糖尿病で問題になるのが 
合併症です

血糖コントロールの状態が悪い期間が続くと 
動脈硬化が起こり

この動脈硬化が 
さまざまな合併症を引き起こします

このように 
糖尿病の合併症の多くが血管の病気と絡んでいるため

糖尿病は 実は血管の病気である

とさえいわれます


糖尿病では動脈硬化が進み合併症を発症していくことを示す図

糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症などは
細動脈や毛細血管などの
比較的小さな血管の障害が中心となっておこる病気で

糖尿病性細小血管障害とよばれ 
糖尿病に特徴的な病変です


糖尿病性細小血管障害についてまとめた図

糖尿病性腎症 
糖尿病性網膜症 
糖尿病性神経障害

三大合併症と呼ばれますが

こうした合併症は 
糖尿病になるとただちに起こるわけではなく
高血糖を放置していると
数年という年月をかけ徐々に起こってくるのが一般的です

まず 3年ほどで 
神経障害が先にきて

次に 5年ほどで 
網膜症

7~8年ほど経過して 
もっと障害が進むと
腎症が起こってくると考えられます

糖尿病の発症から3大合併症が起きるまでの時間を示した図

今日は 最初に起こってくる 
糖尿病性神経障害について解説します


<糖尿病性神経障害とは?>

高血糖の持続により 
手足の神経に異常をきたし
足の先や裏 手の指に
痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です

糖尿病の合併症のなかで

*最も高頻度で多岐にわたり

*最も早期に出現してくる

ものです


@他の合併症の発症・進展のリスクファクターになる

*網膜症が4倍に増え 重症度が増す

*アルブミン尿が2倍

*神経障害の重症度は 
 網膜症 腎症の進展と相関する

ことが明らかにされています


@神経障害が出現するリスクファクター

*血糖コントロールの不良

*罹病期間

*高血圧

*脂質異常

*喫煙

*飲酒

などが挙げられます


<原因>

高血糖が持続することにより

*神経が変性したり

*神経を栄養する毛細血管の障害で
 血流が低下すること

などで生じてきます

糖尿病性神経障害が生じる機序を説明した図

末梢神経の伝達機能が障害されるため 
症状が発現しますが

さまざまな代謝障害 ポリオール代謝 
糖化蛋白 酸化ストレス
などが
血管障害に関連すると考えられています


糖尿病性神経障害の発症に関与する因子をまとめた図


<診断>

糖尿病が存在し 
他の原因の末梢神経障害が否定できることが必須で

*多発神経障害に基づく自覚症状

*両側アキレス腱反射の低下 消失

*両側内踵の振動覚低下 (響きを感じない)

のうちの2項目以上あれば 
神経障害と診断されます


診断でチエックされる症状のまとめ

また 疑わしい症状として

*両足指 足 下腿の ジンジンしたしびれ
 刺す 切る 焼ける うずく痛み

*左右対称性の 下肢の先の方の感覚鈍麻

があります

神経症状のまとめ


<検査>

*痛覚を評価するための 
 爪楊枝 竹串などによる刺激

*振動覚(響き)の評価のための 
 音叉刺激

*アキレス腱反射 
 小さいハンマーでアキレス腱を叩いて反応を見る

反射反応を見ている様子

*皮膚の視診

*自律神経の評価のための 
 心電図による心拍動検査

*神経伝導速度 電気刺激を用いて
 神経の伝わりの速さを測定する

神経伝導速度の結果

などが行われます

具体的には 
*感覚神経 
*運動神経 
*自律神経
がそれぞれ障害を受けて症状が現れてきます

次回 それらの症状について 詳しく説明します


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