本格的な慢性膵炎への
進行を食い止めるために
より早期の段階の慢性膵炎を発見して 
治療を開始しよう 

という

2009年から 世界に先駆けて日本で開始された
早期慢性膵炎の臨床研究ですが

慢性膵炎 早期慢性膵炎の診断基準

時間が経過して 
その実態が少しずつ明らかになってきました

厚生労働省が主催する
難治性膵疾患に関する調査研究班が主体になり
全国の病院を対象に行った調査では

2011年1年間の
早期慢性膵炎の年間受療患者数は5410人で

そのうち 
新規に診断された患者数は1330人
継続して治療している患者数は4080人 
でした

そして 我が国では
慢性膵炎患者総数の約8%が 
早期慢性膵炎に該当すると考えらています

では 早期慢性膵炎の患者さんは
進行した慢性膵炎に 
どれくらい進行するのでしょう?


慢性膵炎の病期 症状の経過をまとめた図表

数年間にわたり治療経過が観察できた 
早期慢性膵炎52例のうち

*5例(9.6%)は 
 2年後には確診または準確診の慢性膵炎に進行し

*15例(28.8%)は 
 早期慢性膵炎の状態のままで変わらず

*32例(61.5%)は 
 改善傾向が認められました

52症例という少ない数での検討ではありますが
本格的な慢性膵炎に進行する率は 
それほど高くはありません

確診または準確診の慢性膵炎に進行した
5症例のうち4症例は 
飲酒が止められなかった患者さんでした

さらに ア
ルコール性の早期慢性膵炎患者33例中5例(15.2%)が
確診あるいは準確診の慢性膵炎に進行しましたが

進行する患者さんの割合は
断酒者では7.7% 
飲酒継続例では20.0%でした

これらのことから

早期慢性膵炎の段階で発見・治療開始できれば
90%近くの患者さんでは 
本格的な慢性膵炎への進行を抑止することが
明らかになりました

一方で

アルコールがやめられない患者さんは
たとえ早期慢性膵炎の段階で
発見・治療開始できても
本格的な慢性膵炎への進行してしまうことも 
明らかになりました

膵炎の悪化防止のために禁酒を強く訴えるポスター

本格的な慢性膵炎への進行を防ぐためには
アルコールをやめることがいかに重要か

再認識された次第です

こうしたことから
慢性膵炎進展につながるリスク因子を 
早期段階から除去することが重要で

*膵炎を誘発する
 高脂肪食やストレスなどを回避する
 生活指導を積極的に行うとともに

膵炎の治療の原則を列記した図

*特に 
 断酒と禁煙を強く指導することの大切さが 
 強調されています

断酒と禁煙を強く指導することを強調するポスター

また 
現在でも慢性膵炎の治療に用いられている
抗トリプシン薬
早期慢性膵炎の段階から使用し始めれば

抗トリプシン薬の構造式

本格的な慢性膵炎への進展抑制と
正常な膵臓への回復につながる可能性があり

慢性膵炎の早期発見 早期治療の重要性が
提唱されています

慢性膵炎の早期発見 早期治療の重要性を提唱する図

当院でも
健康診断でアミラーゼの高値を指摘され 
みぞおちのあたりが痛む
ということで受診され

他の検査では異常がみられず 
早期慢性膵炎が疑われる患者さんが
何人かおられますが

いずれも 
抗トリプシン薬の服用で痛みは改善し
血液検査でアミラーゼ値も改善されています

ですから 
早期慢性膵炎という状態はリアルに存在して
その段階から治療開始は有効なのではないか
と実感しています

ということで

健康診断の血液検査で 
アミラーゼが高かったり
みぞおちや背中のあたりが痛むことが多い方

早期慢性膵炎の可能性も考えて 
是非 受診していただきたいと思います

みぞおちや背中のあたりの痛みを心配する人

特に

*お酒をたくさん飲まれる方や
*胆石を持たれている方で

アミラーゼの高値を指摘されたり 
みぞおちや背中がときどき痛む方は
要注意ですので 
早目に受診するようにしてください
高橋医院