風疹の解説を続けます

<ワクチン>

弱毒生ワクチンが実用化され 広く使われており
 風疹予防のためには
 ワクチン接種が最も有効な方法といえます

麻疹風疹MRワクチンのボトル


<我が国の風疹ワクチンの定期接種の歴史と現状>

@1977年8月〜1995年3月までは
 中学生女子のみが定期接種対象でした

@1994年の予防接種法改正により
 1995年4月から
 対象は生後12カ月以上〜90カ月未満の男女
(標準は生後12カ月〜36カ月以下)に変更になりました

年代による風疹ワクチンの定期接種の施行状況をまとめた図

@2006年度から
 MR(麻疹・風疹)混合ワクチンが定期接種に導入され
 1歳 と 
 小学校入学前1年間(6歳になる年度)
 2回接種となりました

子供の風疹ワクチンは2回接種であることをアピールするポスター

@2回接種の必要性

1回接種で
95%以上の人が風疹ウイルスに対する免疫を
獲得することができますが

2回接種により
1回接種では免疫が付かなかった方の多くに
免疫をつけることができ
免疫ができる割合は約99%に向上します

ワクチンの2回接種を呼びかけるポスター

さらに 接種後年数の経過とともに
免疫が低下してきた人に対しては
追加のワクチンを受けることで
免疫を増強させる効果があります


<抗体保有率と抗体検査>

@抗体保有率

定期予防接種率の上昇と 
2回接種制度の効果により
小児の抗体保有率は高くなり
2歳以上の保有率は90%以上になっています


年齢別の抗体保有率を示すグラフ

@30~40代の男性は抗体保有率が低い

一方 成人では
男性の30代(73〜84%)40代(81〜86%)では
女性(97〜98%)と比較し
11〜25ポイント抗体保有率が低いことが
報告されています


@抗体検査

風疹にかかったことが確実な場合
(検査で高い抗体価があることが確認された)は
免疫を持っていると考えられ
予防接種を受ける必要はありません

一方
抗体価が低い場合(HI抗体価が16以下)は
予防接種が必要になります

抗体検査結果について説明した表

しかし
抗体価が高い 以前にかかったことがある人が
ワクチン接種をしても
副作用は増強しませんし

また 過去に風疹に感染していても
予防接種を行うと
風疹に対する免疫をさらに強化する効果が期待されます

ですから 予防接種の前の抗体検査は 
必ずしも必要とは言えません


<ワクチン接種を受けた方が良い人>

定期接種の対象者は
1歳児 小学校入学前1年間の幼児ですが

定期接種の時期にない人で

*風疹にかかったことがなく
 
*ワクチンを1回も受けたことのない人は

かかりつけの医師にご相談ください

@男性も受けるべし

男性が風疹にかかると
妊娠中の女性が近くにいた場合 
風疹をうつし
その赤ちゃんが先天性風疹症候群となって
生まれる可能性があります

風疹の合併症から ご自身の身を守り
家族や周りの人への感染を予防するためにも

男性も 可能な限り早く
風疹のワクチン接種をうけて下さい



奥さんに感染させたくないのでワクチン接種を受ける男性

特に
30代後半から50代の男性の5人に1人
20代から30代前半の男性の10人に1人は
風疹に対する抗体を持っていませんから 要注意です


@副作用

1回目のワクチン接種後の反応として
最も多く見られるのは発熱です

接種後1週間前後に最も頻度が高いですが
接種2週間以内に発熱を認める人が約13%います

2回目の接種では 接種局所の反応が見られる場合がありますが
発熱 発疹の頻度は極めて低いとされています


<妊娠に関わる注意>

@先天性風疹症候群

風疹に伴う最大の問題は

感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が
感染したことにより
風疹ウイルス感染が胎児におよび
先天異常を含む様々な症状を呈する
先天性風疹症候群が出現することです

先天性風疹症候群の注意喚起をするポスター

妊娠1ヶ月でかかった場合50%以上 
妊娠2ヶ月の場合は35%
子どもに異常が見られるとされています

妊娠の月齢による先天性風疹症候群発症リスクをまとめた図

先天異常として発生する主なものは
先天性心疾患(動脈管開存症が多い)
難聴 白内障 色素性網膜症などです

先天性風疹症候群の症状をまとめた図


@妊娠を望む女性 妊婦さん その家族が注意すべきこと

妊娠中の女性は 
ワクチン接種が受けられないため

特に流行地域においては 
抗体を持たない または低い抗体価の妊婦は
妊娠初期には可能な限り人混みを避ける必要があります



妊娠を考えている人 妊婦さんの風疹への対策を解説した図

また 
妊婦の周りにいる人
(妊婦の夫 子ども その他の同居家族等)は
風疹を発症しないように予防に努め

ワクチンを
1歳以上で2回受けたことがない妊婦の家族は
出来るだけ早くワクチン接種を
うけることが勧められます

赤ちゃんを守るためにワクチン接種を勧めるポスター

そして
妊娠可能年齢の女性は
非妊娠期に2回のワクチン接種を
することが奨められています

赤ちゃんを守るためにワクチン接種を勧めるポスター2


<海外渡航に関わる注意>

現在も感染が見られるのは 

主にアジアおよびアフリカ諸国で
中国 インド モンゴル パキスタン ナイジェリア
などからの報告数が
特に多いのが現状です

ですから
*風疹にかかったことがない方

*ワクチン接種を2回受けていない方 
 接種既往が不明の方は

海外渡航される時には
渡航先の風疹流行状況を調べ
予防接種を受けることをおすすめします


高橋医院