併症のリスクファクターになる

ご多分に漏れず 下肢の合併症も
他の合併症のリスクファクターになります

総死亡率は 1.89倍 
心筋梗塞のリスクは 2.22倍
脳梗塞のリスクは 1.14倍

にそれぞれ増加します

また うつ病 感染症 慢性腎障害も増えることが報告されています


つまり 下肢の病変が存在するということは
細小血管症 動脈硬化症が進行した結果と考えられる
さまざまな全身の合併症を有していることが示唆されるので
充分な検査を行うことが推奨されます


@病因

以下の3つの要因が関与しています

*血管障害

血流が悪いので白血球などが集まりにくく
小さな傷でも化膿しやすくなり 壊疽が起こり
末梢動脈疾患(PAD)合併による虚血性潰瘍では 
神経性潰瘍より切断率 予後が悪いです

*神経障害

知覚神経が麻痺して痛みを感じないので
病変に気付かず 傷や感染を放置して悪化し
壊疽が起こってしまいます

血管障害よりも 頻度としては多いと考えられています

*感染症

足の化膿によって生じる局所の感染から 全身に菌が回ってしまい
とても危険な病態になってしまいます

dmabh02


@誘因


意外なことに 靴擦れが最も多く69%で
熱症が19%
ついで 外傷 感染症 乾燥・亀裂などが誘因となります

前述したように 知覚が鈍麻していますから
靴擦れや火傷の痛みに気がつかず 放置されてしまうのです

dmabh03


@できやすい場所

*甲 くるぶし の 靴擦れ

*足裏 踵 の まめ

*指裏 の ウオノメ

*爪 の 真菌症

*指の間 の 水虫

こうした部位に出来やすいので注意が必要です

また 深爪によって菌が入ることもありますから 要注意です

dmabh04


@治療

*血管障害には

内科的には 末梢循環改善薬が用いられ
外科的には バルーン療法 バイパス術などが行われます

また
血管の再生を促す再生治療 血管増殖を促す遺伝子治療などの先進医療も
試みられています


*神経障害には

抗菌剤の投与が対症療法的に行われ
病変部の安静 免荷 保護も行われています


@対策

足の定期的な観察による 早期発見 フットケアが大切です

dmabh05

特に 皮膚の状態 変形のチェックが重要で
指の間の観察も忘れてはなりません

発赤 乾燥 肥厚 角化 ウオノメ 白癬症 爪の病変 水疱 潰瘍
などの有無を確認します

dmabh06


また 歩行時に足を引きずるようなことがあると
太い血管に動脈硬化性の変化が生じている可能性がありますから

そうしたことがある場合 すぐに医療機関を受診してください

 

 

