人類の身体の進化を考えるうえで
農業革命と産業革命は
とても大きな影響力があった

と ダニエル先生は論を展開します

人類の歴史における農業革命 産業革命の位置づけを示す図

<農業革命の影響>

特に 農業革命は
食べるもの 眠り方 人間関係などを
徹底的に変化させた

そして「銃・病原菌・鉄」の著者の
ジャレット・ダイアモンド氏は
農業は 諸悪の根源にして人類史上最大の過ち
と評したそうです

「銃・病原菌・鉄」の表紙

ご先祖様が農業を始めたことによって
狩猟時代より多くの食物を得られるようになり

摂取カロリー量も増えたので
多くの子供も得られるようになり

定住して大家族を営めるようになり
人口爆発が起こったけれど

その分 必死に働かなくてはならなくなった

また 天災により 飢餓に直面する機会も増えたし
共同生活による社会的ストレスも増えた

このような環境的変化に身体の機能がついていけず
初期のミスマッチ病が生じてきました


<感染症の出現>

それは 感染症 です

村や都市の発展により人口密度が増えたので
感染症が発生しやすくなった

結核 ハンセン病 梅毒 ペスト 天然痘
インフルエンザ

多くの感染症は
全て農業の開始とともに流行が始まったそうです

感染症は 全て農業の開始とともに流行が始まったことを示す図


<産業革命の影響>

そして産業革命により
さらに多くのミスマッチ病が起きてきた

幸いにして 
細菌学や公衆衛生の発達等により
感染症は制御できるようになりましたが

今度は 別のタイプのミスマッチ病が
発症してきます


生活習慣病のルーツが現れてくるのです

産業革命により 便利な世の中になると

身体活動量が劇的に減少し
座っている時間がどんどん長くなった

産業革命の時代に工場で座って作業する人たちの姿

そして 
安価で高カロリーな工業食品が登場してきた

脂肪 デンプン 糖 塩分が 
安上がりに手に入るし
糖 菓子 油脂 炭酸飲料は安くなる

工業製品化食物は
糖 精製デンプン 飽和脂肪酸が多く
タンパク質が少なく 線維質が格段に少なく
ビタミン ミネラルがとても少ない

栄養的には貧しく
カロリーが豊富なだけの食品の登場

食物線維が少なく
糖 脂肪 食塩が多い

そんなヒトが昔から好んでいた食物を
食品加工技術により
安価で大量に得られるようになったのです

大量に食べている人の姿

そして 
こうした加工食品は
ヒトの消化器系機能を変質させました

消化に必要な負担が減り
血糖値が早く上がるようになったので
インスリンの早期大量分泌が起こるようになり

そこから 
低血糖による空腹が起こり
また食べるの悪循環

こうして 
カロリー摂取量が大幅に増加したのです


<非感染性の慢性的な病気(NCDs)の出現>

そして 
ヒトが罹る病気の種類が大きく変わりました

栄養不良や感染症での死亡率は減少し
平均寿命は延長したけれど

肥満に関連した 
非感染性慢性疾患が増加し始め

死亡率は低下したけれど
病気に罹っている人は増え続けている

こうした
非感染性の慢性的な病気(NCDs)こそが
ミスマッチ病 

まさに 生活習慣病 なのです

非感染性の慢性的な病気(NCDs)の概念を説明する図

そして 人々の不健康寿命が延びてきて
それにともない
医療費は莫大になり 国家財政を圧迫する事態

ミスマッチ病の原因である新しい環境要因は
なかなか変えられません

ミスマッチ病の原因である新しい環境要因をまとめた図

しかし ここで対処しないと
病気は予防されず 
さらに広がっていってしまう

これこそが 
人類が直面する最大の難事のひとつだと

ダニエル先生は警鐘を鳴らされます


健康を増進する食べ物を食べること
もっと活発に体を動かすこと

人類は
ミスマッチ病を克服することが
できるのでしょうか?


高橋医院