何週間にもわたって咳が長引く場合
アレルギーなどの
感染症以外による咳が疑われます

急性の咳と慢性の咳では原因が異なることを示した図

<咳喘息>

こうした慢性咳嗽をきたす病気は 
何種類もありますが

慢性咳嗽をきたす病気をまとめた図

その約半数を占めるのが 咳喘息
成人女性に多く 
患者さんの数は年々増加しています

咳喘息で苦しむ人

<症状>

咳だけが唯一の症状

普通の喘息のように
息苦しくなったり
呼吸をするときにヒューヒューと
音がしたリすることはありません

咳がひどくなるのは

*夜から早朝

*ホコリや冷気を吸ったとき

*運動をしたあと

*春や秋などの特定の季節

*過労 ストレスがあるとき

などです

咳喘息の症状の特徴をまとめた図

風邪をひいたあとに発症することも多く

鼻水や喉の痛みなどの
他の症状が良くなっても
咳だけが持続して残るのが特徴です

前回 ご説明したように
気道の過敏性が残っているので
わずかの刺激で
咳が出やすくなっているのです

アレルギー性鼻炎副鼻腔炎を
合併していることも多く
この場合は 
痰をともなう湿った咳になります

乾いた咳 痰が絡む湿った咳の差異を示す図

さらに 
逆流性食道炎を合併している患者さんも
少なくありません

逆流性食道炎は 
胃酸が胃から食道に逆流するために
胸のあたりの違和感や
ゲップなどが生じる病気で

それ自体が 
咳喘息やアトピー性咳嗽に次ぐ 
長引く咳の原因疾患です

逆流性食道炎でも咳が生ずることを示す図

咳と胃酸逆流の
自己永続サイクルがあるとされ
咳が胃酸の逆流を惹起し 
胃酸の逆流が咳を誘導すると考えられています

<病態>

咳喘息の病態は 喘息に類似していて

気道に炎症が存在し
細い気管支が収縮していることがポイントですが

喘息と異なるのは
気管支粘膜が浮腫により肥厚していないことです

咳喘息の患者さんの気道の断面図

そのため 喘息のような息苦しさや
呼吸をするときの
ヒューヒューという音は聞こえません

しかし 
きちんと治療をせずに放置しておくと
約30%が本格的な喘息に移行してしまうので 
要注意です!

咳喘息の喘息への移行を注意する図


<治療>

@気管支拡張薬

病態の本質が 
細い気管支の収縮ですので
治療には気管支拡張薬が用いられ

気管支拡張薬によって
咳が改善することが 
この病気の大きな特徴です

気管支拡張剤の作用を示す図

@吸入ステロイド薬

また 
気管が炎症により過敏性を起こしているので
わずかな刺激でも咳が出てしまいます

ですから 
炎症による過敏性を抑え込むために
吸入ステロイド薬 が治療に用いられ

それにより喘息への移行率が低下することが
明らかにされています

気管支拡張剤と吸入ステロイド薬の合剤の作用機序を示す図

@症状が改善しても
 一定期間治療を継続する

このように
治療には
気管支拡張剤と吸入ステロイド薬の合剤
が使われますが

原因となる気管の炎症・過敏性を
徹底的に抑えこむため
咳症状が改善しても 
一定期間 治療を継続することが大切
治療中止により 
再燃することも多くみられます

理想としては 
半年くらいの治療継続が望ましいですが
咳が良くなっても 最低でも1か月間は
吸引を継続してくださいとお話ししています

アレルギー性鼻炎を合併している場合には
吸入剤に強力な抗アレルギー剤を
併用することが多く

短期間だけセレスタミンを服用し
その後 抗ヒスタミンや抗ロイコトリエン剤を用いると
改善率が良くなります

@風邪のときに投与される咳止めは効かない

治療で重要なもうひとつのポイントは
風邪のときに使われる咳止め薬は 
全く効かないことです

風邪の咳は 
咳嗽反射右よる咳ですから
咳中枢を抑制する薬が有効ですが

咳喘息には咳中枢を抑制する鎮咳薬が効かない理由を示す図

咳喘息の咳はgアレルギーによる咳なので
風邪の咳止めをダラダラと使っていても
効果はありません

咳喘息の病態の本質は 
アレルギー体質ですから

花粉症や皮膚炎などの
アレルギー性疾患を有している方で
長引く咳に悩まれている方は
咳喘息を疑い 受診されてください
高橋医院