2018.06.19更新

これまで 糖尿病の細小血管の障害による合併症である
糖尿病性神経障害 網膜症 腎症
について解説してきましたが

今日は 比較的太い血管が障害される 糖尿病性大血管障害について説明します

dmdks01


<糖尿病性大血管障害とは?>

糖尿病では 比較的大きな動脈も糖尿病によって障害をうけることが多く

この大血管障害は
糖尿病に共存する事が多い脂質血異常症などの影響が
比較的大きいとされています

dmdsk02


つまり 糖尿病以外でも見られる動脈硬化と同類と考えて差し支えありません

dmdsk03


@大血管障害は 他の合併症のリスクファクターになります

細小血管症と大血管症は 互いのリスクファクターになります
また 血管性認知症の強いリスクとなり得ることが報告されています


dmdsk04

@種類

*心臓に血液を送る血管が障害をうけると 狭心症心筋梗塞が起こり

*脳への血管が障害を受けると 脳血管障害が起こり

*下肢動脈が障害を受けると 閉塞性動脈硬化症が起こります

dmdsk05


@リスクファクター

*高血圧 脂質異常症 肥満 加齢 喫煙 ストレス 冠動脈疾患の家族歴
 などが大血管障害のリスクファクターで
 糖尿病のリスクファクターとほぼ同じです

*上述したように
 網膜症 腎症などの細小血管症は 心血管疾患リスクを上昇させます


@細小血管障害より 早期から出現する

神経症や腎症などが
糖尿病を発症してからある程度の年月を経て発症するのに対して
大血管障害は 糖尿病の早期から発症するのが特徴です

dmdsk02a



<狭心症 心筋梗塞>

@糖尿病に合併する狭心症 心筋梗塞には 下記のような特徴があります

*神経障害で解説したように 糖尿病では知覚鈍麻があることが多く
 労作時の狭心痛(胸の痛み)が現れにくいので
 早期発見が遅れがちになります

dmdsk06

*病気の原因となる 心臓を栄養する冠動脈の動脈硬化の範囲が広い

*生命予後や治療成績が悪い

ですから 糖尿病患者さんは 定期的な心電図検査を行うことが必要です


<脳血管障害>

@糖尿病に合併する脳血管障害には 下記のような特徴があります

*高血圧と糖尿病の相乗効果でリスクが上昇する

*細い血管の小梗塞が多発するので
 半身麻痺などの典型的な症状が出にくい

*そのため 無症状で CT検査で初めて診断される例もあります



<対策>

@生活習慣の改善 肥満の是正が有効で
 それによりリスクファクターが減少します

@糖尿病対策

*持続する高血糖が 大血管症の発症リスクと密接に関係するので
 早期からの血糖コントロールが有効です

dmdsk07

*HbA1cの1%の低下で リスクが14%減少します

*低血糖の頻度 血糖変動幅の減少が 大血管の合併を抑制するので
 メトホルミン DPP4阻害薬 SGLT2阻害薬などの
 低血糖リスクが低く 血糖変動幅を小さくする薬剤の使用が効果的です

一方 高齢者や血管合併症進行例での厳密な血圧・血糖コントロールは
逆に心血管イベントを起こしやすくなる との報告もあるので注意が必要です


@高血圧対策 

厳格な降圧療法が有効です

*10mmHgの血圧低下で
 総死亡率が13% 心血管イベント発生リスクが11% 脳卒中発生リスクが27%
 それぞれ減少します

dmdsk08


@脂質異常症の対策

*脂質コントロールも有効です

*高LDL-C血症治療薬のスタチン製剤によるLDL-C 37mg/dLの低下で
 総死亡率が9% 心血管イベント発生リスクが22%
 脳卒中発生リスクが21% 
 それぞれ減少します

*高中性脂肪血症治療薬のフィブラート製剤では 有意差は認められません

*高中性脂肪血症治療薬のEPA
 スタチン製剤の冠動脈イベント発症抑制効果を増強します

dmdks09


このように 糖尿病性大血管障害を合併した患者さんでは
充分な血糖 血圧 脂質異常症のコントロールが求められますが
そこが上手くいけば 発症進展は抑制されます


2018.06.14更新

今日は 糖尿病性腎症の 症状と対策について説明します


<症状>

かなり進行した状態になるまで
ほとんど自覚症状がないのが 腎症の特徴です

tgs11


ですから 厄介なのです


病期が進行してくると さまざまな症状が現れてきます

tgs11a

しかし
こうした症状が出てくる前に発見し 治療を開始しなければなりません

そのために 以下のような検査を定期的に行います



<検査>

@尿検査

タンパク尿をチェックしますが
 はじめのうちは 出たり出なかったりする場合が多いです

*タンパクが常に出続ける状態になると ある程度 腎症は進行しています

tgs12


@尿中微量アルブミン

*この検査により
 従来の試験紙法でタンパク尿陽性となる以前に
 異常を検知することが可能になりました

tgs13

*早期診断のマーカーで
 透析 腎移植 eGFR半減 顕性腎症への進展リスクです

tgs13a

*糸球体における
 基底膜のアルブミン透過性の亢進 尿細管での再吸収の障害
 により生じ
 血管内皮細胞障害も反映します

*尿中アルブミン・クレアチニン比 30mg/g・Cr以上が陽性
 30~299mg/g・Cr範囲が 早期腎症

*この時期に血圧や血糖のコントロールなどを厳重に行えば
 腎症の進展が阻止できる可能性が高いことがわかってきたため
 この時期で発見することが大変重要と考えられています

tgs06

*採尿条件で変動するので 複数回実施する必要があります

*高血圧 メタボリックシンドロームでも生じます


@eGFR

*腎機能を評価する簡便な方法です

tgs22

*eGFR(mL/min/1.73m2
 = 194 x Scr(mg/dL)-1.094 x 年齢-0.287(女性はx 0.739)

