中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


今日は 脂肪酸 について説明します

脂肪酸は 
脂質の構造や機能を理解する上で 
とても重要な分子です

脂質の基本構成単位 

中性脂肪 
コレステロール 
リン脂質等は

脂肪酸を中心に構成されています

体内の脂肪酸のほとんどは 
中性脂肪の構成成分として存在していて

血中ではアルブミンと結合し
遊離脂肪酸として移動しますが
その量はごくわずかです


<構造>

脂肪酸の基本構造は

炭素(C)が 
1列に横並びに連結した鎖状のもの

その炭素に
水素(H)酸素(O)が
結合しています

脂肪酸の構造


<役割>

脂肪酸の役割は 
大きく分けて3つあります

@エネルギー源になる

脂肪酸は 
ミトコンドリアβ酸化されてアセチルCoAになり

TCA回路から電子伝達系に入り 
エネルギーのATPが産生されます

脂肪酸がアセチルCoAになりTCA回路に入りATPが産生される過程を示した図

脂質は糖質と比べて 
水素の含有量が多いので
エネルギー産生量が高くなります

1gのエネルギー産生量は 
糖質が4kcalであるのに対し
脂質は9kcalと
倍以上になります


@熱を放散して 体温維持に関わる

ミトコンドリアの脱共役について 
以前に説明しましたが

褐色脂肪細胞のミトコンドリアでの
UCP-1遺伝子活性化による
熱変換においても
脂肪酸が原料として用いられます


@エイコサノイドと呼ばれる 生理活性物質の原料となる

細胞膜のリン脂質に含まれる
多価不飽和脂肪酸から
さまざまな生理作用を有する
エイコサノイドが産生されます

細胞膜のリン脂質の多価不飽和脂肪酸からエイコサノイドが産生されるのを示した図

エイコサノイドについては 
稿を改めて解説します


<分類>

脂肪酸は

炭素の数
炭素の飽和度

の2種類の尺度により分類されます


まず 炭素の数による分類について説明します

横並びに連結している炭素の数により
短鎖 中鎖 長鎖 に分かれます

脂肪酸を長さ=炭素の数で分類した図

短鎖脂肪酸  

炭素数が4個 6個

酢酸 酪酸 プロピオン酸 
が代表例で

短鎖脂肪酸の図示

*腸内細菌による食物繊維の分解で産生され

*食欲を抑制するホルモンの分泌 
 脂質代謝の制御 抗炎症作用
 などの機能を有します

短鎖脂肪酸の働き

酪酸と腸内細菌叢の関連は 
以前ご紹介しましたが

短鎖脂肪酸は
リガンドとして生理活性作用を有するのが 
とても興味深い点です

@中鎖脂肪酸  

炭素数が8個 10個

*母乳 ココナツ油 ヤシ油 パーム油に多く存在し

*消化吸収が速いので 
 すぐに肝臓に運ばれて分解されます

中鎖脂肪酸の働き

*エネルギーになりやすく 
 中性脂肪として蓄えられにくいのが特徴です

*ケトン体に変換され
 エネルギー源として用いられます

*適度に水溶性なので
 胆汁酸なしで消化されます


@長鎖脂肪酸  

炭素数が12個以上

*天然に存在するほとんどの脂肪酸で
 調理油 DHA EPA などが代表例です

*炭素数が多いので
 水に溶けにくいので
 消化には胆汁酸が不可欠です

*肝臓のみならず 
 脂肪組織や筋肉にも運ばれ
 過剰な長鎖脂肪酸は
 中性脂肪として蓄えられます

*必要に応じて分解され
 エネルギーとなり
 中鎖脂肪酸よりも多くのATPを合成できます

長鎖脂肪酸がゆっくりエネルギーになることの図示


さて 読み手の皆さん 大丈夫ですか~?

こんがらがってきたり 
飽きたりしていませんか?(笑)

ここでさらに解説を進めて 
ギブアップされるといけないので
今日はこのあたりで終わりにして

炭素の飽和度による分類は次回にしましょう


今日は

脂肪酸

脂質の構成単位

エネルギー源として使われるが 
 生理活性物質の原料にもなり

炭素数の違いにより 
短鎖・中鎖・長鎖の3種類に分けられ

短鎖は 生理活性物質として働き

中鎖は 主たるエネルギー源となり

長鎖は 過剰分は体内に蓄積され 
     エネルギー源としても使われる

ということを 理解していただけると幸いです
高橋医院