胃食道逆流症 逆流性食道炎

胃酸が食道に逆流して 
食道に炎症や傷害が起こり
胸やけや呑酸といった症状が
出てきてしまう病気です

では その病気が起こっている食道とは 
どんなところなのでしょう?

<食道の位置と周囲にある臓器>

食道は 口や喉と胃をつなぐ 
約25~30センチの筋肉性の筒状の管です

食道の前には 
喉頭から肺につながる気管が上下に走っています

食道の周囲に位置する臓器を示した解剖図

医学生で解剖学を習っていたときに
「機関車(気管)は 食堂車(食道)の前」と
語呂合わせで位置関係を覚えたものです

また 救急処置で気管内挿管をするときには
チューブを誤って気管でなく食道に入れてしまわないように
緊張しながら 充分に注意して行ったものです
(なんとなく懐かしい:笑)

さて 食道は
胸腔と腹腔を隔てる横隔膜にある 
食道裂孔という名前の穴を貫いて
胃の入口である噴門部につながります


横隔膜の食道裂孔を食道が貫いていることを示す図


<食道の働き>

口から飲み込まれた食物は 
わずか数十秒で食道を通り胃に運ばれますが

食道はこのように
筋肉の蠕動運動により 
胃に食物を運ぶ役目を果しています


食道の筋肉の蠕動運動の解説図


@下部食道括約筋(LES)

食道の下部 
胃の噴門部につながる部分の4~5cm上には
下部食道括約筋(LES)
と呼ばれる部位が存在します


下部食道括約筋(LES)の位置を示す図

LESが弛緩すると 
食物が胃に入り

LESが締まると 
食道と胃の交通は遮断されます

つまり LESは
胃の内容物が食道に逆流しないための
働きをしているのです

LESの働きを示す図

この 食道裂孔 LES は
胃食道逆流症の病態を説明するときに 
再度登場しますので
名前を覚えておいてください


<食道の解剖学的特徴>

@重層扁平上皮で覆われている

少しオタクな話をしますが

食道内腔を覆っている粘膜は
重層扁平上皮という種類の
上皮細胞で構成されていて

重層扁平上皮の組織像

単層円柱上皮で覆われている
胃や腸とは異なっています

口腔内で咀嚼されたばかりで 
全く消化されていない食物はまだ固いので
その固さで粘膜が傷つけられることがないように
厚くてタフな重層扁平上皮で覆われていると
考えられています

この 食道と胃の 
重層扁平上皮 単層円柱上皮の違いは
あとで 
胃食道逆流症の合併症であるバレット食道について
説明するときに再度お話しますので 
この名前も覚えておいてください

@蠕動運動を起こす筋肉

さて 食べ物を胃に運ぶ食道の蠕動運動
粘膜の外側を取り巻く 2層構造の筋層
内側の輪走筋 
外側の縦走筋に
より起こりますが

食道を輪切りにして構造を示した図

この筋層の収縮は 
自律神経の働きで無意識下に行われるため
普段の生活では 
食道の働きの有難さを実感することはありません

つまり 
人が食道の存在を自覚することは 
普通はほとんどないのです

しかし
不幸にして胃食道逆流症になり 
胃の内容物が食道に逆流してしまうと
食道の存在を感じるようになります

では いったいどのようにして 
食道の存在を自覚するのでしょう?

その詳細は 病態の説明で詳しく解説します
高橋医院