という数式で計算され 低い値だと 腎機能の低下を示します

tgs23


<対策>

@まだ腎機能低下がみられない早期から 厳密な血糖コントロールを行えば
 腎症の発症・進展が抑えられます

@微量アルブミン尿の時期に発見して
 血糖コントロール 血圧の管理を徹底して 進行を予防するよう努めます

tgs14


@食塩摂取制限

*食塩摂取による血圧への影響=食塩感受性は
 正常アルブミン尿期に比し 微量アルブミン尿期以降で亢進しているので
 食塩制限は有効です

@高血圧のコントロール

*病期に関わらず 腎症の進展抑制のために重要です

*降圧剤の
 アンギオテンシン変換酵素阻害薬 アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
 その降圧作用とは独立して
 微量アルブミン尿 タンパク尿を減少させる効果があり
 他の降圧剤に比し有意な腎保護効果があり 腎症の進行予防に役立ちます

tgs15


@脂質異常のコントロール

*脂質異常症治療薬の スタチン フィブラート
 ともにアルブミン尿抑制効果を示す可能性が指摘されています

*スタチンは eGFR低下の抑制効果も期待されています



<糖尿病性腎臓病 という新しいコンセプト>

@最近 アメリカなどでは

「糖尿病性腎臓病  Daibetic kidny disease : DKD」

という新しい概念が提唱されているので 紹介します

tgs16

@海外では
 尿タンパク陰性でも 腎機能低下が進行する糖尿病患者さんが急増していて
 そのような患者さんは

*腎機能低下が高度になるまで タンパク尿が出現しない

*タンパク尿が改善しても 腎機能低下が進行する

*腎機能が低下した糖尿病患者さんの66%が 正常アルブミン尿だった

といった特徴を有しています

tgs18


@そうした患者さんが増えてきた要因として

*血糖コントロールの向上 RA系阻害薬の普及などの治療法の進歩

*寿命延長による
 腎機能低下への動脈硬化性因子(腎硬化症)の関与の相対的強まり

が推定されていて


従来の糖尿病性腎症を内包する
 より大きな疾患概念としての糖尿病性腎臓病

 というコンセプトが提唱され

tgs19

*より早期から タンパク尿とともに
 eGFRによる腎機能のフォローを欠かさないことが 提唱されています


tgs21



経過が長い糖尿病患者さん 特にお年を召した方では

タンパク尿だけを指標にするだけでなく
腎機能(eGFR)も早期からcheckしていく必要があるようです


 

