パウル・クレー

書き手が若い頃に
彼の作品を見て感銘を受けた 
ご贔屓な画家のひとりです

パウル・クレーの写真

ずいぶん前のことですが
竹橋の国立近代美術館で 
大々的なクレーの企画展が開かれ 
見に行きました

クレーの企画展の看板

国立近代美術館
上野の国立西洋美術館や 
六本木の国立新美術館に比べると
落ち着いた感じがして 
とてもお気に入りです

国立近代美術館の外観

週末に午後8時まで開いているときは 
それほど混んでいないので
のんびりと好みの絵画を鑑賞できて 
幸せな気分になれます


で あの時のクレー展は

クレーという画家が 
いかにして絵画表現を創り上げて行ったかに迫る

という明確なコンセプトが
貫かれた構成だったので

今まで知ることがなかった 
クレーの創作過程の一面を知ることができて
とても印象の残る展覧会でした

キュレーターや編集者の存在意義というのは 
とても大きいと思います


クレーの作品を特徴づけるのは 線と色

画家の仕事というのは
見えているものを 
単に描写することではなく
見えていないものを 
描き出すことである

クレーの創作に対する姿勢は
彼が語ったそのひとことで 
充分に語り尽くしているでしょう

初期の彼の作品では
線のみによって 
ものごとの本質を抉りだそうとしていて

そうした作品はとても見事で 
観る者の琴線にうったえかけるものがあります

線のみによって描かれたクレーの作品

線の本質を運動ととらえ
線の運動こそが 
目に見えないものを
描き出すことができるという考えは

とても斬新で 
とても印象深く感じます

線の運動が躍動的な作品

ただ 線だけでも充分に美しいのですが
やはり世の中 
何かにつけて 色もないと、、(苦笑)

線のみで
ものごとの本質を抉りだす域に達したクレーは

チュニジア旅行で色彩に目覚め
その作風を大きく発展させることになります

クレーの作品を特徴づけている
もうひとつの特徴は
やはり美しい色遣いでしょう

美しい色遣いの作品

個人的に好きなのは 
色の展開というか 
グラディエーションです

線の本質を運動であると
捉えていたクレーは

おそらく
色彩の本質も 
運動や展開だと考えていたのではないでしょうか?

色彩豊かな作品

水彩の塗り重ねによって
グラディエーションを表現することにより

二次元的で静止した画面構成に
光のうつろいとか 時間の流れとか
そうしたものを表現しようと
していたのではないかなと思っています

時間の流れを表現する作品

そして 
そうした「色」の展開による表現を
より効果的にするのが
実は出発点の「線」にほかならない

太い線が強調された作品

線だけでは物足りないし 
色だけでも表現しきれない

色は大切だけれど 
それだけではダメだよ

ということで 
クレーの作品がインスパイアしてくれることは
絵画だけでなく 
人の生き方にも共通する 
意外に奥が深いものでしょうか?

ネコの顔が描かれた作品

ところで こんな作品もあるということは

うーん 
クレーもネコ派だったのかな?(笑)
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