そこの音は もう少し青っぽくならないかな?

ロマン派のアイドル(?)だったフランツ・リスト
オーケストラが自分の曲を演奏しているのを聞いて
突然 そのような注文をつけた

という逸話が残っているそうです

フランツ・リストの肖像画

どんな曲の どんな場面で 
どんな楽器の奏者にリクエストしたのか
ちょっと興味深いですね

パウル・クレー展の思い出を綴っているうちに

それに相前後して
丸の内の三菱一号館美術館で 
カンディンスキー展
を見たことを思い出しました

カンディンスキー展のポスター

カンディンスキーも 
書き手の贔屓の画家さんです

カンディンスキーの肖像画

クレーとカンディンスキーの関係は深く

まだ自分の画風を確立できていなかったクレーが
ミュンヘンで華々しく青騎士運動を立ち上げてい
たカンディンスキーを訪れ
交流を深めて 

やがてバウハウスで 
ともに教鞭をとることになります

クレーの画風には 
どことなくカンディンスキーの影響があるように感じるのは
気のせいではないかもしれません

談笑するカンディンスキーとクレーの写真

で そのカンディンスキー展ですが
初期の頃の試行錯誤段階にある作品が数多く見れて 
面白かったのですが

いちばん興味をひかれた作品は
画面いっぱいに黄色の帯が爆発するように広がる
「印象Ⅲ・コンサート」 でした

「印象Ⅲ・コンサート」

この黄色には 
見る者を圧倒する迫力があります

カンディンスキーは
シェーンベルグのピアノコンサートを聴きに行き
その調べに感動して 
家に帰ってすぐにこの絵画の制作に取り掛かったそうです

カンディンスキーが書いたシェーンベルグのコンサートのデッサン

著書 「芸術における精神的なもの」 のなかで

この黄色は 
輪郭を飛び出し周囲にその力を撒き散らす作用を持つ 
と表現し

黄色は 次第に高く吹き鳴らされるトランペットの
鋭い音色のように響く

とも語っています

なるほど カンディンスキーにとって
トランペットの音色は黄色だったのですね

黄色いトランペット

世の中には シナスタシア・共感覚 
という感覚があるそうです

ある刺激に対して 
通常受ける感覚以外の異なる感覚が無意識に生じることで
文字を見て色を感じたり 
形に触れて味を感じたり

シナスタシアの概念を説明する図

なかでも一番多いのが
音を聴いて色を感じる
色聴と呼ばれる共感覚 だそうです

音を聴いて色を感じている人

文頭に記したように

リストがオーケストラに
「その音をもっと青く!」とリクエストしたり

カンディンスキーが
シェーンベルグのトランペットの音色に黄色を感じたり

そういうのも 広義の色聴感覚に含まれるのでしょう

カンディンスキーは音を聞いて色を感じると語った と記されたカード

絶対音感を有する人は 
色聴感覚を併せ持つ人が多く

また 高い音ほど明るい色に聴こえる(?)
傾向があるそうです

また その逆で 
色や形を見て音を感じる音視という共感覚もあるとのこと

薔薇の花を見たら 
どんなメロディーが聞こえてくるのでしょう?

共感覚についてまとめた図

幸か不幸か 
書き手はシナスタシアのセンスは持ち合わせていませんが
ちょっと世の中が変わって見えていそうで 
共感覚がある人が羨ましく感じます

で リストが望んだ青い音は
どんな音色だったのでしょう?

青色フェチの書き手としては かなり気になります(笑)

ちなみに シナスタシア

視覚と聴覚だと 
鋭敏過ぎてバッテイングするかもしれませんが

視覚と嗅覚だと
喧嘩せず むしろ視覚効果を高めるかもしれませんから
絵画と香りのコラボなんて面白いかも?

でも シナスタシアの大きな特徴のひとつは 
共通性がないことだそうで

美術館で万人受けするBGMや香りをみつけるのは 
難しいかもしれません

様々な感覚をまとめた図

それにしても 凡才な書き手としては
シナスタシアを感じられる方がうらやましいです

で 最後にカンディンスキーの作品に話を戻しますが

書き手は個人的には
彼が若き日にミュンヘンの青騎士グループで
活躍していた頃の作品より


青騎士グループで活躍していた頃の作品

後年 バウハウスで教えていた頃の作品の方が

バウハウスで教えていた頃の作品の方

より洗練された感じがして なんとなく好みです

いやはや(苦笑)
高橋医院