2018.06.13更新

今日は 糖尿病性腎症 の説明をします

tgs01

<糖尿病性腎症とは?>

神経障害 網膜症と並ぶ 糖尿病の細小血管症の三大合併症のひとつで
 糖尿病発症後10~15年を経過する頃から認められ
 糖尿病の死因の約15%を占めます


@現在日本では 人工透析を行っている患者さんは約8万人おられますが
 そのうち糖尿病性腎症の患者さんは43.5%で  第1位です

tgs01a

 
 また 新たに人工透析を導入される原因の第1も 糖尿病性腎症です

tgs02


@腎症は 他の合併症のリスクファクターになり

*腎症患者は 心血管疾患の合併率が高く 死亡頻度も高い

*腎機能(GFR)低下とアルブミン尿は
 心血管疾患の独立したリスクファクターである

*網膜症 足病変の合併頻度が高い

ことが明らかにされています


@糖尿病性腎症では 腎臓の中心的な働きをする糸球体が障害されます

糸球体は血液をろ過して老廃物を尿に排出する部分ですが

それを栄養する細小血管が 持続した高血糖により障害されて
腎機能障害が生じてきます


tgs03


腎臓の働きが悪くなると

*アンモニアなどの老廃物が溜まる

*水分が溜まり浮腫がおこる

*血液が酸性に傾く

*貧血が起きる

*カルシウム代謝に異常が起こり 骨がもろくなる

*血圧が上昇する

といった不具合が生じます

tgs05


<病期>

病態の進行の程度により 下記の6期に分かれます

tgs06

@腎症前期

*尿中のアルブミン(通常は尿に漏れないタンパク質)は陰性
*腎機能(GFR)は正常 時に高値 

@早期腎症

尿中にわずかにアルブミンが漏れ出す微量アルブミン尿を呈する
*GFRは正常 時に高値

@顕性腎症前期

*尿中タンパク質の量が増えて顕性蛋白尿の時期を迎え
 通常の検尿で検出できるようになります
*持続性タンパク尿は 1g/日未満
*GFRは ほぼ正常 60ml/分以上

@顕性腎症後期

*尿中に漏れ出す量が多すぎると
 ネフローゼ症候群となって体の機能の維持に支障を来す
*放置していると 次第に尿中の蛋白排出が増加し
 ついには1日何グラムもの量になります
GFRが低下し始め 60ml/分未満になる
*この時期になると
 一般には1~2年くらいのうちに腎機能低下が顕著となり
 腎不全となります

@腎不全期

*持続性タンパク尿
*腎機能のマーカーである血中クレアチニンが上昇してくる
*GFRが著明に低下する
*老廃物や不要物を尿中に排泄する働きの障害が現れる
*下肢の浮腫 心不全
 尿毒症(腎症で排泄できない毒素が体内に溜まってくる状態)を
 起こしてきます

@透析療法期

*人工透析や腎臓移植などの治療を受けるしか手がなくなります

tgs07


このように 腎症の進行にともなって
徐々に尿にタンパク アルブミンが漏れ出してくるようになり
腎機能が低下して 自覚症状が出現してきます 

 

2018.06.12更新

糖尿病性網膜症の 検査と治療について説明します


<検査>

眼底検査を行います

tmms11

 進行すると大きな出血斑点があらわれ
 このような変化は眼底検査でわかり 眼底写真で記録されます

tmms12


<治療>

@基本は 糖尿病コントロールを強化することです

HbA1c 6.9%未満

FBS 110mg/dL未満

*食後2時間値 180mg/dL未満

を目標にします

但し 治療により低血糖を起こすことは禁物
重症低血糖が 網膜症 腎症の発症の進展リスクを
有意に上昇させてしまいます


@光凝固療法

レーザー光線を網膜の血管にあて
その熱で 細かな血管から血液成分が漏出している部分を固めてしまい
進行を多少なりとも抑制しようとするのが
この治療の原理です

最近では 新生血管があらわれる増殖網膜症の早期はもちろんのこと
前増殖性網膜症の段階でも
光凝固療法を受けたほうがよいと考えられています

tmms13


網膜症がさらに進んで
大出血や網膜剥離 網膜の前にある硝子体の混濁などが出現すると
治療は極めて困難で 失明の危険が差し迫ってきます

完全失明をくい止める事を目的として
硝子体手術など 様々な治療が行われていますが
確実な方法はありません


tmms14


<対策>


@1年に1度は 眼科受診をすること

特に糖尿病を発症して10年以上経過している方
より高頻度な眼科受診が推奨されます


@リスクファクターである 血圧のコントロールも重要で

*血圧は140/80mmHg未満に維持し

 高い場合は
 レニンアンギオテンシン阻害剤などの降圧薬治療が有用です

*脂質異常症は 有意なリスクファクターではありませんが
 高中性脂肪血症治療薬のフィノフィブラート系薬が
 網膜症の進展抑制に有効との報告があります


妊娠は 網膜症の発症・進展を促進するので 注意が必要です

妊娠により リスクが1.6~2.5倍に上昇し
HbA1c高値 妊娠初期の急激な血糖低下 高血圧が進展因子となるので
早期治療が必要です

但し 出産後には改善し 長期的な進展リスクにはなりません

  

 

 

