脂肪組織からあふれ出てきた 
過剰な遊離脂肪酸などの脂質が
脂肪毒性を引き起こして
臓器や細胞の機能を障害する話を
紹介しましたが

こうした脂肪毒性という現象の根底には

皮下脂肪や内臓脂肪などの脂肪組織から
あふれ出た脂肪が
脂肪組織以外の非脂肪組織に蓄積すると
その組織や細胞の機能がおかしくなる

という考え方があり

さまざまな組織に沈着した脂肪は 
異所性脂肪 と呼ばれます

脂肪組織からあふれた脂肪が他の臓器に蓄積して異所性脂肪を形成する過程を示した図


<異所性脂肪とは?>

多量の中性脂肪を
細胞内に溜め込む性質をもたない
筋細胞 肝細胞 膵β細胞 心筋細胞などに
過剰な中性脂肪が異所性に蓄積し

それにより
各細胞の機能異常が引き起こされ

糖尿病生活習慣病の 
発症・進展に関与する現象のことです

さまざまな臓器で異所性脂肪蓄積により誘導される機能異常をまとめた図


<どうして異所性脂肪が蓄積するか?>

内臓脂肪の蓄積が出発点

内臓脂肪の蓄積により生じる
*高遊離脂肪酸血症 
*高インスリン血症
により
各臓器内に脂肪が蓄積すると考えられています

過剰な栄養摂取により生じた中性脂肪は
まず皮下脂肪に蓄積され

皮下脂肪の脂肪蓄積能力が限界に達すると
内臓脂肪として蓄積されます

さらに内臓脂肪の脂肪蓄積能力が
限界に達すると

蓄積しきれない中性脂肪・遊離脂肪酸は
血中に放出され

肝臓や骨格筋などに蓄積して
異所性脂肪沈着を起こすに至ります


内臓脂肪の脂肪蓄積能力が限界に達すると異所性脂肪の蓄積が起こる過程を示す図

@慢性炎症の関与

一方 前回少しご紹介した慢性炎症
異所性脂肪蓄積に関わると考えられています

慢性炎症は
さまざまな臓器において 
組織の線維化を誘導しますが

脂肪組織で慢性炎症が生じると
線維化により 
組織内での脂肪蓄積容量が制限されてしまい

脂肪を容易に血中に放出しやすくなります

脂肪組織で生じる慢性炎症が異所性脂肪蓄積を誘導する機序を説明する図

実際に 肥満の患者さんでは 
脂肪組織内の線維化の程度は
脂肪組織の脂肪蓄積容量と逆相関を示し
異所性脂肪蓄積量と正相関を示しています

脂肪組織での慢性炎症による線維化が
異所性脂肪蓄積に関与しているようです


<日本人に多い隠れ肥満>

少し話が脱線しますが

脂肪組織から血中に
遊離脂肪酸が放出される際は

主にインスリンが
ホルモン感受性リパーゼ活性を介して
放出量を調節しています

脂肪組織からの遊離脂肪酸放出量は
内臓脂肪 皮下脂肪で異なり
内臓脂肪が 
最も大量に脂肪酸を放出します

このように 
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて
悪さを示しますが

内臓脂肪は皮下脂肪に比べて悪さを示すことを説明する図

日本人は欧米人に比べ 
皮下脂肪の脂肪貯蔵能力が低いので
内臓脂肪/皮下脂肪比が高く

非肥満者であっても
内臓脂肪蓄積や脂肪肝の存在が認められるので 
要注意です

日本人は内臓脂肪が多い隠れ肥満になりやすいことを示した図

いわば 隠れ肥満ですね


<異所性脂肪で誘導される病態>

@インスリン抵抗性

インスリンが作用する
インスリン感受性臓器である
骨格筋 肝臓などに異所性脂肪が蓄積すると

それぞれの臓器の細胞レベルで 
インスリン抵抗性を惹起してしまい
糖尿病やメタボリックシンドロームを
引き起こす原因になります

インスリン抵抗性が生じる機序は 
前回ご説明した脂肪毒性に依ります


異所性脂肪により各臓器でインスリン抵抗性が誘導される機序を示す図


@心血管病変

心臓や血管に異所性脂肪が蓄積すると
心筋細胞や血管内皮細胞の機能が障害されて
狭心症や心筋梗塞に進展するリスクが
生じてきます

異所性脂肪蓄積 あなどれません

こうした 
非脂肪組織における異所性脂肪蓄積は
上述した隠れ肥満でも起こり得ますので

厳密に言うと
体重をチェックするだけでは不十分で
内臓脂肪量や 
肝臓や骨格筋での脂肪蓄積量
評価する必要があります

当院でも 
脂肪肝や糖尿病の方々には
腹部CT検査での内臓脂肪量測定をお勧めしており

内臓脂肪を定量的に評価するCT像

赤く見える内臓脂肪の量の多さを
ご自分の眼で確認していただいています

この内臓脂肪が 
色々な悪さをしていること

そして 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて
運動療法や食事療法によって
減りやすいことをお話して

新たに始める食事療法や運動療法の 
動機付けにしていただいています

次回は 
各臓器における異所性脂肪蓄積について
説明します
高橋医院