過敏性腸症候群国際診断基準(ROMA Ⅲ)の定義によると

過去3ヵ月間において
 1ヵ月に3日以上にわたって

腹痛腹部不快感が繰り返し起こり

*以下の3項目のうち2項目以上を満たすもの
排便によって症状が軽減する
・発症時に排便頻度の変化がある
・発症時に便形状(外観)の変化がある

という症状が認められる患者さんです

過敏性腸症候群の診断基準

機能性ディスペプシアの解説でも言及しましたが
過敏性腸症候群も
血液検査や画像検査で
診断されるものではなく

あくまで患者さんが訴えられる症状をもとに
診断されます

そのため 
本当に過敏性腸症候群なのか 
よく吟味しないといけません

過敏性腸症候群以外の腸の病気の可能性を 完全に否定する

つまり
過敏性腸症候群以外の腸の病気の可能性を
完全に否定すること
が大切で

まず 
アラームサインと呼ばれる症状の有無の
チェックを行います


アラームサインとは
危険な腸の病気を示唆する症状
12週間以上持続する腹痛と
便通異常を訴える患者さんに対しては

*発熱 関節痛

*粘血便
*6ヵ月以内の理由が同定できない
 3Kg以上の体重減少

*異常な身体所見
 (腹部腫瘤の触知 腹部の波動など)

*直腸診による腫瘤触知 血液の付着

といった器質的疾患を疑う
警告症状・徴候がないかどうか

大腸がんなどの大腸の器質的疾患の
既往歴 家族歴の有無をよく問診し
(50歳以上での発症では 特に重要)

これらに該当する場合は
大腸内視鏡検査または大腸造影検査を行います


アラームサインがなくても
血液検査 便潜血反応検査を行い
器質的疾患の有無をしっかり評価します


以上の結果を踏まえ
器質的疾患の可能性が
完全に除外できれば
そこで初めて機能性腸疾患と特定され
ROMA Ⅲにより過敏性腸症候群と診断されます


<過敏性腸症候群の症状>

過敏性腸症候群の症状で特徴的なのは

平常時の排便回数は
健常人と変わらないが
症状発症時には増えることで

症状の発症は 
ストレスにより惹起されることが多い

症状は
午前は軽度で 
午後に増悪することが多く
排便回数の増加などにより改善します


下部消化管以外の症状を呈することも多く

*心窩部痛 季肋部痛 
 悪心 嘔吐 食欲不振などの
 上部消化管症状

*頭痛などの多彩な身体症状

*抑うつ感 不安感といった精神症状

*動悸 発汗過多 四肢冷感のような
 自律神経症状

が認められる場合も 少なくありません

過敏性腸症候群の症状をまとめた図

<心理的要因の影響が大きい>

機能性ディスペプシアでも説明しましたが
過敏性腸症候群も
心理的要因に大きく影響され

*心理的要因が経過に影響を与え
 発症・増悪・回復遅延との
 時間的関連がある

*心理的要因が
 治療を妨げている

*心理的要因が
 健康を阻害する危険因子になっている

*ストレス関連性の生理反応が
 症状を誘発 悪化させる

といった事が明らかにされています

ストレスと症状悪化の悪循環を示した図

重症度は
腹部症状によりQOLが
どの程度 妨げられているか
によって評価され

初診時においては
軽症が75%
中等度が20%
重症が5%
とされています

重症化するにつれて
ストレス うつ 不安などの影響が
強くなる傾向を認めます

機能性ディスペプシアと同じように
うつや不安との関連が
とても大きい病気なのです
高橋医院