2018.06.07更新

今日は 糖尿病の眼の合併症 糖尿病性網膜症 について説明します


<糖尿病性網膜症とは?>

眼球の奥にある網膜の血管が
 長年の高血糖によって障害を受けて生じる合併症です

*網膜は 眼球の奥にあり カメラに例えればフィルムにあたります
 ですから ここに障害が生じると視力などに問題が起きてしまいます

tmms03

tmms01

*糖尿病の合併症の中でも 最も深刻なもののひとつで

 治療が困難で 最悪の場合失明に至り
 失明原因の20%ほどを占めます

tmms02

@糖尿病の発病後
 4年くらいから 10%程度に発症し始め
 5~9年で 発症率は30%に至ります

@血糖コントロールが不良の場合は より早くあらわれ
 血糖コントロールがよい場合では 何年たってもあらわれません


@網膜症発症のリスクファクターとしては

*罹病期間

*BMI

*HbA1c

*収縮期血圧

が挙げられています


糖尿病性腎症 大血管障害のリスクファクターになります

 網膜症があると
 冠動脈疾患発症リスクが2.07倍
 脳卒中のリスクが2.34倍に増えます


<病期と症状>

網膜には 毛細血管がたくさん分布していて
高血糖を放置していると血管が破綻して
出血などが起こり 次第に自覚症状が現れてきます

tmms04


@単純性網膜症 

血管が破綻して 血液成分が外に漏れだす状態で
毛細血管に瘤のようなものができたり
網膜内に限局した出血や白斑などがみられます

この段階では 視力に影響を及ぼすことは少ないため
ほとんど自覚できません

自覚症状がなくても 早目に眼科を受診して
この時期に血糖コントロールをしっかり行えば
軽快 回復することもあります


@前増殖性網膜症

血管が詰まる状態で
網膜の表面にある血管が閉塞し虚血が起こり
白斑が多発するようになり

進行すると 病変の数が増え 比較的大きな出血も出現します

ここまで進むと
きっちり治療しなければ進行をくい止めることが難しくなるのですが
それでも自覚症状がない場合が多いのです

病変の出現部位によっては
視力低下や視野異常を自覚することがあります


@増殖性網膜症

網膜表面 硝子体のなかに 新生血管が作られる状態で

この段階になると
衝撃や血圧の急激な上昇をきっかけに血管が破れて大出血し
網膜前出血 硝子体出血 網膜剥離などの
重篤な状態になってしまいます

治療は非常に困難になるので
こうなる前に光凝固などの治療で予防しなくてはいけません

tmms05

このように
網膜症は静かに自覚症状なく進行する場合が多いですから

自覚症状が出る前から
定期的に眼底などの検査を受けて早期発見につとめること
血糖値のコントロールをしっかり続けること
が大切です

 

2018.06.06更新

今日は 糖尿病性神経障害の症状について説明します

tss11

神経障害は ダメージを受ける神経の種類により

*感覚神経障害

*運動神経障害

*自律神経障害

の3つに分類されます


<感覚神経の障害>

まず 末梢の感覚神経から障害が現れてきます

手や足の先から そして左右対称に出現してくるのが特徴で

*手や足の指先がじんじんしたり しびれや痛みを感じたり
 虫が這っているような知覚異常

*足先の冷感 ほてり感

といった症状を呈します

tss05


最も典型的な初期症状は 両足の裏のしびれ 感覚鈍麻

「足の裏に皮が一枚余分に貼っているような感じ」

「素足で歩いているのに 靴下をはいているような感覚」

などと表現されます


やがて しびれはだんだん上の方へと広がり始め
両手指も先端からしびれ始めます

しかし 痛み しびれを感じないまま 潜在的に進行する患者さんが
約半数おられます


<運動神経の障害>

さらに進行すると 運動神経にも障害が現れはじめ

*筋肉に力が入りにくくなる

*足の力が入りにくくなったり 腓返りが起こりやすくなる

tss13

*顔面神経麻痺や外眼筋(目を動かす神経の動眼神経や滑車神経)が
 麻痺を生じて 物が二重に見える

*足の内在筋の萎縮 足の変形

といった症状が出ます

tss12


<自律神経の障害>

自律神経が障害されてくると

*起立性低血圧(立ちくらみ)を起こす

*腸管の運動に異常を来して 便秘や下痢を繰り返すようになる

*膀胱の働きに異常を来して 排尿ができなくなる
 排尿時間の延長 回数の減少

*インポテンツ

*発汗障害 上半身の発汗亢進 下半身の低下

といった症状が出ます

tss14


<危険な症状>

神経障害が さらに進行すると 命に関わる深刻で危険な症状が出てきます

@無自覚低血糖

低血糖が起こっても 動悸や発汗などの警告症状を自覚しないので
重症化 昏睡する可能性があります

@無痛性心筋梗塞

心筋梗塞が起こっても痛みに気付かず(無痛性心筋梗塞)
発見が遅れて 重篤化を招くリスクがあります

@足潰瘍 足壊疽

末梢知覚神経の障害が進行して 知覚が低下した結果
怪我をしたり 炬燵などで火傷をしても気付くのが遅れ
そこが化膿して壊疽を起こしてしまう重大な合併症を招くこともあります

tss15


足が腐って切断しなければならなくなる糖尿病性壊疽の多くは
神経障害で知覚鈍麻をきたした足に小さな傷が出来ることから始まります

tss17

傷の原因は 靴擦れや深爪などごく些細なものが殆どですが
足がしびれて痛みを感じないと手当が遅れます

tss16

また 糖尿病では 血行障害や免疫力の低下によって治癒力が弱っているので
細菌が入り込んで感染が広がります

このため 糖尿病の方は 入浴の際などに足に傷がないかどうかを
目で見て確かめる事を習慣づける必要があります

tss18

<対策>

他の合併症と同様
血糖コントロールをしっかり行って その進行を未然に防ぐことが大切です

初期からの血糖コントロールが良好ならば 合併症は発症しませんし
初期~早期の神経障害は 血糖コントロールで治療できます

しかし 中期~後期になってしまうと 非可逆的になるので
症状に対する対症療法が行われます


また 日常生活での注意としては

*歩行などの下半身の運動を行う

*手足をよく観察し
 皮膚の色の変化 外傷や水虫がないかどうかチェックする

*靴擦れをしないように きちんと足に合った靴を選ぶ

*あんかや炬燵 風呂の温度など 火傷に気をつける

*禁煙に心懸ける

*手足のマッサージをする

*異常に気が付いたら医師の診察を受け 早めの処置を受ける

といったことが大切です


<治療>

軽症例では
頭痛や腰痛の痛み止めに用いられる
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)も有効です

中等度以上では

*三環系抗うつ剤
*末梢神経痛覚阻害薬  プレガバリン
*中枢性痛覚抑制薬  デュロキセイチン
*抗けいれん薬  カルバマゼピン ガバペンチン
*抗不整脈薬  メキシレチン
*アルドース還元酵素阻害薬  エパルレスタット

tss19


などが用いられ

高度例では 麻薬製剤のオピオイドも用いられます


神経障害は 他の合併症に先駆けて起こってくるので
糖尿病の進行 合併症発見の重要なサインです

特に両足の足先 足の裏に違和感を覚えたら 早目に受診してください

 

2018.06.05更新

糖尿病で問題になるのが 合併症です

血糖コントロールの状態が悪い期間が続くと 動脈硬化が起こり
この動脈硬化が さまざまな合併症を引き起こします

このように 糖尿病の合併症の多くが血管の病気と絡んでいるため

糖尿病は 実は血管の病気である
 

とさえいわれます


tgps01


糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症などは
細動脈や毛細血管などの比較的小さな血管の障害が中心となっておこる病気で
糖尿病性細小血管障害とよばれ 糖尿病に特徴的な病変です

tgps02


糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症 糖尿病性神経障害
三大合併症と呼ばれますが

こうした合併症は 糖尿病になるとただちに起こるわけではなく
高血糖を放置していると
数年という年月をかけ徐々に起こってくるのが一般的です

まず 3年ほどで 神経障害が先にきて

次に 5年ほどで 網膜症

7~8年ほど経過して もっと障害が進むと

腎症が起こってくると考えられます

tgps03



今日は 最初に起こってくる 糖尿病性神経障害 について解説します


<糖尿病性神経障害とは?>

高血糖の持続により 手足の神経に異常をきたし
足の先や裏 手の指 に痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です

糖尿病の合併症のなかで

*最も高頻度で多岐にわたり

*最も早期に出現してくる

ものです


他の合併症の発症・進展のリスクファクターになり

*網膜症が4倍に増え 重症度が増す

*アルブミン尿が2倍

*神経障害の重症度は 網膜症 腎症の進展と相関する

ことが明らかにされています


神経障害が出現するリスクファクターとして

*血糖コントロールの不良

*罹病期間

*高血圧

*脂質異常

*喫煙

*飲酒

などが挙げられます


<原因>

高血糖が持続することにより

*神経が変性したり

*神経を栄養する毛細血管の障害で血流が低下すること

などで生じてきます


tss01


末梢神経の伝達機能が障害されるため 症状が発現しますが
さまざまな代謝障害 ポリオール代謝 糖化蛋白 酸化ストレス
などが血管障害に関連すると考えられています

tss02


<診断>

糖尿病が存在し 他の原因の末梢神経障害が否定できることが必須で

*多発神経障害に基づく自覚症状

*両側アキレス腱反射の低下 消失

*両側内踵の振動覚低下 (響きを感じない)

のうちの2項目以上あれば 神経障害と診断されます

tss03


また 疑わしい症状として

*両足指 足 下腿の ジンジンしたしびれ 
 刺す 切る 焼ける うずく痛み

*左右対称性の 下肢の先の方の感覚鈍麻

があります

tss05

<検査>

*痛覚を評価するための 爪楊枝 竹串などによる刺激

*振動覚(響き)の評価のための 音叉刺激

*アキレス腱反射 小さいハンマーでアキレス腱を叩いて反応を見る

tss04

*皮膚の視診

*自律神経の評価のための 心電図による心拍動検査

*神経伝導速度 電気刺激を用いて神経の伝わりの速さを測定する

tss06

などが行われます


具体的には 感覚神経 運動神経 自律神経が
それぞれ障害を受けて症状が現れてきます

次回 それらの症状について 詳しく説明します

 

2018.05.31更新

幼少時にかかっていなかったり ワクチンを接種していないと

大人でも おたふくかぜになってしまいます

mps21

しかも

大人がおたふくかぜに罹ると 子供と違って重症化しやすい傾向にあります


大人は子供に比べると免疫力が高く
免疫がおたふく風邪のウイルスに対して強く抵抗するため
炎症などがひどくなってしまう と考えられています


<大人の症状>

高熱や頭痛がひどくなり
熱が39度まで出る場合があります

耳の下が腫れあがるだけでなく あごや頬まで炎症が広がり
食事を取るのもままならなくなる

ひどい場合は 下痢 頭痛 うわごとなども出てくるといわれています

mps22a


また 一時的に難聴となってしまう場合もあります

基本的には片方だけに現れるといわれていますが
症状が重いときには両方の耳が聞こえづらくなります

おたふくかぜが治るとともに回復するようですが
まれに難聴が後遺症として残ることがあります


<大人の合併症>

@髄膜炎

大人になっておたふくかぜになった場合
特に注意したい合併症が 無菌性髄膜炎です

髄膜炎は 子供もかかりやすい病気ですが

大人になっておたふくかぜになると
約1割の確率で出てくる可能性があります

髄膜炎は 脳や脊椎に炎症が起こる症状で 頭痛や吐き気とともに熱がでます
また 意識障害やけいれんなどもでることがあります


@膵炎

発熱とともに 腹部の圧迫感や吐き気がある場合
軽い膵炎にかかっている場合もあります

こちらは2万人に1人の割合で発生しているようですが
放っておくと腹膜炎になる可能性もあります


このように 髄膜炎や膵炎の可能性がある場合は
おたふくかぜが治ったとしても 症状が続いてしまいます

耳の下の腫れが引いても 4〜5日も症状の改善がみられないときは
すぐに医療機関を受診しましょう



@睾丸炎 卵巣炎

大人のおたふくかぜは 睾丸炎・卵巣炎など合併症が出やすいのが特徴です

男性なら約20〜30% 女性なら約7%といわれています

睾丸炎になると
おたふくかぜ発症後およそ3〜5日目に
陰部が約5倍にまで膨れ上がり 疼くような痛み 発熱、頭痛、吐き気が出ます

通常は1週間程度で自然に症状がおさまりますが
症状が長期化したり 片側だけでなく両側の睾丸で腫れや炎症が起こると
睾丸の中の精子をつくる細胞が死んでしまい
無精子症 不妊の原因となります

睾丸炎から生殖能力の障害に発展するのは 10%程度と報告されていますが

睾丸に痛みや腫れが現れて症状が長引く場合は
早めに泌尿器科を受診しましょう

mps23


<妊娠への影響>

女性の場合は 卵巣炎になったとしても
不妊になるとは断定はされていないようです


しかし 妊娠中に おたふくかぜになると
低体重児出産や流産などのリスクは高まるといわれています

特に妊娠3か月までの妊娠初期では 流産の危険性が高まります


但し 妊娠中におたふくかぜにかかっても
胎児が先天性奇形をもって生まれてくるリスクはほとんどありませんし
母体に後遺症が残ることも ほとんどありません

mps24


他のワクチンと同様
妊娠中は おたふくかぜのワクチン接種を受けられません

また ワクチン接種から2か月間は 避妊する必要があります


ですから これから妊娠の予定や可能性がある人は
早めにワクチン接種を受けておく必要があります

うがい 手洗い マスク 人ごみを避ける 他の人からの感染に注意するなど
基本的な予防が 妊婦さんのおたふくかぜへの唯一の対策です


また 家族にワクチン接種を受けてもらうことも大切です
妊婦がいる家庭では 妊婦以外の人がワクチン接種を受けるべきです

おたふくかぜは 家庭や集団施設で流行しやすいので
妊婦さんと一緒に生活している人が学校や会社で感染し
家で妊婦さんにうつしてしまう可能性も 十分に考えられます


ということで

これから妊娠の予定や可能性がある人や その家族は
早めにワクチン接種など おたふくかぜへの対策をとりましょう


<大人もワクチン接種を>

おたふく風邪の最も有効な予防法は ワクチン接種です

mps25


ワクチン接種で
約90%の方が体内に有効な抗体を獲得することができますが

ワクチン接種で体内にできた抗体の効果があるのは 約8〜10年です

このように
ワクチン接種による 抗体持続期間や抗体力価は
終生免疫と同じではありませんが

ワクチン接種により おたふくかぜにかかりにくくなり
かかったとしても ほとんどの場合は軽い症状で済みます

mps26


また 子供の頃にワクチン接種を行っていても
上述したように 大人になり結婚して子供ができる頃には
体内の抗体は徐々に減少し 感染のおそれが出てきます

したがって おたふくかぜのワクチン接種は
時期を分けて2回受けることが推奨されています

2回受けることで
自然にかかった場合と同じくらい有効な抗体を体内に作ることができます

mps28



幼少時におたふくかぜに罹ったかわからない場合は
おたふくかぜの抗体検査を受けることで
体内におたふくかぜへの免疫があるかどうか調べることができます

特に 女性は 妊娠する前には抗体検査を受けて免疫の有無を調べ
免疫がない場合はワクチン接種を受けましょう


おたふくかぜワクチンの軽度な副反応として
接種部位の痛み 微熱 軽度の耳下腺腫脹を呈する場合があります


わが国では 1981年より
国産おたふくかぜワクチンが 任意の予防接種として使用されています

麻疹や風疹のワクチンは定期接種ですが
おたふくかぜのワクチンは 任意接種です

おたふくかぜによる難聴の出現頻度が
従来の報告より高い可能性があり
そうした点からも ワクチンの定期接種化が望まれています

mps27

厚労省の感染症分科会予防接種部会などで
おたふくかぜワクチンを
予防接種法の対象となる疾病ワクチンに加えるか検討されていますが
未だ 定期の予防接種の対象疾患とはなっていません

 

 

前へ

entryの検索

カテゴリ

高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら 高橋医院 メールでのお問い合わせはこちら